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19.ふたりのお気に入り、が幸せなのです。
しおりを挟む「あ、パトリックさま。これタイピンとブローチが一緒になっています。面白いですね」
店内をパトリックさまと見て歩いて、私はそれに気が付いた。
「本当だ。別々に着けることも出来るし、一緒に着ければひとつの絵になるようになっているんだね」
「そうですね。タイピンをパトリックさまが着けて、ブローチを私が着けるというのもいいかも知れません」
学園の男子の制服はきりりとしたジャガードタイだし、と思い言った私の言葉に、パトリックさまの目が輝く。
「いいね、それ。学園でも自然に着けていられる」
「はい。私も、学園でも着けていたいです」
学園で、パトリックさまと対の物を身に着ける。
余り強調し過ぎて周囲のひとにからかわれるのは嫌だけれど、パトリックさまをいつも傍に感じられる私だけのお守りになればいいと思う。
「ね、ローズマリーはどの絵柄がいい?色硝子との組み合わせも色々あるけど」
「そうですね。タイの色のこともありますが、私は」
本当にたくさんの絵柄と色硝子の組み合わせがあるけれど、制服の時に着けてもこれなら大丈夫だろう、というかこれがいい、と迷わずひとつを選ぼうとして、私は、はたと気がついた。
もしかして、私の好きな絵柄にしようとしてくれている?
パトリックさまの事だからきっとそうに違いないと、私は一計を案じる。
「パトリックさま。ふたり同時に選んだものを、指さし、しませんか?」
「え?」
私の提案にパトリックさまが目を瞠った。
予想外だという、その瞳。
「私の意見だけではなくて、パトリックさまとふたりで選びたいのです。ふたりで、身に着ける物だから」
けれど、恥ずかしさを堪えて私がそう言えば、パトリックさまの目がふんわりと優しい色を刷いた。
「うん。ふたりのお気に入りを探そう」
「はい!」
そうして、ふたりして絵柄や色硝子の色を選んでいると。
「それを買うのかい?」
アーサーさまとリリーさまがいらした。
「はい。こちら、タイピンとブローチに分かれるようなので、パトリックさまとふたりで身に着けようと思いまして」
私の言葉に、アーサーさまが期待を込めてリリーさまをご覧になる。
「リリー、僕達もそうしないかい?」
「はい、喜んで」
リリーさまの言葉にアーサーさまは満足そうに頷かれ、おふたりで絵柄を選び始めた。
「うん。俺は決めたよ、ローズマリー」
その横で、真剣に選び続けていたパトリックさまが顔をあげ、決意したように言う。
「わたくしも、決めました」
「じゃあ、せーの、で指さそうね」
「はい」
そして、パトリックさまとふたり、目配せして声を揃えて。
「「せーの!」」
思い切り、同じ絵柄を指さした。
「同じものです!」
それだけのことなのに、それが凄く嬉しくて、私はパトリックさまの手を取ってしまう。
思わずそうしてからはっとしたけれど、パトリックさまも笑顔で私の手を握り返してくれて。
ふたり、手を握り合っている状況に恥ずかしくもなるけれど、それ以上に嬉しくて、私はとても幸せな気持ちになった。
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