天の斎庭 ~そらのゆにわ 天空神の溺愛に、勘違い神官は気づかない。え!?俺生贄じゃないの!?~

夏笆(なつは)

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13.馴染ませる理由

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「佳音、すまない。加減が出来なかった」 

「しなくていいよ、そんなもの」 

 初めてだと分かっていたのに途中で止まれなくなった、と眉を下げるシライのそれを指で押し上げて佳音が笑う。 

「それに、ぎょくに完全に馴染むまで、抜く事もしない方がいいのだが。気持ち悪くないか?」 

 未だ挿し込んだままの陰茎を気にしてシライが言うも、佳音は屈託なく笑った。 

「気持ち悪くなんかないよ。シライだもん」 

「っ・・・佳音。嬉しいが、そのような顔を見せるのはオレだけにしてほしい」 

「他のひとには笑うな、ってこと?」 

 それはちょっと、と顔を顰めた佳音の頬をシライが摘まんで笑みの形にする。 

「そうではない。今の顔は、ただの笑みではない。襲ってくださいと言わぬばかりだ」 

「何それ」 

 言いながらシライの手を頬から外させた佳音は、その動きを逆さに取られて腕に抱き込まれ、不服そうにシライを見あげた。 

「本当だぞ?いいか、佳音。このようなことを許すのはオレだけだからな?」 

「このようなことって?さっきの笑顔ってこと?」 

 どんな顔してるかなんて自分じゃ分からないけど、と首を傾げる佳音の肩を真顔のシライが掴んだ。 

「今この時の戯れも含め、今の佳音の表情が出来上がるに至った、寝台の上での一連の出来事だ。いいな、俺以外に許すなよ?」 

「なっ・・・し、寝台の上での一連の、って。あ、あんなことシライ以外とするわけ無い」 

 自分でも赤面していると自覚できるほどの頬の熱さを感じつつ言う佳音に、シライがずいと顔を寄せる。 

「本当だな?もしそのような事があれば殺すからな。相手を」 

 脅すように言われ、佳音はこくこくと頷いた。 

 

 生贄の取り合い、ってあるのかな。 

 でも、今の感じだと誰かと俺を共有するつもりは無いってことか。 

 良かった。 

 

 生贄なのだから相手を選ぶというのもおかしな話だとは思うが、シライが自分を誰かに渡すようなことは無いと知って佳音は安堵した。 

「どうした?そんな嬉しそうな顔をして」 

「だって、シライに他の誰かの所に行けって言われることは無いんだって分かったから」 

「そのようなこと、絶対に言わぬ!」 

 佳音の発言に驚愕した様子で、シライが叫ぶように宣言する。 

「うん。ありがと」 

 生贄たる自分は、シライが言えば誰の所にでも行かなければならない、と漸くに思いついた佳音は、その可能性が早々に消えて晴れやかな気持ちになる。 

「佳音を手放すことなど絶対にない」 

「俺もシライがいい」 

 そう言って佳音が自分から、ちゅ、とシライの頬に口づければ、佳音のなかにあるシライが再び熱を持った。 

「え?」 

「頼むから、煽ってくれるな佳音」 

 不意打ちだった、と呻いたシライが腰を緩く動かす。 

「え?え?」 

 益々熱杭へと戻って行くシライを感じ、戸惑う佳音の唇にシライが指を這わせた。 

「もう一戦だ」 

 そして宣戦布告の如く宣言され、佳音は再びシライに翻弄されることとなった。 

 

 

 

「もう。二回するなら、最初に言ってよ」 

 事後、抱き合って乱れた呼吸を整え、佳音の背を撫でながら詫びの言葉を考えていたシライは、びっくりしたじゃないか、と口を尖らせる佳音に拍子抜けした。 

「怒るのはそこなのか?二回したのは構わないのか?」 

 初めてなのに二回、それもかなり激しく抱いた自覚のあるシライが、思っていたのと違うと佳音を見つめる。 

「だって、驚くじゃないか。ぎょくに馴染ませている時間だ、って思っていたのに・・って!ぎょく!玉は無事なの!?」 

「問題無い。注げば注いだだけ、吸収し馴染んでいくのだからな」 

 焦った様子で叫ぶように言った佳音にシライが説明すれば、見るからに安堵してほっと息を吐き出した、と思えば新たな疑問がわいた様子でシライを見つめる。 

「それって、馴染むのは一回じゃ無理ってこと?」 

「ああ」 

「今二回したけど、もしかしてそれでも足りない?」 

「ああ。まったく」 

 説明不足だったか、と呟くシライに佳音は大きく頷いた。 

「まったくか。俺はてっきり一回だと思ってたから。そっか。何回くらい必要なの?」 

「はっきり何回と決まっているわけではない。このぎょくを用いること自体珍しいうえに、個体差も激しいと聞くからな。まあ、数回で足らぬことは確かだ。数十回、そうだな。百を越えるあたりでどうかというところだろうか」 

 考えるように言ったシライの言葉に、佳音が目を剥く。 

「今日、百回もするの!?」 

「莫迦な!そのような無体は働かぬ。だが、早く佳音に馴染ませたいとは思っている」 

 それは真摯な願いだ、とシライは佳音の腹を撫でた。 

「これからの予定は?」 

 一方、まるで明日の行動予定を聞くかのような佳音の頬を、罰するようにシライが摘んだ。 

「互いの情緒に合わせて、だ」 

「一日に何回、とか決めるんじゃないの?」 

「そんなの。その時の流れに任せて、に決まっているだろう」 

「その時の流れ?」 

「ああ。盛り上がれば何回でも・・とはいえ、佳音が慣れるまで無茶はしない・・ようにする」 

 今日の佳音の媚態を思い出し、シライは自信無さげにそう言った。 

「我慢はしなくていいよ。一度に何回くらい出来るか、っていうか、注いでくれた精を受け止められるか?俺にも分からないけど」 

「佳音っ。だから・・・っ」 

 

 早く馴染ませたい、ってことは早く食べたいってことだもんね。 

 出来るだけ早くそうなるように俺も・・って。 

 あれ? 

 だけど、もしかして俺、純潔じゃなくなったんじゃないのか? 

 精を注がれるってそういうことだよな? 

 え? 

 違うのか? 

 

 生贄の味が落ちてもいいのか、と悩む佳音の横で、またも可愛いことを言われ、くるくると変化する表情を見せつけられたシライが己の理性と懸命に闘っていることも知らず、佳音は明後日の方向へと悩みを展開していた。 

 

 

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