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第一章 ラバネス半島編
39.商業ギルド東支部へ行こう!
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荒くれ者達に囲まれ、サイゾウも僕も危なかったところをリムルに助けてもらった。
リムルはサイゾウを見ても思い出せないようで、首を傾げている。
「私の知り合い? うーん、思い出せないけど?」
「私のような末端の者をリムル姫は知らぬでござる。拙者が遠くからお姿を拝見していただけでござる」
サイゾウの話では、まだ魔王が生きていた五百年前、アグウェルは魔公爵として恐れられ、リムルも姫として有名だったらしい。
その時、サイゾウはアグウェルは魔公爵の配下の諜報員だったという。
説明を聞いたリムルは「ふーん、そうなんだー」と全く覚えてもいなかった。
リムルとサイゾウに人族へ変化してもらい、僕達三人は大通りにある宿へ戻る。
すると部屋に入った瞬間にレミリアに抱きしめられてしまった。
最近、レミリアに心配かければかりだから、不安にさせてごめんなさい……
朝方になるとアグウェルが部屋に戻ってきた。
そしてサイゾウの姿を見て、怪訝な表情を浮かべる。
「サイゾウ、どうしてお前はここにいるのですか?」
「ひー、公爵閣下、お許しをー!」
アグウェルの姿を見て、あまりにサイゾウが怯えているので、僕はサイゾウに誘拐された経緯を説明した。
するとアグウェルは冷たい視線をサイゾウに向ける。
「サイゾウ、我が主を誘拐するとは、その罪を償うつもりはありますか?」
「知らぬこととはいえ申し訳ないでござる。これからシオン様を主と仰ぎ、命が尽きるまで仕える所存でござる」
「それなら今回は許します。次はありませんよ」
そう言ってアグウェルはサイゾウのことを許した。
「また魔族ですが、よろしかったのですか?」
「仲間は多いほうが楽しいからね」
レミリアはサイゾウのことを不審に思ってるみたいだけど、アグウェルには絶対に逆らえなようだからね。
……それに諜報員とか忍が仲間って、ちょっとカッコイイかも……
昼前まで仮眠を取り、それから遅い朝食を食べてから、サイゾウを仲間に加えて、僕達五人は宿を出発した。
そして夕方まで休憩を挟みながら馬車を走らせていくと、一際大きな外壁が見えてきた。
遠くからでも見える外壁は高さ十メートルはありそうだ。
外壁の近くまでくると、大きな大門が開かれていて、尖がった兜の警備兵達が検閲を行っていた。
僕達の馬車も長い人の列に並び一時間ほど待つことにした。
やっと順番が回ってきたので、検閲を行う詰所の前に馬車を止めて、五人で下りていくと、レミリアとリムルを見て警備兵達がいやらしい笑みを浮かべる。
「ほう……これは二人とも上玉じゃねーか。今晩、酒場で酌をしてくれたら、ここを通してやる」
「二人は私の娘なのです。どうかお手柔らかに」
アグウェルはそう言って、懐から貨幣の入った革袋を取り出し、警備兵の一人に握らせる。
すると革袋の中を確かめた警備兵がニヤリと頬を歪ませて、行けというように首をクイっと動かした。
大門を通り抜けて帝都イシュタルの街中へ入ると、その規模の大きさに驚かされた。
大通りにある建物はどれも五階建てで、どの建物も赤茶色の瓦が敷き詰められている。
路の両端には露天商が店が軒を並べ、多くの人で賑わっていた。
アグウェルの調べでは商業ギルド東支部は、街の東の商業地区にあるという。
街に入って二十分ほど、ゆっくりと馬車を走らせていると、商業ギルド東支部の大きな建物が見えてきた。
馬車を裏手の厩舎に止め、サイゾウに留守番を頼んで、僕、レミリア、アグウェル、リムルの四人で建物の中へと入っていく。
一階の受付で、エルフィンさんから預かった封書を手渡すと、受付のお姉さんが三階の来客室まで僕達を案内してくれた。
しばらくソファに座って待っていると、チャイナドレスのような服を着た、キレイな黒髪の女性の人が姿を現した。
そして軽く会釈して、僕の前のソファに座る。
「君がシオン君ね。私は商業ギルド東支部の支部長のリンメイよ。『ロンメル商会』のことはブリタニス王国の商業ギルドから情報を受けているわ。『ロンメル商会』の商品はどれも素晴らしいものばかり。だから授与式では、シルバーのメダルを受け取ってね」
「授与式は何時なんでしょうか?」
「二日後よ。ここには沢山の商会の者達が集まるから、建物の中が宿になっているの。シオン君達も、その宿に泊まって、授与式をまでゆっくりしていってね」
リンメイさんから授与式の説明を聞き終わった僕達は、来客室を出て宿へと移動した。
部屋にそれぞれの荷物を置いて、大きなリビングで休んでいると、いきなり見知らぬ褐色の肌の青年から声をかけられた。
「子供がこんな場所に何の用だい?」
「三日後の授与式に出席するために来たんです」
「ということは君は商会持ちか? 僕も商会持ちでね。僕の名はオルデン、イシュガルド帝国の南にあるダルシアン王国で商売をしている商人だ」
「僕はシオン、ブリタニス王国で『ロンメル商会』の会長をしています」
「君があの『ロンメル商会』の会長かい。なんでも画期的な商品を開発したとリンメイさんが、以前に言っていたよ。ぜひ、どんな商品を取り扱っているのか聞かせてくれないかな」
……商業ギルド東支部で来たばかりなのに、なぜ僕の噂が広まってるの?……今日初めて会ったけど、もしかしてリンメイさんって口が軽いのかな……
リムルはサイゾウを見ても思い出せないようで、首を傾げている。
「私の知り合い? うーん、思い出せないけど?」
「私のような末端の者をリムル姫は知らぬでござる。拙者が遠くからお姿を拝見していただけでござる」
サイゾウの話では、まだ魔王が生きていた五百年前、アグウェルは魔公爵として恐れられ、リムルも姫として有名だったらしい。
その時、サイゾウはアグウェルは魔公爵の配下の諜報員だったという。
説明を聞いたリムルは「ふーん、そうなんだー」と全く覚えてもいなかった。
リムルとサイゾウに人族へ変化してもらい、僕達三人は大通りにある宿へ戻る。
すると部屋に入った瞬間にレミリアに抱きしめられてしまった。
最近、レミリアに心配かければかりだから、不安にさせてごめんなさい……
朝方になるとアグウェルが部屋に戻ってきた。
そしてサイゾウの姿を見て、怪訝な表情を浮かべる。
「サイゾウ、どうしてお前はここにいるのですか?」
「ひー、公爵閣下、お許しをー!」
アグウェルの姿を見て、あまりにサイゾウが怯えているので、僕はサイゾウに誘拐された経緯を説明した。
するとアグウェルは冷たい視線をサイゾウに向ける。
「サイゾウ、我が主を誘拐するとは、その罪を償うつもりはありますか?」
「知らぬこととはいえ申し訳ないでござる。これからシオン様を主と仰ぎ、命が尽きるまで仕える所存でござる」
「それなら今回は許します。次はありませんよ」
そう言ってアグウェルはサイゾウのことを許した。
「また魔族ですが、よろしかったのですか?」
「仲間は多いほうが楽しいからね」
レミリアはサイゾウのことを不審に思ってるみたいだけど、アグウェルには絶対に逆らえなようだからね。
……それに諜報員とか忍が仲間って、ちょっとカッコイイかも……
昼前まで仮眠を取り、それから遅い朝食を食べてから、サイゾウを仲間に加えて、僕達五人は宿を出発した。
そして夕方まで休憩を挟みながら馬車を走らせていくと、一際大きな外壁が見えてきた。
遠くからでも見える外壁は高さ十メートルはありそうだ。
外壁の近くまでくると、大きな大門が開かれていて、尖がった兜の警備兵達が検閲を行っていた。
僕達の馬車も長い人の列に並び一時間ほど待つことにした。
やっと順番が回ってきたので、検閲を行う詰所の前に馬車を止めて、五人で下りていくと、レミリアとリムルを見て警備兵達がいやらしい笑みを浮かべる。
「ほう……これは二人とも上玉じゃねーか。今晩、酒場で酌をしてくれたら、ここを通してやる」
「二人は私の娘なのです。どうかお手柔らかに」
アグウェルはそう言って、懐から貨幣の入った革袋を取り出し、警備兵の一人に握らせる。
すると革袋の中を確かめた警備兵がニヤリと頬を歪ませて、行けというように首をクイっと動かした。
大門を通り抜けて帝都イシュタルの街中へ入ると、その規模の大きさに驚かされた。
大通りにある建物はどれも五階建てで、どの建物も赤茶色の瓦が敷き詰められている。
路の両端には露天商が店が軒を並べ、多くの人で賑わっていた。
アグウェルの調べでは商業ギルド東支部は、街の東の商業地区にあるという。
街に入って二十分ほど、ゆっくりと馬車を走らせていると、商業ギルド東支部の大きな建物が見えてきた。
馬車を裏手の厩舎に止め、サイゾウに留守番を頼んで、僕、レミリア、アグウェル、リムルの四人で建物の中へと入っていく。
一階の受付で、エルフィンさんから預かった封書を手渡すと、受付のお姉さんが三階の来客室まで僕達を案内してくれた。
しばらくソファに座って待っていると、チャイナドレスのような服を着た、キレイな黒髪の女性の人が姿を現した。
そして軽く会釈して、僕の前のソファに座る。
「君がシオン君ね。私は商業ギルド東支部の支部長のリンメイよ。『ロンメル商会』のことはブリタニス王国の商業ギルドから情報を受けているわ。『ロンメル商会』の商品はどれも素晴らしいものばかり。だから授与式では、シルバーのメダルを受け取ってね」
「授与式は何時なんでしょうか?」
「二日後よ。ここには沢山の商会の者達が集まるから、建物の中が宿になっているの。シオン君達も、その宿に泊まって、授与式をまでゆっくりしていってね」
リンメイさんから授与式の説明を聞き終わった僕達は、来客室を出て宿へと移動した。
部屋にそれぞれの荷物を置いて、大きなリビングで休んでいると、いきなり見知らぬ褐色の肌の青年から声をかけられた。
「子供がこんな場所に何の用だい?」
「三日後の授与式に出席するために来たんです」
「ということは君は商会持ちか? 僕も商会持ちでね。僕の名はオルデン、イシュガルド帝国の南にあるダルシアン王国で商売をしている商人だ」
「僕はシオン、ブリタニス王国で『ロンメル商会』の会長をしています」
「君があの『ロンメル商会』の会長かい。なんでも画期的な商品を開発したとリンメイさんが、以前に言っていたよ。ぜひ、どんな商品を取り扱っているのか聞かせてくれないかな」
……商業ギルド東支部で来たばかりなのに、なぜ僕の噂が広まってるの?……今日初めて会ったけど、もしかしてリンメイさんって口が軽いのかな……
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