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第二幕

メリスト家 パーティー準備へ

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バロン達と共に何か街を襲おうとした魔物の軍勢を片付けた後……

(ふはぁ~~~……、気持ちよかったぁ……
やっぱり全力出すのは凄くストレス解消になるし、何より気持ちがいい……)

《クリエイトエリア》の自宅で汗を流した後、用意された俺の客室に戻ってきた
シャワーを浴びてからだから、すっかり外は星々が輝いていた

(まだ時間的に夕食には間に合ったか?
いや……、まぁ、間に合ってないかもな)

時間は二十時を超えた辺り……
もしもメリスト公爵達がこの時間に夕食を食べているのなら、夕食までには間に合ってない事になる
最悪だがもう一度、《クリエイトエリア》の自宅に行き、夕食を作って、食べるしかなさそうだ

(それよりドッペルは何処だ?
俺のフリをさせてたが……、今、部屋に居ないとなると、夕食の席に呼ばれたか?)

「シモン様に変装されてる方でしたらシモン様のフリをして今、夕食を終えて、入浴しておられますわ」

「っ!?」

部屋を見渡して、俺に化けさせてたドッペルゲンガーを探していると、後ろから声をかけられて、ドキッとして振り返った

「ふ、フォルティナか……」

そこに居たのはちょこんとベットに腰掛けて、こちらを見ているフォルティナだった
既に風呂を済ませているのか、肌は少し赤らみ、髪はまだしっとりと濡れていて、手にはタオルを持っていることからさっきまでここで髪についてた水分を取っていたのだろう
そしてフォルティナの格好は薄いピンク色の寝衣姿だ

「何で俺じゃないって、分かったんだ?」

「分かりますわ ずっと貴方を見ているのよ?
少なくとも、シモン様のお父上様達とフローラは気付いておりましたわ」

フォルティナはそう言い、まるで俺がどんなのに化けても、見破る自信満々な感じの笑みを浮かべると自分の隣をポン、と叩いた

フォルティナに促されるまま、隣に座るとゆっくりと俺に寄りかかってきた

「……シモン様に化けてる方から聞きましたわ
さっきまで危ない事をしていたのでしょう?」

「……あぁ、そうだな
だが、お前も知ってる彼らと共に居たからすぐに終わったよ」

フォルティナの温かい体温とシャンプーの香りが鼻をくすぐる中、ボソッとフォルティナが聞いてきたので素直に答えた
今、フォルティナに隠し事をしても、確実に見破られると確信があったから、素直に答えるしかなかった……

「……すぐに終わったのなら、何でこんな時間まで戻られなかったのですか?」

「アイツらと暴れた際、森にちょっと大きく更地を作ったから、ソレを戻すのに時間がかかったんだ」

本当の事だ……
流石に森の中にあんなクレーターがあったら、かなり大きな騒ぎになるから、時間魔法で森を元に戻したが、意外と時間がかかってしまった

「……信じます」

フォルティナは、そう言えば、ゆっくりと俺の手に自分の手を絡ませれば、握ってきた

「ありがとうな」 「えぇ……」

礼を言うとフォルティナはそっと俺を見てきた
その時、目が合った
その目が少し潤んでいたが、黙っておこう……

「明日、パーティーまでの準備について、お伝えしたいことがございます」

フォルティナはそう言うとまた顔を下げて、スリスリと俺の肩に頭を擦り付けてきた

「明日のパーティー前にシモン様には私のドレスを見立てて貰います」

「俺が?」

明日は言わば、フォルティナ主人公のパーティーだ
そんなパーティーで着るドレスを俺が選んでいいのか?
そんな事を考えてると、フォルティナがそっと俺を見た

「シモン様に選んでもらいたいのです
私のドレスも……、化粧……、アクセサリーだって、シモン様に選んでもらいたいです」

フォルティナがそう言うと流石の俺も察しが付き、頬を掻いた
フォルティナは完全にそのパーティーで、俺の婚約者としてのアピールをしたいらしい……
普通ならこう言うのは、従者であるアンさんが一任され

「あれ? そう言えばアンさんは?
ここに来てから会ってないが」

「アンは……、逆ダイエット中です」

フォルティナは目を逸らしながらそう言ってきて、俺は思わずキョトンとした

「……一応、聞く
何があった?」

「実は……、ここに来てから、アンは、私の世話はもちろんの事、パーティーに向けて、義父様方と何度も話し合いを行い、成功させようとしていたのです
ですが……、少し体重が痩せてしまって、最近、着ていたメイド服が緩くなり、その……、スカートがずり落ちてくるそうで……」

そこまで言うと流石の俺も頭を押さえた
きっとアンさんは食事すらまともに摂らずにパーティーに向けて、頑張っていたのだろう……

「義父様からも新しいメイド服を貰ったばっかなので、流石に『それを着れなくなるのは、メイドの恥』と言って、今日まで、食べまくってました」

「それ…、逆に着れなくなってないか?」

「いいえ それどころか
なかなか体重が増えずに、ここの料理長に泣きついてました」

容易にその光景が浮かぶと思わず笑ってしまった
あのアンさんが泣きつきながら頼み込む姿なんて、想像がつかないから

「なんだか意外な素顔を見た気がする」

「えぇ 私もあんなアンを見るのは初めてです」

そう言い、お互いに笑い合った
しばらく笑い合ってから少しチャットを確認した

[主人様、ドッペルです
お戻りになった気配を察知しました
私は一応、脱衣所を抜け、今、屋敷の木陰で隠れております
私は、どうすればよろしいですか?]

ドッペルから先程、チャットが入ってる事に気付き、フォルティナに少し待ってもらい、チャットに打ち込んでいく

[お疲れ様 そのまま戻ってくれて構わない
だが、くれぐれも見つからずに戻ってくれ]

[承知しました]

チャットを終えて、フォルティナを見るとさっきから俺をじっと見ていたらしく、目が合った

「ぁっ…」

目が合った事に気付くとフォルティナは顔を赤らめて、目を逸らしてモジモジとし、どことなく落ち着かない様子だった

「フォルティナ……  もしかしてだけどここで待ってたのって、メシア姉様に昼間、囁かれた事が原因か?」

そう聞くとフォルティナは分かりやすく固まるとやがてコクっと頷いた

「メシアお姉様がシモンに……、その、き、キスされた後、メシアお姉様が『コレはシモンに教えて貰いなさい 色々ね』と囁かれました」

そう聞くと俺は、思わず少しだけメシア姉様にイラっときた
まぁ、嘘だが流石に(メシア姉様が教えてやってくれ……)と思った
あの挨拶方は俺が、7歳の時にメシア姉様に仕込まれ、覚えさせられたやり方だ
最初は当たり前だと感じてたが今、成人の精神だからか、やるのに抵抗は多少ある…………

「それに初めて……、メシアお姉様に嫉妬しました」

俺がそんな事を思っているとフォルティナがポツンと話し出していた

「わ、私でさえ……、まだシモン様にき、キスの一つもされてないのに……、私の目の前でシモン様にあんな……、キスをするなんて……
ズルいと思いましたし、羨ましいとも思いました……
シモン様は私の婚約者なのにと……」

握られた手に力が入り、フォルティナの気持ちが伝わってくる
純粋なフォルティナがここまで思っていたのに驚いた
単純に女の子だからキスの一つに憧れがあるのは理解している
だが、フォルティナの言葉には素直に成人を迎えた女性の精神を感じた

「シモン様にとって……、私は魅力ありませんか?」

不安そうにそう言って、俺を見つめてくるフォルティナにようやく気付いた
さっきから横に座らせ、体重を俺にかけてきたり、手を絡ませ、握ってきたのはフォルティナなりのアプローチなのだと…………

「あー……、フォルティナ
嫌なら俺を叩いてもいいからな」

頭を掻いてからフォルティナにそう断りを言い、何も言わせず、フォルティナの唇を奪った
フォルティナは驚いたように目を見開いたが、やがて静かに目を閉じるとメシア姉様がしたように舌を恐る恐る俺の口に入れてきた

リードするように舌を絡めるとフォルティナは手を離し、俺に抱きついてきた
静かで暗い部屋に舌を絡め合う水音がだけが聞こえてくる

しばらく絡め合い、俺から離れるとフォルティナはトロンとした表情を俺に見せていた

「シモンさ、まぁ…………」

「フォルティナ メシア姉様とはこれほど長くしたことはない
お前が初めてだ……、信じてくれるか?」

フォルティナの目を見ながらそう伝えるとフォルティナはコクンと頷いた

「わかり、ました…
でしたら、ワガママ言っていいですか?」

「何だ?」

フォルティナが恥ずかしそうに告げてきて、聞くとフォルティナはそっと俺の耳に近付き、そっと囁いた

「もっと……、さっきのキス……、したいです……」

その囁きに少し頭がクラッとしてフォルティナをベットに寝かせ、覆い被さるようにキスをし、舌を絡めた

それからどれくらい経ったかは知らんが……
フォルティナの気が収まるまで舌を絡め合った
気が収まったフォルティナは俺の隣で寝転び、そっと体を寄せてきた

「シモン様……、私の体を触ってくださらないのですね」

「キス以上の事は流石に今の歳じゃ、成長しきってないから無理だ
だから14になった時、お前の初めてを奪う
約束する」

「……はい、約束ですからね」

そう言い、小指を絡ませ、指切りをすればフォルティナは微笑み、静かに眠りに落ちた

一方、俺は……

(あれ? 流れで言ったけど、俺……
何か取り返しのつかない約束しちまったか?)

さっき言った内容が完全にフォルティナを抱く約束だったのを思い出すと冷や汗MAXだった
そして今、腹の虫が鳴ってるがフォルティナが俺の腕に抱きついている為、今日は、飯抜きが決まった
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