上 下
87 / 93
第2章 グランタリア大陸東部編

86.竜の背に乗って空の旅!

しおりを挟む
僕はアグウェルの操縦するグリフォンに乗り、レミリアはシャーロットと一緒に、サイゾウの操縦する竜に乗って、大空へ飛翔する。

下を見ると、グングンと帝都イシュタルの街が小さくなっていく。

前に視線を移すと、リムルとリンメイさんを乗せた竜が飛んでいて、その向こうに遠くの山々が見える。

以前、リンメイさんから聞いた情報によれば、法治国家デルパドーレはグランタリア大陸の中央部、オートルザム山脈の南にあるという。

国王はいない代わりに、国家元首がいて、多くの議員が集まって法を作り、法によって統治されている国らしい。

エクストリア世界、グランタリア大陸には王制の国々が多いから、全てが法律で管理されている国というのは珍しいよね。


……前世の日本の記憶を持っているので、僕はさほど驚かないけどね……


しばらく空から見える雄大な眺めを楽しんでいると、一際高い山脈が遠くに見えてきた。

たぶん、あれはオートルザム山脈だから、そこから南に下ると法治国家デルパドーレがあるはずだ。

徐々にオートルザム山脈に近づいていくと、山脈の周囲を飛ぶ、竜達が小さく見える。

どうやらこちらに向かってきているようだ。

その竜達は、僕達に近づくと体を反転させて、平行飛行を始めた。


……あれ?……襲われるのかと思ったけど、違うのかな?……


その様子を見て首を傾げていると、アグウェルが振り向いてニヤリと笑む。


「この竜達は全てテイムした竜でございます。主であるシオン様を攻撃することはありませんので、ご安心ください」


……僕達がオートルザム山脈に来て竜をテイムした時は、二十体ほどだったはずだけど……どう見ても百体近くいるんですけど……いつの間にテイムしたの?


少しの間、僕達と一緒に空を飛んでいた竜達は、アグウェルが腕をかかげて合図を送ると、オートルザム山脈の方向へと戻っていった。

それから少し空を飛んで、僕達を乗せたグリフォンはゆっくりと降下を始めた。

そのことに気づいて前を向くと、星型の大都市が見えてきた。

帝都イシュタルよりも大きそうな街だな。


「街中に魔獣を着地させると騒ぎになりますので、街から少し離れた場所へ着陸いたします」


アグウェルの言葉を聞いてホッと胸を撫でおろす。


……いきなり魔獣が空に現れたら、街に住む庶民がパニックになるし、兵士が動くもんね……


デルパドーレの街から離れた場所に着陸した竜とグリフォンは、すぐさま大空へと舞い上がり、空の彼方へと消えていった。

空の上で目を回して気絶してしまったリンメイさんは、リムルの膝の上でまだ眠っている。


「オートルザム山脈の近くで、竜達に囲まれた時、悲鳴をあげて気絶しちゃったの。リンメイさんには刺激が強かったかもー」


……僕は平気だけど……普通の人族は、大きな竜に囲まれれば失神すると思うよ……リムルは魔族だから、その辺りの感覚がズレてるんだよね……


「そういえば、ケロちゃんとサイゾウの姿が見えないけど?」

「はい。二人は馬車を用意するため、デルパドーレへ向かいました。待っていればそのうち馬車に乗って戻ってくるでしょう」


……さすがアグウェル、手回しがいいね。


太陽が真上近くにあり、そろそろお昼の時間だから、僕達は昼食を食べながら、ケロちゃんとサイゾウを待つことにした。

今日のお昼は、レミリアが握ってくれた塩おにぎりだ。

お弁当の籠を開けると、キッチリと三角に握られたおにぎりが現れた。


……僕が握ると三角というより、丸に近い形になっちゃうんだけど……さすがレミリアは器用だよね……


水筒を手渡してもらい、それに口をつけながら、おにぎりを頬張る。

なんだか遠足気分でとても美味しい。

ほのぼのと食事をしていると、リムルの膝の上で眠っていたリンメイさんが、ガバッと起き上がり目を覚ました。


「空を飛んでたら、いきなり竜に囲まれて、死ぬかと思ったわよ。あれは何だったの?」

「すみません……あの竜達は『ロンメル商会』でテイムしている竜達らしいです……」

「あれほどの数の竜種をテイム……シオン君は、あの竜を使えば、簡単に一国ぐらい崩壊できるんじゃ……」


……うん、僕もそう思います……なんだかリンメイさんを驚かせてばかりですみません……
驚きを隠しきれてないリンメイさんに、後ろからリムルが抱き着く。


「シオン様が、戦争なんて起こすわけないよ」

「そういえばそうね……私ったら、ちょっと焦っていたわ」


……竜の背中で何があったかは知らなけど、二人は仲良しになったようだね……


草原に寝転んで、ノンビリと待っていると、遠くに馬車が見えてきた。

御者台の上に座っているサイゾウとケロちゃんが手を振っている。

二人を馬車が目の前に停止し、僕、レミリア、リムル、リンメイさんが車内に乗り込むと、アグウェルが馬車の扉をそっと閉める。


「リンメイ様、シオン様のことよろしくお願いします。リムル、しっかりと皆をお守りするのだぞ」

「アグウェルは一緒に来ないの?」

「私は所用がございまして。お帰りの際にはお迎えにあがります」


礼儀正しく胸に手を当てて礼をして、アグウェルはニヤリと口元を歪ませた。


あれ? ちょっとアグウェル、怒ってない?


……僕を誘拐しようとした国のことかな?……何をするつもりかわからないけど、手加減してあげてね……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、エブリスタでも投稿中

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

『殺す』スキルを授かったけど使えなかったので追放されました。お願いなので静かに暮らさせてください。

晴行
ファンタジー
 ぼっち高校生、冷泉刹華(れいぜい=せつか)は突然クラスごと異世界への召喚に巻き込まれる。スキル付与の儀式で物騒な名前のスキルを授かるも、試したところ大した能力ではないと判明。いじめをするようなクラスメイトに「ビビらせんな」と邪険にされ、そして聖女に「スキル使えないならいらないからどっか行け」と拷問されわずかな金やアイテムすら与えられずに放り出され、着の身着のままで異世界をさまよう羽目になる。しかし路頭に迷う彼はまだ気がついていなかった。自らのスキルのあまりのチートさゆえ、世界のすべてを『殺す』権利を手に入れてしまったことを。不思議なことに自然と集まってくる可愛い女の子たちを襲う、残酷な運命を『殺し』、理不尽に偉ぶった奴らや強大な敵、クラスメイト達を蚊を払うようにあしらう。おかしいな、俺は独りで静かに暮らしたいだけなんだがと思いながら――。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

空間魔法って実は凄いんです

真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?

処理中です...