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第一章 ラバネス半島編
32.『ロンメル商会』の休業!
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ジョルドはリムルの手を引かれて、強引にデートへと連れていかれた。
まあ、ジョルドはリムルに一目惚れしたようだし、リムルも乗り気だから止める必要もないけど……できることなら、リムルさんや、ほどほどにしてあげてね……
それから十日間、僕達はディルメス侯爵家の邸に寝泊りして、久しぶりにゆっくりとした休日を満喫していた。
すると姿見の転移ゲートを通って、いきなりエドワードさんが邸に現れた。
そして父上と僕に向けて城へ来るようにという。
父上と二人で城にある宰相の執務室へ向かうと、疲れた表情をしたロンムレス宰相がソファに座っていた。
僕達は対面のソファに座り、父上は気遣うようにロンムレス宰相へ声をかけた。
「どうなされたんですか?」
「それはこっちが聞きたい。シオン、『ロンメル商会』の事業はどうなっている?」
「ちょっと嫌がらせをされたので、ほとぼりが冷めるまで商会は休業してますけど」
「地方の諸侯達から早馬が来ているのだ。『ロンメル商会』が休んでいるので石鹸が手に入らんとな。香水はそれほど消費しないが、石鹸は必需品だと申してな。王宮の貴族達からも嘆願がきているし、王都の住民からも、警備兵へ苦情が入っている。開店はできないのか?」
まさか十日間、店を開けなかっただけで貴族や、王都の住人から苦情が寄せられるとは思わなかったな。
でも今店を開けたら、あの商業ギルドのギルドマスターの思う壺になるような気がする……
ここはハッキリと言ったほうがいいだろうね。
チラリと父上が視線を送ってくるので、僕は頷いてキッパリと言い放つ。
「それはできません。誰が仕掛けているのかはまだ言えませんが、『ロンメル商会』を狙って、香水や石鹸の模造品が出回っていますから。街の人々には『ロンメル商会』が紛い物を売っていないとわかってもらうまで店舗は開けられないです」
「わかった。王宮でも王都の警備兵を動かして、その紛い物を売っている者達を調査しよう」
ホントはアグウェルから情報を聞いてるから、誰が模造品を売ってるか知ってるけど、せっかく調査してくれるというから、ここはあえて言わないでおこう。
王都の別邸へと戻った僕は、ディルメス侯爵家の邸に戻る前にアグウェルに引き止められ、レミリア、リムルと一緒にリビングに集まっていた。
「先ほど、ロンムレス宰相へ私の情報を伝えなかったのは賢明でした。私の推測ですが、これからも王宮に呼び出されるかと思いますが、商業ギルドのギルドマスターと、その配下の商会達のことについては、いっさい情報を漏らさないほうがいいでしょう」
「それはなぜ?」
「私が魔族だとバレる可能性があるからです。魔族は未だに忌み嫌われる種族ですので、不用意に王宮が知れば、私達を排除しようと動くかもしれません」
「わかったよ。言わないよ」
今となっては二人はアグウェルとリムルは大事な仲間だと思っている。
仲間を守るのは当然のことだよね。
「それと、これからも王宮に呼ばれると思いますが、決して『ロンメル商会』の休業を解いてはいけまんせん」
「休業したままだとどうなるの?」
「王宮のほうで、『ロンメル商会』を妨害している商会や商人を、検挙することになるでしょうね。そうなれば、迂闊に王国内で模造品を売ることができなくなります。常に警備兵が目を光らせているわけですからね」
なるほど、わざと警備兵に捜査させて、犯人を捕らえてもらうのか。
さすがはアグウェル、頭がキレるよね。
それから二十日後、王宮に呼ばれたけど、僕は『ロンメル商会』を開業せず、お休みすると言い張った。
そしてまた十日後が過ぎた頃、王都の警備兵が、商会の妨害をしていた商会と商人達を捕まえてきた。
僕と父上が王宮へ行くと、ロンムレス宰相が険しい表情で訴えてくる。
「もう『ロンメル商会』を邪魔する者は検挙した。これで問題はなかろう。店を開業してくれるな?」
「ダメです。まだ黒幕がいるかもしれません。もし黒幕がいれば、イタチごっこになりますから」
「それはそうだが……」
ロンムレス宰相は見るからに疲れた表情を浮かべる。
父上も僕のことをチラリと見るけど、ここでいいよって言えないんだよね。
だって、お城に来る前にアグウェルから『ロンメル商会』の開業はダメって言われたからね。
そして『ロンメル商会』が休業して二ヵ月が経過した。
王都の別邸で休んでいると、姿見の転移ゲートが開いて、セレーネ王妃が姿を現した。
そして僕に優しく微笑みかける。
「ロンムレス宰相から聞いたけど、どうして『ロンメル商会』を再開してくれないの?」
「まだ黒幕が捕まっていないからです……」
「黒幕は誰だかわかってるの?」
「誰だかは、わかりません。だから『ロンメル商会』はまだ休業したままにします」
セレーネ王妃に全てを伏せるのはちょっと気が引けるんだけど……ホントは正直に、商業ギルドのギルドマスターが原因だって言えたらいいのに……
でも、そのことはアグウェルから口止めされてるから、言えなくてごめんなさい。
まあ、ジョルドはリムルに一目惚れしたようだし、リムルも乗り気だから止める必要もないけど……できることなら、リムルさんや、ほどほどにしてあげてね……
それから十日間、僕達はディルメス侯爵家の邸に寝泊りして、久しぶりにゆっくりとした休日を満喫していた。
すると姿見の転移ゲートを通って、いきなりエドワードさんが邸に現れた。
そして父上と僕に向けて城へ来るようにという。
父上と二人で城にある宰相の執務室へ向かうと、疲れた表情をしたロンムレス宰相がソファに座っていた。
僕達は対面のソファに座り、父上は気遣うようにロンムレス宰相へ声をかけた。
「どうなされたんですか?」
「それはこっちが聞きたい。シオン、『ロンメル商会』の事業はどうなっている?」
「ちょっと嫌がらせをされたので、ほとぼりが冷めるまで商会は休業してますけど」
「地方の諸侯達から早馬が来ているのだ。『ロンメル商会』が休んでいるので石鹸が手に入らんとな。香水はそれほど消費しないが、石鹸は必需品だと申してな。王宮の貴族達からも嘆願がきているし、王都の住民からも、警備兵へ苦情が入っている。開店はできないのか?」
まさか十日間、店を開けなかっただけで貴族や、王都の住人から苦情が寄せられるとは思わなかったな。
でも今店を開けたら、あの商業ギルドのギルドマスターの思う壺になるような気がする……
ここはハッキリと言ったほうがいいだろうね。
チラリと父上が視線を送ってくるので、僕は頷いてキッパリと言い放つ。
「それはできません。誰が仕掛けているのかはまだ言えませんが、『ロンメル商会』を狙って、香水や石鹸の模造品が出回っていますから。街の人々には『ロンメル商会』が紛い物を売っていないとわかってもらうまで店舗は開けられないです」
「わかった。王宮でも王都の警備兵を動かして、その紛い物を売っている者達を調査しよう」
ホントはアグウェルから情報を聞いてるから、誰が模造品を売ってるか知ってるけど、せっかく調査してくれるというから、ここはあえて言わないでおこう。
王都の別邸へと戻った僕は、ディルメス侯爵家の邸に戻る前にアグウェルに引き止められ、レミリア、リムルと一緒にリビングに集まっていた。
「先ほど、ロンムレス宰相へ私の情報を伝えなかったのは賢明でした。私の推測ですが、これからも王宮に呼び出されるかと思いますが、商業ギルドのギルドマスターと、その配下の商会達のことについては、いっさい情報を漏らさないほうがいいでしょう」
「それはなぜ?」
「私が魔族だとバレる可能性があるからです。魔族は未だに忌み嫌われる種族ですので、不用意に王宮が知れば、私達を排除しようと動くかもしれません」
「わかったよ。言わないよ」
今となっては二人はアグウェルとリムルは大事な仲間だと思っている。
仲間を守るのは当然のことだよね。
「それと、これからも王宮に呼ばれると思いますが、決して『ロンメル商会』の休業を解いてはいけまんせん」
「休業したままだとどうなるの?」
「王宮のほうで、『ロンメル商会』を妨害している商会や商人を、検挙することになるでしょうね。そうなれば、迂闊に王国内で模造品を売ることができなくなります。常に警備兵が目を光らせているわけですからね」
なるほど、わざと警備兵に捜査させて、犯人を捕らえてもらうのか。
さすがはアグウェル、頭がキレるよね。
それから二十日後、王宮に呼ばれたけど、僕は『ロンメル商会』を開業せず、お休みすると言い張った。
そしてまた十日後が過ぎた頃、王都の警備兵が、商会の妨害をしていた商会と商人達を捕まえてきた。
僕と父上が王宮へ行くと、ロンムレス宰相が険しい表情で訴えてくる。
「もう『ロンメル商会』を邪魔する者は検挙した。これで問題はなかろう。店を開業してくれるな?」
「ダメです。まだ黒幕がいるかもしれません。もし黒幕がいれば、イタチごっこになりますから」
「それはそうだが……」
ロンムレス宰相は見るからに疲れた表情を浮かべる。
父上も僕のことをチラリと見るけど、ここでいいよって言えないんだよね。
だって、お城に来る前にアグウェルから『ロンメル商会』の開業はダメって言われたからね。
そして『ロンメル商会』が休業して二ヵ月が経過した。
王都の別邸で休んでいると、姿見の転移ゲートが開いて、セレーネ王妃が姿を現した。
そして僕に優しく微笑みかける。
「ロンムレス宰相から聞いたけど、どうして『ロンメル商会』を再開してくれないの?」
「まだ黒幕が捕まっていないからです……」
「黒幕は誰だかわかってるの?」
「誰だかは、わかりません。だから『ロンメル商会』はまだ休業したままにします」
セレーネ王妃に全てを伏せるのはちょっと気が引けるんだけど……ホントは正直に、商業ギルドのギルドマスターが原因だって言えたらいいのに……
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