4 / 7
四、俺と初恋幼馴染の過去 2
しおりを挟む『おかえりなさい、ランディ。留学はどうだった?』
俺の帰国を祝う席で、より美しさを増したミリアムにそう声を掛けられた時、その瞳の煌めきに俺はどうしようも無いほどに囚われた。
ミリアム。
俺を変わらずランディと呼び、留学中の話を楽しそうに聞くミリアムを見て、俺は、ミリアムを諦めることを諦めた。
どうしたって俺は、ミリアムが好きだ。
だが、絶対にミリアムに迷惑はかけない。
そう決意した俺は、ミリアムの参謀の位置を狙うことに決めた。
やがて妃となって王城で政に参画するミリアムの、懐刀のような存在になる。
そして同時に、最強の護衛となると。
その際には、ミリアムの夫となる愚王子クリフも漏れなく付いて来てしまうが、致し方ない。
ミリアムの為に全力を尽くす。
例え、愚王子クリフがミリアムを可愛がる様をつぶさに見せつけられることになっても。
それほどの決意を込めて臨んだ学院入学。
しかしそこで、愚王子クリフは、エイダ・ベーコン男爵令嬢と恋に落ちた。
曰く。
『ミリアムは、賢過ぎる。政務などどうせ側近が行うのに、勉強などして何になる。もっと俺に構うことこそ重要で賢さなど要らぬのに』
それを初めて聞いた時、俺は怒りで目の前が赤く染まるのを感じた。
愚王子クリフは、王子教育が遅々として進まず、いつまでたっても立太子出来ない。
対してミリアムの優秀さは、鳴り響いている。
そんな事は貴族であれば、否、噂として平民にだってその情報は届いている。
そのような愚王子が王太子となって次代の王となることが決まれば、どうなるのか。
未来には、絶望しかないと人々は囁く。
『ミリアム。ひとりで苦労しているのではないか?』
帰国して、変わらず家同士の付き合いがあるなか、そう聞いた俺に、けれどミリアムは、にっこりと笑った。
『大丈夫よ。王家や国家の機密については、未だ学ばない約束なの。でもその他の、外国の言葉や領主としての経営学、それに外交はとても面白いわ』
王家や国家の機密には触れない。
つまりそれは、ミリアムが愚王子クリフと必ずしも共に沈む危険はないということ。
もしもの時は、必ず俺が力になろう。
そう決意して、俺は学院での時を過ごした。
~・~・~・~・~・~・
いいね、お気に入り登録。ありがとうございます♪
151
お気に入りに追加
282
あなたにおすすめの小説
全力悪役令嬢! 〜王子の薄っぺらい愛など必要ありません〜
本見りん
恋愛
……それなら『悪役令嬢』、全力でやり遂げてやろうじゃないの!
日本人だった前世を思い出し、今の自分が『悪役令嬢』だと気付いたレティシア スペンサー公爵令嬢。
なんとか断罪を回避しようと対策を試みるも悉く失敗。それならと心優しい令嬢になろうと努力するが、何をしても《冷たい令嬢》だと言われ続けた。そしてトドメが婚約者フィリップ王子。彼も陰で対立派閥の令嬢にレティシアの悪口を話しているのを聞いてしまう。
……何をしてもダメだというのなら、いっそのこと全力で悪役令嬢をやりきってやろうじゃないの!
そう決意したレティシアは、立派な? 『悪役令嬢』となるべく動き出す。……勿論、断罪後の逃げ道も準備して。
『小説家になろう』様にも投稿しています。こちらは改訂版です。
『ハッピーエンド?』とさせていただきました。
が、レティシア本人的には満足だと思います!
皇太女の暇つぶし
Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。
「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」
*よくある婚約破棄ものです
*初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです
幼馴染に奪われそうな王子と公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
「王子様、本当に愛しているのは誰ですか???」
「私が愛しているのは君だけだ……」
「そんなウソ……これ以上は通用しませんよ???」
背後には幼馴染……どうして???
夜会の夜の赤い夢
豆狸
恋愛
……どうして? どうしてフリオ様はそこまで私を疎んでいるの? バスキス伯爵家の財産以外、私にはなにひとつ価値がないというの?
涙を堪えて立ち去ろうとした私の体は、だれかにぶつかって止まった。そこには、燃える炎のような赤い髪の──
愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
リアンの白い雪
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
その日の朝、リアンは婚約者のフィンリーと言い合いをした。
いつもの日常の、些細な出来事。
仲直りしていつもの二人に戻れるはずだった。
だがその後、二人の関係は一変してしまう。
辺境の地の砦に立ち魔物の棲む森を見張り、魔物から人を守る兵士リアン。
記憶を失くし一人でいたところをリアンに助けられたフィンリー。
二人の未来は?
※全15話
※本作は私の頭のストレッチ第二弾のため感想欄は開けておりません。
(全話投稿完了後、開ける予定です)
※1/29 完結しました。
感想欄を開けさせていただきます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる