上 下
93 / 93
第2章 グランタリア大陸東部編

92.王妃達との相談!

しおりを挟む
サイフォン魔法学院から帝都イシュタルの店舗に戻った僕は、執務室で作業をしていたアグウェルに声をかける。


「今日、魔法学院でイグラシア王国のロザリア第十三王女殿下と、ネバレイル王国のルミエラ第十一王女殿下の二人に会ってきたよ。アグウェルのことだから、ここまで言えば話しの内容はだいたいわかるよね」

「イグラシア王国の王宮と、ネバレイル王国の王宮が、シオン様と連絡が取れないと、サイフォン魔法学院に通っている二人の姫殿下に伝えたわけですね。それで二人がシオン様に、二国の王宮と話しをしてほしいと懇願してきたのですね」

「その通りだよ。アグウェル、イグラシア王国の王宮と、ネバレイル王国の王宮が僕と連絡を取り違っていることを隠していたよね」


疑いの眼差しを向けると、アグウェルは椅子から立ち上がり、胸に手を当てて礼をする。


「シオン様に無用な負担をかけまいと、黙っていたこと申し訳ありません。その件は私の判断で対処しておりました」

「どう対処してたの?」

「両国の伝令が店舗に来ましたので、『従順になる肉』と『テイムできる果実』を使った料理でおもてなしをし、シオン様の忠実な配下になってもらった上で、それぞれの国へ帰っていただきました。今では、その者達から両国の情報が私の元に届いております」


……それって、こちらの諜報員を潜らせてるおと同じだよね……


アグウェルは真剣な表情をして僕を見る。


「ネバレイル王国もイグラシア王国も六か国の会合があってから、頻繁に帝都イシュタルに諜報員を送り込んでおり、シオン様の身柄確保をしようと企てていた国々ですので、本来であれば私が直接的に手を下したいところなのですが」

「それは大事になるから止めてね」

「そう言われると思い、諜報員を送り込むだけに留めております」


……アグウェルも一応は自制してくれてたんだね……


「それでは進言させていただきます。ネバレイル王国もイグラシア王国も、こちらから向かう必要はないかと。二国がシオン様と会いたいというのであれば、向こうから出向いてもらえばいいでしょう」


……一国一国を回って、その王宮と話し合うには確かに日数もかかるよね……帝都イシュタルに来てもらえれば、イグラシア王国、ネバレイル王国、それにナルニアス王国とも一度に会談することができる。


「わかったアグウェルの言う通りにするよ」

「ありがとうございます。では『ロンメル商会、サポートの会』の方々にも出席していただくように準備を整えましょう。三国がシオン様に会いたがっているのは、あの六か国会合のことが知りたいためですので」


……僕みたいな子供が説明するよりも、そのほうが三国も納得しやすいかもしれないね……


「そうだね。僕が説明するよりもいいかもしれないね。よろしくお願いするよ」

「御意」


アグウェルは再び礼をすると黒霧となって消え去っていった。

その翌日、僕がサイフォン魔法学院から帰ってくると、店舗の応接室でセレーネ王妃、アミーレ王妃、マリナ女王陛下が、優雅に紅茶を飲んでいた。


「あれ? みなさん、店舗まで来てくださって、どうされたのですか?」

「アグウェルさんから話しを聞いて、こちらに来てみれば、アミーレ王妃とマリナ女王陛下も来られていて、どうやらお二人もシオン君のことが心配で集まられたようですね」

「そうじゃ、六か国会合のことで、厄介なことになっておるなら、なぜわらわ達に相談せんのじゃ」

「六か国の会合で周辺諸国から疑念を持たれているのは私達ですから。私達も協力するのは当然のことです」


マリナ女王殿下とアミーレ王妃はうんうんと頷き合う。

セレーネ王妃は部屋の壁際で、静かに立っているアグウェルに視線を向ける。


「それでアグウェルさん、ネバレイル王国とイグラシア王国、この二国の王宮はどのように考えているの?」

「はい。二国が注目している点は、六か国が軍事面で協力関係にあるかどうか。それと、その協力関係に『ロンメル商会』がどのように関わっているかという点です」


そこで言葉を区切って、アグウェルは人差し指を立てる。


「それとは別に、二国は既に『ロンメル商会』が竜種を使役している情報を掴んでおり、その竜種を軍事に応用するため、『ロンメル商会』を抱き込みたいと画策しております」

「ということは……『ロンメル商会、サポートの会』の加盟国で集まっただけで、あの会合に軍事的な意味合いはないと説明しても、ムダってことかしら?」

「先の六か国会合については、説明すれば一定の理解は得られるでしょうが、今後、六か国が軍事的な結びつきに発展する可能性は拭いきれません。よって二国の警戒を解くことはできないしょう。その上で、今後の軍備増強のため、『ロンメル商会』の竜種の奪取を強硬しようとするでしょう」


……王妃様達が二国を説得してくれても、『ロンメル商会』を抱き込む動きは止められないということかな……


「うむ、わらわ達が説得しても、シオンが狙われるのを止められんというわけじゃのう」

「困ったわね。私達は二国と争うつもりはありませんのに」

「国々で争うことが、どれだけ不毛なことか、わからないのかしら」


マリナ女王陛下、アミーレ王妃、セレーネ王妃は、それぞれに顔を見合わせて、難しい表情で思い悩む。

するとアグウェルは姿勢を正して、僕達に向けて深々と頭を下げた。


「少々、手荒い手段を講じることになりますが、 ネバレイル王国とイグラシア王国、それとナルニアス王国を『ロンメル商会、サポートの会』に加盟させる手立てがございます。どうか、この度の一件の全てを、このアグウェルに任せてくださいませ」
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(76件)

MIHO
2024.07.02 MIHO

誤字を見付けましたので報告します。

2章 51,リンメイさんとの相談!から

冒険者ギルド東支部のメイリンさんとありますが、商業ギルド東支部のリンメイさんではないでしょうか?
最初からずっと冒険者ギルドになっています。

解除
yurif
2024.06.29 yurif

二話目、レオン様は知性の方が成長・・・なってますが、シオン様かと。

解除
ネクロノミコン

もう更新されないのでしょうか?

解除

あなたにおすすめの小説

可愛いけど最強? 異世界でもふもふ友達と大冒険!

ありぽん
ファンタジー
[お知らせ] 書籍化決定!! 皆様、応援ありがとうございます!!      2023年03月20日頃出荷予定です!! 詳しくは今後の刊行予定をご覧ください。  施設で暮らす中学1年生の長瀬蓮。毎日施設の人間にいいように使われる蓮は、今日もいつものように、施設の雑用を押し付けられ。ようやく自分の部屋へ戻った時には、夜22時を過ぎていた。  そして自分お部屋へ戻り、宿題をやる前に少し休みたいと、ベッドに倒れ込んだ瞬間それは起こった。  強い光が蓮を包み込み、あまりの強い光に目をつぶる蓮。ようやく光が止んできたのが分かりそっと目を開けると…。そこは今まで蓮が居た自分の部屋ではなく、木々が生い茂る場所で。しかも何か体に違和感をおぼえ。  これは蓮が神様の手違いにより異世界に飛ばされ、そこで沢山の友達(もふもふ)と出会い、幸せに暮らす物語。 HOTランキングに載せていただきました。皆様ありがとうございます!! お気に入り登録2500ありがとうございます!!

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されたやり直し令嬢は立派な魔女を目指します!

古森きり
ファンタジー
幼くして隣国に嫁いだ侯爵令嬢、ディーヴィア・ルージェー。 24時間片時も一人きりにならない隣国の王家文化に疲れ果て、その挙句に「王家の財産を私情で使い果たした」と濡れ衣を賭けられ処刑されてしまった。 しかし処刑の直後、ディーヴィアにやり直す機会を与えるという魔女の声。 目を開けると隣国に嫁ぐ五年前――7歳の頃の姿に若返っていた。 あんな生活二度と嫌! 私は立派な魔女になります! カクヨム、小説家になろう、アルファポリス、ベリカフェに掲載しています。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

星空のツァイトライゼ ~未来の君がくれた二人の時間~

成井露丸
青春
時間を越える不思議な青い宝石「刻を翔ける紫水晶」を巡る、タイムトラベル青春ラブストーリー。 主人公の宮下悠人は、ある夏の夜、ハンバーガーショップで有坂未央と出会う。二人は急速に親密になるが、悠人には秘密があった。それは彼の親友であり、元バンド仲間でもある東雲夏菜子との関係だ。 そんな中、未央は彼女が未来から来たタイムトラベラーだと明かし、夏菜子を救うための協力を悠人に求める。未央のやってきた世界では、夏菜子が交通事故で意識不明になってしまっていた。 「一度きりのタイムリープで、君を救えるか?」 恋と友情、そして血縁の絆が交錯する、珠玉のラブストーリー ――過去を変えれば、未来は変わる。でも、君への想いは、どの世界線でも変わらない。 ※ Zeitreise(ツァイトライゼ)=ドイツ語でタイムトラベル(時間旅行)のこと

虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと
恋愛
21.05.23完結 ーー 「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」 差し伸べられた手をするりとかわす。 これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。 決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。 彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。 だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。 地位も名誉も権力も。 武力も知力も財力も。 全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。 月並みに好きな自分が、ただただみっともない。 けれど、それでも。 一緒にいられるならば。 婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。 それだけで良かった。 少なくとも、その時は。

【完結】数十分後に婚約破棄&冤罪を食らうっぽいので、野次馬と手を組んでみた

月白ヤトヒコ
ファンタジー
「レシウス伯爵令嬢ディアンヌ! 今ここで、貴様との婚約を破棄するっ!?」  高らかに宣言する声が、辺りに響き渡った。  この婚約破棄は数十分前に知ったこと。  きっと、『衆人環視の前で婚約破棄する俺、かっこいい!』とでも思っているんでしょうね。キモっ! 「婚約破棄、了承致しました。つきましては、理由をお伺いしても?」  だからわたくしは、すぐそこで知り合った野次馬と手を組むことにした。 「ふっ、知れたこと! 貴様は、わたしの愛するこの可憐な」 「よっ、まさかの自分からの不貞の告白!」 「憎いねこの色男!」  ドヤ顔して、なんぞ花畑なことを言い掛けた言葉が、飛んで来た核心的な野次に遮られる。 「婚約者を蔑ろにして育てた不誠実な真実の愛!」 「女泣かせたぁこのことだね!」 「そして、婚約者がいる男に擦り寄るか弱い女!」 「か弱いだぁ? 図太ぇ神経した厚顔女の間違いじゃぁねぇのかい!」  さあ、存分に野次ってもらうから覚悟して頂きますわ。 設定はふわっと。 『腐ったお姉様。伏してお願い奉りやがるから、是非とも助けろくださいっ!?』と、ちょっと繋りあり。『腐ったお姉様~』を読んでなくても大丈夫です。

伯爵令嬢は婚約者として認められたい

Hkei
恋愛
伯爵令嬢ソフィアとエドワード第2王子の婚約はソフィアが産まれた時に約束されたが、15年たった今まだ正式には発表されていない エドワードのことが大好きなソフィアは婚約者と認めて貰うため ふさわしくなるために日々努力を惜しまない

人魚のカケラ

初瀬 叶
青春
あの娘は俺に言ったんだ 『もし私がいなくなっても、君は……君だけには覚えていて欲しいな』 父親と母親が離婚するらしい。 俺は父親、弟は母親が引き取るんだと。……俺等の気持ちなんてのは無視だ。 そんな中、弟が入院した。母親はまだ小学生の弟にかかりきり、父親は仕事で海外出張。 父親に『ばあちゃんの所に行け』と命令された俺は田舎の町で一ヶ月を過ごす事になる。 俺はあの夏を忘れる事はないだろう。君に出会えたあの夏を。 ※設定は相変わらずふんわりです。ご了承下さい。 ※青春ボカロカップにエントリーしております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。