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第三章

雷龍の舞

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久しぶりに《ソウル・オブ・ドラゴン》を発動させたがやっぱりこのスキルはいいなぁ……

(この体を巡る高揚感ってヤツがいいんだよな……)

気持ちが昂り、ニヤリと笑う俺はゆっくりとゼブァルトに視線を向けた
ヤツは俺の様子が変わった事に慌てているみたいだが、そんなのはもうどうでもいい

俺は翼を羽ばたかせると世界が加速した
そしてゼブァルトの腹に拳を捩じ込んだ

「ゲボォバァ!?」

ゼブァルトは腹の中にあったモノを吐き出したがそんなのは気にせず、俺はそのまま《アップ・ザ・ショック》を発動させた

《アップ・ザ・ショック
自身の攻撃の一撃の威力を上げるが、一回分の攻撃にしか適応しない》

威力を上げた拳はゼブァルトを勢いよく吹き飛ばすと結界に叩きつけた
そしてすかさず、移動をするとゼブァルトの頭を足で掴むとそのまま結界に押しつけると皮膚を削り切るつもりで滑っていく
物凄い音を立てながら滑っていくがゼブァルトの背後に風の槍が無数に作られるとコチラに向けて、撃ってきた

「《ライフストリーム》」

《ライフストリーム
全自動防御スキルの最上位のスキルに当たり、魔法等の遠距離攻撃に対し、自身が纏った属性のゾーンが発動
自動で遠距離攻撃を相殺し、近接に関してはゾーンを超えない限り、プレイヤーに攻撃出来ない》

風の槍を見て、《ライフストリーム》を発動させると目の前まで来ていた風の槍が稲妻で相殺された
そしてそれは風の槍が無数に飛ばされ続ける限り、半永久的に続いていく

結界の天井部に到達すると俺はゼブァルトを離し、尻尾を振るい、ゼブァルトの腹に叩き込むと吹き飛ばした
そして雷速と《クロックスピード》の加速で距離を積めると再び《アップ・ザ・ショック》を再発動させ、今度は回転し、踵でゼブァルトの腹を蹴り潰した
踵で蹴りを入れた瞬間、ドラゴンと化している為、踵には爪があり、それがゼブァルトの腹を貫いた

「がはっ!? き きさ"ま"ぁ!!」

顔を結界で削られたからゼブァルトの顔面は血塗れで、口からまた吐き出した血を無視して、俺を睨みつけてきた

「あーあ……  可愛い顔が台無しだ
だが、お前にはお似合いの姿だぜ」

そんなゼブァルトを見ながらそう言った
その時の俺の声は酷く冷たい気がしたが気にする事はないだろうな……

ゼブァルトがまだ魔法を繰り出そうとしてきたから足を上げ、踵の爪を抜くと素早く体を捻り、体勢を変えながら左手の人差し指と中指を立て、ゼブァルトの右眼を貫いた

「ぎぃやぁぁぁ!?」

ゼブァルトの悲鳴が響き渡るがこれと言って、大した感情は出てこない
寧ろ(何でこんなんで悲鳴を上げるんだよ?)と言う思いしか出てこなかった
ラスボス前のボスなんだろ?
これくらいの痛みなんて大した事ないだろ?

「おっと、そういや防御系のヤツは全て無効になってたな
悪い悪い」

ふと、《闘気・龍シリーズ》の仕様を思い出すと笑って謝った
俺とした事がそんな事を忘れるなんてうっかりしてたぜ
指を抜くとゼブァルトは右眼を押さえ、ズルズルと下がっていく

よく見るとゼブァルトの顔は酷く怯えてるように見えた

「おいおい、そんな顔をするんじゃねぇよ?
せっかく気分が昂ってきて、いい感じなんだ
お前、魔王の側近なんだろ? だったらもっとやれるよなぁ?」

「ひぃ!?」

俺がゆっくりと近づいて行くとゼブァルトは勢いよく後退していくが結界に当たった

「こ、こうなれば……!!
使いたくなかったけど!!」

ゼブァルトは胸の間に手を入れ、瓶を取り出すと蓋を開けて、飲み干した
胸の間から出てきた割にその瓶、デカくないか?
大体、大缶のビールぐらいの大きさだぞ?

「ふははは!! 貴方はもう終わりよ!!
この薬は姿は変わってしまうけど魔力と魔法の威力を増加させる薬よ!!
これを飲んだ私はまさに無敵!! 貴方に勝ち目は」


ゼブァルトが勝ちを確信したようにケラケラと大声で笑いながら何か言ってるけどよぉ……

プスッ    「      え?」

ゼブァルトが笑ってる隙に俺はインベントリからとある薬の入った注射器を取り出すとゼブァルトの腹に刺して、注入した
すると先程から上がり続けていたゼブァルトの魔力が急にゼロに戻った

「ソレが薬の影響なら解毒とか、中和させちまえば、無意味って事だな」

ゼブァルトの眼前に俺は顔を持っていき、そう言った
先程、打ち込んだ薬はベルフェゴールが趣味で作った名付けて、【ゴルゴル薬】
名前はダサいけど効果は絶大……

《ゴルゴル薬
悪魔王が一人、ベルフェゴールが作ったあらゆる薬品の効果を中和し、打ち消す薬
敵プレイヤーが回復薬を使用した瞬間にこの薬を打ち込むことが出来れば、回復を無効に出来、一分間の間は回復系アイテムの効果は無効になり続ける》

そう言い放った瞬間、ゼブァルトの顔が絶望に染まっていく
あぁ、でも……

(楽しめたけど所詮はラスボス迄の前座か……
エロゲー野郎の話だとコイツより苦戦したヤツはて山程居る、て話だからな……
コイツは下くらいだろうな)

そこそこ楽しめからゼブァルトには褒美として俺のとっておきでも食らわせてやるか

そう思い、ゼブァルトの顎を拳で叩き上げると雷速を活かし、後方へ周ると蹴り飛ばした
そしてまた後方へ周り、殴り飛ばす
それを続け、まるで雷の中を舞い踊る雷王龍の如く、ゼブァルトを吹き飛ばし続ける
そして雷の楔で拘束すると右腕に雷を集中させる

《闘気・雷龍 完全解放》すると雷が膨張していく
それがある程度集まった所で、ゼブァルトに突っ込んでいくと雷は右腕に吸収されると右腕は稲妻を走らせながら光っていた

「《雷王龍・龍爪牙》!!」

そして一瞬、消えると稲光が走り、ゼブァルトの腹を通り抜けると結界に着地した
そして両腕を払い、《闘気・雷龍》を解くとゼブァルトを中心に雷の大爆発が起きた

《闘気・龍シリーズ奥義 龍爪牙
プレイヤーの右、または両腕に纏った属性を集中させ、改心の一撃を与える
当たった敵の体力ゲージがMAXでも一撃で粉砕する威力を持っている
但しプレイヤー同士の戦闘時には制限が課せられている
熟練度カンスト時効果・威力倍増 周囲を巻き込む吸引力
デメリット・一瞬にして《闘気》が解除され、十分間、《闘気》を使用不能》

ゼブァルトに当たる瞬間、《ハンティングビースト》  《アップ・ザ・ショック》 《タイタスアームド》とかのバフを特盛にしちゃったけどまぁ……、いいか

《タイタスアームド
攻撃力を大幅に上げる代わりに防御力は中ダウンする》

結界が消滅し、《デュエルモード》が終わったのを確認すると地面に着地すると振り返った
少し離れた所でポサッと何かが落ちてきて、近付いて見てみるとソレは真っ黒に焼けこげたゼブァルトだった
体は見事に千切れ、今でも焦げた煙を放っている

(流石に五秒以上は経ってるよな)

俺は時計を確認し、インベントリから雫のような石を取り出すとゼブァルトに落とした
石はゼブァルトに当たると瞬く間に光り輝き、一瞬にしてゼブァルトを元に戻した

「……っ!?」 「おはよう 大体、二分の昼寝かな」

ゼブァルトは眼を開け、不思議そうにしてたけど俺を見て、慌てて起き上がるとズルズルと尻を滑らせ、後退りした


ゼブァルトに使ったのは蘇生アイテム【女神の願涙】と言うHPを半分くらいしか回復させない俺達プレイヤーにとっては序盤で大いにお世話になるアイテムだ
ただ蘇生アイテムとは言え、死ぬ前に使わないといけないと言う欠点があるから味方起こし専用としか使われた試ししかないが、セルフでやるセルフ蘇生を身につけるとソロでもやっていける

「な、なんで」  「決まってるだろ? まだお仕置きが足りないからな」

そう言い、俺はゼブァルトを蹴り倒して仰向けにするとその上に馬乗りになった

「こんな事して許されると思ってんのか?
謝れば済むと思ってるのか?」

「っ、う、うるさい!!
アンタに指図され」

俺の問いにゼブァルトが噛み付いてきたから髪を掴み、顔面を殴った
ゼブァルトは魔法を使おうとしてるが使えずに驚いてる

「な、なんで!?」  「そりゃあそうだろ? 何もデメリット無しで蘇生出来るわけないだろうが」

蘇生にはデメリットがあり、レベルを下げられる他、ステータスも大幅にダウンする
それにレベルを下げられるのは最高で10レベ下げられるからな……
その分、ステータスも大幅にダウンし、デバフもおまけで受ける

だが、そのデメリットを無くす方法がある
それはプレイヤーがHPが0を迎えた時、五秒以内であれば蘇生をノーリスクで出来る

「さて、ここからはちょっとしたイジメみたいになるが仕方ないよな?
自業自得って事だ」

「ひっ!?」

ゼブァルトが怯えた様子だが、容赦なく俺はゼブァルトを殴った
バフを盛らずに殴ってやってる分、優しい方だろう……
ゼブァルトが死んだら《女神の願涙》で蘇生させ、また殴る
それをただ続けた……

「いやぁ!? ごべぇんなじゃい!!ごべんなじゃあぁぁい!!」

それを4回繰り返した後、ゼブァルトの誇りとかが粉々に砕けたのか知らないけど泣き叫び、殴られないように顔を防御しながら震えるようになった

(流石にブチギレしたとは言え、やり過ぎたな……)

そんなゼブァルトを見て、流石の俺も反省した

「なら答えろ
今回の事は魔王が関係してんのか? それともお前の独断か?」

「わ、わだじのどくだんでしゅ……」

泣きながら何度も頷くゼブァルトを見ながら俺は息を吐いた
今回の事はゼブァルト独自で動き、騒ぎを起こしたらしい……
と、言う事はあの盗賊団はコイツに利用された哀れな馬鹿……、と言うことになる

「分かった じゃあこのまま大人しく帰れ、と言いたいがこのまま帰られてもお前の今のレベルじゃ、要らない奴扱いで始末されるのがオチか……」

ゼブァルトを見ながら帰れと言いたいが魔王の事だ
ストーリーとか、設定は知らないがこのままコイツを帰らせても魔王に始末されてしまうからな……

と、俺の呟きを聞いて、ゼブァルトがまた泣き出した

「だーもー!! うるさい!!
死にたくなかったら俺の言う事を聞くか!?」

このまま放っておいても面倒事に巻き込まれる可能性があるから俺はゼブァルトの肩を掴むと睨みつけながらそう言うとゼブァルトは何度も頷いた

(厄介なモノを拾っちまったな……)

まぁ、その分の利用価値はありそうだからまだ良い方か……

とりあえずゼブァルトに手錠をかけ、大人しくするように言うと遠くから手を振り、駆け寄ってきているイリア達の元へ、歩いて行った


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