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第2章 グランタリア大陸東部編

63.馬車の旅とリムルのイタズラ!

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レト君の店が営業を開始して一ヵ月が経った。

順調に売り上げを伸ばし、これで商会が傾くことはないだろう。

もうそろそろ帝都イシュタルを離れてもいいと判断した僕は、エレミア、カイロス、クラウス、グレースと相談して、アシュラム王国へ向けて出発することにした。

レミリアに旅の同行を頼もうと思っていたけど、リムルから「レミリアばっかりズルい」と言われてしまい、今回はリムルと一緒に旅に出ることになった。

先頭の馬車に僕、エレミア、リムル、次の馬車にカイロス、クラウス、グレースに分かれて乗り込み、帝都イシュタルを出発する。

馬車の旅は順調だけど、エレミアがリムルにベッタリで、リムルもノリノリでエレミアと体を触るので目のやり場に困る。

イシュガルド帝国の街で一泊し、次の日も馬車に乗って旅を続けたが、車内のピンク色な雰囲気に耐えず、僕はリムルをクラウス達の馬車へと放り出した。

そしてリムルの代わりにカイロスが僕達の馬車へとやってきた。

彼を見て、エレミアは不機嫌そうに頬を膨らませる。


「せっかくリムルお姉様と一緒に楽しい旅を満喫してたのに、カイロスったらどうして交代しちゃうのかな」

「だって仕方ねーだろ。シオンがリムル姉ちゃんと交代してくれって頼むからさ。文句ならシオンに言ってくれ」

「カイロス、ホントにごめん……」


……だって、このまま馬車で旅を続けていたら、リムルとエミリアがいけない関係になりそうだし…

…馬車の中であんなことやこんなことが始まったら、僕の居場所がないじゃないか……


はじめは機嫌の悪かったエレミアも、すっかり機嫌を戻し、その日の馬車の旅は快適に進んだ。

そして街で一泊することになり、部屋でカイロスと休んでいると、扉が開いて疲れ切った表情のクラウスが入ってきた。


「シオン……リムル姉さんを何とかしてくれ。目の前でグロースの胸を揉んだりするから、目のやり場に困るんだ。最初は嫌がっていたグレースも段々その気になって……」


……リムルってホントに女の子の体を触るのが好きなんだよね……やはり魔族でサキュバスだから、女の子を見ると血が騒ぐのだろうか……

あれ? サキュバスって男の子を狙うんじゃなかったっけ?

このままでもマズいので、エレミアとグレースに相談に行くと、リムルは何も悪くないと言われてしまった。


……リムルは女の子に絶大な人気があるからね……


そして次の日、エレミア、グレース、リムルが先頭の馬車に乗り、僕達男性は後ろの馬車に乗ることになったのだけど。


「おい、そのむくれた顔はやめろ」

「どうしてお前の面を見てないとダメなんだ。俺はエレミアと一緒が良かったのに」

「私だってグレースと一緒のほうが気心が知れて良かった」


カイロスとクラウスは互いに顔を背け合う。


……この車内の雰囲気も何だかいたたまれないんですけど……


イシュガルド帝国との国境を越え、馬車はファラレスト皇国へと入り、国境近くの街で一泊することになった。

僕とカイロスが宿の食堂で食事を取っていると、エレミアとグレースがフラフラとよろけながら歩いてくる。


「シオン、明日、私達、リムルお姉様と違う馬車に乗っていい?」

「え……あんなに喜んでいたのに、どうしたの?」

「……リムルお姉様に、あんなに激しく全身を触られたら……気持ちが変になってきて……開けてはいけない世界が開きそうなの……」


その言葉を聞いて、カイロスが鼻血をタラリと垂らす。


……僕が注意しても、リムルにはあまり効果ないんだよね……やっぱり僕が引き取るしかないかな。


翌日、僕、リムル、カイロスの三人が先頭の馬車に乗り込み、エレミア、クラウス、グレースの三人が後ろの馬車に乗り込んだ。

リムルの隣に座ると、僕とイチャつこうとするから、カイロスとリムルを一緒の席に座ってもらう。

すると退屈したリムルが、段々とカイロスの体を触り始めた。


「ホントはシオン様とイチャつきたいなー……カイロスでも構わないけどね」

「……リムル姉ちゃん、触んないで……そこはダメ……アン……」


耳元を、リムルに息を吹きかけられ、カイロスが色っぽい反応をする。


……同性の男がよがる姿を見るのは辛すぎる……カイロス、耐えてくれ……僕も耐えるから……


街道の空地に馬車が停車して休憩を取っていると、カイロスが目を真赤にして僕に叫ぶ。


「もう我慢の限界だ! このまま我慢してたら、気が変になりそうだ。俺も後ろの馬車へ行く」


……うん、このままだとカイロスの理性が飛んじゃいそうだもんね……僕は肉体が十歳だから、こそばゆい程度だけど、普通の男の子は耐えられないよね……


そしてカイロスは逃げるように後ろの馬車へ乗り、先頭の馬車は僕とリムルだけになった。

すると隣に座るリムルが、嬉しそうにニッコリと笑う。


「計画通り! これで誰にも邪魔されずにシオン様と一緒にいられるー!」

「二人っきりなんだから、もうイタズラはダメだよ」

「わかってまーす。シオン様大好き―」


……なるほど、僕と二人っきりで馬車の旅をしたいから、必要以上に皆の体を触っていたのか……僕のこと好きなのはわかるけど……もう少し皆に手加減してあげてね……
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