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29.オーランへの報酬
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まだ寝ぼけているオーランに代わって、カーネルさんが教えてくれた。
もともとオーランは『プリミチブの樹海』の奥に住む白猫族の集落で生まれたという。
『プリミチブの樹海』で暮らすよりも、街で暮らすことを選んだ両親と共に、 クリトニア王国へ移住する予定だったらしい。
しかし、旅の途中で野盗に襲われ、両親は殺害され、オーランは野盗によって育てられ、殺し屋としての訓練を受けたそうだ。
そして殺し屋として成長したオーランを、野盗がバルドハイン帝国に売ったらしい。
そこからは帝国の暗殺部隊の一員として暗躍していたらしいけど、なぜか暗殺部隊から脱走してクリトニア王国へ来たという。
今では王都で様々な殺しの仕事を請け負っているらしい。
どうして帝国から抜け出したのか、その辺りの事情についてはカーネルさんも詳しくは知らないそうだ。
そこまでカーネルさんが話し終わると、ベッドに座っているオーランがパチパチと手を叩く。
「だいたい合ってる」
「話しを聞いてるなら、自分で話せ」
「それはメンドイ」
オーランの呟きに、カーネルさんは頭を抱える。
どうもやり取りと聞いていると、これが二人の平常運転のようだね。
朝になる前に城に戻りたいので、僕は早めに質問をきりだした。
「オーランは殺し屋をしてるんだよね。どんな人達から依頼がくるの?」
「その時その時で色々。 貴族からの依頼もあるし、商人からの依頼もある。奥さんから旦那を殺してと依頼されることもある」
今まで仲良しに見えた夫婦が実は……なにそれ、怖い!
僕は若干、頬を引きつりながら、話を続ける。
「「蜘蛛」っていう組織のことを知ってるかな? 情報があれば教えてほしいんだけど」
「「蜘蛛」を調べてるの? イアンは死にたいの?」
「いやいや別に死にたいわけじゃないよ。ちょっと興味があってね」
「「蜘蛛」に近づく者は殺される」
やはりオーランに聞いても今までの情報と同じか。
殺し屋稼業を営んでいるなら、もっと詳しい情報があるかもと期待していたんだけどな。
今回はこれで諦めようか考えていると、オーランは無表情な表情で首を傾げる。
「「蜘蛛」の情報がほしいの?」
「うん。色々と情報を集めてるんだけど、組織の全貌がハッキリしなんだよね」
「そう……それなら私が協力してもいい……ただし報酬はキッチリともらう」
「オーランが情報を探ってくれるの? それは助かるよ。もちろん報酬は払わせてもらうから」
「わかった……報酬は高級ハチミツ。お腹いっぱいの高級ハチミツ」
クリトニア王国では、高級ハチミツは医療で使用され、街のスイーツ店では下級のハチミツが使われている。
なかなか庶民の口には入りにくいモノなんだよね。
報酬が高級ハチミツなんて、基準が高いか低いかよくわからないけど。
しかし、王家の力をもってすれば、高級ハチミツを手に入れることぐらいは簡単だ。
僕は胸を張って拳で叩く。
「わかった。高級ハチミツを必ず用意するよ」
「約束を破ったら殺す」
物騒な目をしてオーランが言い放つ。
僕も高級ハチミツで殺されたくない。
城に戻ったら、早急に手配することにしよう。
それからしばらく、僕、カーネルさん、オーランの三人で雑談をして過ごした。
カーネルさんいわく、オーランは無口なうえに人見知りで、それに大雑把で仕事嫌いだから、王都に来た頃は、殺しの仕事も受けることもできずに、腹を空かして路上で行き倒れていたという。
そこへ通りがかったカーネルさんが、オーランを背負って廃墟まで連れてきたとか。
それからは街中に情報網を持っているカーネルさんが窓口となって、オーランへの依頼を受けているらしい。
どこにでもいる浮浪者だと思っていたけど、カーネルさんって何気にスゴイ人なのかも。
まだ夜の暗い間に廃墟を出て、城へと戻る。
自分の部屋に戻って装備を外し、ベッドに寝ようと毛布を取ると、いきなり人影に抱き着かれた。
「どこ行ってたのよ! お姉ちゃんを置いていかないで!」
「姉上! ちょっと離れて! 息できない!」
いきなりエミリア姉上に抱き着かれて、豊満な双丘に挟まれた僕は息ができずに手をバタつかせる。
僕の苦しむ声に、エミリア姉上はハッと気づいて、体を離してくれた。
「最近はちょくちょく城を抜け出しているのは知ってるんだから。どこに行っていたか、さっさと白状しなさい」
エミリア姉上は勘が鋭いから、やはりバレていたのか。
これは言い逃れできそうにないね。
僕は早々に諦め、ベッドに座ってカーネルさん、オーランとの出会いについて説明した。
話を聞き終わったエミリア姉上は複雑な表情をする。
「また妙な人達と知り合いになったものね。イアンのことだから何か考えがあると思うけど」
「心配をかけてごめんなさい」
「そう思うなら、私と一緒に寝ましょ。今日はイアンに抱き枕になってもらうから」
そう言ってエミリア姉上は僕を抱きしめ、毛布の中に引きずり込んだ。
姉上の柔らかい体が当たって、ドキドキしてなかなか睡魔が来ない。
これは明日も睡眠不足は決定だね。
もともとオーランは『プリミチブの樹海』の奥に住む白猫族の集落で生まれたという。
『プリミチブの樹海』で暮らすよりも、街で暮らすことを選んだ両親と共に、 クリトニア王国へ移住する予定だったらしい。
しかし、旅の途中で野盗に襲われ、両親は殺害され、オーランは野盗によって育てられ、殺し屋としての訓練を受けたそうだ。
そして殺し屋として成長したオーランを、野盗がバルドハイン帝国に売ったらしい。
そこからは帝国の暗殺部隊の一員として暗躍していたらしいけど、なぜか暗殺部隊から脱走してクリトニア王国へ来たという。
今では王都で様々な殺しの仕事を請け負っているらしい。
どうして帝国から抜け出したのか、その辺りの事情についてはカーネルさんも詳しくは知らないそうだ。
そこまでカーネルさんが話し終わると、ベッドに座っているオーランがパチパチと手を叩く。
「だいたい合ってる」
「話しを聞いてるなら、自分で話せ」
「それはメンドイ」
オーランの呟きに、カーネルさんは頭を抱える。
どうもやり取りと聞いていると、これが二人の平常運転のようだね。
朝になる前に城に戻りたいので、僕は早めに質問をきりだした。
「オーランは殺し屋をしてるんだよね。どんな人達から依頼がくるの?」
「その時その時で色々。 貴族からの依頼もあるし、商人からの依頼もある。奥さんから旦那を殺してと依頼されることもある」
今まで仲良しに見えた夫婦が実は……なにそれ、怖い!
僕は若干、頬を引きつりながら、話を続ける。
「「蜘蛛」っていう組織のことを知ってるかな? 情報があれば教えてほしいんだけど」
「「蜘蛛」を調べてるの? イアンは死にたいの?」
「いやいや別に死にたいわけじゃないよ。ちょっと興味があってね」
「「蜘蛛」に近づく者は殺される」
やはりオーランに聞いても今までの情報と同じか。
殺し屋稼業を営んでいるなら、もっと詳しい情報があるかもと期待していたんだけどな。
今回はこれで諦めようか考えていると、オーランは無表情な表情で首を傾げる。
「「蜘蛛」の情報がほしいの?」
「うん。色々と情報を集めてるんだけど、組織の全貌がハッキリしなんだよね」
「そう……それなら私が協力してもいい……ただし報酬はキッチリともらう」
「オーランが情報を探ってくれるの? それは助かるよ。もちろん報酬は払わせてもらうから」
「わかった……報酬は高級ハチミツ。お腹いっぱいの高級ハチミツ」
クリトニア王国では、高級ハチミツは医療で使用され、街のスイーツ店では下級のハチミツが使われている。
なかなか庶民の口には入りにくいモノなんだよね。
報酬が高級ハチミツなんて、基準が高いか低いかよくわからないけど。
しかし、王家の力をもってすれば、高級ハチミツを手に入れることぐらいは簡単だ。
僕は胸を張って拳で叩く。
「わかった。高級ハチミツを必ず用意するよ」
「約束を破ったら殺す」
物騒な目をしてオーランが言い放つ。
僕も高級ハチミツで殺されたくない。
城に戻ったら、早急に手配することにしよう。
それからしばらく、僕、カーネルさん、オーランの三人で雑談をして過ごした。
カーネルさんいわく、オーランは無口なうえに人見知りで、それに大雑把で仕事嫌いだから、王都に来た頃は、殺しの仕事も受けることもできずに、腹を空かして路上で行き倒れていたという。
そこへ通りがかったカーネルさんが、オーランを背負って廃墟まで連れてきたとか。
それからは街中に情報網を持っているカーネルさんが窓口となって、オーランへの依頼を受けているらしい。
どこにでもいる浮浪者だと思っていたけど、カーネルさんって何気にスゴイ人なのかも。
まだ夜の暗い間に廃墟を出て、城へと戻る。
自分の部屋に戻って装備を外し、ベッドに寝ようと毛布を取ると、いきなり人影に抱き着かれた。
「どこ行ってたのよ! お姉ちゃんを置いていかないで!」
「姉上! ちょっと離れて! 息できない!」
いきなりエミリア姉上に抱き着かれて、豊満な双丘に挟まれた僕は息ができずに手をバタつかせる。
僕の苦しむ声に、エミリア姉上はハッと気づいて、体を離してくれた。
「最近はちょくちょく城を抜け出しているのは知ってるんだから。どこに行っていたか、さっさと白状しなさい」
エミリア姉上は勘が鋭いから、やはりバレていたのか。
これは言い逃れできそうにないね。
僕は早々に諦め、ベッドに座ってカーネルさん、オーランとの出会いについて説明した。
話を聞き終わったエミリア姉上は複雑な表情をする。
「また妙な人達と知り合いになったものね。イアンのことだから何か考えがあると思うけど」
「心配をかけてごめんなさい」
「そう思うなら、私と一緒に寝ましょ。今日はイアンに抱き枕になってもらうから」
そう言ってエミリア姉上は僕を抱きしめ、毛布の中に引きずり込んだ。
姉上の柔らかい体が当たって、ドキドキしてなかなか睡魔が来ない。
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