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44、空回りの救出劇
しおりを挟む「これだけの大きさの機体だ。当然、それなりの数の乗組員が居ると踏んだのだが」
「ああ。まったく遭遇しないばかりか、近くには気配さえない・・・機内にある気配は、全部で四つ。うち、ひとつはサヤ」
ナジェルとアクティスは、互いに感知能力を使って機内を探り、己が感知したものを言葉にしていく。
「アクティス、予定を変更しよう。この人数なら、敵わないこともない。サヤを助けることを優先した方がいい」
そう言うと、すぐにも動き出そうとするナジェルを、アクティスが制す。
「少し待て」
「だが、サヤは今も恐ろしい思いをしているのだぞ?一刻も早く助け出すのが道理だろう」
冷静な行動を崩さないアクティスに、ナジェルが焦りの声をあげるも、アクティスの静かな瞳は動かない。
「この極小の人数で、護り切れるだけの武器を搭載している可能性もある」
「確かにそうだが、もし今の段階で僕たちが捨て身の爆破を行っていれば、この機は木っ端微塵だ・・・・それだけ強度に自信がある、とも考えられるが」
自分が発した言葉に、ナジェルはその確率が高い事実を悟って口を噤んだ。
「何より今回、俺達はサヤを追って来ているんだ。相手は、爆破の心配など、していないだろう」
機体を爆破すれば、当然サヤにも危険が及ぶ。
助けに来た人間が、そんな愚を犯すとは相手も考えまいと、ナジェルも納得する。
「そうだな・・・ん?サヤと同じ部屋に居ると思われる気配のうち、ひとつはサヤの傍から動かないが、ひとつは動き回っている・・・何をしているんだ?」
「考えられるのは、脅して、サヤに要求をのませようとしている、だな」
さらりと言ったアクティスの言葉に、ナジェルが動揺を露わにした。
「・・・・・っ!アクティス、やはりすぐにサヤの傍へ行こう」
サヤが、両手を拘束されたうえ、固い床に膝を突かされ、武器を突きつけられて脅されている。
そして、その周りで、長短長さを自在に変えられる鞭を手に、威嚇行動を繰り返すもうひとりの敵兵。
そんな情景を鮮明に想像したナジェルが焦りのままに言えば、今度はアクティスも反対しなかった。
「どの道、動かねばこの膠着状態からは抜けられない。気配のひとつは、恐らく操縦者だろうからな。残るふたりを俺達で何とかすれば、サヤも入れてこちらの戦力は3。そうなれば、この機を奪取することも可能・・・単純に考えれば、だがな」
「この機にどんな仕掛けがあるか、敵がどんな武器を持っているかが問題ということか」
考えつつ言うナジェルの言葉に頷き、アクティスが決意を込めた目で、進むべき方向を見据える。
「まずは、サヤに念話で俺達が突入することを伝えろ。例え貴様が盾にされたとて問題ないと」
「分かった。例えサヤが盾にされても、僕たちが必ず助けると伝える」
「・・・・・貴様」
にやりと笑って言うナジェルをぎろりと睨み付けるも、アクティスはその言葉を訂正しはしなかった。
「え?・・・あ!」
『命知らずのお仲間が来た』というハーネスの言葉に、サヤはきょとんと首を傾げてから、この鳴り響く警報が侵入者を告げるものだということに思い至る。
「空飛ぶお城ちゃんって、かなり速く飛ぶんだけど、それでも転移って出来るものなんだね。凄いや」
「いえ、高速移動している場所に跳ぶのは、容易ではありません。着地点が動き続けているだけでも難しいのに、それが高速となると、成功する確率はかなり低くなると思います・・・私は、やったことありませんので、予測でしかありませんが」
「うへえ。じゃあ、来たのは、ものすごおおい実力者、ってことだね」
サヤの説明に、ハーネスは目を見開いて驚き、感激さえしているかのように、その目をきらきらと輝かせた。
「では、その方も歓待しなければなりませんね」
「そうだね!ね、キーラム、ふたりもいてくれたら、心強いね!」
ティートロールを押しながら戻って来たキーラムの言葉に、ハーネスがぴょんぴょんと跳ねる。
「では、自分がお迎えに行ってまいります」
《サヤ。聞こえるか?これから、君の居る部屋に、僕とアクティスとで突入する。例え君が盾に取られようとも、必ず助ける》
「え!?待って!」
「はい?なんでしょうか?」
ナジェルからの念話を受け取り、咄嗟に声に出して叫んでしまったサヤに反応したのは、当然のように部屋を出ようとしていたキーラム。
「あ、違うのキーラム。今、念話で・・・・っ」
《ナジェル!アクティス!》
ともかく現状を説明しようと、念話でふたりの名を呼んだサヤの、その静止の叫びを救出の歓喜と受け取ったナジェルとアクティスは、ふたり並んで扉の前に立ち、呼吸を合わせて同時に部屋の中へ転移するという作戦を決行した。
~・~・~・~・~・~・
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順位、凄く上がっていてびっくりしました。
本当に応援ありがとうございます。
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