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47.風魔法の魔法陣
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魔法陣を描く機械は完成したので、次にどんな魔法を魔法陣に描くかを、僕、エミー、アーリアの三人は考えることにした。
アデル兄上は務めがあると言って部屋から出ていった。
エミーは胸の前で両腕を組んで僕を見る。
「まずは、この魔法陣をどこで使いたいの? それがハッキリしないと、魔法陣に付与する魔法を決められないわ」
「それは決まっている。ドワーフ達に造ってもらっている戦車の全面か屋根の上に魔法陣を設置したいんだ」
「ということは魔法陣の魔法を戦に使うつもり? 私としては私達の作った戦車で、あまり人を殺したくないわ」
「それは僕も同じ意見だよ。しかし兵器である以上は、あるていどの威力がないといけないからね」
近い将来にエルファスト魔法王国とクリトニア王国が衝突するかもしれない。
だからドワーフ達にお願いして、魔導戦車を作ってもらっている。
しかし、敵の兵と言っても、大量殺戮していい理由にはならない。
できることなら、僕も人殺しの武器は作りたくない……何かいい方法はないだろうか。
僕とエミーが考え込んでいると、アーリアが控え目に手をあげた。
「火炎魔法は危険だと思います。人が燃える姿はグロいですし、臭いもスゴイですから」
今まで黙っていたと思ったら、なんてものをイメージしてるんだよ。
僕だって人が焼け死ぬところなんて見たくないよ。
「だから水魔法……でも窒息死って苦しいんですよね。昔に噂できいたんですけど、川で溺死した人の死体って、すごく腐乱していて酷いらしいです」
そんなホラーなことを想像するのは止めなさい。
僕はあまり城から出たこともないし、腐乱死体なんてみたことないよ。
そういえば、前世の日本の記憶の中にスプラッターな動画があったような……
気持ちが悪いのであまり思い出したくないな。
火炎魔法がダメで、水魔法がダメなら、残るは土魔法、風魔法、光魔法ぐらいかな?
光魔法といえばレーザー光線や、レールガンみたいな光線になるけど……
どちらも一発当たれば、必ず致命傷を与えてしまいそうな気がするな。
そうなると残るは風魔法……
風魔法であれば、体を吹き飛ばすけど致命傷にはなりにくいよね。
僕達三人は検討した結果、風魔法の魔法陣を戦車に設置することに決めた。
どの位の規模の風魔法にするかは、エミーとアーリアに任せた。
僕は魔道具作りも、魔法陣や魔法にも詳しくはないからね。
ここは専門家に任せておこう。
話し合いを終えたアーリアは机に座って、羊皮紙に向かって慎重に風魔法の魔法陣を描き、エミーに手渡す。
それを受け取ったエミーは「魔法陣の判を作って、金属板で試してみる」と言って、嬉々として部屋を出ていった。
それから一週間後、金属板に魔法陣を複写することに成功したとエミーから報告を受け、僕とアデル兄上はドワーフ達の工房へと足を運んだ。
僕達二人の姿を見たエミーは、工房の裏手の広場に機械を設置してあるらしく、その場所へと案内してくれた。
広場に行くと、空に向けて魔法陣の描かれた金属板を斜めに取り付けた機械が、鎮座している。
その機械まで走っていき、エミは大声をあげて起動ボタンを押す。
「ぶっ飛べ―!」
ブゥオオー!
機械はガタガタと動き出し、金属板に描かれた魔法陣が光り始める。
そして魔法陣から勢いよく竜巻が空へと渦巻いていく。
その風の勢いに周囲のゴミやガラクタが宙へ向かって、回転しながら舞い上がっていった。
それを見たアデル兄上は、喜びの声をあげる。
「スゲー! これならエルファスト魔法王国にも、バルドハイン帝国にも勝てるぞ! ワハハハハ」
その時、僕は呆気に取られて、口を開けたまま空を見上げていた。
あー、これはアカンやつだわ。
こんな勢いの竜巻に巻き込まれたら、空高く飛ばされた敵兵は、落下の速度と地面に衝突した衝撃で確実に死ぬよね。
アーリアとエミーには戦車に取り付ける武器と説明していたけど……
これでは敵兵の命も危険だけど、味方兵を巻き込んでしまうだろう。
いったい、どうして、こんな仕様になったんだ?
慌てて停止ボタンを押して機械を止めたエミーも、あまりの竜巻の威力に目を見開いている。
エミーの説明では、機械に設置している魔池は、魔導車と同じもので、魔法陣の金属板へ流れる魔力は一定量であり、それほど膨大な魔力は流れていないはずだという。
機械に問題がないのであれば、残る原因は魔法陣ということになる。
僕、アデル兄上、エミーの三人は、王城のアーリアの部屋へと急いだ。
部屋で寛いでいたアーリアへ、僕達三人で身振り手振りを使って、工房の広場で起こった惨事を説明する。
すると全てを聞いて、アーリアはポンと手を叩く。
「風魔法の魔法陣を描くのは得意なので、ついついいつもの調子で描いちゃいました」
その応えに僕達は口を開けて呆然とする。
ついついって、いつもあんな威力の魔法陣を描いてるのか!?
エルファスト魔法王国って、どんな威力の魔法を研究してるんだ!
考えるだけで怖すぎるよ!
今度はちゃんと、人が五メートルほど吹き飛ぶぐらいの威力と、アーリアに条件をつけて、羊皮紙に魔法陣を描いてもらった。
「どうして威力を下げる必要があるんだ? あの竜巻なら敵を撃滅することは簡単なのに」
胡坐をかいて、片手で頭を押えるアデル兄上は、まだ納得できていないようだけど、僕達は殺戮兵器を開発したいわけじゃないからね。
まずは金属板の魔法陣が機械の駆動によって無事に起動したことを喜ぼう。
アデル兄上は務めがあると言って部屋から出ていった。
エミーは胸の前で両腕を組んで僕を見る。
「まずは、この魔法陣をどこで使いたいの? それがハッキリしないと、魔法陣に付与する魔法を決められないわ」
「それは決まっている。ドワーフ達に造ってもらっている戦車の全面か屋根の上に魔法陣を設置したいんだ」
「ということは魔法陣の魔法を戦に使うつもり? 私としては私達の作った戦車で、あまり人を殺したくないわ」
「それは僕も同じ意見だよ。しかし兵器である以上は、あるていどの威力がないといけないからね」
近い将来にエルファスト魔法王国とクリトニア王国が衝突するかもしれない。
だからドワーフ達にお願いして、魔導戦車を作ってもらっている。
しかし、敵の兵と言っても、大量殺戮していい理由にはならない。
できることなら、僕も人殺しの武器は作りたくない……何かいい方法はないだろうか。
僕とエミーが考え込んでいると、アーリアが控え目に手をあげた。
「火炎魔法は危険だと思います。人が燃える姿はグロいですし、臭いもスゴイですから」
今まで黙っていたと思ったら、なんてものをイメージしてるんだよ。
僕だって人が焼け死ぬところなんて見たくないよ。
「だから水魔法……でも窒息死って苦しいんですよね。昔に噂できいたんですけど、川で溺死した人の死体って、すごく腐乱していて酷いらしいです」
そんなホラーなことを想像するのは止めなさい。
僕はあまり城から出たこともないし、腐乱死体なんてみたことないよ。
そういえば、前世の日本の記憶の中にスプラッターな動画があったような……
気持ちが悪いのであまり思い出したくないな。
火炎魔法がダメで、水魔法がダメなら、残るは土魔法、風魔法、光魔法ぐらいかな?
光魔法といえばレーザー光線や、レールガンみたいな光線になるけど……
どちらも一発当たれば、必ず致命傷を与えてしまいそうな気がするな。
そうなると残るは風魔法……
風魔法であれば、体を吹き飛ばすけど致命傷にはなりにくいよね。
僕達三人は検討した結果、風魔法の魔法陣を戦車に設置することに決めた。
どの位の規模の風魔法にするかは、エミーとアーリアに任せた。
僕は魔道具作りも、魔法陣や魔法にも詳しくはないからね。
ここは専門家に任せておこう。
話し合いを終えたアーリアは机に座って、羊皮紙に向かって慎重に風魔法の魔法陣を描き、エミーに手渡す。
それを受け取ったエミーは「魔法陣の判を作って、金属板で試してみる」と言って、嬉々として部屋を出ていった。
それから一週間後、金属板に魔法陣を複写することに成功したとエミーから報告を受け、僕とアデル兄上はドワーフ達の工房へと足を運んだ。
僕達二人の姿を見たエミーは、工房の裏手の広場に機械を設置してあるらしく、その場所へと案内してくれた。
広場に行くと、空に向けて魔法陣の描かれた金属板を斜めに取り付けた機械が、鎮座している。
その機械まで走っていき、エミは大声をあげて起動ボタンを押す。
「ぶっ飛べ―!」
ブゥオオー!
機械はガタガタと動き出し、金属板に描かれた魔法陣が光り始める。
そして魔法陣から勢いよく竜巻が空へと渦巻いていく。
その風の勢いに周囲のゴミやガラクタが宙へ向かって、回転しながら舞い上がっていった。
それを見たアデル兄上は、喜びの声をあげる。
「スゲー! これならエルファスト魔法王国にも、バルドハイン帝国にも勝てるぞ! ワハハハハ」
その時、僕は呆気に取られて、口を開けたまま空を見上げていた。
あー、これはアカンやつだわ。
こんな勢いの竜巻に巻き込まれたら、空高く飛ばされた敵兵は、落下の速度と地面に衝突した衝撃で確実に死ぬよね。
アーリアとエミーには戦車に取り付ける武器と説明していたけど……
これでは敵兵の命も危険だけど、味方兵を巻き込んでしまうだろう。
いったい、どうして、こんな仕様になったんだ?
慌てて停止ボタンを押して機械を止めたエミーも、あまりの竜巻の威力に目を見開いている。
エミーの説明では、機械に設置している魔池は、魔導車と同じもので、魔法陣の金属板へ流れる魔力は一定量であり、それほど膨大な魔力は流れていないはずだという。
機械に問題がないのであれば、残る原因は魔法陣ということになる。
僕、アデル兄上、エミーの三人は、王城のアーリアの部屋へと急いだ。
部屋で寛いでいたアーリアへ、僕達三人で身振り手振りを使って、工房の広場で起こった惨事を説明する。
すると全てを聞いて、アーリアはポンと手を叩く。
「風魔法の魔法陣を描くのは得意なので、ついついいつもの調子で描いちゃいました」
その応えに僕達は口を開けて呆然とする。
ついついって、いつもあんな威力の魔法陣を描いてるのか!?
エルファスト魔法王国って、どんな威力の魔法を研究してるんだ!
考えるだけで怖すぎるよ!
今度はちゃんと、人が五メートルほど吹き飛ぶぐらいの威力と、アーリアに条件をつけて、羊皮紙に魔法陣を描いてもらった。
「どうして威力を下げる必要があるんだ? あの竜巻なら敵を撃滅することは簡単なのに」
胡坐をかいて、片手で頭を押えるアデル兄上は、まだ納得できていないようだけど、僕達は殺戮兵器を開発したいわけじゃないからね。
まずは金属板の魔法陣が機械の駆動によって無事に起動したことを喜ぼう。
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