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第一章 ラバネス半島編

16.冒険者ギルドへ行こう!

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ナブラスト王国から戻ってきた僕はとにかく忙しかった。

僕と父上は王城へ赴き、ロンムレス宰相にナブラスト王国の王宮であったこと報告した。

ロンムレス宰相はライオネル王陛下へそのことを伝え、同盟に向けて準備を進めるという。

それからフィーネと会い、後宮へ連れて行かれ、彼女の私室の姿見を、《創造魔法陣》を使って転移ゲートに変化させた。

その翌日に、王都の工場建設予定地へ行ってみると、既に建物の外観は作られており、僕は工場に必要な魔法陣をせっせと描くことになった。

それから二週間後、王都ブリタスの店が開店し、王都の工場が稼働を始めた。

ちなみに工場の工員は王宮が王都で募集してくれた。

そして一週間後、王都の工場で作られた商品は、帆船で港街ダキアまで輸送され、そこから荷馬車で王都ナブルへ運ばれ、王都の店舗は無事に開店となった。

この間、レミリアとジョルドは商業ギルドや王宮とのやり取りに追われ、僕よりも忙しそうに、あっちこっちへ飛び回っていた。

王都ブリタスの店と王都ナブルの店の店員については、それぞれの王宮が使用人を派遣してくれているので、今のところは問題ないけど、いつまでも王宮に迷惑をかけられないよね。

それに店や工場も増え、その分の事務処理も増えてきた。

今はジョルドの手を借りているけど、ジョルドはもともと父上の補佐をする執務長だから、いつまでもジョルドを借りているわけにもいかない。

全ての管理をレミリアに任せるのはかわいそうだし。


そうなると……事務処理や交渉事ができる有能な人材が必要なんだよね。


僕は私室の床に羊皮紙を敷き、その上に《創造魔法陣》のスキルで『鑑定』の魔法陣を描く。
そして、それを帽子の裏へ縫いつける。

これで帽子を被って、魔力を魔法陣に流せば『鑑定』のスキルがつかえるはずだ。

この帽子を『鑑定帽』と名付けよう。


僕の『鑑定帽』を見て、レイミアが首を傾げる。


「それでどうやって面接をするのですか?」

「面接は別邸でやろうと思ってる。王都のほうが人が多いからね」

「それではジョルドに伝えて、面接会場の準備をしてもらいましょう。私が王都中に宣伝いたしましょう」


宣伝といってもどうやって……どうやって?


悩んでいる僕に向けてレイミアが微笑む。


「冒険者ギルドや商人ギルドなど、王都のある各ギルドの掲示板へ面接の広告を張っておきます。そうすれば、ギルドに来た者達の目につくはずです」

「なるほど……それならビラ配りみたいなことをせずに済むね」

「ビラ配り?」


あ……このエクストリア世界には紙は存在しないから、ビラなんてないよね。

思わず前世の日本のことをしゃべってしまった……注意しなくちゃ。


僕とレミリアは私室を出てリビングへ行くと、なぜかアレン兄上、マリナ女王陛下、フィーネの三人が紅茶を飲んでいた。


「アレン兄上、どうして二人と紅茶を飲んでいるの?」

「うむ、わらわの公務が一つ終わってのう。休憩がてらにこちらに来ておったのだ」

「城にいたら、勉強ばかり言われるから逃げてきちゃった」


マリナ女王陛下は仕事を終わらせて来ているからいいけど、フィーネは勉強を抜け出したらダメでしょ。


「まあ、来ちゃってるのはしかたないだろう。それよりもシオンは何をしに来たんだ?」

「そうそう、今からレミリアと二人で面接の宣伝に行こうと思ってね」

「宣伝?」


不思議そうな表情をするアレン兄上へ、『ロンメル商会』が人員不足のため有能な人材を集めることになった経緯を説明する。

するとマリナ女王陛下とフィーネの二人が目を輝かせる。


「各ギルドへ宣伝に行くとな。それは面白そうじゃ。わらわも連れていけ」

「私、ギルドに行ったことがないの。とても興味があるわ」

「二人もこう言ってるし、皆で一緒に王都にある各ギルドへ宣伝にいこうか」


僕達五人は王都の別邸を出て街中へと歩いて向かった。

大通りを歩いていると、マリナ女王陛下が周囲をキョロキョロと見回す。


「ナブル以外の王都に来たのは初めてじゃ。王都ブリタスは亜人が多いのう。海洋族など初めてみたわ」


ナブラスト王国は人族至上主義ではないが、人族を優先的に保護している国である。

しかしブリタニス王国は人種差別については平等のお国柄である。

その結果、多くの亜人達がブリタニス王国内に住んでいる。


色々な魚人族を総称して海洋族と呼ぶんだけど、内陸部では見かけない海洋族も王国内の港町ではよく見かける人種なのだ

その他にエルフ、ドワーフ、ハーフリングなどの亜人種も王都にはたくさん住んでいる。


レイミアの案内で大通りにある冒険者ギルドの建物の中へみんなで入っていくと、室内にいた冒険者達が一斉に僕達へ鋭い視線を向けてきた。


室内は妙に静まり、なんだか緊張した雰囲気が漂う。


マリナ女王陛下もフィーネも豪華な服装をしているし、僕とアレン兄上も貴族らしい服装をしている。


それにレミリアは美女だし可愛いメイド服なんだよな。

これで目立つなというのは無理があるよね。


その中をレミリアを先頭に僕達は受付に向かって歩いていく。

すると近くにいた厳つい冒険者がマリナ女王陛下の腕を掴む。


「キレイな服なんて着て、めちゃ美少女じゃねーか。これから酒場にいくから一緒に酒を飲もうぜ。酌をしてくれたら、奢ってやるからよ」

「ほう……わらわに酌とな。面白いことをいう男じゃのう」


そう言ってマリナ女王陛下はニヤリと笑い、冒険者の腕を掴んで逆に捻り上げると、一瞬の内に冒険者の体を床に叩きつけていた。


「わらわの体に触れるとは、よほどの命知らずと見えるのう。わらわはこう見えても、勇者流合気道五段じゃぞ」


え……勇者流合気道って何?
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