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本編
サークルマジック学園
しおりを挟む子供達に魔法を教えて、三日が過ぎた…………
外は気持ちいい風が吹いて、何だが眠くなりそうな陽気に包まれている
そんな中…………、俺は正装に着替えていた
この服を着るのはコレで何度目かは分からないが、父さんと母さんが二人で俺に買ってくれたこの服は、今でも大切にしている
着替え終えた頃、扉がノックされれば、扉が開いた
「ノア、準備は終わった?」
「あぁ、終わった」
扉の方を見れば、長い髪を束ねて、少しだけ化粧をしたティアがそこに居た
普段は化粧をしてないからか、今のティアは凄く見慣れてなくて、綺麗だと思った
そしてティアの服装はこの国からかなり離れた東方の国より取り寄せた服になっている
そこでは振袖………、着物とか呼ばれているみたいだが、ドレスとは違うみたいだ
………………振袖と着物は違うか
またアイツに叱られる
「相変わらず……………、見慣れねぇな」
「ふふふ、そうね
そう言うノアだって、今の姿はいつもと違くて見慣れないわね」
そう言って微笑むティアに妙に恥ずかしくなり、頬を掻きながら俺はサッとローブを着た
「さて、そろそろ時間だから行くか」
「えぇ」
そう言い、二人で孤児院を出て、転移陣に乗れば、魔力を流して、転移した
そして少しの浮遊の後、目を開ければ、そこは大きな建物が目の前にあった
そして周りには制服を着た人がその建物に入っていくのが見えた
サークルマジック学園
ここ人国王都から近く、その広さは一国と同じくらいだ
そしてここには様々な国や場所から若者が集い、【魔法生物学】、【薬製学】…………
数えるだけで数百から数千の学科を学べる場所だ
そして今では、魔族の子達もここで学べているからその学科は更に倍となり、教員も専属の教員が増えている
前までは貧しい国民は入学出来ず、問題になっていたが、イグニスが学費を国持にした為、解決し、今では王都は更に信頼と活気が増していっている
(が……………、教員の給料も払うって…………
イグニスも大胆な事をしたな…………)
そんな事を思いつつ、ティアの手を引き、学園内に入れば、こちらに駆けてくる人影が見えた
「お父さーーーーん!! お母さーーーーん!!」
その人影はマーシャだった
そしてその後からディボレス達が付いてきていた
今日、マーシャ達の進路面談とかあるからこの学園に来た
ってか、もうこの学園では俺とティアが来るのはもう当たり前と思われてもおかしくない、かも知れない
「待たせたって、まだ時間じゃねえけどな」
「いや、院長達が来るはこの時間帯だって分かってたから、別にいいさ」
「……………院長、ティア姉さん………
今日は………、よろしく………」
「えぇ、任せて」
ディボレス達と話して、和んでいると視線を感じ、チラッとそちらを見れば、窓からこちらを伺っている生徒がチラホラと居た
「これだけの人数になれば、目立つのは当然か」
俺は頭を掻きながらマーシャ達を見た
「まだ授業が残ってんだろ?
俺達は学園を回ってるから教室に戻りな」
「えぇーーー…………、お父さんとお母さんも一緒がいいーーー」
マーシャがブーー、と駄々を捏ねていればその首を後ろからディボレスが掴んだ
「院長達を困らせるなよ
生徒会副会長
じゃあ時間になったら教室で待ってるからな」
ディボレスはそう言い、オルシア達を急かしながらマーシャをズルズルと引きずり、去っていった
それを見送れば、俺はティアと目配せすれば、手を引いて、学園内に入った
学園の中はかなり広い廊下が広がっており、そこを魔族や人間の生徒が仲良さげに通っている
そして俺達と通り過ぎる際は必ず挨拶を返してくる
そう思えば、かなり指導がいいと見える
マーシャの話だと現生徒会長は、一年だが、かなりのしっかり者だとか
それですっかりマーシャ達の仕事が減ったと愚痴っていたな
そんな事を考えていれば、俺達は目的の部屋にたどり着けば、扉をノックした
すると、一瞬の内に部屋の中に転移された
そして目の前には、満面の笑みを浮かべたご老人が椅子に座ってこちらを見ていた
「いらっしゃい、ノア君、ティアさん
久しぶりだねぇ」
「お久しぶりです
【ワーレスナル】校長」
「お久しぶりです」
ワーレスナル・ギルフォーク現校長
俺達が孤児院の免許取得の為、一週間ぐらいここで学ばせてもらった時の恩師でもある
見た目の際で若く見られがちだが、今年で六十になる御老人だ
それでも今でも現役の魔導士で国の重要会議の際は重役の席に座っている
「ここに来たって事はもう三年生のチェルナームの子達の進路を決める時か……………
時間が過ぎるのは、早いのぉ………」
「まだ二、三年の子らが居ますから、時が来ればまたここに来ますがね」
「そうだったの
座りたまえ、久しぶりにゆっくり話すとしよう」
ワーレスナルさんが指を鳴らせば、何処からともなく、椅子が二個、転移され、机には二人分の茶が用意されていた
俺はティアの手を引き、ティアを座らせれば、すぐにその隣に座った
「ワーレスナル校長もお元気そうでなによりです
お孫さん方はお元気で?」
「あぁ、今は帝国の城で重役の仕事に就いておる
その一人は今年中にはここに来ることになっておるがの」
それを聞けば、俺は思わず前のめりになった
「まさか…………、引退なさるつもりで?」
「ホッホッホッ、まだまだ引退なぞするか
何分、教師が足らぬから教師として呼び寄せる事にしたんじゃよ」
「そうですか、よかったです」
「えぇ、ワーレスナル校長にはチェルナームの皆がお世話になってますし、これからここに通う子もぜひ、見てもらいたいと思ってます」
「ホッホッホッ、それは楽しみじゃの」
楽しそうに笑いながらお茶を飲んだワーレスナルさんは、ふと俺を見て、微笑んだ
「ノア君、前に来た頃より少し肥えたかのぉ
前より健康的に見えるわぁ」
「そうでしょうか?
まぁ、前よりは食が進むようにはなりましたが…………」
「そうね
前に作ったサンドイッチ、おかわりしてくれたもんね」
「……………そう思えば確かに少し食い過ぎてるのか?」
ティアの言葉に首を捻れば、ワーレスナルさんは、また声を出して笑った
「ホッホッホッ、仲良きことはいいことですなぁ」
その後、ワーレスナルさんと話をしていれば、そろそろ時間になり、部屋を出れば、マーシャ達の教室に向かった
校舎5階まで来れば、すぐにマーシャ達のクラスが見えた
ここは階層ごとに学年が違う
だが、最高学年は5階…………
広さ的にも学園1のエリアと言える
マーシャ達のクラスの前まで来て、中を少し覗けば、既にマーシャ達は横に並べられた椅子に座っていた
扉をノックして、俺達が中に入れば、少し年若い様に見える男性が俺たちを見て、立ち上がり、お辞儀してきた
「お待ちしておりました
イシュタールさん」
「いえ、こちらこそ、お待たせしました
【コポル】先生」
コポル・モルド
孤児院の子達が相当、お世話になっている先生だ
こう見えても歳は四十近いと言う
毎年、学園に居る子達のこう言う面談の際に顔を合わせることが多い為、既に顔見知りと言うには、言い難い感じだ
「いいえ、毎年の事ですから
それではこちらに」
コポルさんはそう言い、自分の目の前にある二つの椅子を差せば、俺達はそこに座った
人数が多い為、マーシャ達は俺たちの後ろに居るがその表情は緊張しているように見えた
「先ずは皆さんの成績ですが……………
流石と言うべきでしょうか
皆さん、優秀で全学年で上位を総なめとしておりますね」
そう言いながら手元の紙を見ては、まるで我が子でも褒めるかの如く、褒め倒し話しているコポルさんだが、後ろを見なくてもわかる
マーシャ達はそんなコポルさんの言葉に照れているのが……………
「それはコポル先生の教え、マーシャ達が努力をした結果です
私としては、家族が褒められるのは嬉しいと思いますが…………」
「いえいえ、彼らの性格や勉強に取り組む姿勢の良さは貴方方の育て方のお陰でしょう
私はあくまでそれに手を貸しているだけです」
そう言いながら持ってた紙を渡してきた
内容に目を通せば、それはマーシャ達の全教科の成績でどれも標準より高い成績を取っていた
「流石…………、皆、頑張ってるな」
俺は嬉しくて呟けば、それを隣で聞いていたティアがクスっと笑った
「成績面は問題ありません
それで進路の方なのですが…………」
コポルさんがそんな俺を見ながら次の紙を取り出せば、机に置いた
それを見れば、それはマーシャ達の進路希望だった
「どれも問題ないと見てます
いえ、彼らならこの進路でもやっていけるとは思っているのですが、何か気になる所とかありますか?」
「いいえ、私達はあくまで彼女達の親です
彼女らが自分で考え、選んだ道ならばそれを応援します」
コポルさんが聞いてくれば、俺が口を開く前にティアが答えてくれた
まぁ、俺も同じ気持ちだったが、改めて親と言うには、ちょっと気恥ずかしいな
まぁ、ここで親顔しとかないと、彼らの保護者、孤児院の院長なんてやってけねぇしな
それにしても……………
ティア………、言った後、恥ずかしそうにしてんな…………
こっちまで恥ずかしくなるだろ?
「そうですか
なら、この進路で問題ありませんね
あっ、そう言えば一つ、聞きたい事がありまして」
「はい?
何ですか?」
「マーシャの進路なんですが、ノアさんのチェルナーム孤児院ってなってますが、ご存知で?」
「「えっ?」」
コポルさんに言われ、俺とティアは同時にマーシャを見た
当人のマーシャは恥ずかしそうに頬を染めながら指をモジモジと動かしてこちらを見ていた
「いえ…………、初聞きなんだが…………」
「マーシャ、何で孤児院に?
前に聞いた時は、違う職だったわよね?」
俺が困惑している中、ティアがマーシャを真っ直ぐ見ながら問い掛ければ、恥ずかしそうにしながらもマーシャは俺とティアを見た
「うん、前まではそうだったけど…………
やっぱり私、お父さんとお母さんが好きなんだ♪
そんな二人の背中を見て、育てられてきて、それを今度は私が誰かに与えて、包んであげたいって、思ったの」
そう言った後、「あっ、孤児院じゃなくても、保育園とかそう言うのでもいいかも、子供好きだし」、と、マーシャが恥ずかしいのか、慌てて付け足して言っているが、顔が真っ赤になってるのを見て、俺は思わず笑ってしまった
「はははwww
全く、子供の成長ってやっぱり早いな
いつの間にか、大人になって、立派な考えをするようになってよ……」
笑いながら俺は前を向いて、コポルさんを見れば、微笑んだ
「マーシャが選んだ道ならば、応援します
それが本人が本気で考えて選んだ道ならば」
俺がそう答えれば、コポルさんは満足そうに頷いた
そして隣を見れば、苦笑いを浮かべたコポルさんを見て、俺も苦笑いをしながら隣を見れば、もう分かるくらいにぐちゃぐちゃに泣いてるティアをディボレス達が慌てながら慰めていた
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