現代知識チートからの王国再建~転生第三王子は王国を発展させたい!~二大強国に挟まれた弱小王国の巻き返し!

潮ノ海月@2025/3/17新刊発売中

文字の大きさ
上 下
48 / 51

48.ローランド兄上の覚悟

しおりを挟む
一度は失敗して竜巻が発生したけど、二回目の実験では魔導車がひっくり返るぐらいの威力に収まった。

それでも人であれば数メートルは吹き飛ぶほどの威力はあるけど。
このぐらいであれば、怪我はあっても致命傷にはならないだろう。

僕はエミーに指示を出して、工房で作っている魔導戦車に、魔法陣の金属板を設置し、風魔法の機能を付与してもらうことにした。

魔導戦車の改良が開始されて一週間後、ローランド兄上に呼び出され、僕は玉座の間へと向かった。
部屋に入ると、ローランド兄上、シルベルク宰相、エミリア姉上、アデル兄上が揃って僕を待っていた。

皆の顔を見回すと、それぞれに厳しい表情をしている。

何かイヤな予感がして、僕はオズオズと訊ねる。

「何かあったの?」

「エルファスト魔法王国から使者が来た。アーリアを引き渡せと言ってきた」

アーリアを匿ってから、何組もの暗殺者が城に忍び込んできている。
暗殺者については、バンベルク騎士団長と近衛兵団長のリシリアが対処してくれたけどね。

その他にも僕達の気づかないうちに間者が城に潜んでいたかもしれない。
どちらにしてもエルファスト魔法王国に知られることは時間の問題だった。

シルベルク宰相は気分が重いのか、深く息を吐く。

「魔法王国側の主張は、魔導士は魔法王国が育成した者であり、その所有権は魔法王国にあると。よってクリトニア王国は速やかに魔導士を引き渡すように言っておりましてな」

魔導士を人扱いしていないところは引っかかるけど、話としては一応の筋道は立ってるよね。

ローランド兄上は両肘をデスクの上に置いて両手を組む。

「魔導士であるアーリアがクリトニア王国に亡命を求め、王宮はそれを認めて城で保護していることを使者には伝えた。すると使者がクリトニア王国が魔法王国の機密を不正に取得していると言い出したらしいんだ」

魔導士の持つ魔法陣の技術や知識は、たしかにエルファスト魔法王国の持つ機密情報だろう。
使者がそう言ってくるもの、想定の範囲内だ。

しかし、アーリアが王国に亡命を求めたとして、それを王国が庇護しただけという立場であれば、人道的視点から、王国のしていることも一概に不正とは言えないと思うんだけど。

アーリアの知識を借りて、魔法陣の研究をしたり、魔法陣を魔導戦車に付与したりしているから、魔法王国に知られれば、不正に機密情報を盗んだと言われても仕方ないよね。

両国の対話が平行線になるのは、交渉を行う前からわかっていたことだから、今更に驚くことでもない。

ローランド兄上は僕達の顔を見回して話を続けた。

「もちろん、こちらの外交官は王国としては亡命を求めた者を庇護しただけと主張した。それを受けて魔法国側の使者は、王国が魔法王国の機密情報を保持し続けること止めなければ、軍事的制裁も視野に入れると言い出したそうだ」

「とうとうエルファスト魔法王国との戦争か。戦への準備はできている。いつでも魔法王国の奴等をギャフンと言わせられるぜ」

「戦争になるかもという話をしているのに、そんなに喜んでどうするの。少しは戦う兵達のことを考えて、ちょっとは自重しなさいよ」

興奮するアデル兄上を、エミリア姉上がたしなめる。

ローランド兄上は苦々しい表情を浮かべて、ポツリと言葉を漏らす。

「ここまではイアンの予想通りだが、全面戦争になると思うかい?」

「魔法王国が強国だからと言って、いきなり全面戦争には出てこないと思うけど。小国のクリトニア王国にとっては大規模な戦になるんじゃないかな」

「魔法王国からの要望を拒否して、戦に勝てるかい?」

「魔法王国の軍を撤退させることならできると思う」

あまりに最初の戦で敵兵の死傷者が増えると、遺恨が残ってエルファスト魔法王国も本気になり、全面戦争へと発展しかねない。
そうなると後に交渉をする機会を失ってしまう。

交渉ができなければ、戦争がズルズルと長期化して、小国であるクリトニア王国のほうが不利になる。
それだけは全力で回避したい。

それに魔法王国と全面戦争になると、背後からバルドハイン帝国に狙われて、クリトニア王国は両国から戦争を仕掛けられて滅亡する可能性だってある。

もしエルファスト魔法王国と戦に突入するとしても、あくまでクリトニア王国が魔法王国と対等な立場であると知らしめる戦いでいい。

今こちらと戦をすれば、莫大な被害が出るぞと匂わせておけば、それで魔法王国は警戒して全面戦争に打って出ることはしないだろう。

そのためには初戦を短期で終わらせ、なるべく敵兵の死傷者を少なくし、圧勝する必要がある。
そうすれば、敵軍の覇気も失せ、撤退をするしか手段はなくなるよね。

シーンとした静けさが室内を覆う。
その中で、アデル兄上が腕をあげて力こぶを見せつける。

「ローランド兄上、父上にも既に決意を報告したんだろ。なんでここで尻ごみをする必要がある。後は自分達を信じてやるしかないだろ」

「そうね。いつまでもクリトニア王国が簡単に従うと思われているのも癪に障るわ。いい加減に対等な立場だってわからせてやらないと」

アデル兄上の言葉に、エミリア姉上が追随する。

僕は胸を片手で押えて大きく息を吐いて、ローランド兄上を真っ直ぐに見る。

「アデル兄上とエミリア姉上のいう通りです。今こそクリトニア王国の立場を取り戻しましょう」

「皆の意見はわかった。僕も覚悟を決めよう。これより王宮はクリトニア王国が魔法王国との戦に向けて舵を取る。これは国王代理として勅命だ。王国の兵に通達、戦の準備を進めよ」
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜

猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。 ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。 そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。 それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。 ただし、スキルは選べず運のみが頼り。 しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。 それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・ そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/3/17新刊発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...