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88.古代文明の遺跡②

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九尾の金狐が案内してくれた古代文明の遺跡で、俺達は地下への階段を見つけた。

上から覗き込んでも、底が見えないほど階段は下へと続いている。

俺達は松明の灯りを頼りに地下へ地下へと下っていく。

リーファは凹凸のない壁を触って首を傾げる。

「この壁ってツルツルなのね。何という物質かしら?」

「たぶんコンクリートに近いモノだと思うけどな」

リーファと俺は他愛もない話をして気分を紛らわせる。

三階下りることに横に通じる扉がある。

しかし、どの扉も硬く閉ざされて開けることができなかった。

最下層まで階段を下りると、金属製の両開きの扉があり、何か装置が取り付けられている。

たぶん、指紋認証とか網膜認証の類だろうな。

そんなことを考えていると、ドルーキンは扉に近づき、大戦斧を大上段から振り下ろす。

すると金属の扉と扉の間が少し開いた。

カーマインとジークが両側から扉を引くがビクともしない。

「ダメだ、まるで岩のようだぞ」

「まったく重くて動かねーぜ」

オーラルは静かに扉に近づき、杖の先を装置に当てる。

「雷電」

バリバリという音と共に、装置が黒こげになってボトリと落ちる。

オーラルは振り返るとニッコリと笑む。

「機械をショートさせたから、扉は開くはずさ」

その言葉を聞いてジーク、カーマイン、ハミルトン、ドルーキンが扉に飛びつく。

そして力いっぱいに引くと、扉はギギギギーという音と共に開いた。

中へ入ろうとすると、トンボのような昆虫が飛び出してきた。

「アナタガタハダレデスカ? ニンシキコードヲシメシテクダサイ」

認識コードって何だ?

バーコードのようなモノか? それともQRコードのようなモノか?

俺はトンボモドキの前に進み出て語りかける。

「認証コードはないんだ。君はAIかい?」

「ワタシハ、リベレガタAI‐R1デス」

「以前の管理者は退任した。だから、この場所は閉鎖されていたんだ。今の管理者は俺だ。だからここに来た」

「デハ、マネージャートウロクイタシマス」

R1は特殊な光線を発し俺をスキャンする。

スキャンが終わりR1は「コチラヘ」と言って部屋の中へと飛んでいく。

俺はR1に導かれるように扉から中へ入る。

すると今まで暗かった部屋の天井が昼間のように輝きだした。

部屋の中は全て白一緒にで、意味不明な透明の装置がいつくも並べられている。

俺とオーラルは部屋の中へ入り、奇妙な装置の間を歩く。

装置を見ながら、R1に声をかける。

「これは何の装置なんだ?」

「ココハキメラケンキュウジョデス」

「キメラ? ここは合成生物の実験場所なのか」

俺は驚いて周りの装置を見る。

どの装置にも生き物らしい肉の塊が浮かんでいる。

しかし生きている感じはしない。

不思議に思った俺はR1に問いかける。

「どうして、装置の中の生物は動かないんだ?」

「エネルギーブソクニヨリシメツシマシタ」

この部屋を作ったのが古代文明だとすると、数千年の時が経っている。

エネルギー不足になるのは仕方ない。

真っ白な廊下を抜け、別の部屋へ入ると、そこには見たこともない機械がズラリと並んでいた。

R1にこの部屋のことを質問すると、地下施設を拡張させるための土木用重機の保管場所だという。

やはりエネルギー不足で動かないらしい。

一通り見終わった俺とオーラルは部屋から出て、皆のいる両扉の所まで戻った。

そして俺とオーラルの二人は、この場所についての詳細を皆に伝えた。

ベヒトハイム宰相は話を聞いて、額の汗を拭う。

「古代遺跡が動いていただけでも驚きだ。そのうえキメラ生物まで生存していれば、私の手に負えんところだった」

「でも全部、死滅していたのは残念ね」

リーファは可愛く頬を膨らませる。

カーマインは目をキラキラさせて扉から中を覗いている。

「まだ装置は痛んでいないんだろ? どんな構造の装置かバラバラに分解してみたいな」

「ここは封鎖する。皆、他言無用だ」

ベヒトハイム宰相は威厳のある低い声で、皆に向かって声を発した。

オルトビーンは一歩前に出て皆を見回す。

「ベヒトハイム宰相のいう通りだね。ここは軽々しく踏み入ってはダメだと思うな」

その言葉を聞いて、カーマイン、ドルーキン、ジークの三人は残念そうな表情をする。

俺はR1の方へ向いて、指示を出す。

「ここは閉鎖する。全てのエネルギー供給を止め、R1も休眠に入れ」

「ワカリマシタ」

R1は部屋の中へ飛んで行く。

そして部屋の中から光は消え、全ては暗闇となった。

俺達は長い階段を登り、地上に出る。すると外は夜になっており、星空が光っていた。

俺達は古代文明の遺跡で野営をし、次の日に九尾の金狐が住む洞穴へと到着した。

そこで九尾の金狐とは別れ、俺達は森の外を目指した。

遭遇した低級魔獣や中級魔獣を屠りつつ、やっと五日目に『瘴気の森』を出た。

それから『アクルマ二号』に乗り、四日かけて邸へと戻ってきた。

俺、スイ、ベヒトハイム宰相の三人は執務室へと転移する。

すると部屋の中に一人の文官が立っていた。

ベヒトハイム宰相は気まずい表情で文官を見る。

そんなことはお構いなく、文官はベヒトハイム宰相の服に縋りついた。

「大変です。ダメンハイン共和国、エルスハイマ聖教国、ハゲンドルグ王国が同盟を組みました」

この三国はリンバインズ王国の北部と覆うように隣接している国々である。

その三国が同盟を組むというのは、リンバインズ王国にとって脅威だ。

ベヒトハイム宰相は険しい表情になり、俺のほうへ振り向く。

「アクス、しばらくはフレンハイム伯爵領へ戻ることを禁ずる。私を手伝え」

え? 他国との外交交渉なんてしたことないんだけど?

いったい、俺に何をするばいいんだ?
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