自重知らずの転生貴族は、現在知識チートでどんどん商品を開発していきます!!

潮ノ海月@書籍発売中

文字の大きさ
上 下
49 / 93
第2章 グランタリア大陸東部編

48.オルデンの決意

しおりを挟む
アグウェルに任せてから三日が経った。

その間、クレイムさんは毎日、僕に交渉を持ちかけてきたけど、その度にリムルのチャームによって追い返してもらった。

そして四日目の昼、『オルデン商会』の店舗の前で、僕、オルデン、クレイムさんの三人が話しているとアグウェルが姿を現した。

そして、その後ろから商業ギルド東支部のリンメイさんが歩いてくる。


「シオン君、元気にしてたかしら? アグウェルさんから事情を聞いて、馬車で飛んできたのよ」

「なぜ、商業ギルド東支部の支部長がここに?」

「決まってるじゃない。クレイム、あなたに通達するためよ。商業ギルドはあなたの商会の登録を抹消します。当然だけど、商業ギルドのランクも剥奪するわ」

「どうしてだ。私は何もしていないぞ。『ロンメル商会』と正当な取引をしていただけだ」

「あなたが今まで色々な商会と不正な取引をしてたことは、アグウェルさんが商業ギルド東支部に持ち込んだ、あなたの裏帳簿で全て明らかよ」


そう言って、リンメイさんは手に持っていた書類を地面にばら撒いた。

その落ちている書類をかき集めて、クレイムさんは地面にうずくまる。


商業ギルドの登録を剥奪しても商売はできるけど……しかし登録を抹消されたとあっては。商人として信用は地に堕ちて、もう大きな商売はもうできないだろうな……


その姿を見て、アグウェルはニヤリと微笑んだ。


……サイゾウに邸の監視をさせていたのは、裏帳簿を入手するためだったのか……


オルデンが焦った様子で、リンメイさんに問いかける。


「じゃあ、『クレイム商会』から卸していたスパイスや穀物類はどうなるんですか?」

「スパイスや穀物類を卸していた仲買商会とは話をつけておいたわ。引き続き『オルデン商会』に商品を卸してくれるそうよ」


その答えを聞いて、オルデンはホッと安堵の表情を見せる。

地面で跪いているクレイムさんをサイゾウが立ち上がらせて、引きずるようにして歩き去った。


僕は走ってアグウェルに近づき、耳元で囁く。


「モルキス財務大臣はどうなったの?」

「ちょっと精神を狂わせ、計算ができないようにしておきました。これでもう大好きなお金の計算はできませんね」


アグウェルの言葉に、僕を思わず笑ってしまった。


任せてと言われた時には、殺してしまうかもと、ちょっと心配していたけど……計算だけできないようにするなんて……それなら貴族として生きていくには支障ないよね……


「リンメイさん、わざわざ王都ダルトンまで来ていただきありがとうございます」

「いいのよ。ちょっと仕事し過ぎていたから、ちょっとこの街で一休みしていくわ。それよりも、これを渡しておくわね。アグウェルさんから聞いたけど、もう失くさないでね」


メイリンさんは懐からシルバーのメダルを取り出して、僕の手の平の上に置いた。


「そのメダルは身分証明書でもあるからね。国から国へ移動する時に警備兵に見せれば、検閲も簡単に通れるから賄賂も要求されないわ」


……へえ、そんな便利なメダルだったのか……


リンメイさんは王都ダルトンの観光をしてから帝都イシュタルへ帰る予定だと僕に告げて、店の前から去っていった。

僕は手をパンパンと叩いて、皆を見回す。


「問題も解決したし、さあ、商品を売りまくろう」


それから僕達は頑張って、閉店間際まで商品を売り続けた。

すっかり太陽が沈み、店仕舞いして宿へ帰ろうとすると、オルデンが黙ったまま一緒に宿までついてくる。

思いつめた表情で、何かを考えているようだ。

部屋に入ると、いきなりオルデンが床に正座する。


「聞いてくれ。俺、商会をやめようと思うんだ」

「え? どうして? 今日、問題が解決したばかりじゃないか」

「違う、言い方を間違えた。店も続けていくし、商人は続けていくけど、『オルデン商会』はやめるってことだ」

「言ってる意味がわからないよ」


するとオルデンは少し間を開けて、真剣な表情で僕の前に両手をつく。

「『ロンメル商会』の一員になりたいんだ。俺は今まで穀物やスパイスを、仲買の商人に頼んで卸してもらっていた。だけどシオンは違う。自分達で商品を開発して、自分達で販路を確保して、自分達で店で商品も売っている。そんなシオン達を見ていて、これこそが商人なんだと思ったのさ。だからシオンの仲間になって、一から商売を勉強しなおしたいんだ」

「オルデンだったら大歓迎だけど……」

「それじゃあ、決まりだな」


オルデンはまるで肩の荷が下りたように、晴れやかに微笑んだ。

それから僕とオルデンは話し合って、『オルデン商会』の店舗を、『ロンメル商会』のグランタリア大陸の拠点にすることにした。

その翌日、僕とオルデンは、アグウェルとサイゾウにお願いして、メイリンさんの居場所を探してもららい、彼女と再会した。


『オルデン商会』を改め『ロンメル商会・王都ダルトン支部』にするとメイリンさんに伝えると、帝都イシュタルへ戻り次第、手続きをしてくれると言ってくれた。


……これでオルデンが仲間になったけど、今まで秘密にしていた、あれこれを打ち明けないといけないんだよね……サイゾウがミムルだと教えるのは、ちょっと可哀そうな気もするな……
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

処理中です...