自重知らずの転生貴族は、現在知識チートでどんどん商品を開発していきます!!

潮ノ海月

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第2章 グランタリア大陸東部編

90.『やまと商会』と共同関係に!

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商業ギルド本部での話し合いを終えた僕達は、『やまと亭』に一週間ほど宿泊し、デルパドーレの街を観光してから帝都イシュタルへ戻ることにした。

その一週間の間、宿の女将であるトキコさんのご厚意により、豪華な和風の料理を振舞ってくれた。


その料理を食べながら、懐かしさで何回も涙が出そうになったことは内緒だけどね。


トキコさんは僕のことを元日本人……転生者だと疑っているみたいだけど、面と向かって質問してくることはなかった。


宿に泊っている間、すごく親切にしてもらって、トキコさんとはすごく仲よくなった。


「もっと滞在していかれたらよろしいですのに。まだまだおもてなしが足りていませんのに」

「もう十分に厚遇してもらっていますから、これ以上、女将さんのご厚意に甘えては申し訳ないです。それにデルパドーレでの用件はすでに終わっているので」

「リンメイさんからお聞きしましたけど、ネイアス評議員長がシオン君に無礼なことを言ったとか、同じデルパドーレに住む者として嘆かわしいです」


……リンメイさんとトキコさんも、すごく仲よくなってたから、商業ギルドでのことを彼女から聞いたんだろうな……


「仕方ないですよ。今回は認められなかったですけど、次に認めてもらうように頑張ります」

「そうですか」


トキコさんは真剣な表情をして、畳の上に正座をしたまま姿勢を正しくする。


「シオン君に折り入って話しがございます。この『やまと亭』を、『ロンメル商会』の拠点にしていただけないかと」

「『ロンメル商会』は色々な商品を売る商会ですよ。『やまと亭』のような宿屋は経営していませんけど?」

「そういう意味ではなく、簡単に申し上げると、『やまと亭』をシオン君の傘下にしてほしいのです。それで『やまと亭』をデルパドーレの拠点としてお使いいただき、街に店舗を建てて商売をしてみないかという提案でございます」


……『やまと亭』が僕の商会の傘下に入ったとしても、トキコさんには何のメリットもないのに……


「なぜか理由を聞いても?」

「実は『やまと亭』は、私が代表を務める『やまと商会』の宿であり、デルパドーレだけでなく、グランタリア大陸の中央部に十一の宿を展開しております」


……優秀な女将さんだと思ってたけど、トキコさんは商会の会長だったんだね……


「『やまと商会』の目的は、勇者様の伝承にある「私の後にエクストリア世界の来る者」を探すことです。私達は『隠者』とお呼びしています」


そこで一旦言葉を切って、トキコさんがジッと僕をみつめる。


「シオン君がどう言おうと、私はシオン君が『隠者』であると思っています。ですので私のワガママでシオン君、『ロンメル商会』を支援したいのです」

「それで僕がその『隠者』でなかったら、どうするんですか?」

「その時は私の見る目がなかったということです。ですからシオン君が責任を感じる必要はありません」


……どうして『やまと商会』が転生者を探しているか不明だから、僕の正体を明かすことはできないけど、この一週間トキコさんと接してみて、信頼できる人柄だとは思う……


「では『ロンメル商会』と『やまと商会』は共同の関係というのはどうですか? それなら僕が『隠者』でなかった時、すぐに関係を解消できますから」

「シオン君がその方がよいというなら、そういたします。」


この後、僕とトキコさんは、『ロンメル商会』と『やまと商会』は共同の関係について話し合った。

まだグランタリア大陸東部でやり残したこともあるので、すぐにデルパドーレで商売を始めることができないと伝えると、彼女はすぐに納得してくれて、僕がデルパドーレに来るまでに、色々と地均しをしてくれるという。

僕はその好意に甘えることにした。


デルパドーレを離れる当日、トキコさんと『やまと亭』の使用人達は総出で、僕達を見送ってくれた。


……今回、デルパドーレに来て商業ギルド本部では、ネイアス評議員長にプラチナランクになることを阻止されたけど、『やまと亭』で豪華な日本食を食べることもできたし、トキコさんとも出会えて、『やまと商会』とも共同関係を組むことができた……そう考えるとすごく充実した旅だったと思う……


デルパドーレの外壁の門を潜り、一時間ほど街道を走ると、草原の真ん中に三体の竜が待機していて、そのすぐ横にアグウェル、サイゾウ、ケロちゃんの三人が立っていた。

僕がデルパドーレから帰るとわかった時点で、サイゾウとケロちゃんが帝都イシュタルまで飛んで、アグウェルと連絡を取ってくれたのだ。

僕、レミリアはアグウェルが操縦する竜に乗り、リンメイさんはリムルが操縦する竜へ乗り込む。

そしてサイゾウとケロちゃんが乗った竜が飛翔し、僕達も次々と空に舞い上がった。

帰りの道中でオートルザム山脈の近くを飛んだんだけど、今度はリンメイさんは気絶することなく、竜達を見て楽しんでいた。


……今回の旅で、リンメイさんには申し訳ないことをしちゃったかもしれないけど……デルパドーレで観光している間の一週間、彼女も楽しそうに過ごしていたから…‥‥ちょっと気晴らしになったならいいな……
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