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第一幕

穏やかな?日常

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フェルストリー家盗賊襲撃から四日が過ぎた
外は夏に向けて、気温が上がり、肌を涼しい風が撫でている……
あの事件後、俺は疲れて、気を失い、眠って、起きたら一日半過ぎてたから少し驚いた

その一日半の間で家族達に少しだけ変化した
まずはロジャードが正式に俺の専属騎士となった
これにより何処かに出かける際、ロジャードが護衛として、着いてくるようになった

流石に空気を詠む場面では詠んでもらうことになるが、これで俺は父上達の付き添いは要らなくなり、自由に街などに出かける事が出来るようになった

その次にユリアナ先生が俺達の魔法教育の実習期間を一年から、四年に伸ばした
そして父上と何らかの話をしていたが、内容までは教えてくれなかった

でも先生に学ぶ事が多いから、期間を延ばしてくれた事は嬉しく思う

そしてユーリ兄さんとゼアル兄さんは王都に戻っていった
ゼアル兄さんは学業をそろそろ本腰入れないと卒業出来ないと説教じみた内容の手紙をゼアル兄さんの担当から届いて、ゼアル兄さんが顔を真っ青にしていたのを見て、笑ってしまった

ユーリ兄さんは今回のギャン男爵の一件を国王に報告する為、そして父上から新たな領主への推薦状を持っていった
既にギャン男爵が納めていた領土に新たな領主が来ており、街の人々と共に屋敷を一度、粉々に破壊してから建て替えの作業に入っているとの事……

(行動力が凄い……)

そして父上と母上だが一度、二人して出掛けて帰って来た時、それぞれ見慣れないモノを持ってきていた
父上は刀身が淡い淡雪みたいな色をした剣……
母上は見る限り、氷の魔力が流れる大杖を持っていた
執事に聞けば、アレは父上と母上が現役時に使ってた魔剣と杖だという……

屋敷が狙われたから父上達も万が一を考えて、持ってきたのだろう…………

「シモン様 新聞をお持ちしました」

「あぁ、ありがとう メル」

「いえ、紅茶のおかわり、お淹れします」

庭園の一部で、寛いでいる俺の元にメルが新聞を持ってきてくれた
受け取ると空になったカップに紅茶を淹れてくれている

新聞を広げて、内容を確認する
ちなみに持ってきてくれたのはウチの領地とギャン元男爵の領地、そして王都の新聞だ
情報は多い方がいいから、メルに頼んでおいたのだ

([ギャン・ガザードル元男爵、牢屋にて、惨殺]か……)

この四日でようやく色々と事件の内容とかが、表に出せるようになったと思ったが、真っ先に目に飛び込んできたのはそんな記事だった

あの後、辛うじて生きてたギャン元男爵は防衛隊の地下牢に拘束され、早くても三日後には王都に行き、裁判がかけられる予定であった……

([犯人は不明 ギャン・ガザードル元男爵は、体を何百と刺され、刺殺が明確]……、なるほどな)

内容を読む限り、犯人は街の街民だと分かった
彼らはギャン元男爵を憎んでいたが、フォルティナを愛し、尊敬の念を抱いていた
だから真実を知り、ギャン元男爵を憎み、犯行に及んだ
そしてコレには防衛隊も参加している

(フォルティナはちゃんと町民の為に働いていた
だから、街総出で屋敷に押し入った)

ルシファーの報告では街のギルドを先頭に大勢の街民が武装し、押し寄せたとの事……
コレだけ聞けば街民にとって、フォルティナが必要とされてる証拠であった

「事件から四日……、早いものですね」

「あぁ、だけどこうして生きてる……
それだけで立派だろう」

メルが俺の背後から新聞を覗き見して、ボソッと呟くからそう言い、新聞を閉じれば、別の新聞に目を通した

「……は?
[王国騎士団 フェルストリー伯爵家、三男をスカウトか?]」

その新聞は王都のモノで、目を通していくとそんな記事を見つけた

「[フェルストリー伯爵家が盗賊に襲撃された時、その危機をユーリ・フェルストリー第三騎士長の弟でもある三男が救ったとされ、王国総騎士団である騎士長がフェルストリー伯爵家の三男を将来的に騎士団に推薦すると語った] 何だこりゃ?」

新聞の内容を読めば思わず持ってたカップを落としそうになり、慌ててテーブルに置いた
俺をスカウト? しかもコレ、フェルストリー伯爵家の三男って書いてあるから、俺だってバレるじゃね?

「……断ろう」「えぇ~!?何でですか!?」

推薦届いたら、断ろう……
そう言ったら、メルがめちゃくちゃ驚いてるがめんどくさい事この上ない……

「ふふふ、すっかり有名になりましたね
シモン様」

「そう思ってるなら、助けてくれよ……
フォルティナ」

楽しそうな声を聞き、俺は頭を押さえながら俺の向かいの席を見た
そこにはいつにも増して、楽しそうなフォルティナが座っていた
その後ろでは俺を楽しそうに見ているアンさんが居た

フォルティナとアンさんは今、ここで暮らしている
と、言うのも彼女達の保護先、フォルティナの親権を自ら志願したのはギャン元男爵の後、領主に任命されたメリスト公爵だ
そして今、屋敷を急ピッチで建ててるから、それが終わるまでの間、フォルティナ達はここで暮らすこととなっている

ちなみにメリスト家は三姉妹と二兄弟の子供がいて、フォルティナはその末っ子となった
最初はフォルティナがその子達にいじめられてないか、心配だったがすぐに杞憂になった

「……また荷物が届いたらしいな」

「えぇ……、アレから毎日です」

俺が聞けば、流石のフォルティナも苦笑いを浮かべた
そう……、簡単に言えば、フォルティナは溺愛され、今でも大量の服やら、アクセサリーやらがフェルストリー家宛に届く……

「お嬢様がメリスト様方に溺愛され、世話役の私の出番も減ってしまいました
お嬢様へのプレゼントの仕分けで一日が終わる日々が度々あります」

「それについてはメル達を手伝いに廻してるけど……、やっぱり足りないか」

「えぇ、あの量に加えてドレスやら、街で流行っている服やらで山になってますので」

アンさんが珍しく愚痴を言ってきたが、実際に言いたくなるのは分かる
俺もチラッと見たが、アレをアンさん一人でやってたら、一日なんて一瞬で終わるからな

「それもこれもシモン様のお陰です」

「俺の?」

「はい あの日、私達の怪我と共に穢れ等を祓ってくださった時、私達は新たに生まれ変わったと思っております
こんな私にあのような幸せな両親様にお姉様方に出会う事が出来たのも……
シモン様のお陰なのです」

俺のお陰と言ってきて、首を傾げるとフォルティナは俺の手を取り、微笑んできた
あの時発動させた《天使族究極回復スキル》をワカメが説明したと後で聞いた
その後、ガザードル家で働いて、ヤツの息がかかってない者達はウチとメリスト家で働く事となった
恐らくメルデウスが部下を召喚し、フォルティナ達と同じように癒した事が原因で、ウチではメイドが圧倒的に増えた

「当たり前だろ?
俺達は「婚約者ですものね」

俺の言葉を遮り、フォルティナが頬を赤らめながら言ってきた
一応、俺とフォルティナの婚約は白紙になったが、フォルティナがメリスト公爵と父上の前で膝をつき、額を地面につけて、俺ともう一度、婚約したいと泣きながら頼み込んだらしい……
メリスト公爵は驚いたが、大いに喜び、父上もフォルティナの気持ちが本気だと理解すれば承諾したとの事……

正直、少し驚いたがそこまで俺を思ってくれるとなると……

(嬉しいかな)

改めてフォルティナの顔を見ると俺に見られてると分かり、さっきより顔が赤くなった

「失礼 坊ちゃんにフォルティナの嬢ちゃん」

そんな中、ロジャードがこちらに向かいながら話しかけてきて、フォルティナは慌てて俺の手を離した

「ロジャード どうした?」

「坊ちゃんに客人だ」

ロジャードがそう言うと同時にロジャードの陰から何かが飛び出してくると俺に飛びついてきた

「シモン様~♪」「にゃっ!?」「シャルロッテ!?」

飛びついてきた人物がまさかのシャルロッテだった事に驚いた俺だが、フォルティナが猫みたいな声を上げたのは聞かなかった事にしよう……


「何でここに!?」

「あら? 友人に会うのに理由なんてありませんわ
そうですわよね?」

シャルロッテを引き剥がし、理由を聞くと不思議な顔をしながら首を傾げるシャルロッテだった
あの……、前に会った時より陽キャになりかけてませんか?

「それにシモン様とお話ししたくてお父様にお願いしました所、これから四日間、シモン様のお屋敷でお邪魔いたしますわ」

(何やってんだよ!?国王!?)

シャルロッテの言葉に国王へのツッコミが出ているが「コホン」と、フォルティナが咳払いした

「シモン様……、シャルロッテ様とはいつお会いになったのですか?」

「この前のお披露目パーティーの時に俺の後をついてくるのに気付いて」

シャルロッテとの出会いを説明している俺だが、寒気を感じていた
さっきまでのフォルティナと雰囲気が少し違うような……
すると、フォルティナは席を立ち、俺の傍に来ると俺の右腕に抱きついて来た

「はじめまして、シャルロッテ皇女様
私はシモン様の婚約者のフォルティナ・メリストと言います」

「はじめまして、シャルロッテだよ♪
よろしくね♪」

そう言いながらシャルロッテは俺の左腕に抱きついて来た

「ところで何でシモン様に抱きついてるのですか?」「えっ?こうするのが普通だって、メイドのナターシャが言ってたよ?」「それは友達以上がする事だと、私は思いますが」「えぇ~、でもこうすると落ち着くからいいじゃん」「むぅ~」

俺を挟んで、そんな言い合いをしているがシャルロッテが一枚上手なのか、それとも純粋すぎるのか分からないが、フォルティナは頬を膨らませながら俺の右腕を更に抱きしめた

(あの~、これはこれで良い……
とかじゃなくて!?やめてくれないかな!?
腕に柔らかいモノが押し付けられてるんだけど!?)

慌てる俺のことを気にせず、二人はグイグイと俺の腕を抱き寄せてるとズザーと何かが滑り込んで、俺の膝に座ると正面から頭を抱え込んできた

「お二人共!!私のお兄様を独占しないでください!!
そもそもお兄様は私のお兄様ですよ!!」

顔に何かが押し付けられ、真っ暗な為、分からないが声的にフローラだろう
そして正面から抱きつかれてることを考えると今、俺の顔はフローラの胸元に埋もれてるんだろうと感じた

アレからフローラの俺へのブラコン度が天元突破したのか、分からないがことある事に俺と一緒に行動するようになった
最近では風呂も一緒に入ってくるとか、多くなった

『そういや知ってるか
この第三皇女って、めっちゃチョロいんだぜ?
無知っていうか、友達になったら素直に色々と懐いてくるんだよ!!
そこを教えて、行けばすぐに抱けるってことさ!!』

何故、この状況でエロゲー野郎の言葉を思い出したのかは分からないが今、理解した

(シャルロッテって、攻略キャラかよ!?
と、いうか何で俺にこんなに懐いてるのかって、そのフラグを俺が回収したからじゃねえのか!?)

フローラが強く抱きついて、フォルティナは嫉妬してるのか、右腕に抱きつく力が強くなり、シャルロッテはきっとニコニコした顔で、左腕に抱きついているのだろう……

(あれ?俺ってモブだよな?)

フェルストリーが健在してるから、あのエロゲー野郎の話したストーリーから抜け出した事となる
だから普通のモブとなったはずなんだが……
そんな疑問が俺を襲う……

これから先、どんな事があるかは分からない
だが、出来る限りはストーリーに干渉しないで平和に過ごしたいと俺は思った

……ゲームをやってないからストーリーを理解してないのでこれからどんどん巻き込まれたりするのを今の俺は分かっていない

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