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第三章

アパーを出立して

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アパーで追加で二泊ほど泊まり、今日……
アパーを出立して、王都に戻る馬車の中で俺は外を眺めていた

今日はあいにくの雨だが、俺の心は澄み渡る程の青空が広がった気分だ
雨音がリズムを刻みながら地面に落ち、気温はとても過ごしやすくて気を抜いたらうたた寝をしてしまいそうだ

ゼブァルトは念の為に誓約をし、俺の奴隷兼誓約獣としてから帝国に返した
ゼブァルトは俺から離れるのが怖かったのか、しがみついてきたが頭を撫でてやり、『スパイとして頑張ったらご褒美をやる』と言うとゼブァルトは何度も頷いて、スパイとして行動を開始した

ゼブァルトがスパイとして頑張ってくれれば、魔王と帝国の行動の先回りが出来るかもしれない……
もし動きがあるとするなら戦争とかになる可能性があるから、それ関係の情報を手に入れたらアルフレット様に伝える事となっている

最悪、ゼブァルトがスパイとバレた場合は強制的に転移させ、俺の元に来るようにしてるから命の保証はしている

(上手く行けば争い事を全部、潰せるからな
出来るなら戦争とかは避けないとな)

そんな事を思いながら中へと視線を向けると……

「オロロロ……!!」  「ちょっとミュレーヌ!? 大丈夫なの!?」

桶に顔を突っ込んでおもいっきり吐いているミュレーヌの背中を撫でながらネロがオロオロしている

ミュレーヌの乗り物酔いならぬ、馬車酔いは軽くなる様子は無さそうだ
逆にネロはよく揺れる馬車であそこまでリラックス出来ると思っている
さっきまで軽く運動として、腕立てをしてたから揺れに強いのだろう

一方、ユキはと言うと……
ゆっくりと下を見るとユキが膝に座り、俺に真正面から抱きついてはスヤスヤと寝ている
ちなみにユキにご褒美をやると言っていたが髪留めを買ってやり、つけてあげると嬉しそうに尻尾を揺らしてたのは言うまでもない
今もユキの髪に俺が買ってあげた髪留めが付いている

ついでに言うとミュレーヌとネロはユキに自慢されて、半発狂しながら俺に強請ってきたからミュレーヌには腕輪、ネロにチョーカーを買ってやった

二人はその後、嬉しそうにソレを眺めながらニヤニヤしてるのが見えたがその表情は酷くだらしないものだった

母上は少し先に王都の屋敷に戻っている
なんでも
ローリアス姉様が妊娠したとの事……
しかもソレが五つ子の可能性が出てきたとの事で母上は急いで王都に戻り、王妃様とアレコレ準備するらしい
まだ長男の【カリス】と長女の【マリモ】が二歳になったばっかでの妊娠発覚だからな……
今頃、ユーリ兄さんは大慌てで準備やら手配をしているだろう

(ってか、双子出産の後に五つ子を妊娠か……
どうなってんだか……)

実際に双子の後に五つ子を妊娠する確率は分からないが限りなく0に近いだろうな
それに出産も長時間かかると見ると無事を祈るしかない

(それにしてもイリアとベルのヤツ……
しっかりと鍛錬してるのだろうか?)

ふと、馬車の外を見ると今は遠くにある村に居るイリア達を思った
アパーに滞在を二日、延ばした理由はイリアとベルに少し鍛錬して欲しいと言われたからだ

イリアは短剣の二刀流、ベルは盾と剣をその身に叩き込ませた
そして魔術も一応、中級までは覚えさせた
二人とも、流石は主人公と言うべきか……
教えるとすぐにその身に吸収していった

イリアはそれに他の武器を教えたりして、冒険者で言うと一人でBランクは行ける実力は付けさせたが二人で一つみたいな感じだから、ランクをゆっくり上げていくだろうな

ベルもそれなりに実力を付けさせたから自信も出てきたはず……
なんだが、会った時より弱々しい性格になっている気がするんだが……

(まぁ、二人一緒なら大丈夫だろうな)

それにベルの呪いも治ったはずだ
ベルの体についてはイリアが部屋に戻ってる隙に、ベルが俺の前で服を脱ぎ、裸を曝け出しながら見せてきた

その時、顔を赤らめているが俺を信頼して見せてくれたと見ると(信頼してくれた)と嬉しかった

それにその後、イリアもベルに付いて話してくれたから二人からの信頼は嬉しく思った

だから二人にはとあるアイテムを渡した
それは《生誕の雫》と言う俺らで言えば、キャラメイクをし直すのに必要なアイテムだ
《生誕の雫》を使うとキャラメイクで一から作り直せるから女になったり、身長を変えたり出来るからベルが使えば、男に戻ると思ったからだ

しかしソレを受け取ったベルが複雑そうな顔をしたのは何だっただろうか?

(これで二人は主人公として覚醒したはずだ)

これでこのゲームの主人公として力を付け、覚醒した二人だからストーリーで暴れてくれるはずだ
これでモブとして目立たなく生きていけると思うが不安要素はある……

一応、俺が出立してからも鍛錬出来るようにやり方を教えたから実力は更に伸びるはずだ

だが、魔王や帝国が出張ってくるなら俺も裏でアイツらを助けるくらいしないといけないが、もしその敵意が俺や家族に向けられたら……

(いや、そうならない為のゼブァルトだ……
上手くやるはずだ)

首を振り、不安を振り払うとふと、ゼブァルトを奴隷にしてミュレーヌ達と初めて会わせた日を思い出した

ゼブァルトは怯えながら挨拶をしてるがミュレーヌ達は仲間が出来たと喜んでいて、話してる内に仲良くなっていた

その後、ゼブァルトが寝てしまって終わりかと思ったが三人に詰め寄られた
そしてその日の内に三人で合わせて6回、口で絞られた
何でゼブァルトに絞られた事が分かったか聞くと「「「臭い」」」と言われ、ちょっと恐怖を覚えたのを覚えている

そんな事を思い出しながら馬車に揺られている


その後、二人がどう成長したのかは分からないがその成長後……

俺は頭を抱えることになったのは学園に入る前の事になるのは今は知らない……



「ベル!! しっかり鍛えるよ!!」

「うん!! シフォン様の為に!!」

アイテムが使われたかも知らないのと同時に今、彼女らが俺に対し、尊敬やら何やらを抱いているのも……

今、馬車に乗ってる俺は知ることは無かった……
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