現代知識チートからの王国再建~転生第三王子は王国を発展させたい!~二大強国に挟まれた弱小王国の巻き返し!

潮ノ海月@2025/3/17新刊発売中

文字の大きさ
上 下
4 / 51

4.国境での戦い

しおりを挟む
天幕の中でアデル兄上とベルムント辺境伯の軍議が続いている。
このままでは勢いに任せただけの戦略になりそうだ。

僕は控え目に声をあげる。

「戦力が互角なら、負傷者が増える可能性があるよ。勝てる戦いなら、負傷者を少なくする戦い方をしたほうがいいよね」

「相手が真っ向勝負をしてくるなら、こっちも真っ向から戦うのがカッコイイだろ」

「これは戦で、カッコイイ勝負をしてるんじゃないの。アデル兄上も、もっと戦略や作戦を考えたほうがいいよ」

「それはそうだが、頭を使うのはどうも苦手なんだ」

うん……アデル兄上が脳筋なことは知ってるよ。

ベルムント辺境伯がジロリと僕を睨む。

「それなら、どういった戦略が有効とお考えか?」

「敵兵と人当たりしてからの撤退戦かな」

「俺は王子だぞ。勝負が決する前から撤退なんかできるか」

「ホントに撤退するわけじゃないよ。戦う戦場を敵軍の思惑からずらして戦うんだよ」

「よくわからん。詳しく説明してくれ」

僕の考えたのは、敵軍と一当たりした後に、撤退を装って敵軍に追いかけさせる戦略だ。
そうなれば敵軍の先鋒は味方兵を追いかけて、敵軍の本陣から離れることになる。
そして数が少なくなった敵兵をの一気に味方兵で叩けばいい。

話を聞き終えた辺境伯は胸の前で両腕を組み、大きく頷く。

「確かにイアン殿下の戦略ならば、こちらの兵の負担が大幅に減りますな」

「なるほど、それなら撤退して逃げたことにはならない。イアンの戦略でいこう」

ベルムント辺境伯とアデル兄上は僕の戦略を採用して軍議を再開した。
軍議の結果、戦は明日と決め、 バルドハイン帝国軍へ伝令を走らせた。

翌日の朝、太陽が昇り始めた頃、両軍は横列に陣を構え、草原で対峙する。
僕とエミリア姉上は後方の天幕から戦場を見守る。

馬にまたがったアデル兄上が剣を頭上にかかげた。

「勝利は我等にあり! 全軍進め!」

アデル兄上の号令で、開戦を示す太鼓が鳴り響き、味方軍が横陣となって敵軍へと進んでいく。
バルドハイン帝国軍の方からも太鼓の音が聞こえ、敵軍も進軍を始めた。

草原の中央で、互いの軍の弓隊が矢を雨のように降らせ、その中を両軍の歩兵が長槍を持って激突する。
戦況は一気に乱戦模様へと移り変わっていいった。

頃合いを見計らって、前線で戦っていたアデル兄上が剣を真上にかかげる。

「撤退だ! 撤退しろ!」

その声に、味方の兵士達は、敵兵と応戦しながら撤退を始めた。
どこまで撤退するかは、後方にいるベルムント辺境伯が指揮をとる。

「もっと敵兵を引き入れろ! 応戦しながら撤退するのだ!」

逃げる味方兵を敵軍は好機とみて追いかけてくる。
しばらくすると、敵軍の陣は横列から縦に細長く変わっていった。

好機と見たのか、アデル兄上は馬体を翻して大声で号令をだす。

「全軍反転! 敵の本陣と先鋒が離れた、一気に畳みかけるぞ!」

草原に味方兵の怒号が鳴り響き、反転して敵軍の先鋒を殲滅していく。
こちらの目論みを知った敵兵が、撤退しようとするけどもう遅い。

味方兵は敵兵を各個撃破し、敵軍の本陣へと迫っていった。

その様子を見ていたエミリア姉上は安堵したように微笑む。

「これで勝敗は決まったわね。さすがイアンの戦略だわ」

「違うよ。いくら戦略がよくても、実践できなければ意味がないし。これはアデル兄上の功績だよ」

「そうね。そういうことにしておきましょう」

アデル兄上は考えるのは苦手だけど、覚えたことを素直に実行する、抜群の行動力がある。
戦略を使いこなせたのは、アデル兄上だからこそだ。

エミリア姉上に褒められて、照れたわけじゃないからね。

昼過ぎに戦闘を中止するラッパが吹き鳴らされた。
どうやら敵軍の本陣は壊滅したらしい。

アデル兄上と辺境伯が戦場から戻ってきた。
その後ろに見知らぬ二人の男が縄に縛られて、兵達によって連行されてくる。

たぶん敵軍の首級だろうな。

「イアン、俺の活躍を見たか!」

「はい、アデル兄上。めちゃくちゃかっこよかったよ」

「そうか、もっと褒めていいんだぞ」

無事に戦も勝利し、今日は自陣の天幕で野営し、明日領都へ凱旋することになった。
翌日の昼前に撤収を終わり、僕達三人は辺境伯軍と共に領都へ向かう。

兵達の行軍に同行したので、馬車で来た時よりも日数がかかり、領都に戻ったのは四日後だった。

先触れの伝令が先に戦での勝利を伝えていたので、領都に到着すると庶民達が大通りに立って、僕達を出迎えてくれた。

庶民達はそれぞれに、アデル兄上とベルムント辺境伯の名を呼んで、今回の戦の勝利を祝う。
馬に乗って笑顔で手を振るアデル兄上はとてもかっこよかった。

ベルムント辺境伯の邸に到着した僕達は、旅と戦の疲れを癒すため、少しの間は邸に滞在することになった。

王都を出てから忙しかったから、少しは休憩してもいいよね。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜

猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。 ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。 そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。 それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。 ただし、スキルは選べず運のみが頼り。 しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。 それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・ そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/3/17新刊発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

処理中です...