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第一章 ラバネス半島編
6.王宮御用達になる!
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『創造魔法陣』で姿見を転移ゲートに変化させ、僕とレミリアは王都の別邸に転移することに成功し、そこにいたアレン兄上と一緒に三人で、また邸に転移して戻ってきた。
しかし、この転移ゲートには大きな問題点があったんだよね。
それはディルメス侯爵領の邸と王都の別邸しか行き来できない点と、姿見の中を潜ることができるモノしか転移できないという点だ。
というわけで、この転移ゲートはディルメス侯爵家だけの秘密ということになった。
今では頻繁にアレン兄上が別邸と邸を往来している。
転移ゲートを作って一番喜んでいるのはアレン兄上のような気がする……僕も兄上と気軽に会えるから嬉しいけど……
転移ゲートの実験から二週間後、邸に王宮からの伝令がやってきた。
父上の予想通り、王宮への呼び出しだった。
それから二週間後、姿見の転移ゲートを潜って、僕と父上は王都の別邸へと移動した。
そして次の日、二人で王城へ赴き、ロンムレス宰相の執務室を訪れた。
ロンムレス宰相は父上と同年代で、鼻の下にヒゲをはやした壮年の男性だった。
「よくきたなディルメス卿、まずは座ってくれ」
ロンムレス宰相のススメで長いソファに父上と二人で座る。
対面のソファに座ったロンムレス宰相が使用人に声をかけ、『ボーン食器』を運んでこさせた。
それを手に取って、チラッと父上の表情を伺う。
「これはある諸侯からライオネル王陛下に献上された『ボーン食器』と呼ばれる器なんだが、その諸侯からディルメス卿の領都の特産品と聞いてな。なぜこのような品を卿は隠しておるのだ?」
「別に隠していたつもりはない。最近、国境にナブラスト王国軍が現れてな。その敵軍を砦にて迎撃していたのだ。その間に息子と家臣が『ボーン食器』を領都で売り出してな。ただの真っ白な食器と思って、ここまでの騒ぎになるとは考えてもいなかったのだ」
「では、この食器は貴殿の子息が考案されたと?」
「そうだ。良い機会だと思い息子も同行させた。これが我が家の次男のシオンだ」
父上に紹介されて、僕はソファから立ち上がりペコリと頭を下げる。
「シオンです。よろしくお願いいたします」
僕を見て大きく頷いた後、ロンムレス宰相は父上に視線を移して目を細めた。
「考案者が貴殿の子息であることは理解した。これは要望なのだが、『ボーン食器』を王宮に卸してくれないか。他国からきた外交官へ、我が王国の特産品として自慢したいとライオネル王陛下が仰せなのだ」
「こんな何の絵柄もない、ただ白いだけで全くの無地の食器を我が王国の特産品などと、ライオネル王陛下も冗談が過ぎる」
「いやいやライオネル王陛下は本気のようなのだ。我が王国の庶民は、こんなにキレイな食器を使っていると、自慢したいらしい。頭の痛い話しだがな」
ロンムレス宰相と父上の話しは続き、なぜだか王宮の内の食器も『ボーン食器』と入れ替える話しとなった。
王宮で使用されている白磁の食器は重くて割れやすいので、『ボーン食器』と取り替えるらしい。
そこで無地のままでは味気ないので、『ボーン食器』に金メッキなどで装飾を施すことになった。
そして僕が代表を務める『ロンメル商会』は王宮御用達という肩書をいただけるという。
ロンムレス宰相の話しでは、王宮御用達の商会ともなると、商業ギルドにも影響を与えるほどの効力があるらしい。
「シオンよ。これからもブリタニス王国のために新しい商品の開発に尽力するように」
「あまり息子を焚きつけないでくれ。最近は色々とやらかすので困っているのだ」
「頼もしい限りではないか。男子はそのぐらいでないとな」
父上をロンムレス宰相はソファから立ち上がり、握手を交わして会合を終えた。
それから僕と父上は王城を出て別邸へと戻った。
別邸の部屋でレミリアと紅茶を楽しんでいると、扉が開いてアレン兄上が姿を現した。
「父上から聞いたよ。王宮御用達の商人になったらしいじゃないか」
「僕がなった訳じゃないよ。僕が代表をしている商会がそうなっただけだから」
「意味は同じだろ……それで次はどんな商品を開発するんだ?」
「え、考えてないよ」
「王宮御用達になったんだから、もっと色々な商品を作らないとマズイだろ。私も考えてあげるから、新しい商品のアイデアを考えようよ」
アレン兄上は真剣な表情で僕を指差す。
どうやら冗談ではなさそうだ。
でも……そういわれても、すぐに新商品のイメージなんて浮かばないんだよね……
僕とアレン兄上が頭を悩ませていると、レミリアが紅茶を一口飲んで、上品にテーブルの上に置いた。
「たぶんですが『ボーン食器』は真っ白な食器なので、庶民の女性達の心を虜にし、商品の大ヒットに繋がったと思われます。次も女性をターゲットにした商品を考えてみてはいかがでしょうか?」
そういえば前世の日本でも、女性の心を掴んだ商品が大人気なるという噂があったな。
女性の好む商品……美容関係の商品かな……
そうなると洗顔用品、洗髪用品、香水……下着とか衣服などだろうか?
レミリアへ女性の好きそうな趣向品を適当に説明してみる。
「石鹸……香水……下着……どれも魅力的な商品ですね。私としては下着に興味があります」
「私は香水だな。香水は紳士の嗜みともいうからね」
「うーん面倒だから、全部、試してみてもいいかもね?」
さて、どんな品ができるか楽しみだな。
しかし、この転移ゲートには大きな問題点があったんだよね。
それはディルメス侯爵領の邸と王都の別邸しか行き来できない点と、姿見の中を潜ることができるモノしか転移できないという点だ。
というわけで、この転移ゲートはディルメス侯爵家だけの秘密ということになった。
今では頻繁にアレン兄上が別邸と邸を往来している。
転移ゲートを作って一番喜んでいるのはアレン兄上のような気がする……僕も兄上と気軽に会えるから嬉しいけど……
転移ゲートの実験から二週間後、邸に王宮からの伝令がやってきた。
父上の予想通り、王宮への呼び出しだった。
それから二週間後、姿見の転移ゲートを潜って、僕と父上は王都の別邸へと移動した。
そして次の日、二人で王城へ赴き、ロンムレス宰相の執務室を訪れた。
ロンムレス宰相は父上と同年代で、鼻の下にヒゲをはやした壮年の男性だった。
「よくきたなディルメス卿、まずは座ってくれ」
ロンムレス宰相のススメで長いソファに父上と二人で座る。
対面のソファに座ったロンムレス宰相が使用人に声をかけ、『ボーン食器』を運んでこさせた。
それを手に取って、チラッと父上の表情を伺う。
「これはある諸侯からライオネル王陛下に献上された『ボーン食器』と呼ばれる器なんだが、その諸侯からディルメス卿の領都の特産品と聞いてな。なぜこのような品を卿は隠しておるのだ?」
「別に隠していたつもりはない。最近、国境にナブラスト王国軍が現れてな。その敵軍を砦にて迎撃していたのだ。その間に息子と家臣が『ボーン食器』を領都で売り出してな。ただの真っ白な食器と思って、ここまでの騒ぎになるとは考えてもいなかったのだ」
「では、この食器は貴殿の子息が考案されたと?」
「そうだ。良い機会だと思い息子も同行させた。これが我が家の次男のシオンだ」
父上に紹介されて、僕はソファから立ち上がりペコリと頭を下げる。
「シオンです。よろしくお願いいたします」
僕を見て大きく頷いた後、ロンムレス宰相は父上に視線を移して目を細めた。
「考案者が貴殿の子息であることは理解した。これは要望なのだが、『ボーン食器』を王宮に卸してくれないか。他国からきた外交官へ、我が王国の特産品として自慢したいとライオネル王陛下が仰せなのだ」
「こんな何の絵柄もない、ただ白いだけで全くの無地の食器を我が王国の特産品などと、ライオネル王陛下も冗談が過ぎる」
「いやいやライオネル王陛下は本気のようなのだ。我が王国の庶民は、こんなにキレイな食器を使っていると、自慢したいらしい。頭の痛い話しだがな」
ロンムレス宰相と父上の話しは続き、なぜだか王宮の内の食器も『ボーン食器』と入れ替える話しとなった。
王宮で使用されている白磁の食器は重くて割れやすいので、『ボーン食器』と取り替えるらしい。
そこで無地のままでは味気ないので、『ボーン食器』に金メッキなどで装飾を施すことになった。
そして僕が代表を務める『ロンメル商会』は王宮御用達という肩書をいただけるという。
ロンムレス宰相の話しでは、王宮御用達の商会ともなると、商業ギルドにも影響を与えるほどの効力があるらしい。
「シオンよ。これからもブリタニス王国のために新しい商品の開発に尽力するように」
「あまり息子を焚きつけないでくれ。最近は色々とやらかすので困っているのだ」
「頼もしい限りではないか。男子はそのぐらいでないとな」
父上をロンムレス宰相はソファから立ち上がり、握手を交わして会合を終えた。
それから僕と父上は王城を出て別邸へと戻った。
別邸の部屋でレミリアと紅茶を楽しんでいると、扉が開いてアレン兄上が姿を現した。
「父上から聞いたよ。王宮御用達の商人になったらしいじゃないか」
「僕がなった訳じゃないよ。僕が代表をしている商会がそうなっただけだから」
「意味は同じだろ……それで次はどんな商品を開発するんだ?」
「え、考えてないよ」
「王宮御用達になったんだから、もっと色々な商品を作らないとマズイだろ。私も考えてあげるから、新しい商品のアイデアを考えようよ」
アレン兄上は真剣な表情で僕を指差す。
どうやら冗談ではなさそうだ。
でも……そういわれても、すぐに新商品のイメージなんて浮かばないんだよね……
僕とアレン兄上が頭を悩ませていると、レミリアが紅茶を一口飲んで、上品にテーブルの上に置いた。
「たぶんですが『ボーン食器』は真っ白な食器なので、庶民の女性達の心を虜にし、商品の大ヒットに繋がったと思われます。次も女性をターゲットにした商品を考えてみてはいかがでしょうか?」
そういえば前世の日本でも、女性の心を掴んだ商品が大人気なるという噂があったな。
女性の好む商品……美容関係の商品かな……
そうなると洗顔用品、洗髪用品、香水……下着とか衣服などだろうか?
レミリアへ女性の好きそうな趣向品を適当に説明してみる。
「石鹸……香水……下着……どれも魅力的な商品ですね。私としては下着に興味があります」
「私は香水だな。香水は紳士の嗜みともいうからね」
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