41 / 51
41.父上の元へ
しおりを挟む
玉座の間に残った僕とローランド兄上は、アーリアの処遇と王国の今後の展開について話し合った。
クリトニア王国は魔法陣の技術について劣っている。
だから、今まではエルファスト魔法王国の魔道具が、王国内に流れてくることに頼っていた。
『プリミチブの樹海』から来たドワーフ達とエミーの協力のおかげで、魔導車、魔池などの開発に成功したけど、まだまだ自国で複雑な魔道具を作れる域には達していない。
アーリアはエルファスト魔法王国の魔法研究所で魔法陣を研究してきた魔導士だ。
彼女の手を借りることができれば、魔法陣の分析や開発が大幅に発展する。
クリトニア王国にとっては喉から手が出るほど欲しい人材なんだよね。
それに僕個人としても魔法陣には興味があるし……
魔法陣を使えば、様々な機械に魔法の性能を付与することができる。
例えば、魔導車の全面から、火炎放射のような炎を噴き出したりとか。
どうしても子供心をくすぐられるよね。
ローランド兄上はデスクの上に両肘を置いて、両手を組んで難しい表情をする。
「既にアーリアの身柄は保護した。何度も説得すれば、彼女も我々に協力的になってくれるだろう。しかし問題になってくるのはエルファスト魔法王国だな」
「そうですね。王都にアーリアがいたことは、いずれ魔法王国に伝わるよね。それでいつまでも彼女の行方が掴めなかったら、王宮が匿っていると感づかれるだろうね」
「一時的に魔法王国から隠すことはできるが、一生、アーリアを匿うことはできないからな。いつかはエルファスト魔法王国に知られるだろう」
「どう考えても彼女のことを隠し続けるのは無理だよ。それに籠の鳥のように、彼女を城に閉じ込めるのは魔法王国とやってることが同じになっちゃう。暗殺者に狙われている間は仕方ないけどね」
僕の言葉を聞いて、ローランド兄上は渋い表情を浮かべる。
「となると、アーリアのことはエルファスト魔法王国にバレるとして、今後のことを考えたほうが良さそうだな」
「うん。もしかすると王国が邪魔をしたと魔法王国は思うかもしれないよね。軋轢が起きるかもしれない。もしアーリアの魔法陣の技術によってクリトニア王国の魔道具が発展すれば、エルファスト魔法王国だけでなく、バルドハイン帝国とも衝突は起こると思うんだよね」
「王国を発展させれば、二強国から睨まれる。それを怖れては王国は発展はできない。ここで覚悟を決めないといけないってことか」
眉間にシワを寄せて、ローランド兄上は悩ましそうに大きくため息をつく。
ローランド兄上は王太子であり、今は国王の代理だ。
王国の方針を決めるという重圧は、僕が想像する以上に大変なことだろうな。
しかし、僕は今まで心の内で思っていたことを、吐露した。
「このまま帝国と魔法王国に挟まれて萎縮していたら、いずれはどちらかの国に侵略されて、クリトニア王国は滅ぶと思う。だから、そうならないように今から手を打ったほうがいいと思うんだ」
「それについては私も同意見だ。ただ父上―ライナス国王が守ってきたクリトニア王国を、私の一存で王国の方向性を変えいいのか悩んでいた。しかし、アーリアの件はどうしても隠しおおすことはできない。私も覚悟を決めよう。今から父上へ報告に行く。イアンも一緒に来てくれるか?」
「それならエミリア姉上も一緒に行こうよ。姉上ならきっと協力してくれるよ」
「そうだな。姉弟の総意ということであれば父上にも納得していただけるな」
ローランド兄上は大きく頷いて席を立ち、僕と伴って玉座の間を出た。
姉弟の総意って……アデル兄上のこと完全に忘れてるよね。
今頃、アデル兄上は「蜘蛛」の情報を探して、王宮騎士団の兵達と共に行動しているはずだから、城の中にはいないけどね。
僕達二人は、僕の部屋でエミリア姉上と合流して、城の最上階へと向かった。
最上階は国王専用となっていて、王家の者でさえ普段は立ち入ることを控えている。
父上が原因不明の病を患ってから、僕は数えるぐらいしか最上階に来たことはない。
治療師が行うヒールや、薬師のポーションは、怪我や風邪のような軽い病気を治すには効果があるけど、重病を完治させるのは難しい。
エミリア姉上は頻繁に父上の部屋に訪れて、「聖女」の加護を開放して、光魔法で治癒を行っている。
そのおかげで、病は一時期よりも徐々に快方に向かっているらしい。
重厚な扉をノックし、ローランド兄上、エミリア姉上、僕の順番で部屋の中へ入る。
広い部屋の中には誰の姿もなく、豪華な大きいベッドで、父上は横になっていた。
ローランド兄上はベッドの隣の椅子に腰をかけて、控え目な声で父上に話しかける。
「エミリアとイアンと共に参りました。父上にご報告したいことがあります」
「……うむ……申してみよ……」
ローランド兄上の言葉に、父上は薄目を開けて、僕達三人を優しく見つめた。
クリトニア王国は魔法陣の技術について劣っている。
だから、今まではエルファスト魔法王国の魔道具が、王国内に流れてくることに頼っていた。
『プリミチブの樹海』から来たドワーフ達とエミーの協力のおかげで、魔導車、魔池などの開発に成功したけど、まだまだ自国で複雑な魔道具を作れる域には達していない。
アーリアはエルファスト魔法王国の魔法研究所で魔法陣を研究してきた魔導士だ。
彼女の手を借りることができれば、魔法陣の分析や開発が大幅に発展する。
クリトニア王国にとっては喉から手が出るほど欲しい人材なんだよね。
それに僕個人としても魔法陣には興味があるし……
魔法陣を使えば、様々な機械に魔法の性能を付与することができる。
例えば、魔導車の全面から、火炎放射のような炎を噴き出したりとか。
どうしても子供心をくすぐられるよね。
ローランド兄上はデスクの上に両肘を置いて、両手を組んで難しい表情をする。
「既にアーリアの身柄は保護した。何度も説得すれば、彼女も我々に協力的になってくれるだろう。しかし問題になってくるのはエルファスト魔法王国だな」
「そうですね。王都にアーリアがいたことは、いずれ魔法王国に伝わるよね。それでいつまでも彼女の行方が掴めなかったら、王宮が匿っていると感づかれるだろうね」
「一時的に魔法王国から隠すことはできるが、一生、アーリアを匿うことはできないからな。いつかはエルファスト魔法王国に知られるだろう」
「どう考えても彼女のことを隠し続けるのは無理だよ。それに籠の鳥のように、彼女を城に閉じ込めるのは魔法王国とやってることが同じになっちゃう。暗殺者に狙われている間は仕方ないけどね」
僕の言葉を聞いて、ローランド兄上は渋い表情を浮かべる。
「となると、アーリアのことはエルファスト魔法王国にバレるとして、今後のことを考えたほうが良さそうだな」
「うん。もしかすると王国が邪魔をしたと魔法王国は思うかもしれないよね。軋轢が起きるかもしれない。もしアーリアの魔法陣の技術によってクリトニア王国の魔道具が発展すれば、エルファスト魔法王国だけでなく、バルドハイン帝国とも衝突は起こると思うんだよね」
「王国を発展させれば、二強国から睨まれる。それを怖れては王国は発展はできない。ここで覚悟を決めないといけないってことか」
眉間にシワを寄せて、ローランド兄上は悩ましそうに大きくため息をつく。
ローランド兄上は王太子であり、今は国王の代理だ。
王国の方針を決めるという重圧は、僕が想像する以上に大変なことだろうな。
しかし、僕は今まで心の内で思っていたことを、吐露した。
「このまま帝国と魔法王国に挟まれて萎縮していたら、いずれはどちらかの国に侵略されて、クリトニア王国は滅ぶと思う。だから、そうならないように今から手を打ったほうがいいと思うんだ」
「それについては私も同意見だ。ただ父上―ライナス国王が守ってきたクリトニア王国を、私の一存で王国の方向性を変えいいのか悩んでいた。しかし、アーリアの件はどうしても隠しおおすことはできない。私も覚悟を決めよう。今から父上へ報告に行く。イアンも一緒に来てくれるか?」
「それならエミリア姉上も一緒に行こうよ。姉上ならきっと協力してくれるよ」
「そうだな。姉弟の総意ということであれば父上にも納得していただけるな」
ローランド兄上は大きく頷いて席を立ち、僕と伴って玉座の間を出た。
姉弟の総意って……アデル兄上のこと完全に忘れてるよね。
今頃、アデル兄上は「蜘蛛」の情報を探して、王宮騎士団の兵達と共に行動しているはずだから、城の中にはいないけどね。
僕達二人は、僕の部屋でエミリア姉上と合流して、城の最上階へと向かった。
最上階は国王専用となっていて、王家の者でさえ普段は立ち入ることを控えている。
父上が原因不明の病を患ってから、僕は数えるぐらいしか最上階に来たことはない。
治療師が行うヒールや、薬師のポーションは、怪我や風邪のような軽い病気を治すには効果があるけど、重病を完治させるのは難しい。
エミリア姉上は頻繁に父上の部屋に訪れて、「聖女」の加護を開放して、光魔法で治癒を行っている。
そのおかげで、病は一時期よりも徐々に快方に向かっているらしい。
重厚な扉をノックし、ローランド兄上、エミリア姉上、僕の順番で部屋の中へ入る。
広い部屋の中には誰の姿もなく、豪華な大きいベッドで、父上は横になっていた。
ローランド兄上はベッドの隣の椅子に腰をかけて、控え目な声で父上に話しかける。
「エミリアとイアンと共に参りました。父上にご報告したいことがあります」
「……うむ……申してみよ……」
ローランド兄上の言葉に、父上は薄目を開けて、僕達三人を優しく見つめた。
112
お気に入りに追加
1,747
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜
猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。
ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。
そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。
それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。
ただし、スキルは選べず運のみが頼り。
しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。
それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・
そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/3/17新刊発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる
シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。
そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。
なんでも見通せるという万物を見通す目だった。
目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。
これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!?
その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。
魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。
※他サイトでも連載しています。
大体21:30分ごろに更新してます。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる