49 / 51
49.戦略会議①
しおりを挟む
王城にいる法衣貴族、地方貴族達は、シルベルク宰相によって大広間に集められ、そこで国王代理であるローランド兄上からの勅命を伝えられた。
近頃になって城内では、エルファスト魔法王国との衝突が噂されていたので、貴族達に大きな動揺はない。
しかし戦準備が現実を帯び、王国が勝てるかどうか、不安の色を濃くする者は多かった。
広間から解散すると、貴族達は自分達の部署へと戻り、戦に向けての指示を出していく。
それにより王宮は、一気にエルファスト魔法王国との戦に向けて進んでいった。
そして王宮騎士団の兵達により、王国内の全ての地方貴族達へ伝令され、王国内は瞬く間に戦の色へと染まっていった。
そんな中、クリトニア王国の外交官とエルファスト魔法王国の使者との交渉が行われ、王国側はアーリアの保護を継続、彼女の身柄を魔法王国に引き渡すことを強く拒否した。
その回答に魔法王国の使者は、魔法王国と敵対すればクリトニア王国は多大なる損失を被るだろうと、脅迫めいた言葉を述べ、それを受けて王国側の外交官は戦も辞さずと応え、交渉は決裂となった。
それから二十日後、エルファスト魔法王国からの使者が来訪し、クリトニア王国へ宣戦布告する旨を伝えてきた。
ローランド兄上、エミリア姉上、アデル兄上、僕、シルベルク宰相、バンベルク王宮騎士団長、リシリア近衛兵団長、警備兵団長の八名は、城内の会議室に集まり、魔法王国への対応を協議することになった。
それぞれに円形に組まれた席に座り、ローランド兄上を静かに見つめる。
ローランド兄上は一人一人へ顔を向け、大きく頷いてからゆっくりと言葉を吐く。
「この度、エルファスト魔法王国から宣戦布告の通達があった。我が王国としては一歩も引くことなく、戦に望むつもりだ。しかし、その選択は魔法王国と全面戦争へ進むものではない。そのことを踏まえて、戦に向けての策を話し合ってほしい」
ローランド兄上の言葉を聞いて、室内はシーンと鎮まる。
その中、 バンベルク王宮騎士団長が椅子から立ち上がった。
「魔法王国との全面戦争となれば、王国内の諸侯が持つ私兵を総動員する必要はあるが、魔法王国も初戦から全面戦争に打って出ることはないだろう。となれば、王国西側の諸侯には、いつでも出兵ができるように準備をさせ、初戦はまず王宮騎士団が王国軍として、一当たりするのが妥当な線でしょうな」
王宮騎士団の兵数は約一万。
常日頃は半分の五千人が戦に動員され、残りの半分の五千人は王都と城を警備する。
しかし、その気になれば一万人の兵を総動員することができるんだ。
エルファスト魔法王国がどれくらいの規模の戦争を想定しているかは不明だけど、敵兵の数が一万人以内であれば王宮騎士団で対抗できると読んだんだろうな。
悪くない案だと思う。
バンベルク王宮騎士団長が席に座ると、隣のリシリアがスッと立ち上がった。
「兵数はそれで事足りるとして、問題があるとすれば、魔法王国の宮廷魔導士団と王宮魔法士団でしょう。この両団の遠距離魔法攻撃で、本陣を急襲されれば危ういかと。我々、近衛兵団も参戦し、本陣の盾となりたく思います」
エルファスト魔法王国には二つの魔法士兵団がある。
宮廷魔導士団は、魔法王国が最強を誇る兵団で、魔導士で構成されていて、魔法陣を用いた強力な魔法攻撃を得意としている。
そして時には集団詠唱と魔法陣を用いた大規模魔法を使用することでも知られている。
噂では都市一つが壊滅するほどの威力があるとか。
それほどの大規模の魔法を行使するには、時間も人数もかかるから、戦などでは滅多に使われたことはないらしいけどね。
宮廷魔導士団の兵数は、全員が魔導士ということもあり百人にも満たない。
王宮魔法士団は魔導士未満の魔法士が集められた兵団だ。
それほど強力な魔法を放つことはできないし、あまりに離れた距離からの魔法攻撃はできないが、兵数は五百人を超える。
例えて言うなら、宮廷魔導士団の魔法攻撃は大砲クラスで、王宮魔法士団の魔法攻撃は拳銃クラス。
どちらにしても、魔法兵団を持たないクリトニア王国にとって、厄介な存在だ。リシリアが警戒するのも頷ける。
リシリアが席に座ったのを確かめて、僕はゆっくりと椅子から立ち上がり、机に両手を置いた。
「僕達王家はエルファスト魔法王国との衝突を予期して戦の準備してきました。この度、新しい兵器として魔導車を改造し、魔導戦車を作製しています。現在、魔導車の総数は六十台。バルドハイン帝国への牽制として、王国の東側に二十台を配備、魔法王国との初戦には四十台を当てる予定です」
僕の言葉を聞いて、室内がどよめく。
魔導戦車のことは、王家の兄姉とシルベルク宰相しか知らなかったから、他の者達が驚くのも無理はないよね。
近頃になって城内では、エルファスト魔法王国との衝突が噂されていたので、貴族達に大きな動揺はない。
しかし戦準備が現実を帯び、王国が勝てるかどうか、不安の色を濃くする者は多かった。
広間から解散すると、貴族達は自分達の部署へと戻り、戦に向けての指示を出していく。
それにより王宮は、一気にエルファスト魔法王国との戦に向けて進んでいった。
そして王宮騎士団の兵達により、王国内の全ての地方貴族達へ伝令され、王国内は瞬く間に戦の色へと染まっていった。
そんな中、クリトニア王国の外交官とエルファスト魔法王国の使者との交渉が行われ、王国側はアーリアの保護を継続、彼女の身柄を魔法王国に引き渡すことを強く拒否した。
その回答に魔法王国の使者は、魔法王国と敵対すればクリトニア王国は多大なる損失を被るだろうと、脅迫めいた言葉を述べ、それを受けて王国側の外交官は戦も辞さずと応え、交渉は決裂となった。
それから二十日後、エルファスト魔法王国からの使者が来訪し、クリトニア王国へ宣戦布告する旨を伝えてきた。
ローランド兄上、エミリア姉上、アデル兄上、僕、シルベルク宰相、バンベルク王宮騎士団長、リシリア近衛兵団長、警備兵団長の八名は、城内の会議室に集まり、魔法王国への対応を協議することになった。
それぞれに円形に組まれた席に座り、ローランド兄上を静かに見つめる。
ローランド兄上は一人一人へ顔を向け、大きく頷いてからゆっくりと言葉を吐く。
「この度、エルファスト魔法王国から宣戦布告の通達があった。我が王国としては一歩も引くことなく、戦に望むつもりだ。しかし、その選択は魔法王国と全面戦争へ進むものではない。そのことを踏まえて、戦に向けての策を話し合ってほしい」
ローランド兄上の言葉を聞いて、室内はシーンと鎮まる。
その中、 バンベルク王宮騎士団長が椅子から立ち上がった。
「魔法王国との全面戦争となれば、王国内の諸侯が持つ私兵を総動員する必要はあるが、魔法王国も初戦から全面戦争に打って出ることはないだろう。となれば、王国西側の諸侯には、いつでも出兵ができるように準備をさせ、初戦はまず王宮騎士団が王国軍として、一当たりするのが妥当な線でしょうな」
王宮騎士団の兵数は約一万。
常日頃は半分の五千人が戦に動員され、残りの半分の五千人は王都と城を警備する。
しかし、その気になれば一万人の兵を総動員することができるんだ。
エルファスト魔法王国がどれくらいの規模の戦争を想定しているかは不明だけど、敵兵の数が一万人以内であれば王宮騎士団で対抗できると読んだんだろうな。
悪くない案だと思う。
バンベルク王宮騎士団長が席に座ると、隣のリシリアがスッと立ち上がった。
「兵数はそれで事足りるとして、問題があるとすれば、魔法王国の宮廷魔導士団と王宮魔法士団でしょう。この両団の遠距離魔法攻撃で、本陣を急襲されれば危ういかと。我々、近衛兵団も参戦し、本陣の盾となりたく思います」
エルファスト魔法王国には二つの魔法士兵団がある。
宮廷魔導士団は、魔法王国が最強を誇る兵団で、魔導士で構成されていて、魔法陣を用いた強力な魔法攻撃を得意としている。
そして時には集団詠唱と魔法陣を用いた大規模魔法を使用することでも知られている。
噂では都市一つが壊滅するほどの威力があるとか。
それほどの大規模の魔法を行使するには、時間も人数もかかるから、戦などでは滅多に使われたことはないらしいけどね。
宮廷魔導士団の兵数は、全員が魔導士ということもあり百人にも満たない。
王宮魔法士団は魔導士未満の魔法士が集められた兵団だ。
それほど強力な魔法を放つことはできないし、あまりに離れた距離からの魔法攻撃はできないが、兵数は五百人を超える。
例えて言うなら、宮廷魔導士団の魔法攻撃は大砲クラスで、王宮魔法士団の魔法攻撃は拳銃クラス。
どちらにしても、魔法兵団を持たないクリトニア王国にとって、厄介な存在だ。リシリアが警戒するのも頷ける。
リシリアが席に座ったのを確かめて、僕はゆっくりと椅子から立ち上がり、机に両手を置いた。
「僕達王家はエルファスト魔法王国との衝突を予期して戦の準備してきました。この度、新しい兵器として魔導車を改造し、魔導戦車を作製しています。現在、魔導車の総数は六十台。バルドハイン帝国への牽制として、王国の東側に二十台を配備、魔法王国との初戦には四十台を当てる予定です」
僕の言葉を聞いて、室内がどよめく。
魔導戦車のことは、王家の兄姉とシルベルク宰相しか知らなかったから、他の者達が驚くのも無理はないよね。
199
お気に入りに追加
1,747
あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜
猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。
ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。
そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。
それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。
ただし、スキルは選べず運のみが頼り。
しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。
それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・
そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。

裏切られ追放という名の処刑宣告を受けた俺が、人族を助けるために勇者になるはずないだろ
井藤 美樹
ファンタジー
初代勇者が建国したエルヴァン聖王国で双子の王子が生まれた。
一人には勇者の証が。
もう片方には証がなかった。
人々は勇者の誕生を心から喜ぶ。人と魔族との争いが漸く終結すると――。
しかし、勇者の証を持つ王子は魔力がなかった。それに比べ、持たない王子は莫大な魔力を有していた。
それが判明したのは五歳の誕生日。
証を奪って生まれてきた大罪人として、王子は右手を斬り落とされ魔獣が棲む森へと捨てられた。
これは、俺と仲間の復讐の物語だ――

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/3/17新刊発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる