13 / 62
13.馴染ませる理由
しおりを挟む「佳音、すまない。加減が出来なかった」
「しなくていいよ、そんなもの」
初めてだと分かっていたのに途中で止まれなくなった、と眉を下げるシライのそれを指で押し上げて佳音が笑う。
「それに、玉に完全に馴染むまで、抜く事もしない方がいいのだが。気持ち悪くないか?」
未だ挿し込んだままの陰茎を気にしてシライが言うも、佳音は屈託なく笑った。
「気持ち悪くなんかないよ。シライだもん」
「っ・・・佳音。嬉しいが、そのような顔を見せるのはオレだけにしてほしい」
「他のひとには笑うな、ってこと?」
それはちょっと、と顔を顰めた佳音の頬をシライが摘まんで笑みの形にする。
「そうではない。今の顔は、ただの笑みではない。襲ってくださいと言わぬばかりだ」
「何それ」
言いながらシライの手を頬から外させた佳音は、その動きを逆さに取られて腕に抱き込まれ、不服そうにシライを見あげた。
「本当だぞ?いいか、佳音。このようなことを許すのはオレだけだからな?」
「このようなことって?さっきの笑顔ってこと?」
どんな顔してるかなんて自分じゃ分からないけど、と首を傾げる佳音の肩を真顔のシライが掴んだ。
「今この時の戯れも含め、今の佳音の表情が出来上がるに至った、寝台の上での一連の出来事だ。いいな、俺以外に許すなよ?」
「なっ・・・し、寝台の上での一連の、って。あ、あんなことシライ以外とするわけ無い」
自分でも赤面していると自覚できるほどの頬の熱さを感じつつ言う佳音に、シライがずいと顔を寄せる。
「本当だな?もしそのような事があれば殺すからな。相手を」
脅すように言われ、佳音はこくこくと頷いた。
生贄の取り合い、ってあるのかな。
でも、今の感じだと誰かと俺を共有するつもりは無いってことか。
良かった。
生贄なのだから相手を選ぶというのもおかしな話だとは思うが、シライが自分を誰かに渡すようなことは無いと知って佳音は安堵した。
「どうした?そんな嬉しそうな顔をして」
「だって、シライに他の誰かの所に行けって言われることは無いんだって分かったから」
「そのようなこと、絶対に言わぬ!」
佳音の発言に驚愕した様子で、シライが叫ぶように宣言する。
「うん。ありがと」
生贄たる自分は、シライが言えば誰の所にでも行かなければならない、と漸くに思いついた佳音は、その可能性が早々に消えて晴れやかな気持ちになる。
「佳音を手放すことなど絶対にない」
「俺もシライがいい」
そう言って佳音が自分から、ちゅ、とシライの頬に口づければ、佳音のなかにあるシライが再び熱を持った。
「え?」
「頼むから、煽ってくれるな佳音」
不意打ちだった、と呻いたシライが腰を緩く動かす。
「え?え?」
益々熱杭へと戻って行くシライを感じ、戸惑う佳音の唇にシライが指を這わせた。
「もう一戦だ」
そして宣戦布告の如く宣言され、佳音は再びシライに翻弄されることとなった。
「もう。二回するなら、最初に言ってよ」
事後、抱き合って乱れた呼吸を整え、佳音の背を撫でながら詫びの言葉を考えていたシライは、びっくりしたじゃないか、と口を尖らせる佳音に拍子抜けした。
「怒るのはそこなのか?二回したのは構わないのか?」
初めてなのに二回、それもかなり激しく抱いた自覚のあるシライが、思っていたのと違うと佳音を見つめる。
「だって、驚くじゃないか。玉に馴染ませている時間だ、って思っていたのに・・って!玉!玉は無事なの!?」
「問題無い。注げば注いだだけ、吸収し馴染んでいくのだからな」
焦った様子で叫ぶように言った佳音にシライが説明すれば、見るからに安堵してほっと息を吐き出した、と思えば新たな疑問がわいた様子でシライを見つめる。
「それって、馴染むのは一回じゃ無理ってこと?」
「ああ」
「今二回したけど、もしかしてそれでも足りない?」
「ああ。まったく」
説明不足だったか、と呟くシライに佳音は大きく頷いた。
「まったくか。俺はてっきり一回だと思ってたから。そっか。何回くらい必要なの?」
「はっきり何回と決まっているわけではない。この玉を用いること自体珍しいうえに、個体差も激しいと聞くからな。まあ、数回で足らぬことは確かだ。数十回、そうだな。百を越えるあたりでどうかというところだろうか」
考えるように言ったシライの言葉に、佳音が目を剥く。
「今日、百回もするの!?」
「莫迦な!そのような無体は働かぬ。だが、早く佳音に馴染ませたいとは思っている」
それは真摯な願いだ、とシライは佳音の腹を撫でた。
「これからの予定は?」
一方、まるで明日の行動予定を聞くかのような佳音の頬を、罰するようにシライが摘んだ。
「互いの情緒に合わせて、だ」
「一日に何回、とか決めるんじゃないの?」
「そんなの。その時の流れに任せて、に決まっているだろう」
「その時の流れ?」
「ああ。盛り上がれば何回でも・・とはいえ、佳音が慣れるまで無茶はしない・・ようにする」
今日の佳音の媚態を思い出し、シライは自信無さげにそう言った。
「我慢はしなくていいよ。一度に何回くらい出来るか、っていうか、注いでくれた精を受け止められるか?俺にも分からないけど」
「佳音っ。だから・・・っ」
早く馴染ませたい、ってことは早く食べたいってことだもんね。
出来るだけ早くそうなるように俺も・・って。
あれ?
だけど、もしかして俺、純潔じゃなくなったんじゃないのか?
精を注がれるってそういうことだよな?
え?
違うのか?
生贄の味が落ちてもいいのか、と悩む佳音の横で、またも可愛いことを言われ、くるくると変化する表情を見せつけられたシライが己の理性と懸命に闘っていることも知らず、佳音は明後日の方向へと悩みを展開していた。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
ひとりぼっちの180日
あこ
BL
付き合いだしたのは高校の時。
何かと不便な場所にあった、全寮制男子高校時代だ。
篠原茜は、その学園の想像を遥かに超えた風習に驚いたものの、順調な滑り出しで学園生活を始めた。
二年目からは学園生活を楽しみ始め、その矢先、田村ツトムから猛アピールを受け始める。
いつの間にか絆されて、二年次夏休みを前に二人は付き合い始めた。
▷ よくある?王道全寮制男子校を卒業したキャラクターばっかり。
▷ 綺麗系な受けは学園時代保健室の天使なんて言われてた。
▷ 攻めはスポーツマン。
▶︎ タグがネタバレ状態かもしれません。
▶︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
どこかがふつうと違うベータだった僕の話
mie
BL
ふつうのベータと思ってのは自分だけで、そうではなかったらしい。ベータだけど、溺愛される話
作品自体は完結しています。
番外編を思い付いたら書くスタイルなので、不定期更新になります。
ここから先に妊娠表現が出てくるので、タグ付けを追加しました。苦手な方はご注意下さい。
初のBLでオメガバースを書きます。温かい目で読んで下さい
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる