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37.「蜘蛛」と対立する「黒鴉」
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さっそく今日の夜にでも廃墟に向かおうと考えていると、シルベルク宰相から護衛をつけようと提案があった。
夜中に街を徘徊するのに邪魔だから、護衛については丁寧にお断りした。
たぶん廃墟に行って、オーランに相談すれば、一緒に協力してくれるはずだからね。
その日の深夜遅く、城を抜け出そうと部屋の扉を開けると、なぜかエミリア姉上が廊下に立っていた。
どうして姉上の勘は鋭いんだよ。
「こそこそと何かしていると思ったら、また城を抜け出すつもりね。絶対に許さないんだから」
「えっと……今回はローランド兄上から許可をもらっているというか……」
「それなら早く言ってよ。怒られることがないなら、私も一緒に行く」
あー、エミリア姉上の姿を見た時から、こうなると思っていたよ。
もう抵抗する気もないよ。
僕とエミリア姉上は城の外壁の穴を抜けて、街へと駆け走った。
有名料理店の裏手の路地を一つ一つ探っていくと、カーネルさんが路地の壁に持たれて酒の小樽を飲んでいた。
僕達二人は手を振ってカーネルさんに駆け寄る。
路地裏に座って僕達三人は再会を喜び合った。
そして僕はカーネルさんに、「また情報収集を依頼したいんだけど」とお願いをしてみる。
するとカーネルさんは真顔になり、目を細めた。
「なにか厄介なことでも起こったか?」
「うん、王都にエルファスト魔法王国から逃げ出した魔導士が潜伏しているらしいんだよね。どうしても魔導士と接触して保護したいんだ。報酬なら前回の協力してくれた分も含めて支払うから、頼めないかな?」
「ワシが好きで手伝っているのだけじゃ。報酬などいらんわい。たまにイアン達が顔を見せてくれるだけでいい」
それから場所を変えようということになり、僕達三人は廃墟へと向かった。
部屋の中に入ると、ベッドで毛布に包まって、オーランはスヤスヤと眠っていた。
その毛布を剥ぎ取って、カーネルさんが彼女を叩き起こす。
「イアンが来たぞ。 起きんか」
「睡眠は重要」
薄目を開けてチラリと僕達を見たオーランは、姿勢を変えてまた眠ろうとする。
そんな彼女に、僕は外套から赤黄色の瓶を取り出した。
「今日はオーランが大好きなモノを持ってきたんだけどな」
「大好きなモノ?」
ムクリと起き上がったオーランは、眠そうに目を擦りながらジーッと瓶を見る。
そして、僕が持ってきたモノがわかった瞬間、僕の手から素早く瓶を奪い取った。
「ハチミツ」
ポツリと呟き、瓶の蓋を開けてハチミツを指につけて舐めはじめた。
僕はエルファスト魔法王国から魔導士が脱走したことをオーランに説明する。
すると必死にハチミツを指で舐めていた動きが止まり、無表情な顔をこちらへ向けた。
「黒髪のバサバサの人。誰かに追われてた。それで「黒鴉」の所へ連れていった」
「それだと何もわからないわよ。もっとわかりやすい言葉で説明しなさいよ」
あー、またオーランとエミリア姉上の喧嘩が始まった。
どうしてエミリア姉上は、オーランが絡むとキャラが壊れるんだよ。
オーランもエミリア姉上をあおるのを止めてほしい。
いつものことだから二人を放置して、オーランが言った言葉を考える。
街中で誰かを助けて、どこかへ連れていったということかな?
僕はオーランに問う。
「「黒鴉」って何?」
「盗賊ギルド? 暗殺ギルド? 「蜘蛛」と仲が悪い組織」
「黒鴉」とは「蜘蛛」と対立している組織なのか。
僕が悩んでいると、カーネルさんがニヤニヤと笑った。
「「黒鴉」というは変わっておってのう。盗みもするし、殺しもするが、あくどく儲けた者しか標的にせんのだ。王国内の闇に巣くう組織で、ことあるごとに「蜘蛛」と対立しているようだわい」
なるほど、前世の日本の記憶にある義賊に近い組織のようだね。
それなら少しは話し合いができるかもしれない。
まだオーランが助けた人物が魔導士かわからないけど、「黒鴉」と会えば、何らかの糸口が見つかるかもしれないな。
僕とカーネルさんは相談して「黒鴉」の組織に接触することにした。
僕達四人は廃墟を出て街へと繰り出した。
カーネルさんの案内で路地を進んでいくと、「黒鴉」のアジトは意外なことに大通りにあった。
真夜中だというのに、建物の前には、荒くれ者達が大勢でたむろしている。
その者達に向けて、カーネルさんはニコリと笑って片手をあげた。
「よう!」
「あ、カーネルのおじき!」
集まっていた者達は、カーネルさんに気づくと姿勢を正してペコペコと頭を下げる。
そして二手に分かれて、玄関への通る道を開けてくれた。
その中をカーネルさんはニコニコを微笑みながら歩を進め、玄関の中へと入っていく。
「サイナス組長に、カーネルが来たと繋いでくれ」
あれ? この様子からすると、カーネルさんって「黒鴉」の知り合いなの?
夜中に街を徘徊するのに邪魔だから、護衛については丁寧にお断りした。
たぶん廃墟に行って、オーランに相談すれば、一緒に協力してくれるはずだからね。
その日の深夜遅く、城を抜け出そうと部屋の扉を開けると、なぜかエミリア姉上が廊下に立っていた。
どうして姉上の勘は鋭いんだよ。
「こそこそと何かしていると思ったら、また城を抜け出すつもりね。絶対に許さないんだから」
「えっと……今回はローランド兄上から許可をもらっているというか……」
「それなら早く言ってよ。怒られることがないなら、私も一緒に行く」
あー、エミリア姉上の姿を見た時から、こうなると思っていたよ。
もう抵抗する気もないよ。
僕とエミリア姉上は城の外壁の穴を抜けて、街へと駆け走った。
有名料理店の裏手の路地を一つ一つ探っていくと、カーネルさんが路地の壁に持たれて酒の小樽を飲んでいた。
僕達二人は手を振ってカーネルさんに駆け寄る。
路地裏に座って僕達三人は再会を喜び合った。
そして僕はカーネルさんに、「また情報収集を依頼したいんだけど」とお願いをしてみる。
するとカーネルさんは真顔になり、目を細めた。
「なにか厄介なことでも起こったか?」
「うん、王都にエルファスト魔法王国から逃げ出した魔導士が潜伏しているらしいんだよね。どうしても魔導士と接触して保護したいんだ。報酬なら前回の協力してくれた分も含めて支払うから、頼めないかな?」
「ワシが好きで手伝っているのだけじゃ。報酬などいらんわい。たまにイアン達が顔を見せてくれるだけでいい」
それから場所を変えようということになり、僕達三人は廃墟へと向かった。
部屋の中に入ると、ベッドで毛布に包まって、オーランはスヤスヤと眠っていた。
その毛布を剥ぎ取って、カーネルさんが彼女を叩き起こす。
「イアンが来たぞ。 起きんか」
「睡眠は重要」
薄目を開けてチラリと僕達を見たオーランは、姿勢を変えてまた眠ろうとする。
そんな彼女に、僕は外套から赤黄色の瓶を取り出した。
「今日はオーランが大好きなモノを持ってきたんだけどな」
「大好きなモノ?」
ムクリと起き上がったオーランは、眠そうに目を擦りながらジーッと瓶を見る。
そして、僕が持ってきたモノがわかった瞬間、僕の手から素早く瓶を奪い取った。
「ハチミツ」
ポツリと呟き、瓶の蓋を開けてハチミツを指につけて舐めはじめた。
僕はエルファスト魔法王国から魔導士が脱走したことをオーランに説明する。
すると必死にハチミツを指で舐めていた動きが止まり、無表情な顔をこちらへ向けた。
「黒髪のバサバサの人。誰かに追われてた。それで「黒鴉」の所へ連れていった」
「それだと何もわからないわよ。もっとわかりやすい言葉で説明しなさいよ」
あー、またオーランとエミリア姉上の喧嘩が始まった。
どうしてエミリア姉上は、オーランが絡むとキャラが壊れるんだよ。
オーランもエミリア姉上をあおるのを止めてほしい。
いつものことだから二人を放置して、オーランが言った言葉を考える。
街中で誰かを助けて、どこかへ連れていったということかな?
僕はオーランに問う。
「「黒鴉」って何?」
「盗賊ギルド? 暗殺ギルド? 「蜘蛛」と仲が悪い組織」
「黒鴉」とは「蜘蛛」と対立している組織なのか。
僕が悩んでいると、カーネルさんがニヤニヤと笑った。
「「黒鴉」というは変わっておってのう。盗みもするし、殺しもするが、あくどく儲けた者しか標的にせんのだ。王国内の闇に巣くう組織で、ことあるごとに「蜘蛛」と対立しているようだわい」
なるほど、前世の日本の記憶にある義賊に近い組織のようだね。
それなら少しは話し合いができるかもしれない。
まだオーランが助けた人物が魔導士かわからないけど、「黒鴉」と会えば、何らかの糸口が見つかるかもしれないな。
僕とカーネルさんは相談して「黒鴉」の組織に接触することにした。
僕達四人は廃墟を出て街へと繰り出した。
カーネルさんの案内で路地を進んでいくと、「黒鴉」のアジトは意外なことに大通りにあった。
真夜中だというのに、建物の前には、荒くれ者達が大勢でたむろしている。
その者達に向けて、カーネルさんはニコリと笑って片手をあげた。
「よう!」
「あ、カーネルのおじき!」
集まっていた者達は、カーネルさんに気づくと姿勢を正してペコペコと頭を下げる。
そして二手に分かれて、玄関への通る道を開けてくれた。
その中をカーネルさんはニコニコを微笑みながら歩を進め、玄関の中へと入っていく。
「サイナス組長に、カーネルが来たと繋いでくれ」
あれ? この様子からすると、カーネルさんって「黒鴉」の知り合いなの?
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