29 / 46
第一学年 第一学期
27 せっかくラブイベントが起こったのにペアの相手の様子がおかしすぎる。【桜SIDE】
しおりを挟む
──どうして?
第一声はそれだった。正直、この日に賭けていた。
私はちゃんとレックスルートにいて、レックス様とゲームみたいな素敵な恋を送るんだって思っていた。……いや、思っていたかった。でも、私の試験のペアはリリスで、レックス様のペアは蓮だった。
悲しかった。でもその一方で、私は──「チャンスだ」と思った。
「…………、」
「…………」
試験の内容は「ブタバナ」という薬草を見つけてくること。
試験が始まるなり、私は一歩先を歩くリリスについていくだけ。
──私がこうやってただリリスの後ろを黙ってついていくのには理由がある。レックス様のことで落ち込んでいるのもあるが、最近というか蓮との兄妹会議が起こった日からリリスはどうも様子がおかしいのだ。何度話しかけても視線だけこちらにやって、私を無視するようになった。
嫌われたんだと思った。仲良くなれたと思っていたのは私だけだったんだ、と。デュナミスは「きっと何か理由があるんだろう」と言ってくれたけど……サラマも見かけないのでリリスの心の内を確かめるチャンスもない。だからここ一ヶ月はリリスとまるで他人のような関係であったのだ。この状況をどうにかしようと話しかけようにも次第に増えていく取り巻き達にガードされてしまい、遠目からリリスを眺めるだけの日々だった。
……だからこの試験でペアになった時、「チャンスだ」と思ったのはそういうことだ。リリスの真意を確かめる絶好の機会だと思った。
レックス様とペアになれなかったのは心底残念だけど、このままリリスに無視されっぱなしなのも絶対に嫌だし、そもそもこんなに弱気になるのは私らしくない! 私は自分に喝を入れるように両頬を叩き、リリスの腕を掴んだ。
「──リリス様!」
「…………、」
視線は合ったが、返事はない。やはり、嫌われているのだろうか。もう一度話しかけてみる。結果は同じだ。
リリスはここまで露骨に人を無視するような人じゃない。そりゃ悪役令嬢ではあるけど、それは立派な王妃になるために必死になった上での結果に過ぎない。
となると、他に何が考えられる? 私の言動でリリスを怒らせた? しかしそれならどうして怒っているのかリリスはちゃんと伝えてくれる人間だ。きっとそれは違う。ならば、どうして……。
何度考えても分からない。レックス様とはペアになれず、リリスには嫌われ、ショックで涙が出そうだ。リリスの腕を掴む力が強くなってしまう。
「リリス様……どうして、私を無視するんですか?」
「…………、」
「私はリリス様と……毎日フックの森に妖精を探しに行ったり、ご飯も一緒に食べたり、授業も隣の席で受けました。おこがましいかもしれませんが、仲のいい友人くらいの存在にはなっていると思いました。なのに、なぜ……!」
「…………」
リリスはそれでも尚、口を開かなかった。私はどうしようもなくなって、一ヶ月分の涙がつい溢れてしまう。ポロリ、ポロリ。リリスの瞳がすこしだけ丸くなったのが分かる。
「──リリス様、私を、嫌いになったんですか……?」
「…………っっ!!」
初めて、リリスの息が乱れたような気がする。私はただただリリスの揺れていく瞳を見つめた。そうすると──なんとリリスの手が私に伸びてくる!
一ヶ月ぶりにリリスが私に反応を示したのだ。目を見張る他なかった。しかしその手は好意で動かされたものでは決してなかった。
「──にゲて……」
今にも、風に飛ばされそうな小さな声。しかし私の耳にはしっかり届いた。その刹那。
「!? はっ!?!? ぁっ……っ」
──リリスの両手が、容赦なく私の首を締め始めたのだった──。
第一声はそれだった。正直、この日に賭けていた。
私はちゃんとレックスルートにいて、レックス様とゲームみたいな素敵な恋を送るんだって思っていた。……いや、思っていたかった。でも、私の試験のペアはリリスで、レックス様のペアは蓮だった。
悲しかった。でもその一方で、私は──「チャンスだ」と思った。
「…………、」
「…………」
試験の内容は「ブタバナ」という薬草を見つけてくること。
試験が始まるなり、私は一歩先を歩くリリスについていくだけ。
──私がこうやってただリリスの後ろを黙ってついていくのには理由がある。レックス様のことで落ち込んでいるのもあるが、最近というか蓮との兄妹会議が起こった日からリリスはどうも様子がおかしいのだ。何度話しかけても視線だけこちらにやって、私を無視するようになった。
嫌われたんだと思った。仲良くなれたと思っていたのは私だけだったんだ、と。デュナミスは「きっと何か理由があるんだろう」と言ってくれたけど……サラマも見かけないのでリリスの心の内を確かめるチャンスもない。だからここ一ヶ月はリリスとまるで他人のような関係であったのだ。この状況をどうにかしようと話しかけようにも次第に増えていく取り巻き達にガードされてしまい、遠目からリリスを眺めるだけの日々だった。
……だからこの試験でペアになった時、「チャンスだ」と思ったのはそういうことだ。リリスの真意を確かめる絶好の機会だと思った。
レックス様とペアになれなかったのは心底残念だけど、このままリリスに無視されっぱなしなのも絶対に嫌だし、そもそもこんなに弱気になるのは私らしくない! 私は自分に喝を入れるように両頬を叩き、リリスの腕を掴んだ。
「──リリス様!」
「…………、」
視線は合ったが、返事はない。やはり、嫌われているのだろうか。もう一度話しかけてみる。結果は同じだ。
リリスはここまで露骨に人を無視するような人じゃない。そりゃ悪役令嬢ではあるけど、それは立派な王妃になるために必死になった上での結果に過ぎない。
となると、他に何が考えられる? 私の言動でリリスを怒らせた? しかしそれならどうして怒っているのかリリスはちゃんと伝えてくれる人間だ。きっとそれは違う。ならば、どうして……。
何度考えても分からない。レックス様とはペアになれず、リリスには嫌われ、ショックで涙が出そうだ。リリスの腕を掴む力が強くなってしまう。
「リリス様……どうして、私を無視するんですか?」
「…………、」
「私はリリス様と……毎日フックの森に妖精を探しに行ったり、ご飯も一緒に食べたり、授業も隣の席で受けました。おこがましいかもしれませんが、仲のいい友人くらいの存在にはなっていると思いました。なのに、なぜ……!」
「…………」
リリスはそれでも尚、口を開かなかった。私はどうしようもなくなって、一ヶ月分の涙がつい溢れてしまう。ポロリ、ポロリ。リリスの瞳がすこしだけ丸くなったのが分かる。
「──リリス様、私を、嫌いになったんですか……?」
「…………っっ!!」
初めて、リリスの息が乱れたような気がする。私はただただリリスの揺れていく瞳を見つめた。そうすると──なんとリリスの手が私に伸びてくる!
一ヶ月ぶりにリリスが私に反応を示したのだ。目を見張る他なかった。しかしその手は好意で動かされたものでは決してなかった。
「──にゲて……」
今にも、風に飛ばされそうな小さな声。しかし私の耳にはしっかり届いた。その刹那。
「!? はっ!?!? ぁっ……っ」
──リリスの両手が、容赦なく私の首を締め始めたのだった──。
0
お気に入りに追加
236
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの悪役令嬢は生れかわる
レラン
恋愛
前世でプレーした。乙女ゲーム内に召喚転生させられた主人公。
すでに危機的状況の悪役令嬢に転生してしまい、ゲームに関わらないようにしていると、まさかのチート発覚!?
私は平穏な暮らしを求めただけだっだのに‥‥ふふふ‥‥‥チートがあるなら最大限活用してやる!!
そう意気込みのやりたい放題の、元悪役令嬢の日常。
⚠︎語彙力崩壊してます⚠︎
⚠︎誤字多発です⚠︎
⚠︎話の内容が薄っぺらです⚠︎
⚠︎ざまぁは、結構後になってしまいます⚠︎
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました。
おまけのお話を更新したりします。
残り一日で破滅フラグ全部へし折ります ざまぁRTA記録24Hr.
福留しゅん
恋愛
ヒロインに婚約者の王太子の心を奪われて嫉妬のあまりにいじめという名の悪意を振り撒きまくった公爵令嬢は突然ここが乙女ゲー『どきエデ』の世界だと思い出す。既にヒロインは全攻略対象者を虜にした逆ハーレムルート突入中で大団円まであと少し。婚約破棄まで残り二十四時間、『どきエデ』だったらとっくに詰みの状態じゃないですかやだも~! だったら残り一日で全部の破滅フラグへし折って逃げ切ってやる! あわよくば脳内ピンク色のヒロインと王太子に最大級のざまぁを……!
※Season 1,2:書籍版のみ公開中、Interlude 1:完結済(Season 1読了が前提)
めんどくさいが口ぐせになった令嬢らしからぬわたくしを、いいかげん婚約破棄してくださいませ。
hoo
恋愛
ほぅ……(溜息)
前世で夢中になってプレイしておりました乙ゲーの中で、わたくしは男爵の娘に婚約者である皇太子さまを奪われそうになって、あらゆる手を使って彼女を虐め抜く悪役令嬢でございました。
ですのに、どういうことでございましょう。
現実の世…と申していいのかわかりませぬが、この世におきましては、皇太子さまにそのような恋人は未だに全く存在していないのでございます。
皇太子さまも乙ゲーの彼と違って、わたくしに大変にお優しいですし、第一わたくし、皇太子さまに恋人ができましても、その方を虐め抜いたりするような下品な品性など持ち合わせてはおりませんの。潔く身を引かせていただくだけでございますわ。
ですけど、もし本当にあの乙ゲーのようなエンディングがあるのでしたら、わたくしそれを切に望んでしまうのです。婚約破棄されてしまえば、わたくしは晴れて自由の身なのですもの。もうこれまで辿ってきた帝王教育三昧の辛いイバラの道ともおさらばになるのですわ。ああなんて素晴らしき第二の人生となりますことでしょう。
ですから、わたくし決めました。あの乙ゲーをこの世界で実現すると。
そうです。いまヒロインが不在なら、わたくしが用意してしまえばよろしいのですわ。そして皇太子さまと恋仲になっていただいて、わたくしは彼女にお茶などをちょっとひっかけて差し上げたりすればいいのですよね。
さあ始めますわよ。
婚約破棄をめざして、人生最後のイバラの道行きを。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヒロインサイドストーリー始めました
『めんどくさいが口ぐせになった公爵令嬢とお友達になりたいんですが。』
↑ 統合しました
[完結]18禁乙女ゲームのモブに転生したら逆ハーのフラグを折ってくれと頼まれた。了解ですが、溺愛は望んでません。
紅月
恋愛
「なに此処、18禁乙女ゲームじゃない」
と前世を思い出したけど、モブだから気楽に好きな事しようって思ってたのに……。
攻略対象から逆ハーフラグを折ってくれと頼まれたので頑張りますが、なんか忙しいんですけど。
転生悪役令嬢の前途多難な没落計画
一花八華
恋愛
斬首、幽閉、没落endの悪役令嬢に転生しましたわ。
私、ヴィクトリア・アクヤック。金髪ドリルの碧眼美少女ですの。
攻略対象とヒロインには、関わりませんわ。恋愛でも逆ハーでもお好きになさって?
私は、執事攻略に勤しみますわ!!
っといいつつもなんだかんだでガッツリ攻略対象とヒロインに囲まれ、持ち前の暴走と妄想と、斜め上を行き過ぎるネジ曲がった思考回路で突き進む猪突猛進型ドリル系主人公の(読者様からの)突っ込み待ち(ラブ)コメディです。
※全話に挿絵が入る予定です。作者絵が苦手な方は、ご注意ください。ファンアートいただけると、泣いて喜びます。掲載させて下さい。お願いします。
完 モブ専転生悪役令嬢は婚約を破棄したい!!
水鳥楓椛
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢、ベアトリス・ブラックウェルに転生したのは、なんと前世モブ専の女子高生だった!?
「イケメン断絶!!優男断絶!!キザなクソボケも断絶!!来い!平々凡々なモブ顔男!!」
天才で天災な破天荒主人公は、転生ヒロインと協力して、イケメン婚約者と婚約破棄を目指す!!
「さあこい!攻略対象!!婚約破棄してやるわー!!」
~~~これは、王子を誤って攻略してしまったことに気がついていない、モブ専転生悪役令嬢が、諦めて王子のものになるまでのお話であり、王子が最オシ転生ヒロインとモブ専悪役令嬢が一生懸命共同前線を張って見事に敗北する、そんなお話でもある。~~~
イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる