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第三章

雷竜 対 魔術師

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イリア達が離れたのを確認し、女に集中する……
ヤツの動きから目を逸らさずに指一本も見逃さないようにする

「そう見ないでくださる?
その熱心な眼差しを向けられると私……
熱くなってしまいますわ」

女はそう言うと右手を俺に向けて翳した
その瞬間、俺は空に飛ぶと立ってた場所が一気に高温になり、地面が溶けてマグマになった

「まぁ、それなりに分かりにくいの動きで放ったのによくお気付きで」

「下手な芝居してんじゃねえよ
あんな丸わかりな動きじゃあ、誰にでも分かるぞ」

女がワザとらしくそう言ってきたから俺も皮肉混じりでそう言うと女はクスクスと笑い出した

「面白い方……  ますます気に入りましたわ
特別に名乗って差し上げますわ
私はゼブァルト・レルクと申します
帝国第三魔術師団 団長を務めております」

ゼブァルトはスカートを少し持ち上げ、頭を下げて、挨拶をしてくる
ソレは普通の貴族令嬢なら当たり前の行動だ
だが、コイツがすると違和感が半端なく感じている

「嘘をつけ
先程から俺の雷撃をそうも笑顔で防いでる辺りから気付いているぞ」

「あら? そうでしたか」

そう言い、ゼブァルトが左手を突き出すと雷撃が分散し、消えていった
先程から俺はゼブァルト目掛けて《ボルトスパーク》を放っていたが、ゼブァルトは余裕でソレを防ぎ切っていた

《雷魔法スキル・ボルトスパーク
不可視の雷撃を浴びせ、ダメージを与えるのと同時に麻痺を付与する
熟練度カンスト時効果・不可視レベルがアップし、麻痺値もアップ》

「お前、人間じゃねえな?」

「ふふふ……  あははははは!!
貴方のような方に会えるなんて幸運だわ!!
初めて私の正体を見破られましたわ!!」

ゼブァルトは大声で笑い、そう告げると徐々に黒い風が彼女を包むと肌は手足は黒く変色し、犬歯が伸びて、そして髪は伸びるとユラユラと蠢き始めた

「なら改めて名乗らせていただきますわ
私は魔王様に仕えるサキュバスが女王
ゼブァルトですわ」

唇を舐め回しながらまるで獲物を前にした獣のようにギラギラとした目付きで俺を見てきた

(魔王の部下でクイーンサキュバスのゼブァルト……
あれ? どっかで聞いた覚えが……)

サキュバスの女王……  ゼブァルト……  そして魔王……
その単語は記憶の何かに引っ掛かり、思い出そうと記憶を探ってみる

『……ん? あぁ、お前か……
あ? 何で元気ないかって? そんなの決まってんだろ……
ルミナス・エルドの魔王の家臣を倒そうとしてんだけど行き詰まってんだよ……
ソイツはラスボスまで残り三ボスで出てくる厄介な奴でよ
サキュバスだから性行でバトルしても勝てねえし、実力でぶつかってもレベルが高すぎて勝てねえんだよ……
しかもクイーンだから部下のサキュバスが山程居てよ……
ソイツらを片付けてからじゃないと、倒せない仕様になってるみたいで辛くてよぉ……』

エロゲー野郎の事を思い出すと俺はゼブァルトを見た

(コイツ、エロゲー野郎が苦しんでたボスじゃねぇか!?
何でここに!? ってか、一つ言わせろ!!
ストーリーとか始まる前にラスボス前のボスが出てくんじゃねぇよ!?)

ゼブァルトは先程からニヤニヤと魔王の事を褒めたり、イリア達が危ないか……
そして俺への興味をずっと語ってるが俺は思考を働かせていた
コイツの攻略法はエロゲー野郎が言ってた通り、部下を潰すしか無い……
だが、ここに部下と見える奴らは居ない……
と、なるとこの攻略法は外れる事になる……

仮に先程のモンスターハザードの魔物達が部下だったとしても統率が取れなさすぎてる……
その事を考えると真っ向から叩き潰せると見ていいな


「あら? 少し長めに話してしまいましたわね
で、どうかしら? 私の奴隷にならない?」

ゼブァルトが微笑みながら総行ってくると一瞬でヤツの傍に来れば、右拳を振った
障壁にぶつかり、破っていくが数十……、いや数百と障壁を重ねられてた為、最後の一枚で止まった

「生憎とそう言う趣味は無いんでな」  「そう……  残念」

お互いに睨み合うと同時に距離を取った
距離が十分に空くとゼブァルトは無数の火の玉をコチラに向けて放ってくる
それを避けつつ、距離を詰めようとするがゼブァルトの攻撃の手は緩まず、絶えず火の玉を撃ち続けている

《クロックスピード》を発動させ、高速で避けながら森を見る
アレだけ放たれて避けてるのだから森が火事で大変な事になってるのではないかと思ったが、森は普通にそこにあり、火事などは起きてなかった
火の玉の行方を見ると火の玉は森に当たる前にその上空で何かに当たり、爆散した

(《デュエルモード》の結界……  助かる)

《デュエルモード
PvPでの戦闘を行う際、乱入防止 漁夫の利防止の為に設けられた1v1 または1v多数の様な対戦形式で行うシステム
一定の範囲に特殊なステージを生成し、勝負が終わるまで中に干渉できない結界を作る
もちろん中から外への干渉も出来ない》

《デュエルモード》が機能しているのなら全力で行っても被害は無いと分かると俺は更に加速した

ゼブァルトは火の玉から風の刃を飛ばしてくるようになった

「《雷ブレス》!!」

一度、動きを止めて大きく息をして、魔法陣が口の前で止まった瞬間にスキルを発動させ、雷のブレスを放った

《ブレス系スキル
龍シリーズの中でも初級のクラス
デメリット無しで撃てる為、連射可能》

雷のブレスは風の刃を粉々に砕きながら進んでいく
ゼブァルトはソレを上へ飛んで避けた

だが、ソレを予測して既に俺が接近し、ゼブァルトの頭を足の龍爪で掴むと急降下して結界に叩きつけた

確かにダメージのエフェクトは出た
魔術師系ならば防御は手薄と言うテンプレがある……

だが今の一撃で確信した……
コイツは純魔ビルドでは無い!!

「ふ、ふふふ……  私にダメージを?
ふっざけんじゃないわよ!!」

遂にさっきまで被ってたお嬢様の皮が剥がれ、本性を表せるとゼブァルトの背中から黒い棘が飛び出してきた
素早く避けたが一瞬にして、ゼブァルトに詰め寄られて、拳が迫ってきた
それを弾くとゼブァルトの猛攻が始まった

さっきまでの魔法ばっかでは無く、ゴリゴリの近接戦闘で拳を唸らせ、蹴りを浴びせにかかってくる

それを捌きつつ、コチラも攻めに転じるが障壁が邪魔をして上手くダメージを与えられない

(コイツ……  強いな……)

猛攻を捌きながら俺はそんな事を思った
先程からコイツの攻撃を捌いているがしっかりとバフをかけて攻撃をしてきている

それに攻撃の速度も変え、フェイントも織り交ぜており、流石はボスと言うところだ……

すると急にゼブァルトが拳を振う前に手を開き、魔力を上げ、掌に圧縮された火球を作ると俺に向かって、叩きつけてきた

(あぁ……  楽しい…!!)

火球は超密度で圧縮されてたので当たった瞬間、大爆発を起こした

ゼブァルトは空中を回転しながら吹き飛んでいたがグッと力を入れて、静止すると爆発地点を見た

「ふ、ふふふ……  せっかくのいい性を味わえると思ったのだけどね
残念だけど今回は諦め」

ゼブァルトは手を拭くと下を見た
下にはまだイリア達が居ると考えてるのだろうがそんな思考は爆煙が吹き飛ぶ事で止めるしかなかった

「は、はは ははははは!!」

そこに居たのは先程までの人間か?とゼブァルトは思っただろう
その手足に纏った雷は威力を増しているが何よりその手足そのものが人のモノから龍のモノとなり、腰辺りからは尾が生えていた
そして顔に少しの鱗が出来ており、頭部には2本の剣角が生えおり、雷が集まっていた翼は完全なる龍翼となっていた

「《ソウル・オブ・ドラゴン》」

《ソウル・オブシリーズ
ドラゴンの場合、《闘気・龍シリーズ》をしている時のみ、発動可能
体を変化させ、龍人と化して自身のステータス及び全スキルを強化
このスキル発動後、使用者はソウル・オブシリーズで発動させたシリーズのみのスキルでしか発動出来ない
熟練度カンスト時効果・相手のスキル等は全て無効となり、MPの消費を1にする
デメリット・三分間、そのシリーズのスキルは発動出来ない》

翼を羽ばたかせ、ゆっくりと黄色に光る龍眼でゼブァルトを見ると先程までの余裕は何処にやら……
見るも面白いくらいに慌ててる様子が見えた

「な、なによソレ!?」  「教える気はねえ」

俺はゆっくりと拳を合わせるとニヤリと笑い、翼を広げた

「久々に面白いんだ
ゼブァルト もっと楽しませてくれよ」



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