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六、俺と初恋幼馴染のこれから 2
しおりを挟む「ねえ、ちょっと!クリフが廃嫡、ってどういうことよ!」
その日、ランドルフは学院内で、もう聞く筈の無い声を聞き、嫌な予感に歩みを止めた。
「王位は継げない、ということですわね」
そして案の定、対するミリアムの静かな声を聞いて、ランドルフは急ぎその場へ駆け付ける。
「なんでよ!?おかしいでしょ!王子様はクリフしかいないのに!」
「ですが、学院を卒業する事も出来ませんでしたし」
「そんな必要ない、ってクリフが言ってた!自分は王子だから、不要なんだって。みんな、知らないの?」
「王子だとしても、学院を卒業できなければ継承権は剥奪されます」
「嘘よ!」
「嘘ではありません。それに、殿下は王子教育も終えられませんでした」
物陰から見守るランドルフの前で、少女ふたりが対峙する。
「それも、教育なんか要らないんだ、ってクリフは言ってた。お仕事は、周りがするのだから勉強なんて不要だって」
「政務は、王族の義務です」
「それが違うんだって。王族は、何もしないで威張っていればいいんだ、ってクリフが教えてくれたの。ねえ、みんな知らないだけなんだよ。あなたから教えてあげてくれない?」
そう言ってミリアムを見あげるエイダは、学院の制服を着ている。
退学したにも関わらず、学院の制服を着て学院に来るなど許されないことだが、制服を着ているが故に見咎められずに潜り込めてしまったのだろう、とランドルフは思う。
「認識の誤りは、殿下の方です。少しも学ぼうとなさいませんでしたから。身から出た錆、とでも申しましょうか」
「何言ってんのよ。人間が錆びる訳ないでしょ。馬鹿じゃないの」
「バラクロフ公爵令嬢。学院長がお呼びですよ」
エイダが浮かべるミリアムへの侮蔑の表情に切れかけたランドルフは、殊更に笑みを浮かべてその場へ姿を現した。
「あ、不貞相手」
「その言葉、そのままお返ししますよ。第一王子殿下の恋人さん」
「ええ、やだ。照れる」
顔を赤らめて、もじもじするエイダをランドルフは冷たい瞳で見つめる。
「今日は、おひとりですか?」
「うん。クリフに最近会えないの」
そりゃそうだろうな。
第一王子は、先だって王城で開かれた晩餐会の席で、派手にミリアムに婚約破棄を叫んだ事により謹慎。
既に廃嫡も決まっていたし、王族でもない。
それでも、あの晩餐会で上手く立ち回れれば、文官か武官として、なんて国王陛下と王妃陛下は考えていたようだが。
所詮、無理な話だったというわけだ。
「それは、お寂しいことですね・・・では、行きましょうか。バラクロフ公爵令嬢」
「ええ」
「は?ちょ、ちょっと待ってよ!話は未だ終わってないわよ!」
「ご令嬢。警備を呼んで欲しいのなら、ごゆっくり」
ランドルフの言葉に、エイダは首を傾げた。
「呼んだから、って何よ」
「関係者以外が立ち入った場合、警備が騎士団へ報告し、牢屋送りとなります。もちろん、既に退学したご令嬢は関係者以外・・・おや、ご存じなかったですか」
「知らないわよ!そんなの!」
ランドルフの不敵な笑いに、エイダが焦って走り出す。
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