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74.プラブーム
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俺から雑草の実験の話を聞いたカーマインとドルーキンは、食器やコップの鋳型を作った。
その鋳型の中へ、釜で煮たミレンゲとカタバミのドロドロの樹液を流し込む。
そしてオーラルが風魔法を使い、鋳型を冷やす。
できあがった食器やコップをドルーキンが丁寧にヤスリをかけて完成だ。
倉庫のテーブルに若草色の食器やコップが並ぶ。
それを見てオーラルはニヤニヤと微笑む。
「若草色もいいが、色々な染料を使って様々な色の食器を作るのも面白いかもな」
その言葉に俺、カーマイン、ドルーキンの三人は盛り上がる。
厩舎にいたレクトに頼み、内政庁にいるオルバートを倉庫に呼んでもらう。
難しい表情をして現れたオルバートは、テーブルの上の色とりどりの食器を見て、目を見開く。
「なんと色鮮やかな食器ですね。これはどうしたんですか?」
「俺達が雑草から作った食器だ。これなら売り物になるか?」
「もちろんですよ。私でも一セットほしいぐらいですからね」
オルバートは食器を手に取って、顔を綻ばせる。
その辺に生えている雑草が原料だけに原価はゼロに近い。
これなら確実に儲けられるぞ。
俺は、ミンメゲの食器とプラ食器と名付けた。
それは食器の完成品が、前世の日本のプラスチックに似ていると思ったからだ。
オルバートは内政庁へ戻ると、工業庁と連携し、プラ工場の建設に着手した。
執務室でリーファと紅茶を飲んでいると、カーマイン、ドルーキン、オーラルの三人が部屋に入ってきた。
ドルーキンは自慢気に透明のグラスやコップを俺に見せる。
「コップを透明にすると、飲み物がどれぐらい減ったかわかるぞい」
前世の記憶の、日本にあったコップやグラスと同じだな。
これは売れるかもしれない。
オーラルは透明な板を俺の前に突き出すと、板の向こうから笑いかけてくる。
「この透明な板なら、板の向こうも見えるだろ。窓に使えると思ってさ」
「そうか! その手があったか!」
この王国にはガラス製の窓は少ない。
ガラスは希少で一般庶民は手に入らないからだ。
これなら一般庶民の家でも、透明な窓を付けることができる。
俺は椅子から立ち上がり、三人へビシっと指を差す。
「大至急、内政庁のオルバートへ報告を。それと工業庁に行って、プラ工場の拡大と完成を急がせろ」
一週間後、プラ工場は完成し、プラの食器やコップなど、プラ商品の生産が始まった。
本屋『こもれび』の食器を全てプラ食器に変更し、プラ食器を店内で専売することにした。
それから二週間後、プラ食器は売れに売れまくった。
瞬く間に領内の住人達の間で、プラ食器は大人気となった。
透明なプラの板―プラ板も徐々に家や建物の窓に使われはじめた。
フレンハイム伯爵領は一大プラブームが訪れた。
そしてプラ商品の噂はリンバインズ王国南部へと広がっていった
リーファやオルバートから街の様子を聞き、収支の報告を受け、俺は執務室の椅子に座って小さくガッツポーズをする。
ヤッタ―! ヤッタ―! これで火の車のような生活ともおさらばだ!
これでオルバートに小言を言われる毎日から開放される!
それから一ヵ月が経ち、秋が深まる頃、ジークが執務室へ入ってきた。
「 エクムント辺境伯から至急で相談したいと言ってきてるぜ」
俺は天井裏のスイを呼び出し、転移でレイモンドを連れて来てもらうことにした。
転移してきたレイモンドは俺を見るとニッコリと微笑む。
「僕の領にもプラ商品の噂が耳に届いてきたよ。また面白いことを始めたね。やっぱりアクスは商売人としての才能があるんだろうね」
「そうだな。それで俺に相談したいことって?」
「そのプラ商品のことだよ。僕もプラ商品を扱いたいんだ」
「それならレイモンドは本屋『こもれび』の経営権を持っているから、定期的にプラ商品を卸すことにしよう。卸し価格で提供するから、後は好きに売ればいい。本屋『こもれび』以外で売ることは禁止するけどな」
「それは助かる。これで領内の住人達から苦情を言われなくて済むよ」
それから一週間後、コシヌーケ子爵、ビビルベルト男爵、ヴァイスマン伯爵が邸に訪れた。
コシヌーケ子爵とビビルベルト男爵の二人が俺の腰にしがみつく。
「「プラ商品を卸してください!」」
「わかったから、ちょっと放してくれ!」
俺は強引に二人を引き剥がす。
そして服を整え、俺は三人を見てため息を吐ついた。
「言いたいことはわかった。俺が運営しているこいはる商会の本屋『こもれび』の看板を掲げて経営する権利を買ってくれ。そして自分達で本屋『こもれび』を経営するんだ。プラ食器は本屋『こもれび』に卸しているから、自然と三人がプラ食器を売ることになる。経営についての指南書やノウハウはこいはる商会が教えるから安心していい」
「それは至れり尽くせりでいいですな。我も本屋『こもれび』を経営いたしますぞ」
「突然、訪問して申し訳ない。私も本屋『こもれび』を経営しよう。指南書やノウハウを教えてほしい」
それから後、三日に一人の割合で南部諸侯達が邸を訪れた。
そしてほとんどの南部諸侯がこいはる商会に加入し、本屋『こもれび』を経営することになった。
領内では東フレンハイムにも本屋『こもれび』の店舗は広がり、領内全体で二十店舗となった。
工場でプラ商品の大量生産を始めて四カ月た経ち、リンバインズ王国の南部では空前のプラブームが巻き起こった。
季節はあっという間に秋から真冬へと移り変わっていった。
邸の前に王都からの早馬が到着した。
伝令兵は俺の前に立って姿勢正しく礼をする。
「ベヒトハイム宰相より、大至急で王宮へ来られたしとのことです」
あー、とうとう王都にもプラ商品のことが噂になったか。
その鋳型の中へ、釜で煮たミレンゲとカタバミのドロドロの樹液を流し込む。
そしてオーラルが風魔法を使い、鋳型を冷やす。
できあがった食器やコップをドルーキンが丁寧にヤスリをかけて完成だ。
倉庫のテーブルに若草色の食器やコップが並ぶ。
それを見てオーラルはニヤニヤと微笑む。
「若草色もいいが、色々な染料を使って様々な色の食器を作るのも面白いかもな」
その言葉に俺、カーマイン、ドルーキンの三人は盛り上がる。
厩舎にいたレクトに頼み、内政庁にいるオルバートを倉庫に呼んでもらう。
難しい表情をして現れたオルバートは、テーブルの上の色とりどりの食器を見て、目を見開く。
「なんと色鮮やかな食器ですね。これはどうしたんですか?」
「俺達が雑草から作った食器だ。これなら売り物になるか?」
「もちろんですよ。私でも一セットほしいぐらいですからね」
オルバートは食器を手に取って、顔を綻ばせる。
その辺に生えている雑草が原料だけに原価はゼロに近い。
これなら確実に儲けられるぞ。
俺は、ミンメゲの食器とプラ食器と名付けた。
それは食器の完成品が、前世の日本のプラスチックに似ていると思ったからだ。
オルバートは内政庁へ戻ると、工業庁と連携し、プラ工場の建設に着手した。
執務室でリーファと紅茶を飲んでいると、カーマイン、ドルーキン、オーラルの三人が部屋に入ってきた。
ドルーキンは自慢気に透明のグラスやコップを俺に見せる。
「コップを透明にすると、飲み物がどれぐらい減ったかわかるぞい」
前世の記憶の、日本にあったコップやグラスと同じだな。
これは売れるかもしれない。
オーラルは透明な板を俺の前に突き出すと、板の向こうから笑いかけてくる。
「この透明な板なら、板の向こうも見えるだろ。窓に使えると思ってさ」
「そうか! その手があったか!」
この王国にはガラス製の窓は少ない。
ガラスは希少で一般庶民は手に入らないからだ。
これなら一般庶民の家でも、透明な窓を付けることができる。
俺は椅子から立ち上がり、三人へビシっと指を差す。
「大至急、内政庁のオルバートへ報告を。それと工業庁に行って、プラ工場の拡大と完成を急がせろ」
一週間後、プラ工場は完成し、プラの食器やコップなど、プラ商品の生産が始まった。
本屋『こもれび』の食器を全てプラ食器に変更し、プラ食器を店内で専売することにした。
それから二週間後、プラ食器は売れに売れまくった。
瞬く間に領内の住人達の間で、プラ食器は大人気となった。
透明なプラの板―プラ板も徐々に家や建物の窓に使われはじめた。
フレンハイム伯爵領は一大プラブームが訪れた。
そしてプラ商品の噂はリンバインズ王国南部へと広がっていった
リーファやオルバートから街の様子を聞き、収支の報告を受け、俺は執務室の椅子に座って小さくガッツポーズをする。
ヤッタ―! ヤッタ―! これで火の車のような生活ともおさらばだ!
これでオルバートに小言を言われる毎日から開放される!
それから一ヵ月が経ち、秋が深まる頃、ジークが執務室へ入ってきた。
「 エクムント辺境伯から至急で相談したいと言ってきてるぜ」
俺は天井裏のスイを呼び出し、転移でレイモンドを連れて来てもらうことにした。
転移してきたレイモンドは俺を見るとニッコリと微笑む。
「僕の領にもプラ商品の噂が耳に届いてきたよ。また面白いことを始めたね。やっぱりアクスは商売人としての才能があるんだろうね」
「そうだな。それで俺に相談したいことって?」
「そのプラ商品のことだよ。僕もプラ商品を扱いたいんだ」
「それならレイモンドは本屋『こもれび』の経営権を持っているから、定期的にプラ商品を卸すことにしよう。卸し価格で提供するから、後は好きに売ればいい。本屋『こもれび』以外で売ることは禁止するけどな」
「それは助かる。これで領内の住人達から苦情を言われなくて済むよ」
それから一週間後、コシヌーケ子爵、ビビルベルト男爵、ヴァイスマン伯爵が邸に訪れた。
コシヌーケ子爵とビビルベルト男爵の二人が俺の腰にしがみつく。
「「プラ商品を卸してください!」」
「わかったから、ちょっと放してくれ!」
俺は強引に二人を引き剥がす。
そして服を整え、俺は三人を見てため息を吐ついた。
「言いたいことはわかった。俺が運営しているこいはる商会の本屋『こもれび』の看板を掲げて経営する権利を買ってくれ。そして自分達で本屋『こもれび』を経営するんだ。プラ食器は本屋『こもれび』に卸しているから、自然と三人がプラ食器を売ることになる。経営についての指南書やノウハウはこいはる商会が教えるから安心していい」
「それは至れり尽くせりでいいですな。我も本屋『こもれび』を経営いたしますぞ」
「突然、訪問して申し訳ない。私も本屋『こもれび』を経営しよう。指南書やノウハウを教えてほしい」
それから後、三日に一人の割合で南部諸侯達が邸を訪れた。
そしてほとんどの南部諸侯がこいはる商会に加入し、本屋『こもれび』を経営することになった。
領内では東フレンハイムにも本屋『こもれび』の店舗は広がり、領内全体で二十店舗となった。
工場でプラ商品の大量生産を始めて四カ月た経ち、リンバインズ王国の南部では空前のプラブームが巻き起こった。
季節はあっという間に秋から真冬へと移り変わっていった。
邸の前に王都からの早馬が到着した。
伝令兵は俺の前に立って姿勢正しく礼をする。
「ベヒトハイム宰相より、大至急で王宮へ来られたしとのことです」
あー、とうとう王都にもプラ商品のことが噂になったか。
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