『天界の封印在庫』は万能です!!

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!

文字の大きさ
27 / 42

第27話 俺の切り札

しおりを挟む
夜間、交代で森を見張り、早朝に俺達二人は出発した。
『奈落の髑髏』も夜は行動を控えていたようで、あまり距離は離されていない。

俺とエリスは定期的に『ナゾテイン』を補給して大森林を駆け走る。

昼過ぎに、岩から出る湧き水の傍で休憩していると、スマホ画面に表示されている赤い点が動かなくなった。

「奴等、どうやら古代遺跡に到着したようだな」

「ダントンは無事でしょうか?」

「それは大丈夫だろ。ドワーフ達が発見した古代遺跡は三つ。後一つ残っているからな。そこへ行くにはダントンは必要だ」

俺の説明を聞いて、エリスは安堵した表情を浮かべる。

それから俺達二人は、、『奈落の髑髏』のいる地点を目指す。
樹々の間を影のようにすり抜け 、二時間ほど走っていくと、目の前に崖が現れた。

その崖の中腹に、鈍色をした金属の円盤が見える。
そして崖の麓には奴等と一緒にダントンもいた。
縄で体を縛られているが、どうやら無事なようだ。

「ダントンは素早く動けそうにありません。どうするのですか?」

「俺に考えがある」

俺はスマホを取り出し、画面を切り替え、素早く四回タップをする。

これで奴等の体内で蚊の卵が溶けて、副作用が現れるはずだ。

それを待つ間に俺とエリスは作戦を立てる。

それから少しの間、茂みに隠れて様子を見ていると、ジャドの様子がおかしくなった。

右足に力が入らないようで、歩く度にカクカクと動きがおかしい。
次にレイヴンが手で腹を押えて、苦しそうに座り込む。

続いてヴェノムが首元を片手で押えて悶え始めた。
そして最後に、ゲイルが静かに口元を抑える。

どんな副作用が生じたのかは不明だが、連中は普段通りの動きはできなさそうだ。

俺はエリスに合図し、茂みから立ち上がった。
すると彼女は樹々の中へと消えていく。

「やっと追いついたぞ、『奈落の髑髏』! ダントンを返してもらおうか!」

「ノアか、ヒャッ! この遺跡は俺達のものだ、ヒャッ! ドワーフを、ヒャッ ! 返して欲しければ、ヒャッ! 大人しく、ヒャッ! そこで見ていろ、ヒャッ!」

「ヒャックリが止まらないのか。キチンと話せないようだが、それで俺達『不死の翼』と戦えるのか? もちろん『獅子の咆哮』も一緒に来てるぞ!」

「嘘は止めろ、ヒャッ! 『獅子の咆哮』は来ていない、ヒャッ! お前達だけなら対処は簡単だ、ヒャッ! 殺してやる、ヒャッ!」

ヴェノムはヒャックリを繰り返しながら、邪剣を構え走ってくる。
それと同時にレイヴンの姿が消え、次の瞬間に地面にうずくまっていた。

上手く透明になれないようだ。

ジャドも駆けてくるが、途中で膝がカクンと崩れ、体が前のめりに転がる。
ゲイルは長い杖を振り、呪文を詠唱するが、途中で盛大に舌を噛んだ。

俺は森の中へ駆け込みながら、必死にスマホを操作する。
そして空中に現れたショットガンを手に取り、ポーチから弾丸を取り出して素早くセットする。

「これでも喰らえ!」

フォアエンドをスライドさせ、引き金を引く。

ドン!

轟音が響き、その瞬間にヴェノムは必死に体を横へ飛ばす。

ドン!

ドン!

ドン!

ドン!

散弾を装填しショットガンを連射する。

「躱すだけか! 芸がないな!」

「斬り刻んでやる、ヒャッ!」

激高するヴェノムを先頭に、レイヴン、ジャド、ゲイルの三人も俺を追いかけてくる。
しかし、副作用の効果で連中は思うように走れない。

俺は時々、ショットガンを撃ち、奴等と適度に距離を開けて、森の中を駆け走った。
後ろを振り返ると、殺気を溢れさせ、三人が駆けてくる。

これだけ崖から遠ざければいいだろう。

今頃は森に隠れていたエリスがダントンを救出しているはずだ。

「そろそろ決着をつけるか」

俺は独り言を呟いて、スマホを操作する。
召喚したのは液体の入った小瓶。
これは『ナゾテイン』ではない。

俺の切り札、『サンダードリンク』だ。

転生前、天界で雷神様の特訓を受けていた俺は、雷神様の神力を浴びて、霊体が逞しく変化した。
しかし、転生した体は、人族の通常のスペックしかなく、本来の力を発揮できない。

そのことを気した雷神様が創ってくれた謎の飲料水、それが『サンダードリンク』である。

このドリンクを飲むことで、俺の霊体の中にある雷神様の神力が開放されるのだ。
ただし制約時間があり、力を発揮できるのは三分。

それを超えると、普通の体に戻ってしまい、猛烈に眠くなる副作用付き。
なので実践では一度も使ったことがなく、仲間もこの切り札のことは知らない。

俺を追ってくる『奈落の髑髏』はBランク冒険者の中でも相当な実力者揃いだ。
『不死の翼』の仲間がいれば、対処は簡単だが、俺一人では少し荷が重い。

俺は走るのを止め、小瓶の蓋を指で飛ばし、ドリンクを一気に流し込んだ。
次の瞬間、俺の体内に神力がが溢れ、体全体が雷に変化する。

「オラァ!」

俺は稲妻の速度で、ヴェノムに接近する。
ヴェノムの剣が振り下ろされる前に、俺の手が彼の腕に触れる。

「ギャァアー!」

一瞬の内に、雷を浴びたヴェノムは、白目を向いて痙攣したまま崩れ落ちた。

「まだまだ!」

俺はレイヴン、ジャド、ゲイルの三人へ次々と襲いかかる。

「ウギャァァアアー!」

「ガァァアー!」

レイヴンとゲイルは感電して、その場に倒れたが、ゲイルだけは避けられた。
稲妻の速度で奴の腕に触れたのに、肉体の感触がなかった。

「フフフ、ガブッ。神力を使いこなす者が、ガブッ。ベルトラン王国にいようとは、ガブッ」

「何回も舌を噛んで痛くないか? 口内炎になったら大変だぞ」

「とぼけた男め、ガブッ。今日の所は引き下がろう、ガブッ。次に顔を合わせる時は、ガブッ。簡単に殺さぬからな、ガブッ」

ゲイルはそう言い残すと、森の暗闇に溶け、姿を消した。

おいおい、ヴェノムよりもヤバイ奴じゃないか!

『奈落の髑髏』を率いていたのは、ゲイルかもしれないな。

倒れている三人へ視線を向ける。
動きだす者はいない。

一瞬だけ触れて感電させたから死ぬこといだろう。
完全に意識を失っているから、当分は起きそうにないな。

三分が過ぎたのか、体と武装が元に戻る。
どういう仕組みなのかは全くわからない。
全ては神力のおかげということで納得しておこう。

全力を出し切ったことで、急激に体が重くなり強烈な睡魔が訪れる。
徐々に意識が途切れてきた。

やはり副作用に抵抗するのは無理だ。
エリスには悪いが、少しの間眠らせてもらうよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

処理中です...