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第二幕
王都 ユーリ兄さんとローリアス姉様の部屋(仮)
しおりを挟む「ローリアスお姉様 気分はいかがですか?」
「えぇ、そう心配しなくても大丈夫よ
アシュリタ、それにシャルロッテも」
あれからパーティーは色々あったが成功となり、日が暮れ、俺とフローラ達はシャルロッテと共にローリアス姉様の部屋を訪れていた
部屋には第二王女のアシュリタ様、そして兄さん達が居た
「ローリアス 寒くないか?
何か、厚めの毛布でも持ってこようか?」
「もぉ…… 貴方は少し落ち着いたら?
じゃないと、この子も心配するわよ」
ユーリ兄さんが珍しく落ち着きが無く、やたらとローリアス姉様の傍でアワアワして、ローリアス姉様はそんなユーリ兄さんを見て微笑み、そう言って自分のお腹を撫でた
「そ、そうだな すまん
実際の所、まだ信じられなくて……」
「私もよ でも、少しずつだけど実感してくるの
私達の子供が今、ここに居るんだって……」
ローリアス姉様は幸せそうな笑みを浮かべるとユーリ兄さんがその肩を抱き寄せた
側から見たら、随分と仲の良い夫婦に見えるがまだ式を挙げてないから、恋人と言っていいのかは今は置いておこう
「しっかしユーリ兄が父親になったとはな」
「私もローリアス姉様に赤ちゃんが出来たなんてね」
ゼアル兄さんがしみじみと言い、アシュリタ様がその後ろで腕を組んで、何度も頷いていた
【アシュリタ・シルブェクト】様は簡単に言うとゼアル兄さんの恋人だ
そしてローリアス姉様と瓜二つな程、そっくりでパッと見ても気付かない人が多そうだ
「全く…… 貴女達は少し落ち着いたら?
まだカインズとアンプレットの方が落ち着いているわよ」
ローリアス姉様はゼアル兄さん達が落ち着かない様子に笑いながらカインズ様とアンプレット様を見た
「姉様 ボクたちがここに居て、大丈夫ですか?
確か、妊娠が判明してからしばらくは安静にすることが大事だと本に書いてあったのですが」
「ボク達が居て、姉様の負担になってませんか?」
【カインズ・シルブェクト】様と【アンプレット・シルブェクト】は俺とフローラより一年早く産まれた双子だ
カインズ様は左髪だけを伸ばして、羽根の髪留めを使い、オシャレをしている
アンプレット様は部屋に居ても、赤いニット帽を外さずに居る
そんな二人がローリアス姉様と程々の距離を空けて、落ち着きながらもローリアス姉様を心配しているようだ
「えぇ、むしろ居てくれた方がいいわ
なんたって私も何をしていいか、分からないのだからね」
ローリアス姉様はそう言い、カインズ様達の頭を撫でた
カインズ様は素直に照れて、アンプレット様はプイッとそっぽを向いたが、顔が赤くなっているのがわかった
すると扉がノックされ、ローリアス様が返事をすると第一王子の【アルフレット・シルブェクト】様と第二王子の【ズニャール・シルブェクト】様が入ってきた
「休んでる所、すまない
どうしても一度、様子を見たくて来てしまった」
「いいえ アルフレットお兄様
来てくれて嬉しいです」
「ローリアス 今、食べられるか?
従者に頼んでお前が言ってたパイを買って来てもらった」
「まぁ!! 嬉しいです!!
ズニャールお兄様!!」
アルフレット様は髪を後ろに纏めているが腰丈まで長く、座ると床スレスレだ
ズニャール様は至ってシンプルだがモノクルをしていて、いかにも秘書か、大臣と見えてしまう
だがそんな二人だがローリアス姉様の前ではただの兄らしく、アルフレット様はローリアス様の頭を撫でていて、ズニャール様はメイドから渡してもらった皿と紅茶を用意してきて、小机にパイを皿に乗せて用意した
「アルフレット様 お心遣い感謝いたします」
「気にするな お前はローリアスの旦那になるのだ
いや、今はもうローリアスも含めると親になる……、と言ったところか」
ユーリ兄さんがアルフレット様に礼を言うとアルフレット様は微笑みながらそう伝え、ユーリ兄さんとローリアス姉様の顔が赤くなった
「すぐにでも式を挙げたいがお腹の子の負担になる
産まれるまでのお預けになるが我慢してくれ
私達だって、すぐにでもお前達を祝いたいんだ」
アルフレット様はそう言いながら何かの紙をユーリ兄さんに渡した
「これって城から少し離れた屋敷の間取り図ではありませんか?」
「あぁ、ソコはもうお前の物だ
必要な品は全てコチラで用意してある
しばらくは城で過ごした後、ローリアスと共にここで暮らせ
そして子供が産まれたら、いち早く俺達の事を叔父と覚えてもらうよう、城に遊びに来させろ
時間があれば好きなだけ面倒見てやるぞ」
アルフレット様はそう言い、豪快に笑ったがすぐに声のボリュームを落とした
お腹の子供に刺激を与えないようにだろう……
「アルフレット様……」
「こら、兄上にだけ感謝するんじゃねぇぞ?
こっちだって、まだ嫁入りも済ませてねえのに子供を妊娠したって事の後処理を済ませたんだからな」
そう言い、ズニャール様がパイを切り分け、ローリアス様に渡せば、ユーリ兄さんをジト目で見た
「さっきまで会場に居た奴らには喋らせないように頼んできた
それにお前の身分も黙秘とするように言った
全く…… こんな事ならさっさと結婚するよう尻を叩けばよかった」
ズニャール様が疲れた様子で愚痴れば、ユーリ兄さんは頬を掻いた
「すみません…… お二人には騎士団に入った当初から色々と世話になりっぱなしで……」
「ったく…… おかげで親父達は今頃、城中の酒を飲み明かしてるだろうよ
フェルストリー家の親父さん ただでさえ、大酒呑みだから親父とお袋、酔いつぶされるぞ」
ズニャール様は頭を掻きながらとある方向を見た
恐らくだが、その方向に父上達が飲み明かしている部屋があるのだろう
「大丈夫だろうか?
明日、国例となっているパーティーがあるのだが……」
「ダメだろ 今年、十を超えた奴らを城に招き、祝うパーティーだぞ?
酔っ払いが出てきたら、王家の顔が丸潰れだ」
アルフレット様が腕を組み、呟けばすぐさまズニャール様が首を横に振った
そしてアルフレット様の言葉を俺は聞き逃さなかった
「え!? 明日もパーティーなんですか!?」
「ん? なんだ シャルロッテの手紙に書いてなかったか?
十歳を迎えた子供は一度、城に招かれ、その生誕を祝うパーティーが恒例として行われることとなっておる」
ズニャール様がそう言ったので、慌ててシャルロッテの手紙を確認した
しかしそのパーティーの内容は記載されてなかった
「……その様子だと、書かれてなかったのだな」
「はい……」 「父上からは?」 「何も……」
俺の様子を察してか、ズニャール様が肩をポンと叩き、ゼアル兄さんが頭を撫でてきた
(そんなに落ち込んでたかな?)
「まぁ、今はそんなのは置いておいて………
お前ら子供はそろそろ部屋に行って、お眠の時間だ」
アルフレット様が手を叩き、時計を指差せば、時刻は既に二十一時を越えようとしていた
「そうですね…… では、私は「シモン様は、私の部屋ね!!」……わかった」
アルフレット様に言う事に頷き、このまま客室へ……、と思ったがシャルロッテは覚えていたみたく、腕に抱きつかれたので諦めた……
フローラとフォルティナとは途中まで一緒だったが、メイドが二人に用意された客室と案内され、二人は素直に従った
(出来れば、少しは我儘見せたりして欲しかったが……)
そんな二人を見送った後、シャルロッテに腕を引かれて、廊下を歩くがかなり広い……
廊下を歩いているだけで、かなりの時間を使っているような感覚になる
ふと、遠くの向かいの廊下をゼアル兄さんを引っ張るアシュリタ様が見えた
ゼアル兄さんが何か言ってるが、アシュリタ様が何か勢いよく言って顔を赤くさせ、怒ってるがここまで聞こえてこないとなるとかなりの距離があるみたいだ
そんなアシュリタ様がゼアル兄さんを使われてるのか、分からない部屋に連れ込むと《防音》 《遮断》 《不可視》の三重の結界が張られた
しかも何重にも重ねられて、徹底しているように見える……
(……ゼアル兄さんなら問題ないだろう)
アシュリタ様が危険になったら、ゼアル兄さんが助けるだろうと思い、俺はシャルロッテに引っ張られ、連れてかれた
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