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第2章 グランタリア大陸東部編
56.カイロスと友達になる!
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授業が終わりエレミアと話していると、カイロスから「ツラを貸せ」と言われてしまった。
カイロスの後ろを歩いていると、なぜかエレミアがついてくる。
隣に並んで歩く彼女に、僕はそっと囁いた。
「カイロスを止めてくれないの?」
「私、人のやりたいことは極力止めない主義なの。それに何だか面白いことになりそうでしょ」
目をキラキラと輝かせるエレミアの表情を見て、僕は彼女に説得してもらうことを諦める。
カイロスの後についていくと校舎の裏にある訓練所に到着した。
「田舎者風情が、エレミアと馴れ馴れしくしやがって」
「まだクラスのことがわからないから、エレミアに色々と教えてもらっていただけで……」
「うるせー! 偉大なるフレイヤの女神よ。我に力を与えたまえ。獄炎の炎よ――」
懐から杖を取り出し、カイロスが魔法句の詠唱を始めた。
魔法の詠唱句の冒頭は必ず神を称える句がつづられる。
フレイヤとはエクストリア世界の女神の名前で、僕を転生させてくれた女神のことだろう。
たぶん『炎』と句を読んでいるから、火炎系の魔法を放つと予想した僕は、制服のポケットから魔法ペンを取り出し、空中に『水』と魔法文字で描いて、ペン先をカイロスへ向ける。
するとカイロスが火球を作った瞬間、大きな水球が彼の体を包み込み、火球は瞬く間に消えていく。
そしてカイロスは水球から出られないようで、ジタバタと体を動かしてもがいていた。
カイロスの姿を見て、このままでは彼を溺死させると感じた僕は、魔法ペンを横に振って魔法を解除する。
するとバシャっという音を共に水球が破裂し、中にいたカイロスが地面に大の字に倒れた。
「いきなり魔法をぶっ放すとはやるじゃねーか」
なんで地面に倒れているのに嬉しそうな顔をしてるんだよ……
そんなカイロスと放置したまま、エレミアは満面の笑みを浮かべる。
「カイロスって、強そうな相手を見ると勝負をしたがるの。シオンが編入してきた時から、カイロスに狙われると思ってたわ。それにしても一瞬でカイロスを倒すなんて、シオンの魔法ってすごいのね」
……教室にいた時から思ってたなら、ここに来る前に教えてほしかった……
立ち上がったカイロスが、ニコニコと笑いながら僕の前まで来る。
「喧嘩をすれば全員ツレっていうだろ。これで俺とお前はもうダチだぜ。ただしエレミアには手を出すなよ」
「手を出したりしないよ」
そんなことをしたらレミリアとリムルにどんな目に遭わされるか……
「これで用は済んだかな。僕ちょっと急いで家に帰る必要があるから、また明日」
そう言って僕が帰ろうと歩きだすと、なぜか後ろからエミリアとカイロスが後に続いてくる。
そのことを疑問に思った僕は、門を出た所で二人に問いかけた。
「僕は家に帰るんだけど、二人はどこへ向かうのかな?」
「決まってるだろ。シオンの家に行くに決まってるじゃねーか。寮に戻っても暇なだけだしな。それにもう俺達もうダチだろ」
「私も同じくー、城住まいって、面白いことないのよね」
……入学初日から家に連れていくなんて……こういうのは順番があるんじゃないのかな……なんだか家を教えたくないし……帝都の店舗のほうなら大丈夫だよね……店ならもう商品の搬入作業が終わってるはずだし……
どんな言い訳をしてもエレミアもカイロスも帰りそうにないので、僕は諦めて帝都の店舗に連れて行くことにした。
街の大通りにある店舗に入ると、レミリアとリムルが商品を並べ終わったところだった。
「おかえりなさい、シオン様」
「おっかえりー、シオン様」
すると僕の隣にいたカイロスが、レミリアとリムルを見て、頬を赤くして口をポカーンと開ける。
「シオン、誰なんだ? このキレイなお姉ちゃん達は?」
「僕の商会の仲間だよ」
……レミリアもリムルも超のつく美女だから、見惚れるのも頷けるけどね。
僕の隣に立っていたエミリアが首を傾げて、ツンツンと肩をつつく。
「僕の商会ってどういう意味?」
「学院で言ったけど、僕は商人なんだ。そしてここが僕の商会の店舗ってわけ」
「何ていう名前の商会なの?」
「『ロンメル商会』っていうんだ」
「『ロンメル商会』ですって」
商会の名前を聞いた途端、顔を真赤にしてエレミアが自分の口を両手で隠す
「あのダイエット薬を発明した商会じゃないの!」
「どうしてエレミアがダイエット薬を知ってるの?」
「帝都のお城でもダイエット薬の噂は広まっているわ。ラバネス半島の貴族達の間に広まってる、幻の薬と呼ばれているわ。私のお母様だって手に入れるのに苦労したんだから」
エレミアは両方の拳を握りしめて熱弁する。
ダイエット薬はブリタニス王国のセリーネ王妃、フィーネ、ナブラスト王国のマリナ女王殿下を中心として、それぞれの王宮が貴族達に販売している。
フィーネからは大好評だと聞いていたけど、イシュガルド帝国の王宮にまで噂が広まっていたのか……
熱く語るエレミアの隣にリムルがピョンとやってきて、彼女に向かってニッコリと笑う。
「この店にもあるんですよー、ダイエット薬。店では売ってないんだけど、特別に売っちゃおうかなー」
「買います、買います、お姉さま、ダイエット薬を買わせてください!」
エレミアはリムルにしがみついて懇願する。
……なんだかエレミアが帝都の店舗の上客になりそうな気がするのは、僕だけだろうか……
カイロスの後ろを歩いていると、なぜかエレミアがついてくる。
隣に並んで歩く彼女に、僕はそっと囁いた。
「カイロスを止めてくれないの?」
「私、人のやりたいことは極力止めない主義なの。それに何だか面白いことになりそうでしょ」
目をキラキラと輝かせるエレミアの表情を見て、僕は彼女に説得してもらうことを諦める。
カイロスの後についていくと校舎の裏にある訓練所に到着した。
「田舎者風情が、エレミアと馴れ馴れしくしやがって」
「まだクラスのことがわからないから、エレミアに色々と教えてもらっていただけで……」
「うるせー! 偉大なるフレイヤの女神よ。我に力を与えたまえ。獄炎の炎よ――」
懐から杖を取り出し、カイロスが魔法句の詠唱を始めた。
魔法の詠唱句の冒頭は必ず神を称える句がつづられる。
フレイヤとはエクストリア世界の女神の名前で、僕を転生させてくれた女神のことだろう。
たぶん『炎』と句を読んでいるから、火炎系の魔法を放つと予想した僕は、制服のポケットから魔法ペンを取り出し、空中に『水』と魔法文字で描いて、ペン先をカイロスへ向ける。
するとカイロスが火球を作った瞬間、大きな水球が彼の体を包み込み、火球は瞬く間に消えていく。
そしてカイロスは水球から出られないようで、ジタバタと体を動かしてもがいていた。
カイロスの姿を見て、このままでは彼を溺死させると感じた僕は、魔法ペンを横に振って魔法を解除する。
するとバシャっという音を共に水球が破裂し、中にいたカイロスが地面に大の字に倒れた。
「いきなり魔法をぶっ放すとはやるじゃねーか」
なんで地面に倒れているのに嬉しそうな顔をしてるんだよ……
そんなカイロスと放置したまま、エレミアは満面の笑みを浮かべる。
「カイロスって、強そうな相手を見ると勝負をしたがるの。シオンが編入してきた時から、カイロスに狙われると思ってたわ。それにしても一瞬でカイロスを倒すなんて、シオンの魔法ってすごいのね」
……教室にいた時から思ってたなら、ここに来る前に教えてほしかった……
立ち上がったカイロスが、ニコニコと笑いながら僕の前まで来る。
「喧嘩をすれば全員ツレっていうだろ。これで俺とお前はもうダチだぜ。ただしエレミアには手を出すなよ」
「手を出したりしないよ」
そんなことをしたらレミリアとリムルにどんな目に遭わされるか……
「これで用は済んだかな。僕ちょっと急いで家に帰る必要があるから、また明日」
そう言って僕が帰ろうと歩きだすと、なぜか後ろからエミリアとカイロスが後に続いてくる。
そのことを疑問に思った僕は、門を出た所で二人に問いかけた。
「僕は家に帰るんだけど、二人はどこへ向かうのかな?」
「決まってるだろ。シオンの家に行くに決まってるじゃねーか。寮に戻っても暇なだけだしな。それにもう俺達もうダチだろ」
「私も同じくー、城住まいって、面白いことないのよね」
……入学初日から家に連れていくなんて……こういうのは順番があるんじゃないのかな……なんだか家を教えたくないし……帝都の店舗のほうなら大丈夫だよね……店ならもう商品の搬入作業が終わってるはずだし……
どんな言い訳をしてもエレミアもカイロスも帰りそうにないので、僕は諦めて帝都の店舗に連れて行くことにした。
街の大通りにある店舗に入ると、レミリアとリムルが商品を並べ終わったところだった。
「おかえりなさい、シオン様」
「おっかえりー、シオン様」
すると僕の隣にいたカイロスが、レミリアとリムルを見て、頬を赤くして口をポカーンと開ける。
「シオン、誰なんだ? このキレイなお姉ちゃん達は?」
「僕の商会の仲間だよ」
……レミリアもリムルも超のつく美女だから、見惚れるのも頷けるけどね。
僕の隣に立っていたエミリアが首を傾げて、ツンツンと肩をつつく。
「僕の商会ってどういう意味?」
「学院で言ったけど、僕は商人なんだ。そしてここが僕の商会の店舗ってわけ」
「何ていう名前の商会なの?」
「『ロンメル商会』っていうんだ」
「『ロンメル商会』ですって」
商会の名前を聞いた途端、顔を真赤にしてエレミアが自分の口を両手で隠す
「あのダイエット薬を発明した商会じゃないの!」
「どうしてエレミアがダイエット薬を知ってるの?」
「帝都のお城でもダイエット薬の噂は広まっているわ。ラバネス半島の貴族達の間に広まってる、幻の薬と呼ばれているわ。私のお母様だって手に入れるのに苦労したんだから」
エレミアは両方の拳を握りしめて熱弁する。
ダイエット薬はブリタニス王国のセリーネ王妃、フィーネ、ナブラスト王国のマリナ女王殿下を中心として、それぞれの王宮が貴族達に販売している。
フィーネからは大好評だと聞いていたけど、イシュガルド帝国の王宮にまで噂が広まっていたのか……
熱く語るエレミアの隣にリムルがピョンとやってきて、彼女に向かってニッコリと笑う。
「この店にもあるんですよー、ダイエット薬。店では売ってないんだけど、特別に売っちゃおうかなー」
「買います、買います、お姉さま、ダイエット薬を買わせてください!」
エレミアはリムルにしがみついて懇願する。
……なんだかエレミアが帝都の店舗の上客になりそうな気がするのは、僕だけだろうか……
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