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第26話 渉と楓姉
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夜景を眺めながら、十五階の廊下を奥まで歩き、角部屋の前で立ち止まってインターホンを鳴らす。
するとドアがゆっくりと開いて、渉が顔を覗かせた。
「あれ? お姉さんも一緒かい。入ってくれていいよ」
「和也の姉で楓です。よろしくね」
楓姉は渉の顔を見るなり、表情を輝かせて、嬉しそうに微笑む。
そんな楓姉を押しのけて、俺は先に玄関を潜る。
「どうして渉が俺の姉のことを知ってるんだよ。話した覚えはないぞ」
「雄二と凪沙から聞いていたからな。和也はお姉ちゃんと仲がいいと言ってたよ」
ニコニコと笑顔で渉がそう告げる。
俺の家の家族構成まで話のネタにするなんて、学校で会ったら、二人に文句を言ってやる。
そんなことを考えながら、靴を脱いで廊下を歩いていくと、リビングに通された。
室内はガランとしていてソファもテレビもない。
開けられた段ボールが幾つかあるだけだ。
その部屋の様子に、後から入ってきた楓姉も驚いた様子をしている。
「この街に長居するつもりはなかったから、あまり荷物を持ってきていないんだ」
屋上で二人で話していた時、ある神社の女宮司から頼まれたと渉は言っていた。
ということは、その頼まれ事が済めば、渉は元いた都市へ戻るのだろう。
何となく予想はしていたが、室内に家具類がないことで実感が湧く。
渉は「適当に床に座ってください」と言って、ダイニングへと歩いていく。
俺と楓姉は黙ったまま床に座り、互いに顔を見合した。
「渉君のご実家って複雑な事情でも抱えてるの?」
「そんな深い話は知らない」
微妙な沈黙に包まれていると、渉が飲料水のペットボトルと三本持ってきた。
それを俺と楓姉に渡して、部屋の隅にあったリュックを手に持って自分も床に座る。
そしてリュックから、お札の類を数枚取り出して、俺の前に置く。
「これは知り合いの女宮司が、祈祷した、特別な用紙で作られた護符だ。破魔の効果がある。強い恨みや、呪いを持つ霊には効果は保証できない。その辺に漂っている霊なら大丈夫だろう」
「それって、霊媒師が使うアイテムよね。初めて本物を見たわ」
「うるさい、楓姉。わかった、家に帰ったら、部屋ごとに貼っておく。それに天音、雄二、凪沙にも念のため、渡したほうがいいな」
「まだ手持ちの護符は残っている。雄二と凪沙には学校で会った時にでも渡そう。天音の分は和也が持っていろ」
そう言って、渉はリュックから取り出した追加の護符を俺に手渡す。
すると俺達二人の様子を見ていた楓姉が首を傾げる。
「それにしても変ね、莉子ちゃんが霊障に遭ってから、和也にも色々なことが起こってるし、雄二君、凪沙ちゃん、天音ちゃんまで心霊現象に遭うなんてね。これって『こっくりさん』の祟りなのかしら?」
「何が起こっているか、全容はわかりません。もしかすると学校を休んでいる葵も怪異に遭っているかもしれませんし、僕達の知らない誰かが心霊現象に遭遇している可能性もあります」
「そう言われるとそうね。霊媒師さんと知人の渉君でもわらからないかー」
ほのぼのとした表情で語ったいる楓姉の顔を見て、俺はガクッと体の力が抜ける。
すると渉も一瞬だけ呆けたほうな表情をして、クククッと笑いだした。
「知り合いに霊能力者がいても、僕には何もできませんよ」
「そうなの? 護符まで用意して霧野川高校に編入までしてきたのに? 普通の高校生でないことは確かよね。ふふふ」
とぼけた表情をしているが、楓姉は勘も鋭いし、洞察力にも優れている。
渉が心霊関係に関わっていると感じたのだろう。
すると渉は困った様子で髪をかいて、肩を竦める。
「さっき言ったことは本当ですよ。あるキッカケで、一般の方よりも少しだけ霊感はありますけど、幽霊も妖怪も見えたことはないです。心霊現象の絡む件で動いているのは否定しませんが」
「それなら和也や他の皆のこと、よろしくお願いね。協力できることなら何でもするから。車はあるから、渉君の足代わりになれるわ。渉君とだったら二人だけのお泊りもOKよ」
神妙な表情をして頭を下げた楓姉が、上半身を起してニッコリと微笑む。
その頭を俺は後ろから手で軽く叩いた。
「どうして最後に自分を売り込んでんだよ」
「だって、渉君と二人っきりでデートしたいでしょ。イケメンとお泊りしたいでしょ」
「初対面の男子に何を言ってるんだ。楓姉より年下だぞ。少しは節操を持てよ」
楓姉と俺が言い争いをしていると、床に両手を着いて、顔を上に向けながら渉が笑い始めた。
「ハハハハ、雄二と凪沙が楓お姉さんには敵わないって言ってたけど、意味がわかったよ。フフフ、それにしても、本当に二人は仲がいいんだな。今まで和也に彼女ができなかったのは、楓お姉さんが影響してるのかもね」
「俺がシスコンみたいな言い回しをするのはやめろ」
俺の言葉に渉と楓姉が同時に笑いだす。
今までスマホ通話の怪異の件で緊張していた俺は、やっと穏やかな気持ちになることができた。
また楓姉と渉の雰囲気に乗せられたようだが、二人の気遣いがありがたい。
そして、これから天音の家に行くことを伝えるため、彼女に連絡することになった。
しかし、俺から天音にLINE通話をしてみるが、音信不通で全く連絡が取れない。
それは渉も同様で、天音とは連絡がつかなかった。
それでLINEでコメントしてみると、数分後に天音から返信がきた。
俺は天音に家の住所を教えてほしいと素早くタップする。
するとまた数分後に返信があり、きちんと住所の記載があった。
そして今から天音の家に向かうとコメントすると、彼女から「すぐ来て。何かが#$&%47$#」と文字化けしたコメントが返ってきた。
天音が文字を打ち間違えたのか、霊障が起こっているのか、判別できないが、早く彼女の家に向かったほうが良さそうだ。
俺達三人は相談して、渉が外着に着替えた後、渉の家を出て廊下を駆け走った。
するとドアがゆっくりと開いて、渉が顔を覗かせた。
「あれ? お姉さんも一緒かい。入ってくれていいよ」
「和也の姉で楓です。よろしくね」
楓姉は渉の顔を見るなり、表情を輝かせて、嬉しそうに微笑む。
そんな楓姉を押しのけて、俺は先に玄関を潜る。
「どうして渉が俺の姉のことを知ってるんだよ。話した覚えはないぞ」
「雄二と凪沙から聞いていたからな。和也はお姉ちゃんと仲がいいと言ってたよ」
ニコニコと笑顔で渉がそう告げる。
俺の家の家族構成まで話のネタにするなんて、学校で会ったら、二人に文句を言ってやる。
そんなことを考えながら、靴を脱いで廊下を歩いていくと、リビングに通された。
室内はガランとしていてソファもテレビもない。
開けられた段ボールが幾つかあるだけだ。
その部屋の様子に、後から入ってきた楓姉も驚いた様子をしている。
「この街に長居するつもりはなかったから、あまり荷物を持ってきていないんだ」
屋上で二人で話していた時、ある神社の女宮司から頼まれたと渉は言っていた。
ということは、その頼まれ事が済めば、渉は元いた都市へ戻るのだろう。
何となく予想はしていたが、室内に家具類がないことで実感が湧く。
渉は「適当に床に座ってください」と言って、ダイニングへと歩いていく。
俺と楓姉は黙ったまま床に座り、互いに顔を見合した。
「渉君のご実家って複雑な事情でも抱えてるの?」
「そんな深い話は知らない」
微妙な沈黙に包まれていると、渉が飲料水のペットボトルと三本持ってきた。
それを俺と楓姉に渡して、部屋の隅にあったリュックを手に持って自分も床に座る。
そしてリュックから、お札の類を数枚取り出して、俺の前に置く。
「これは知り合いの女宮司が、祈祷した、特別な用紙で作られた護符だ。破魔の効果がある。強い恨みや、呪いを持つ霊には効果は保証できない。その辺に漂っている霊なら大丈夫だろう」
「それって、霊媒師が使うアイテムよね。初めて本物を見たわ」
「うるさい、楓姉。わかった、家に帰ったら、部屋ごとに貼っておく。それに天音、雄二、凪沙にも念のため、渡したほうがいいな」
「まだ手持ちの護符は残っている。雄二と凪沙には学校で会った時にでも渡そう。天音の分は和也が持っていろ」
そう言って、渉はリュックから取り出した追加の護符を俺に手渡す。
すると俺達二人の様子を見ていた楓姉が首を傾げる。
「それにしても変ね、莉子ちゃんが霊障に遭ってから、和也にも色々なことが起こってるし、雄二君、凪沙ちゃん、天音ちゃんまで心霊現象に遭うなんてね。これって『こっくりさん』の祟りなのかしら?」
「何が起こっているか、全容はわかりません。もしかすると学校を休んでいる葵も怪異に遭っているかもしれませんし、僕達の知らない誰かが心霊現象に遭遇している可能性もあります」
「そう言われるとそうね。霊媒師さんと知人の渉君でもわらからないかー」
ほのぼのとした表情で語ったいる楓姉の顔を見て、俺はガクッと体の力が抜ける。
すると渉も一瞬だけ呆けたほうな表情をして、クククッと笑いだした。
「知り合いに霊能力者がいても、僕には何もできませんよ」
「そうなの? 護符まで用意して霧野川高校に編入までしてきたのに? 普通の高校生でないことは確かよね。ふふふ」
とぼけた表情をしているが、楓姉は勘も鋭いし、洞察力にも優れている。
渉が心霊関係に関わっていると感じたのだろう。
すると渉は困った様子で髪をかいて、肩を竦める。
「さっき言ったことは本当ですよ。あるキッカケで、一般の方よりも少しだけ霊感はありますけど、幽霊も妖怪も見えたことはないです。心霊現象の絡む件で動いているのは否定しませんが」
「それなら和也や他の皆のこと、よろしくお願いね。協力できることなら何でもするから。車はあるから、渉君の足代わりになれるわ。渉君とだったら二人だけのお泊りもOKよ」
神妙な表情をして頭を下げた楓姉が、上半身を起してニッコリと微笑む。
その頭を俺は後ろから手で軽く叩いた。
「どうして最後に自分を売り込んでんだよ」
「だって、渉君と二人っきりでデートしたいでしょ。イケメンとお泊りしたいでしょ」
「初対面の男子に何を言ってるんだ。楓姉より年下だぞ。少しは節操を持てよ」
楓姉と俺が言い争いをしていると、床に両手を着いて、顔を上に向けながら渉が笑い始めた。
「ハハハハ、雄二と凪沙が楓お姉さんには敵わないって言ってたけど、意味がわかったよ。フフフ、それにしても、本当に二人は仲がいいんだな。今まで和也に彼女ができなかったのは、楓お姉さんが影響してるのかもね」
「俺がシスコンみたいな言い回しをするのはやめろ」
俺の言葉に渉と楓姉が同時に笑いだす。
今までスマホ通話の怪異の件で緊張していた俺は、やっと穏やかな気持ちになることができた。
また楓姉と渉の雰囲気に乗せられたようだが、二人の気遣いがありがたい。
そして、これから天音の家に行くことを伝えるため、彼女に連絡することになった。
しかし、俺から天音にLINE通話をしてみるが、音信不通で全く連絡が取れない。
それは渉も同様で、天音とは連絡がつかなかった。
それでLINEでコメントしてみると、数分後に天音から返信がきた。
俺は天音に家の住所を教えてほしいと素早くタップする。
するとまた数分後に返信があり、きちんと住所の記載があった。
そして今から天音の家に向かうとコメントすると、彼女から「すぐ来て。何かが#$&%47$#」と文字化けしたコメントが返ってきた。
天音が文字を打ち間違えたのか、霊障が起こっているのか、判別できないが、早く彼女の家に向かったほうが良さそうだ。
俺達三人は相談して、渉が外着に着替えた後、渉の家を出て廊下を駆け走った。
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