57 / 93
第2章 グランタリア大陸東部編
56.カイロスと友達になる!
しおりを挟む
授業が終わりエレミアと話していると、カイロスから「ツラを貸せ」と言われてしまった。
カイロスの後ろを歩いていると、なぜかエレミアがついてくる。
隣に並んで歩く彼女に、僕はそっと囁いた。
「カイロスを止めてくれないの?」
「私、人のやりたいことは極力止めない主義なの。それに何だか面白いことになりそうでしょ」
目をキラキラと輝かせるエレミアの表情を見て、僕は彼女に説得してもらうことを諦める。
カイロスの後についていくと校舎の裏にある訓練所に到着した。
「田舎者風情が、エレミアと馴れ馴れしくしやがって」
「まだクラスのことがわからないから、エレミアに色々と教えてもらっていただけで……」
「うるせー! 偉大なるフレイヤの女神よ。我に力を与えたまえ。獄炎の炎よ――」
懐から杖を取り出し、カイロスが魔法句の詠唱を始めた。
魔法の詠唱句の冒頭は必ず神を称える句がつづられる。
フレイヤとはエクストリア世界の女神の名前で、僕を転生させてくれた女神のことだろう。
たぶん『炎』と句を読んでいるから、火炎系の魔法を放つと予想した僕は、制服のポケットから魔法ペンを取り出し、空中に『水』と魔法文字で描いて、ペン先をカイロスへ向ける。
するとカイロスが火球を作った瞬間、大きな水球が彼の体を包み込み、火球は瞬く間に消えていく。
そしてカイロスは水球から出られないようで、ジタバタと体を動かしてもがいていた。
カイロスの姿を見て、このままでは彼を溺死させると感じた僕は、魔法ペンを横に振って魔法を解除する。
するとバシャっという音を共に水球が破裂し、中にいたカイロスが地面に大の字に倒れた。
「いきなり魔法をぶっ放すとはやるじゃねーか」
なんで地面に倒れているのに嬉しそうな顔をしてるんだよ……
そんなカイロスと放置したまま、エレミアは満面の笑みを浮かべる。
「カイロスって、強そうな相手を見ると勝負をしたがるの。シオンが編入してきた時から、カイロスに狙われると思ってたわ。それにしても一瞬でカイロスを倒すなんて、シオンの魔法ってすごいのね」
……教室にいた時から思ってたなら、ここに来る前に教えてほしかった……
立ち上がったカイロスが、ニコニコと笑いながら僕の前まで来る。
「喧嘩をすれば全員ツレっていうだろ。これで俺とお前はもうダチだぜ。ただしエレミアには手を出すなよ」
「手を出したりしないよ」
そんなことをしたらレミリアとリムルにどんな目に遭わされるか……
「これで用は済んだかな。僕ちょっと急いで家に帰る必要があるから、また明日」
そう言って僕が帰ろうと歩きだすと、なぜか後ろからエミリアとカイロスが後に続いてくる。
そのことを疑問に思った僕は、門を出た所で二人に問いかけた。
「僕は家に帰るんだけど、二人はどこへ向かうのかな?」
「決まってるだろ。シオンの家に行くに決まってるじゃねーか。寮に戻っても暇なだけだしな。それにもう俺達もうダチだろ」
「私も同じくー、城住まいって、面白いことないのよね」
……入学初日から家に連れていくなんて……こういうのは順番があるんじゃないのかな……なんだか家を教えたくないし……帝都の店舗のほうなら大丈夫だよね……店ならもう商品の搬入作業が終わってるはずだし……
どんな言い訳をしてもエレミアもカイロスも帰りそうにないので、僕は諦めて帝都の店舗に連れて行くことにした。
街の大通りにある店舗に入ると、レミリアとリムルが商品を並べ終わったところだった。
「おかえりなさい、シオン様」
「おっかえりー、シオン様」
すると僕の隣にいたカイロスが、レミリアとリムルを見て、頬を赤くして口をポカーンと開ける。
「シオン、誰なんだ? このキレイなお姉ちゃん達は?」
「僕の商会の仲間だよ」
……レミリアもリムルも超のつく美女だから、見惚れるのも頷けるけどね。
僕の隣に立っていたエミリアが首を傾げて、ツンツンと肩をつつく。
「僕の商会ってどういう意味?」
「学院で言ったけど、僕は商人なんだ。そしてここが僕の商会の店舗ってわけ」
「何ていう名前の商会なの?」
「『ロンメル商会』っていうんだ」
「『ロンメル商会』ですって」
商会の名前を聞いた途端、顔を真赤にしてエレミアが自分の口を両手で隠す
「あのダイエット薬を発明した商会じゃないの!」
「どうしてエレミアがダイエット薬を知ってるの?」
「帝都のお城でもダイエット薬の噂は広まっているわ。ラバネス半島の貴族達の間に広まってる、幻の薬と呼ばれているわ。私のお母様だって手に入れるのに苦労したんだから」
エレミアは両方の拳を握りしめて熱弁する。
ダイエット薬はブリタニス王国のセリーネ王妃、フィーネ、ナブラスト王国のマリナ女王殿下を中心として、それぞれの王宮が貴族達に販売している。
フィーネからは大好評だと聞いていたけど、イシュガルド帝国の王宮にまで噂が広まっていたのか……
熱く語るエレミアの隣にリムルがピョンとやってきて、彼女に向かってニッコリと笑う。
「この店にもあるんですよー、ダイエット薬。店では売ってないんだけど、特別に売っちゃおうかなー」
「買います、買います、お姉さま、ダイエット薬を買わせてください!」
エレミアはリムルにしがみついて懇願する。
……なんだかエレミアが帝都の店舗の上客になりそうな気がするのは、僕だけだろうか……
カイロスの後ろを歩いていると、なぜかエレミアがついてくる。
隣に並んで歩く彼女に、僕はそっと囁いた。
「カイロスを止めてくれないの?」
「私、人のやりたいことは極力止めない主義なの。それに何だか面白いことになりそうでしょ」
目をキラキラと輝かせるエレミアの表情を見て、僕は彼女に説得してもらうことを諦める。
カイロスの後についていくと校舎の裏にある訓練所に到着した。
「田舎者風情が、エレミアと馴れ馴れしくしやがって」
「まだクラスのことがわからないから、エレミアに色々と教えてもらっていただけで……」
「うるせー! 偉大なるフレイヤの女神よ。我に力を与えたまえ。獄炎の炎よ――」
懐から杖を取り出し、カイロスが魔法句の詠唱を始めた。
魔法の詠唱句の冒頭は必ず神を称える句がつづられる。
フレイヤとはエクストリア世界の女神の名前で、僕を転生させてくれた女神のことだろう。
たぶん『炎』と句を読んでいるから、火炎系の魔法を放つと予想した僕は、制服のポケットから魔法ペンを取り出し、空中に『水』と魔法文字で描いて、ペン先をカイロスへ向ける。
するとカイロスが火球を作った瞬間、大きな水球が彼の体を包み込み、火球は瞬く間に消えていく。
そしてカイロスは水球から出られないようで、ジタバタと体を動かしてもがいていた。
カイロスの姿を見て、このままでは彼を溺死させると感じた僕は、魔法ペンを横に振って魔法を解除する。
するとバシャっという音を共に水球が破裂し、中にいたカイロスが地面に大の字に倒れた。
「いきなり魔法をぶっ放すとはやるじゃねーか」
なんで地面に倒れているのに嬉しそうな顔をしてるんだよ……
そんなカイロスと放置したまま、エレミアは満面の笑みを浮かべる。
「カイロスって、強そうな相手を見ると勝負をしたがるの。シオンが編入してきた時から、カイロスに狙われると思ってたわ。それにしても一瞬でカイロスを倒すなんて、シオンの魔法ってすごいのね」
……教室にいた時から思ってたなら、ここに来る前に教えてほしかった……
立ち上がったカイロスが、ニコニコと笑いながら僕の前まで来る。
「喧嘩をすれば全員ツレっていうだろ。これで俺とお前はもうダチだぜ。ただしエレミアには手を出すなよ」
「手を出したりしないよ」
そんなことをしたらレミリアとリムルにどんな目に遭わされるか……
「これで用は済んだかな。僕ちょっと急いで家に帰る必要があるから、また明日」
そう言って僕が帰ろうと歩きだすと、なぜか後ろからエミリアとカイロスが後に続いてくる。
そのことを疑問に思った僕は、門を出た所で二人に問いかけた。
「僕は家に帰るんだけど、二人はどこへ向かうのかな?」
「決まってるだろ。シオンの家に行くに決まってるじゃねーか。寮に戻っても暇なだけだしな。それにもう俺達もうダチだろ」
「私も同じくー、城住まいって、面白いことないのよね」
……入学初日から家に連れていくなんて……こういうのは順番があるんじゃないのかな……なんだか家を教えたくないし……帝都の店舗のほうなら大丈夫だよね……店ならもう商品の搬入作業が終わってるはずだし……
どんな言い訳をしてもエレミアもカイロスも帰りそうにないので、僕は諦めて帝都の店舗に連れて行くことにした。
街の大通りにある店舗に入ると、レミリアとリムルが商品を並べ終わったところだった。
「おかえりなさい、シオン様」
「おっかえりー、シオン様」
すると僕の隣にいたカイロスが、レミリアとリムルを見て、頬を赤くして口をポカーンと開ける。
「シオン、誰なんだ? このキレイなお姉ちゃん達は?」
「僕の商会の仲間だよ」
……レミリアもリムルも超のつく美女だから、見惚れるのも頷けるけどね。
僕の隣に立っていたエミリアが首を傾げて、ツンツンと肩をつつく。
「僕の商会ってどういう意味?」
「学院で言ったけど、僕は商人なんだ。そしてここが僕の商会の店舗ってわけ」
「何ていう名前の商会なの?」
「『ロンメル商会』っていうんだ」
「『ロンメル商会』ですって」
商会の名前を聞いた途端、顔を真赤にしてエレミアが自分の口を両手で隠す
「あのダイエット薬を発明した商会じゃないの!」
「どうしてエレミアがダイエット薬を知ってるの?」
「帝都のお城でもダイエット薬の噂は広まっているわ。ラバネス半島の貴族達の間に広まってる、幻の薬と呼ばれているわ。私のお母様だって手に入れるのに苦労したんだから」
エレミアは両方の拳を握りしめて熱弁する。
ダイエット薬はブリタニス王国のセリーネ王妃、フィーネ、ナブラスト王国のマリナ女王殿下を中心として、それぞれの王宮が貴族達に販売している。
フィーネからは大好評だと聞いていたけど、イシュガルド帝国の王宮にまで噂が広まっていたのか……
熱く語るエレミアの隣にリムルがピョンとやってきて、彼女に向かってニッコリと笑う。
「この店にもあるんですよー、ダイエット薬。店では売ってないんだけど、特別に売っちゃおうかなー」
「買います、買います、お姉さま、ダイエット薬を買わせてください!」
エレミアはリムルにしがみついて懇願する。
……なんだかエレミアが帝都の店舗の上客になりそうな気がするのは、僕だけだろうか……
1,449
お気に入りに追加
4,147
あなたにおすすめの小説
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
現代知識チートからの王国再建~転生第三王子は王国を発展させたい!~二大強国に挟まれた弱小王国の巻き返し!
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
東にバルドハイン帝国、西にエルファスト魔法王国という二大強国に挟まれたクリトニア王国は、両国の緩衝役を担っている中立国家である。
農作業が盛んで穀物類が豊富だけど、経済を発展させるだけの技術力を持たないクリトニア王国は常に両大国から嫌がらせを受けても耐え忍ぶしかなかった。
一年前に父である国王陛下が原因不明の病に倒れ、王太子であるローランド兄上が国王代理として国政を担うことになった。
経験が浅く、慣れない政務に疲れたローランド兄上は、いつものように僕― イアン・クリトニアの部屋へやってきて弱音を漏らす。
第三王子イアンの上にはローランド王太子の他に、エミリア第一王女、アデル第二王子がいる。
そして現在、王国内では、法衣貴族と地方貴族がローランド王子派、アデル王子派と分かれて、王位継承争いが勃発していた。
そこへ間が悪いことにバルドハイン帝国軍が王国との国境線に軍を派兵してきた。
国境での小競り合いはいつものことなので、地方貴族に任せておけばいいのに、功を焦ったアデル兄上が王宮騎士団と共に国境へ向かったという。
このままでは帝国と王国との全面戦争にもなりかねないと心配したイアンとエミリア姉上は、アデル兄上を説得するため、王宮騎士団を追いかけて王都を出発した。
《この物語は、二強国に挟まれた弱小国を、第三王子のイアンが前世の日本の知識を駆使し、兄姉達と協力して周囲の人達を巻き込んで、大国へと成り上がっていく物語である》
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー
不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました
今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った
まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います
ーーーー
間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします
アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です
読んでいただけると嬉しいです
23話で一時終了となります
前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!
yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。
だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。
創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。
そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。
異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます
ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。
何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。
生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える
そして気がつけば、広大な牧場を経営していた
※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。
7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。
5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます!
8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる