辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月

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85.賭博街ベノム

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俺達はジークの案内で賭博街の宿に泊まり、ジークが示す人物を捕まえて回った。

そして縄で括ったままの姿で、王都の路地に捨てることを繰り返した。

ジークが捉えるように指示した者達は、王都で窃盗や人殺しをして隠れている者達だという。

野盗や盗賊の類ではなかったので、捕まえるのは容易かった。

ジークの情報では、俺達の行動によって、謎の捕縛事件が起こっていると王都では騒ぎとなっているという。

ベヒトハイム宰相の耳にもすぐに入るだろう。

そうなればベヒトハイム宰相は原因究明に乗り出すはずだ。

俺達が賭博街へ潜んで十日が過ぎた。

今まで路上でたむろしていた男女などの姿が減っている。

地上の騒ぎを気にして、賭博街へ来なくなったのだろう。

俺、ジーク、リーファ、カーマイン、ドルーキン、オーラルの六人は賭博街の路地を歩き、捕縛する標的となる犯罪者を探す。

路地から小さな広場に出ると、そこに紳士風の男が立っていた。

「やあジーク、騒ぎを起しているのはお前だったのか。ちょっと調子に乗り過ぎじゃないのかな」

「お前に会いにコロシアムに行くのは自殺行為だからな。バルツァー、俺の主のフレンハイム伯爵がお前と話したいってよ」

ジークはふざけた仕草で、俺に向けて手をかざす。

バルツァーは俺を見て目を細める。

「ジークが貴族の手下になるとはな。あなたがフレンハイム伯爵か。色々な噂を耳にしている」

ジークの話しでは、バルツァーと呼ばれる男は、この賭博街の統治者で、リンバインズ王国内外にまで影響力を持つらしい。

バルツァーは片手に持ったステッキ―で地面とコツンと叩く。

「困るのですよ。地上に騒ぎの種を撒くのは。この賭博街で静かに暮らしたいだけなのですから」

「その割には、コロシアムで殺し合いをさせて賭けに使ったり、薬物のプラントを作って、リンバインズ王国内で売りさばいたり、派手に動いているようだが」

「それはフレンハイム伯爵が、本や紙を売ったり、プラ商品を売ったりしているのと同じですよ。商売をしなければ金を回りませんからね」

バルツァーは肩を竦めて、ステッキ―を一回転させる。

そして鋭い目つきになり、俺をねめつけた。

「それでフレンハイム伯爵の狙いは何ですか?」

「『漆黒の六芒星』の幹部。奴等が賭博街の勢力の一角なのは、ジークの情報で知っている。奴等を率いているのがバルツァー、お前だということもな。イーリア教団から資金を受け取っているのも、『漆黒の六芒星』ではなく、お前なんだろ」

「さすがはジークの情報網。もうそこまで嗅ぎつけましたか」

バルツァーとイーリア教団が手を組んでいることは、ジークから聞いていない。

その場のハッタリだけど、やはりそうだったか。

俺の言葉を聞いて、バルツァーは鼻を鳴らす。

「それで? 私への報酬は?」

「賭博街を見逃してやる」

「このまま逃げられると?」

バルツァーがステッキ―を俺に突き出した瞬間、俺達の周囲に殺気が膨れ上がる。

今は身を隠しているが、相当数の荒くれ者達が、幾重にも俺達を包囲しているようだ。

俺は静かに外套の中へ手を入れ、ホルスターから拳銃を抜く。

そしてバルツァーに銃口を向けた。

するとジーク、オーラル、リーファ、カーマイン、ドルーキンの五人も拳銃を抜いて構えた。

拳銃を見てバルツァーは厳しい表情をする。

「それはフレンハイム伯爵領の新兵器ですか? それで私を倒せると?」

「ああ、これは拳銃と言ってな。音と同じ早さで弾丸が飛ぶ。瞬間移動や転移魔法を使わない限り、お前は逃げられない、この距離なら胴体の真ん中に風穴が空くぞ」

俺とバルツァーは黙ったまま動かない。

緊迫した時間が流れる。

突然、バルツァーはステッキ―を下げて地面を一回打つ。

「フレンハイム伯爵領を殺すことは容易いが、その前に私は確実に殺される。それでは分が合わない。ここは私が引きましょう。イーリア教団は上客ですが、今回のイーリア教団の件は断りましょう。それだけでよろしいですか?

「そうしてくれると助かる。俺もまだ死にたくないからな。俺を狙った『漆黒の六芒星』のボスを連れてきてくれ。狙われっぱなしは性に合わないからな」

「三日ほどお待ちを。必ず連れて参りましょう」

そして三日後、宿にバルツァーが訪れた。彼の他に見知らぬ女性も一緒だ。

バルツァーは帽子を取って胸に当てる。

「約束通り、『漆黒の六芒星』のボスを連れてきました」

「ウチの名はラウラ。ウチに何か用でもありんすか?」

「気になることがあってな。何回か暗殺者に襲われたが、どれも下っ端の暗殺者だった。どうして幹部を使って俺を殺しにこなかったんだ? 『漆黒の六芒星』の幹部なら、俺といい勝負になるだろ?」

「お気づきでありんしたか。アタシ、バトラー様の大ファンどしてな。バトラー様の等身大フィギアを盗んだくらいなんどす」

本屋『こもれび』の等身大フィギアを盗んだのはお前か!

ラウラは少女のように頬を赤く染めて、艶のある唇に指を添える。

「バトラー様の主様を殺すわけにもいかず、バルツァーの依頼は断れず、困っていましてん。だから弱っちい奴等を送る込んだんよ。フレンハイム伯爵が気づけばええなーと思って。さすがはバトラー様の主やわ。賭博街へ乗り込んでくるなんて、男らしゅうて、バトラー様の次に惚れてしまうわー」

名のある暗殺者の心まで射止めてしまうとは、さすがバトラーは絶世の美男子だな。

俺はラウラの前に進み出て手を差し出す。

「ラウラ、俺に仕えないか? そうすればバトラーと毎日のように話しができるぞ」

「ほんまに嬉しい申し出どすな。喜んでフレンハイム伯爵を主を仰ぎますえ」

俺とラウラが話していると、バルツァーがステッキ―でコツコツと地面を叩く。

「この賭博街が王都の地下にある以上、他国のイーリア教を懇意にするより、伯爵と仲良くしたほうが利になりそうだ。フレンハイム伯爵、私とも友好関係を結んでいただきたい」

「ああ、薬の密売と性奴隷の売買をしないなら、手を組むことを考えてもいい」

「ではそういうことで、私の邸で豪華な料理を用意させておりますので、今宵は皆で宴会をしようではありませんか。私達の友好を祝って」

俺達六人はバルツァーの邸で深夜まで飲み明かした。
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