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第四章

間話 フォルティア・メリスト 世界樹ダンジョン第一階層

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初めまして 私はシモン・フェルストリー様の婚約者、フォルティア・メリストと申します

(って、あら?
誰に自己紹介しているのかしら?)

不思議ね……  でもそんな些細な事は置いておきましょう

私は今日、授業の一環で初めて、世界樹ダンジョンに入って、進んでおります
残念なのは私の隣にシモン様が居ない事ですわね……
本当ならシモン様と一緒のパーティーに入りたかったのだけれど、フローラやシャルロッテに誘われたから断れないわね

それにシモン様もルークやマルタ、そしてヴィヴィアンが一緒にパーティーを組んでいるみたいでしたから声がかけられなかったわ……

ミュレーヌ達も居るから流石に大勢で入ると動きにくいとシモン様は仰るはずです

前に一度、他のパーティーと一緒にクエストを受けた時、シモン様は『大勢になれば、動き方も変えないと他の奴らに迷惑をかける』と仰っていましたので、それから私も大勢の方とパーティーを組んだ時の想定した鍛錬もすることにしました

でも不思議なのはシモン様は初めて組んだ方でも援護が的確で、まるでそのような場面を何度も経験してきたように思えました

「ねぇ? フォルティア」 「は、はい?」

そんなことを思い更けていると声をかけられ、ティファ様を見た

【ティファ・シンフォニー】はシャルロッテのお母様……  つまり王妃様の妹の娘さんです
シャルロッテがティファ様の首をガッツリ掴み、引っ張ってきた時は驚きましたわ……
ガッツリ腕がキマってましたから危うく気絶しそうでしたね……

「フォルティアはシモンの婚約者なんでしょ?
シャルロッテが誘ったけど断ってもよかったんだよ?」

ティファ様がそう言ってきたので、私は微笑みながら前を向いた

「シモン様だったら『友達を優先しろ』と仰ると思うのです
それに私ももっと腕を磨いて、胸を張って、シモン様の隣を歩きたいです」

「ふーん、やっぱりシャルロッテの話通りにシモンにベタ惚れだね」

ティファ様の言葉に顔を赤くして、バッと振り返るとティファがイタズラっぽく笑っていました

正直、シモン様に惚れてるのは大きく頷きますが、そう言われると恥ずかしいのですよ……

「ってか、ここまで私、一回も武器触れてないんだけど!?
少しは私にも魔物、倒させてよ!!」

そしてワナワナと震えながらティファ様が突然、叫び出した

「仕方ないじゃない
出てきても数匹だし、手に余る程、強くないから片づいちゃうもの」

少し先を歩くイリアさんが片手をプラプラと振りながらそう言ってきたので、私は思わず苦笑いを浮かべた

実際に……

目の前に出てきたゴブリンやキノコマンはフローラが氷漬けにして、シャルロッテが《エアショット》で砕いたり……  オークが出てきたらイリアさんが短剣を二本、逆手にしてオークを刺すような動きをするとオークが倒れて……   ベルさんは《魔力吸収》と言う固有魔法を使って、オークから魔力を吸うとオークがシワシワと萎れていき、最後には皮だけになってしまいました

途中……  『イ____ !! シモ____!  オ_______!!!」と何か小声で言ってましたし、ズボンが異常に濡れているのですが……
私は何もシリマセン シモン様を襲った事、まだ許してませんので!!

そして私は出てきたゴブリンを軽くレイピアで突くと貫通して、後ろのゴブリン含めてお腹に大きな風穴が空きました

「まぁ いいじゃない
ここで力を溜めてれば、次に出てきた時にすぐに行動に起こせるから」

そんなティファ様をベルさんが慰めておりますが、ティファ様が物凄く嫌そうな顔をした

「なんでだろう……
ベルに慰められると物凄くイライラしてくるような……」

ティファ様がワナワナと拳を作りますがベルさんはコテンと首を傾げて、ティファ様を見てます

(可愛いのに男性の方なのが凄いです
あ、イリアさんからの話だと元男性という事でしたね
今は書籍に書いてあった《男の娘》でいいんでしょうか?
……でも正直、ベルさんに抱かれたいと思う人って居るのでしょうか?)

そんな事を考えていると広い部屋に入った

「皆 気をつけて?
何かあるかも知れない」

イリアさんが注意をしてくれましたので私も部屋を注意しますと、ある方を見つけて、近付くとしゃがんだ

「あの、カゲイチ様…、で宜しかったですか?」

私が床に話しかけると床の影からカゲイチ様が顔を覗かせてくれました

「何故、バレた?
私のこの状態は主人でしか気づかれないはず……」

「あの……、カゲイチ様が居た所の上にカゲイチ様の名前と何か棒?みたいなモノが合って、それでわかりました」

「な!? 何でHPなどが見れているのだ!?」

(えいちぴー?
この緑色の棒の事かしら?)

カゲイチ様の言葉に疑問を持ちながら不思議にその板みたいなモノを見ていると何だか触れられそうと思い、触ってみるとその板が増えた

「きゃっ!? 増えました」

「な、何だと!? これはいち早く主人に伝えなければ」

増えた板を見てみるとそこにはカゲイチ様のお名前の他にも色々な名前が載っていました
それにスキル?って所ではまさにカゲイチ様が行なっている《影入》と言うのが使用中となっておりました

(なるほど……  このスキル?と言うやつは魔法と同じなのですね
それにこの名前はカゲイチ様の仲間……、ご家族でしょうか?
それがこんなに多いなんて思いませんでしたわ
あ、でもトカゲは卵から産まれると学びましたので、家族が多くて当然でしたわね)

私がどんどん興味からか、色々と見ているとカゲイチ様が影から出てきました

「フォルティアの嬢さん
とりあえずお嬢の事は後で主人に話させてもらってもよろしいかい?」

「えぇ 別に構いませんわ
それよりシモン様は今、どち「きゃあぁぁぁ!?」っ!?」

カゲイチ様にシモン様は今、ダンジョンの何処に居るかを確認をしようとした所、突然、、ティファ様の悲鳴が聞こえて、慌てて振り返るとティファ様をお姫様抱っこして、闇から振り下ろされたであろう大きな大剣を避けるイリアさんが見えた

「《闇を照らせ ライト》!!」

私は咄嗟に《ライト》で部屋を明るくするとそこには鎧を着て、ローブを纏った髑髏騎士が立っていた

「な!? 何でヤツがここに!?」

「カゲイチ様!? あの魔物の事、知っておられるのですか!?」

「フォルティアの嬢ちゃん!!
早く全員を撤退させろ!! アイツの剣に少しでも斬られるな!?」

カゲイチ様の慌てる声に私は事の大きさを悟ると急いで髑髏騎士目掛けて、《バインド》をかけ、床から鎖を放ち、髑髏騎士を拘束した

「皆さん!! 撤退を!!
急いで帰還の札を折ってください!!」

私が拘束して、叫んだ瞬間、ティファ様が札を手に取り、折ると帰還を試みますが……

「っ!? ダメ!!
帰還出来ない!?」

帰還の魔法が発動しなかった

ティファ様が慌てて伝えてくるとシャルロッテ様も試していたらしく私に向かって、頷いた

(帰還を遮ってるヤツがあるはず!!
でもソレを生み出したのがあの髑髏騎士なら倒すしかないけど……!!)

私は思考を働かせているとバキンと音を立てて、《バインド》が破壊され、気がつくと髑髏騎士は……

私目掛けて、大剣を振り下ろしてました

「フォルティア!?」

イリアさんの声が聞こえてくる……
だけど私は咄嗟の事で体が動けず、迫ってくる大剣を見てることしか出来なかった

(いやだ……  いやだ!いやだ!!いやだ!!
死にたくない!! 私はまだ死にたくない!!)

大剣が私の目の前まで来てしまった時、シモン様の笑顔が頭に浮かんだ

「助けて!! シモン様ぁぁ!!」

思わず叫びをあげ、目をギュッと閉じた
すると誰かに抱き寄せられると同時に激しい金属音が鳴り響いた

私は恐る恐る目を開けるとそこにはシモン様……  では無く黒のローブを着て、大きな鎌を使い、髑髏騎士の大剣を受け止めている男の人が居た

「ぁ? シフォンケーキじゃねえ?」

男の人は私を見ると少し目尻が上がり、不思議そうな顔をしていました

それとシフォンケーキ? そう言えば以前、シモン様に変装されていた方もシモン様をシフォンケーキと言っておりましたよね?

「タナトス様!? 何故、貴方がこちらに!?」

「ぁ? シフォンケーキで無く、お前でも無えのか?
じゃあ誰が俺をここに詠んだ?」

「わ、わかりません!? ですが今はヤツを退けて、フォルティア嬢ちゃんをこちらに!?」

「フォルティア? あぁ、シフォンケーキの婚約者か」とか呟くタナトス様は大鎌を振り、髑髏騎士を吹き飛ばすと私をカゲイチ様に渡した

「死神 タナトス
悪いがお前の骸を葬り去る」

そう言い、タナトス様が駆け出すと髑髏騎士との戦闘に入った
そしてその隙にカゲイチ様は私を背に乗せながら移動し、シャルロッテ達を部屋の隅に誘導した

「うわぁ!? 黒いトカゲ!?」

「シモン様の誓約獣でカゲイチ様です」

私はカゲイチ様から下りるとタナトス様の戦いを見た

タナトス様は大鎌を使い、器用に大剣を捌き、攻撃を仕掛けていきますがあの髑髏騎士は相当、強いのかはわかりませんが攻撃が当たらないみたいです

「あの髑髏騎士……  強いね」

「えぇ……  アレは強いのも頷けますがヤツは死の属性付与を付けてきます
それに触れれば即死は免れないかと……」

フローラがタナトス様と髑髏騎士の戦いを見ているとボソッと呟くとカゲイチ様が説明してくれました

死の属性……

ソレを聞いた時、(だから剣に斬られてはいけないと言ったのね)と理解した

「ぐっ!?」

突然、タナトス様の声が聞こえてくるとタナトス様が片膝を付いて、大鎌を横にし、髑髏騎士の大剣を受け止めてるのが見えた

「そんな!? タナトス様が膝を!?」

カゲイチ様の様子を見るにヤバいと理解して、私はレイピアを構えると駆け出した

後ろでティファに止まるように言われてるけど無視して、髑髏騎士に近付くとレイピアで思いっきり突いた
激しい風圧を感じるけど確実に髑髏騎士の腹の装甲に刺さってるがそこから先に進まない

「やっぱり私はまだですわね……」

非力な自分に呟き、悔しさで声が震える
突然の攻撃に髑髏騎士は一瞬、動きを止めるとすぐに片手を離して、私を掴もうとする
恐らくソレにも死の属性が付与されていると思うけど、先程までとは違い、怖くなかった

だって……

「《下月脚》!!」

突然、私の隣から逆蹴りが通り抜ければ、髑髏騎士の腕を弾き飛ばしただけでなく、へし折るとその瞬間、タナトス様が大鎌を使い、吹き飛ばした

「無事? フォルティア」

隣を見ると私の事を心配してくれているシモン様が居て、私はこんな状況だけどシモン様に抱きついた

「お待ちしておりました シモン様」

「……あぁ」

笑顔でそう言うとシモン様も笑顔で答えてくれて、私は嬉しくてただシモン様に強く抱きついてました

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