孤児院経営の魔導士

ライカ

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本編

チェルナーム孤児院 健康診断

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帝国での騒動から一週間…………
外はお日様が照らし、いい天気である
庭の畑では、【マスネリアチョウ】がヒラヒラと舞っているのが見える

そんな中、孤児院の中では……………

「やぁぁぁぁ!!?」

「こら!!
逃げないの!!」

「はなちてぇぇぇぇえええ!!」

逃げる数名の子供達をティア達が捕まえていた

今日、年に数回、医師を孤児院に招いて、子供達の健康診断が行われる日で、そのついでに数名には、今後の為の予防接種があるのだが、毎年の事だが、注射が嫌いな子供達が、逃げ回ってしまうので、ティア達も大変だな

俺はそんな光景を見ながら準備の方を進めている
魔法でやってる分、人数不足は無いが、ティア達を子供達にあててるから、魔力の消費があるな
マジで俺じゃ無かったら、時間になる前にバテてるな………………

「ノア!!
そっち、行った!!」

「はいはい、捕まえた」

「ぴゃあぁぁぁぁ!?」

ノリフェロに言われ、俺は軽く返事を返しながら魔法陣を展開し、自分の前に転移させれば、そのまま捕まえた

「【ファンナ】、大人しくしなさい」

「やぁぁぁ!?注射やぁあぁぁ!?」

抱き上げて、優しく言ったがファンナは、ジタバタと踠き、特徴的な耳がピコピコと左右に大きく揺れる
そんな様子に俺はため息を吐きながらノリフェロにファンナを渡せば、外を見た

「来たみたいだから出迎えくる
皆は準備を」

「分かったわ」

俺はそう言い残せば、扉から出て、門の所に来れば、遠くからアルクベリス運行の馬車が三台、こちらに向け、近づいてくるのが見えた
そしてその馬車は孤児院の前に止まれば、扉が開いた

「お久しぶりです
【アノタリア】先生」

「久しぶりだな、ノア
子供達は……………、元気そうだな」

「えぇ……………、毎回の事ながらすみません」

「いやいや、子供は元気じゃ無いとね」

アノタリア先生に挨拶をすれば、孤児院内から子供達を泣き声が聞こえてきて、思わず、苦笑いを浮かべれば、アノタリア先生は構わず声を出して、笑った

アノタリア・ズェルリガー

大陸一の医師であり、初の魔族と人族の専門医だ
初めの頃は魔族の医師だと、蚊帳されたが今では、彼の手で救えなかった患者は居ないと言っていい
そしてその腕前から多くの弟子が彼の元で巣立ち、多くの医師となった

年に数回の健康診断なのも忙しい時間の合間を縫っての事だから頭が上がらない
そしてこの孤児院を開くにあたり、ティアに医療知識などを教えたのも彼である

俺とアノタリア先生が話してると後ろの馬車から医療服を着た女性達が5名、下りれば、手慣れた様子で荷台から荷物を下ろせば孤児院に入っていった

「先生、彼女達は?
見ない顔が居ますが」

「あぁ、見習いながら腕が良くてな
見習いを終えれば、そのままウチで働いてもらうつもりなんだ」

「そうですか」

アノタリア先生がそう言いながら笑えば、俺は内心、(珍しい…………)と思った
アノタリア先生は、弟子に見習いを終えさせれば、そのまま他の国の医師や有名な所の助手として、送り出す事が多いが、自らの所で働いてもらうと、言う事は殆どない

そんな事を思いつつ、アノタリア先生と共に孤児院に戻れば、助手の女性達が既に準備を終え、ティア達と共に子供達をあやしていた
子供達もすっかり泣き止んでいるが、アノタリア先生を見た途端、少し震えているのが見えた

「さぁ、これから診断を開始する
いい子にしてたら、美味しいデザート作ってあげるから、頑張ってな」

「「「はーーい」」」

子供達を見ながら俺は笑顔でそう言えば、震えていた子供達だが、デザートと言う単語が出れば、たちまち笑顔になり、元気よく返事をした
そんな姿に和みつつ、健康診断が始まった

アノタリア先生が子供達を健康診断と予防接種をしてる中、俺はキッチンに向かい、子供達のデザートを作ることにした

「さて、何を作るか……………」

昨日はパンケーキだったからな…………
プリン…………、そうだな
妥当だが、ソレにしよう

作る物も決まって、ちゃっちゃと準備をし、作り始めれば、診察をしている部屋から子供達の泣き声と共にティア達が慰め、あやしてる声が聞こえてきた
どうやら予防接種が始まったようだ

「これで【魔風病】の予防が出来たっと…………」

そんな事を呟きながら手を動かして、調理を続けた

魔風病
かかった者は、魔族であろうと、人族であろうと、凶暴になり、その姿が変わってしまう病だ

今では、こうして予防出来るからまだしも、俺が魔法帝として活動してた時には、防ぐ手段が無く………………
だからこそ、こうして特効薬が出来た事に喜びがある
そのためにハルオウを含む科学者達が尽力したと思えば、努力の結晶と言えるな

そんな事を考えていれば、不意にズボンを引っ張られ、そちらを見れば、ユーセルトナが俺を見上げていた

「どうした?」

「ちゅーしゃ、おわったよ」

「そうか、偉いな」

「えへへ♪」

聞けば、ユーセルトナがそう言ってきたので、頭を撫でてやれば、嬉しそうに微笑んでいるのを見て、こっちも和んでしまう

「あっ、いいんちょー
ユーセルトナもお手伝いするー」

「そうか
なら、卵を割ってくれるか?」

「はーーい♪」

ユーセルトナを台に立たせて、消毒をしてやれば、隣で一生懸命に卵を割ってくれてるのを見てから、俺も続きに取り掛かった
丁度、冷やす頃には全員の予防接種とかが、終わっているだろう……………

そんな事を考えつつ、プリンを作り終え、冷凍の魔法陣が描かれた箱に入れれば、ティアがこちらに向かってきていた

「ノア、皆、終わったよ」

「そうか、こっちも丁度、冷やし始めた所だ」

「そう
あっ、アノタリア先生が呼んでいたよ」

「先生が?」

俺が聞き返せば、ティアは頷いた
先生が俺に?

不思議に思いながらも、用意していた部屋に入れば、アノタリア先生が俺を見た

「やぁ、待っていたよ」

「先生、俺に何か?」

「いや、最近、君がウチに来る事が減ったからね
そろそろ診させてもらおうと思ってね」

それを聞き、俺は(確かに……………)、と思いつつ、先生の前の椅子に座った

先生には戦時中などを含み、色々と俺の怪我を診てもらったこともある
先生に最初に診てもらったのは、確か………………
いつだったかな?

思い出そうと考えにふけていればいつの間にか、診察が終わっていた

「うん、極めて健康的だね
本当に君はいつ診ても丈夫だ」

先生は、そう言いながら笑っていたがふと、笑みが消え、神妙な顔付きになり、俺を見てきた

「だが……………、体に付いた古傷は消えないね
幾つかは、薄くなり、気にならない程度にはなってきているが……………
どうもその傷だけは」

「分かってる
これは【怨念属性の呪い】のエンチャントによる物
この傷は死んでも残り続けるだろうな」

先生に言われ、俺は胸元に手をやった

戦時中のある時、イグニスを庇って、斬られた事があった
その時、俺を斬った魔族は、魔族側でも反逆者だったらしく、魔族達も探していたみたいで……………
その時、俺はその魔族を至近距離で消し去ったが、その傷は肩から腰まで斬られた為、意識を失ってしまった
あとから聞いた話だが、あの後、イグニスに教会へ連れてかれ、アノタリア先生、そしてティアに治療をされた
だが、怨念属性と言う属性は今まで使う奴は殆どなく、俺も知識程度でしか無かった
怨念属性は傷の治りが遅く、ティアが全力で治癒魔法をかけても遅かった
それに浄化しないと呪いが進行する為、ティアは負担に耐えながら治療を続けてくれた

その時、ハルオウとアメリアが俺の状態をイグニスから聞いたのか、転移してきて、アメリアもティアと共に治癒魔法をかけてくれ、事なきを得た
呪いも完全に消えたが、その後遺症で傷跡がいつまで経っても消えなかったがな

俺が目を覚ました時、イグニスはホッとしたといったな…………
まぁ、その後、アノタリア先生に傷を診てもらったりした
先生もあの時の知識や腕の未熟さに責任を感じてるみたいだが……………
その結果、今となっては、大陸一の医師と言われるようになったから、凄いことだ

「まぁ、古い話は置いといて、子供達は皆、健康的、問題は無かったから安心してくれ」

「そうですか
いつもありがとうございます」

「いやいや、それより俺の分はあるかな?」

「もちろん全員分、作りましたので」

さっきまで真剣な表情が一転し、無邪気な笑みを浮かべた先生がそう聞いてきて、俺は笑顔を返しながら先生を居間へ、案内した
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