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第二幕

王都 シャルロッテ誕生日パーティー

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城のホールに到着したがそこはかなりの広さがあった
人数的には、およそ六十以上の人がこの中に入れるようになっていて、もし王都が強襲を受けた際、国民を守る為にここを解放し、怪我人等の人達をここで匿う気であると見た

シャルロッテは先程、従者のメイド達に連れられて行った
まさか引き剥がされるのに抵抗してるのは予想外だったがまぁ、流石に主役が王様達と登場しないとなっては、問題だからな

「シモン、フローラ」  「やっと来たか」

「ユーリ兄さん ゼアル兄さん」

「お兄様方 先に来ていたのですね」

俺たちの名を呼ばれ、振り返るとユーリ兄さん達が父上達と一緒に来ていた
ユーリ兄さんは騎士の役目もあるが今回は、ローリアス様の婚約者としてもあり、フェルストリー伯爵の長男として参加している
ゼアル兄さんは最近になってどうやら第二皇女様に求婚され、そして何と隣の国から王都の学園に来た公爵令嬢に惚れられ、二人と恋仲になったとか……

最初、父上がソレを手紙で知った時、珍しく母上も頭を抱えていた
なんせ、息子達がそれぞれ王族の皇女に惚れられたとなったら、そうなるのも無理はないと思った

(……俺は違うよな?)

一抹の不安を感じ、振り払えば会場を見渡す
流石に王族のパーティーだけあって、かなりの重役や隣国の貴族も参加しているみたいだ
周りを見渡しても偉い人ばっかで、正直に言えば場違い感が半端ではなかった

「お兄様 フォルティナお姉様は叔父様達の所に向かいましたわ」

「あぁ、分かった
父上、挨拶の時に贈り物を渡す流れでいいんでしたか?」

「あぁ、本来なら入り口の所の騎士に渡すのが普通だが、お前らの場合はそうではなかったからな
それにシャルロッテ皇女殿下の友人ならば許されるだろう」

そう言って父上は頷き、しっかりと常識を教えてくれた
まぁ、さっきまでシャルロッテにしがみつかれていた俺はその入り口の騎士に渡せなかったからな
……その入り口の所でシャルロッテに駄々を捏ねられたんだがな

「国王陛下及びシャルロッテ第三王女殿下!! ご入場!!」

従者の一人がそう叫ぶと演奏が始まり、階段から国王陛下が家族と共に下りてきた
そして第二王子のエスコートを受けながらシャルロッテが先程と違うドレスを身に纏い、煌びやかな装飾を付け、歩いていた

その姿を見て、改めてシャルロッテが王族だと理解すれば気を引き締めた
ここからはそれぞれの爵位の者達が順番に挨拶されていく
俺達、フェルストリー家は伯爵故に挨拶の順番が早く廻ってくるだろう
出来れば、下手な事にならないといいんだが……


「陛下 此度のシャルロッテ王女殿下のお誕生日、おめでとうございます」

「うむ、ガラルドよ
此度はシャルロッテの為に参加してくれて父親として感謝する」

意外と順番が早めに廻って来て、俺達家族は陛下達の前で膝を付き、挨拶をしていた
こうして挨拶が廻ってきて、少し緊張しているが何より……

(シャルロッテ!? お前なんでソワソワしてるんだ!?
ダメだぞ!? 流石の俺でも今のお前が何を考えてるか、分かるからな!!
俺に飛び付こうするのはダメだからな!?)

今にも俺に飛び付こうとソワソワしてるシャルロッテに俺は変な緊迫感が走っていた

「それで陛下 実はシモンからシャルロッテ王女殿下に贈り物がございます」

「ほぉ?」

父上がそんな俺を見て勘違いをしたのか、話題を作ってきた
陛下達の視線が俺に注がれたが俺は意を決してアイテムボックスから用意した物を取り出した

「コチラはフェルストリー領土で商会しているラズボード商会で私が製作を頼み、販売している娯楽品、トランプでございます」

トランプと遊び方を纏めた説明本を執事に渡せば、シャルロッテに渡された

「ほぉ? 最近、王都でも噂になってる娯楽品か
貴族達の間でかなり有名で、なかなか手に入らないと言われておるが……
まさかガラルド お主の息子が携わっておったとはのぉ」

「シモンに製作したいモノがあると聞き、説明を聞けば面白いと思い、資金を渡してやってみろと言ったらここまで広まるとは思いもしませんでした」

「ふふふ、だから言ったじゃない
シモンちゃんは天才なんだから♪」

父上は陛下に言われ、頬を掻きながらそう伝え、母上は隣に居る俺の頭を撫でてきた
正直、ここで頭を撫でられるのは恥ずかしいが今は、我慢しておこう

「遊び方についてはそちらの本に記載されております
時間に余裕がある時であれば、まずは陛下達で遊んでみるのを提案します」

「ふむ、そうだな
最近、何かと忙しくて家族で過ごすというのも、少なくなってきた気がしておってな
丸一日、会わずがある故、子供達………
特にシャルロッテやカインズ、アンプレットに寂しい思いをさせてしまっておったからな
この機会に一度、我の仕事を見直して時間を作り、家族で過ごす時間を作ろう
ノーズ すまんが手伝ってくれるか?」

「何をおっしゃいます 陛下
前から言いましたが貴方は働きすぎだと……
少しはアルフレット様とズニャール様に頼って、休む時間を作ってください
そもそも私がどれだけ貴方の仕事を以下に減らすか」

陛下が執事のノーズさんにそう伝えれば、結構.ストレスが溜まってたのか、ノーズさんが捲し立てるようにそう話しているのを陛下が苦笑いで見ていた


そんな陛下を何処となく嬉しそうに見つめる王妃様
そしてアルフレット殿下とズニャール殿下、そしてローリアス王女が笑っている
そしてさっきから話題に上がった第三王子のカインズ様と第四王子のアンプレット様が陛下を不思議そうに見ていた

そりゃあここまで立派な姿を見せてた陛下が怒られて、そんな姿を見せたら、誰だって不思議がるわな……

「シモン様……」

そんな彼らを他所にシャルロッテは頬を赤らめて俺を見てくるが、今は陛下を見てくれ……

「う……」 「ローリアス!?」

そんな中、笑っていたらローリアス様が突然、口元に手を置き、ユーリ兄さんが慌てて近付いて、背中を撫でた

「ローリアス 体調が優れないのか?」

「ごめんなさい お父様
でも、大丈夫よ シャルロッテの誕生日だもの」

陛下がローリアス様を心配したがローリアス様は首を左右に振って微笑んだ

「少し体温が高くなってるけど熱じゃないの
それになんだか横になってると眠っちゃいそうで」

そんなローリアス様を見ていたら突然、チャットが来て、父上達のことを気にしながら確認する

[誓約者様 メルデウスです
彼女のお腹に目を向けて、《チェック》をお願いします]

(は? まさか)

俺は、メルデウスからのチャットを確認した瞬間、慌ててローリアス様のお腹を見て、《チェック》を使った

《チェック
他ゲームだと鑑定の位置のスキル》

《チェック》を使った瞬間、ローリアス様のお腹に小さな文字で【出産まであと----】と出てきて、思わず「ぶえっと!?」と変な声を上げた

「し、シモン!?ど、どうした!?」

俺が変な声を上げた為、父上達の視線が来るが今はそんなことを気にしてる場合じゃねえ!?

「んん、ローリアス様
少しお聞きしても?」

「え、えぇ」

咳払いをし、俺がそう言えばローリアス様は、頷いてくれた

「最近、酸っぱいモノが欲しくなったりしてませんか?」

「え? えぇ、最近は街で売ってるパイをよく頼んで食べてるわ
とても美味しくてたまらないの」

ローリアス様は頬に手を当てて、思い出したかのように微笑んだ

「え、ちょっと待って
シモンちゃん まさか」

どうやら母上、そして王妃様も俺の質問で勘付いたのか、慌てて王妃様がローリアス様の肩を掴んだ

「ローリアス!!
質問に答えて!! 貴女、いつから来てないの!?」

「え? えっと……
そう言えば三ヶ月前からかしら」

ローリアス様は思い出すようにそう言うと今度は父上達がガタッと立ち上がった

「「ま、まさか!?」」

「え、父上?」 「お父様?」

そんな父上達を見て、ユーリ兄さんとローリアス様が首を傾げるから俺はため息混じりで分かりやすく答える事にした

「ユーリ兄さん ローリアス【姉様】を部屋に連れて行って、体を休ませてあげてください
とても大事な事です」

「「……え」」

俺がローリアス様を姉様呼びした事でユーリ兄さん達はようやく理解したのか、ゆっくりとお互いに顔を見合わせた

「ユーリ!!
今すぐにローリアスちゃんを部屋に連れて行きなさい!!」

「ノーズ!! 専医のドレークを呼んで!! 大至急に!!」

母上と王妃様はすぐに行動に起こし、ユーリ兄さんとローリアス姉様を連れて、退出して行った
ノーズさんも慌てて出て行って残された陛下と父上達が取り残された

「し、シモン様!?
お、お姉様は大丈夫なのですか!?」

突然の事でシャルロッテが不安そうに俺に近付いてきたが、俺はそのシャルロッテの頭を撫でた

「大丈夫 おそらくだけど…………
とても嬉しい報告がすぐに来ると思うよ」

「「嬉しい報告?」」

俺がそう伝えるとシャルロッテと隣に居たフローラが首を傾げた

その数分後……

「我、祖父になるぞ」と陛下が嬉しそうに会場に来ていた全員に報告したのは言うまでもないだろう




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