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第一章 ラバネス半島編
31.偽の商品が王都に出回った!
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商業ギルドのギルドマスターから呼び出されてから十日が過ぎた頃、王都ブリタスの街に香水や石鹸の偽物が出回るようになった。
その偽の商品は、どれも油と水を使ったモノで、常日頃から使用した人達は肌荒れを起こしたらしい。
そしてなぜか、その人達が『ロンメル商会』の店に苦情を言いにつめかけてきたのだ。
店長であるアロムとアグウェルで対応しているけど、苦情を訴える人達の人数が増えているという。
その情報を受け、僕はすぐにアグウェルに指示して、何が起こっているのか街の情報を集めてもらった。
五つの商会が多くの商人達を使って、偽物の香水と石鹸の商品を街に流しているらしい。
その商会達は、王宮御用達となった『ロンメル商会』のことを羨んでいて、以前から『ロンメル商会』の足を引っ張ってやろうと考えていた者達だそうだ。
そして、その商会達を裏で、商業ギルドのギルドマスターが操っているという。
しかし、ギルドマスターと商会達とのつながりを示す証拠はなにも残されておらず、普通に調査ししてもギルドマスターの影を発見することもできないらしい。
さすがはアークデーモンのアグウェル、その調査能力はずば抜けているよね。
報告を終えたアグウェルが僕とレミリアを見る。
「すぐに商会に乗り込んで、偽造した品を売るのを中止させないといけませんね」
「乗り込んでどうやって止めるの?」
「もちろん、その商会の会長とその手下の商人達を捕らえ、商売ができないようにしてしまえば」
レミリア、考え方が真っ黒になってますけど……気品があって清楚なレミリアのほうが僕は好きだな……
アグウェルはアゴに手を当てて、左右に首を振る。
「それは悪手でしょう。手下の商人達を潰しても他の商人達を雇えば済みますし、五つの商会を潰したとしても、他の商会が偽物を作りればいいだけの話。イタチごっこになるだけです」
「ではどうしたらいいのですか?」
「あの商業ギルドのギルドマスターを葬れば済む話ですが、今、ギルドマスターを消せば『ロンメル』商会が疑われるでしょう。タイミングが悪いですね」
簡単に殺すとか言わないでね!
精神は前世の日本の記憶がある大人でも、まだ十歳なんだからね。
僕は考えた末に、二人に告げる。
「『ロンメル商会』の業務の全てをお休みしよう。悪く思われて商売をしていても楽しくないからね」
「致し方ないですね」
「了解いたしました」
『ロンメル商会』の全業務を休止させるため、アグウェルとレミリアの二人は急いで部屋を出ていった。
ディルメス侯爵の領内の店舗はジョルドが管理してくれているし、父上もいる。少しぐらい店を休んでも何とかなるだろう。
それに王都ブリタスの店舗や工場、王都ナブルの店舗、王都トラントの店舗はそれぞれの王国の王宮が費用を出してくれている。
だから店を休んだとしても『ロンメル商会』にはさほど影響は出ないはずだ。
まあ、今まで利益が貯まっているから、少しぐらい休んでもいいよね。
それから五日後、『ロンメル商会』の店舗と工場の全てが休業に入った。
アロムやシャムは久しぶりに長く休みが取れると喜んでいたっけ……
僕、レミリア、アグウェル、リムルの四人と一緒に姿見の転移ゲートを通って、久しぶりにディルメス侯爵家へと戻る。
そしてリビングに行くと、父上、アレン、ジョルドの三人が紅茶を飲んで休憩していた。
「シオン、家に戻ってきていいのか?」
「うん、ちょっとお休みしたから」
「シオンは十歳なのに働き過ぎなんだよ。だから私がフィーネ女王陛下とマリナ女王陛下の相手を私がすることになるんだ」
アレン兄さんはブツブツと文句を言う。
最近、フィーネとマリナ女王陛下の姿が見えないと思ったら、僕の仕事の邪魔をしないように、アレン兄上の所へ遊びに行っていたのか。
するとアグウェルが小声で「最近、アレン様は二人のことが気になっているご様子です」と教えてくれた。
皆で楽しく過ごしていると、先ほどからジョルドがソワソワした様子で落ち着かない。
チラチラとリムルの姿を見ては表情を緊張させている。
「ジョルド、落ち着かないようだけど、どうしたの?」
「シオン様、ちょっとお話が」
ジョルドは手招きして、僕を廊下へ呼び出した。
そして内緒話でもするように僕の耳へ口を寄せる。
「あの見たことのない女性が一人いるのですが……」
「あ、リムルのことね」
「お付き合いしている男性はいるのですか?」
「いないと思うけど、はっきりとは知らないよ」
僕がそういうと、ジョルドは露骨に残念な表情をする。
うーん、ロナウド王太子とカイロス第二王子とは仲いいのは知ってるけど、恋人って感じじゃないよね。
ハッキリ言ってリムルって、レミリアと違ったタイプの美女なんだよね。
レミリアはエルフ特有の清楚さというか可憐さがある美女なんだけど、リムルは肉欲的というか蠱惑的な色気が漂っている美女って感じなんだよね。
なんだか引き込まれそうな魅力があるから、僕としては苦手でついつい距離を置いちゃうんだけどね。
「リムルのこと気に入ったの?」
「はい」
「じゃあ、私とデートしてみる?」
いきなり後ろから声をかけられて振り向くと、リムルがニッコリと笑顔で立っていた。
……リムル……あんまりジョルドを刺激しないでね……
ジョルド……リムルに本気になるのは危ないと思うけど……今は黙っておいたほうがいいよね。
その偽の商品は、どれも油と水を使ったモノで、常日頃から使用した人達は肌荒れを起こしたらしい。
そしてなぜか、その人達が『ロンメル商会』の店に苦情を言いにつめかけてきたのだ。
店長であるアロムとアグウェルで対応しているけど、苦情を訴える人達の人数が増えているという。
その情報を受け、僕はすぐにアグウェルに指示して、何が起こっているのか街の情報を集めてもらった。
五つの商会が多くの商人達を使って、偽物の香水と石鹸の商品を街に流しているらしい。
その商会達は、王宮御用達となった『ロンメル商会』のことを羨んでいて、以前から『ロンメル商会』の足を引っ張ってやろうと考えていた者達だそうだ。
そして、その商会達を裏で、商業ギルドのギルドマスターが操っているという。
しかし、ギルドマスターと商会達とのつながりを示す証拠はなにも残されておらず、普通に調査ししてもギルドマスターの影を発見することもできないらしい。
さすがはアークデーモンのアグウェル、その調査能力はずば抜けているよね。
報告を終えたアグウェルが僕とレミリアを見る。
「すぐに商会に乗り込んで、偽造した品を売るのを中止させないといけませんね」
「乗り込んでどうやって止めるの?」
「もちろん、その商会の会長とその手下の商人達を捕らえ、商売ができないようにしてしまえば」
レミリア、考え方が真っ黒になってますけど……気品があって清楚なレミリアのほうが僕は好きだな……
アグウェルはアゴに手を当てて、左右に首を振る。
「それは悪手でしょう。手下の商人達を潰しても他の商人達を雇えば済みますし、五つの商会を潰したとしても、他の商会が偽物を作りればいいだけの話。イタチごっこになるだけです」
「ではどうしたらいいのですか?」
「あの商業ギルドのギルドマスターを葬れば済む話ですが、今、ギルドマスターを消せば『ロンメル』商会が疑われるでしょう。タイミングが悪いですね」
簡単に殺すとか言わないでね!
精神は前世の日本の記憶がある大人でも、まだ十歳なんだからね。
僕は考えた末に、二人に告げる。
「『ロンメル商会』の業務の全てをお休みしよう。悪く思われて商売をしていても楽しくないからね」
「致し方ないですね」
「了解いたしました」
『ロンメル商会』の全業務を休止させるため、アグウェルとレミリアの二人は急いで部屋を出ていった。
ディルメス侯爵の領内の店舗はジョルドが管理してくれているし、父上もいる。少しぐらい店を休んでも何とかなるだろう。
それに王都ブリタスの店舗や工場、王都ナブルの店舗、王都トラントの店舗はそれぞれの王国の王宮が費用を出してくれている。
だから店を休んだとしても『ロンメル商会』にはさほど影響は出ないはずだ。
まあ、今まで利益が貯まっているから、少しぐらい休んでもいいよね。
それから五日後、『ロンメル商会』の店舗と工場の全てが休業に入った。
アロムやシャムは久しぶりに長く休みが取れると喜んでいたっけ……
僕、レミリア、アグウェル、リムルの四人と一緒に姿見の転移ゲートを通って、久しぶりにディルメス侯爵家へと戻る。
そしてリビングに行くと、父上、アレン、ジョルドの三人が紅茶を飲んで休憩していた。
「シオン、家に戻ってきていいのか?」
「うん、ちょっとお休みしたから」
「シオンは十歳なのに働き過ぎなんだよ。だから私がフィーネ女王陛下とマリナ女王陛下の相手を私がすることになるんだ」
アレン兄さんはブツブツと文句を言う。
最近、フィーネとマリナ女王陛下の姿が見えないと思ったら、僕の仕事の邪魔をしないように、アレン兄上の所へ遊びに行っていたのか。
するとアグウェルが小声で「最近、アレン様は二人のことが気になっているご様子です」と教えてくれた。
皆で楽しく過ごしていると、先ほどからジョルドがソワソワした様子で落ち着かない。
チラチラとリムルの姿を見ては表情を緊張させている。
「ジョルド、落ち着かないようだけど、どうしたの?」
「シオン様、ちょっとお話が」
ジョルドは手招きして、僕を廊下へ呼び出した。
そして内緒話でもするように僕の耳へ口を寄せる。
「あの見たことのない女性が一人いるのですが……」
「あ、リムルのことね」
「お付き合いしている男性はいるのですか?」
「いないと思うけど、はっきりとは知らないよ」
僕がそういうと、ジョルドは露骨に残念な表情をする。
うーん、ロナウド王太子とカイロス第二王子とは仲いいのは知ってるけど、恋人って感じじゃないよね。
ハッキリ言ってリムルって、レミリアと違ったタイプの美女なんだよね。
レミリアはエルフ特有の清楚さというか可憐さがある美女なんだけど、リムルは肉欲的というか蠱惑的な色気が漂っている美女って感じなんだよね。
なんだか引き込まれそうな魅力があるから、僕としては苦手でついつい距離を置いちゃうんだけどね。
「リムルのこと気に入ったの?」
「はい」
「じゃあ、私とデートしてみる?」
いきなり後ろから声をかけられて振り向くと、リムルがニッコリと笑顔で立っていた。
……リムル……あんまりジョルドを刺激しないでね……
ジョルド……リムルに本気になるのは危ないと思うけど……今は黙っておいたほうがいいよね。
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