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第三部 小さな国の人質王子は大陸の英雄になる
第5話 やはりあなたは・・・そうきましたね!!
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時は経ち、帝国歴529年11月23日。
「スクナロ」
「ん? おお、サブロウか。なんだ?」
「おうぞ。用があって来たぞ」
城壁の上にいたスクナロは、敵がいる方角の西を見ていた。
停戦が空けたはずの両国は、いつ戦争が始まってもおかしくない。
ここの所、スクナロは毎日。
敵が攻めてこないかを見回りしていたのである。
「それで、急に何のようだ。義弟からか?」
「いいや。違う。おいらは独断で王国に偵察に行って来たぞい」
「おお。そうか。サブロウ、王国はどうだった」
「それがなのぞ……あっち、強くなっているぞ」
「強くなっている?」
「何故かは知らんが、向こうにも影がいるみたいなのぞ。影の形跡があって、中に入れんぞ」
「なに!? それはホントか」
「ああ。厳しいぞな。今までのような偵察なんて出来ないぞ。都市内部は特に難しく、外側から兵の動きなどを確認しないといけないぞな。通常の索敵くらいしか出来んぞ」
「そうか。それは、例のナボルが復活したのか? そのせいか?」
「いいや、それはないぞな。ナボルのような雰囲気ではない感じぞ……おそらく誰かから影の技術を学んだみたいぞ。ナボルの影の技術より、おいらたち寄りに近いのぞ。大陸産っぽいのぞ。どういう事かぞ」
ナボルなのか。それとも自分たちと同じく、別大陸から逃げてきた者なのか。
とにかく敵も影の力を持つに至ったらしい。
これで、敵を調べ上げるにも難しくなった。
「そこは、どうだろうな。俺には分からん! たしかに、サブロウみたいに、他大陸から来た連中がいるのかもしれないよな・・・んんん。それにしてもこちらの優位な部分が消えたか」
「ああ。でも、影となれば、おいらたちだって負けんぞ。相手が来ても跳ね返す! でも、ここからの情報戦はぞ。引き分けになった感じぞな。だから、ここからは……」
「そうだな。力勝負ってわけだな」
「ああ。ガチンコ勝負ぞ! 知力と知力。力と力のぞ」
「そうだな。そうなるな」
帝国の方が勝っていた部分。
それが情報収集能力である。
今までのアージスでの戦いでも、一個上をいっていたのだが、ここに来てその優位な部分を失った。
それでも戦うことを決めている帝国は、今度は将と兵の強さで勝とうとしていた。
結束した帝国の力で、相手に勝るしかないとスクナロは考えてこの日の見回りを終えた。
そこから10日後。
前と同じように見回りをしていたスクナロのそばにサブロウが来た。
「スクナロ」
「お! 割と早いな。前回から日が経っていないな」
「おうぞ。それが……都市周辺が慌ただしいらしいぞ」
「慌ただしいだと。どこがだ」
「ルクセントだぞ。ここが動いている。中で準備が始まっているかもしれんぞ」
「わかった。俺たちの前の都市か・・・ならばここ。アージスが戦場か。俺たちは準備をしておこう。サブロウ。義弟に連絡を頼む。こちらはいつでも出撃が出来るようにしておくとな」
「了解ぞ。おいらが帰還中に戦争に入ったら伝書鳩での緊急連絡をしろぞ」
「わかってる。サブロウ頼んだ」
「おうぞ。行ってくるぞい」
サブロウは闇に消え、スクナロは正面を見据えて、先を予想した。
「いよいよかもしれない。冬の戦争か? なかなか難しい時期に仕掛けてくる気か」
それから・・・。
◇
帝国歴530年3月1日。
「来なかった・・・なぜだ・・・サブロウたちの影が中に入れ込めないからな。囮だったか」
スクナロの予想では今冬に決戦が行われると思っていた。
第八次アージス大戦の開幕だと思っていたのだ。
なのに、結果としては、何もなし。
サブロウの影部隊が中に入れ込めない現状が難しさを呼んでいるのか。
それとも囮として、ルクセントに兵を集めて、人の出入りを多くしているだけだったのかもしれない。
情報を正確に入手できないから、判断の難しさが出てきた。
自分の一存で戦争が出来る分。
スクナロは慎重に事態を見極めていた。
「まあ、浮足立ってもしょうがない。とりあえず、普段通りに訓練をしていつでも出撃できるようにしておくべきだな。ククル。シャフルと連携をしておいて、ササラに連絡を入れておこう。ピカナだな」
敵がどう動こうが、自分が担当することになる左翼。
地図で言えば南側の局面。
ここを死守するしかないと考えているスクナロであった。
◇
帝国歴530年4月6日。
ガルナズン帝国の帝都にて。
皇帝の自室。
「フュン。この子、お腹を蹴りましたよ」
「本当ですか。どれどれ。おお。蹴りましたね」
現在シルヴィアのお腹の中にいるのは、二人の第四子『フィア・ダーレー』である。
二人の最後の子で、のちにダーレーの当主となる子である。
女の子なのだが、ジークに似ていて、かなり変わった女性に成長する。
ちなみにフュンとシルヴィアの子は、それぞれ家名が違う形になる。
レベッカは、レベッカ・ダーレーで、のちに・・・・となる。
アインは、アイン・ロベルト・トゥーリーズで、のちに・・・・となる。
ツェンは、ツェン・メイダルフィアとなり。
フィアは、フィア・ダーレーとなる。
四人は仲の良い姉弟として知られていて、これもフュンの教育方針が良かったらしい。
厳しくも優しい彼の指導は、四人を真っ当な道に導くのに十分であった。
それぞれの家は、大陸を大きく繁栄させるために動いていくことになる。
「・・・って、フュン。兄様の連絡が来ていたのでしょう。なぜこんなにのんびりしているのでしょう」
「いや、僕はまだだと思うんですよ。戦うにしてもまだ時間があると思います。僕の予想だと、彼は僕を王国に呼びつけるはずです。だからスクナロ様には臨戦態勢だけ整えておいてと言っています」
「準備の話はわかっていますが・・・え? 呼びつける。あなたをですか?」
「はい。ここまで、丁寧な停戦をしておいて、ほらいくぞ。みたいな戦争を彼はしないと思います。ちゃんと宣戦布告をしてから戦争をすると思います。ネアルとはそういう男です。それにですね」
「それに?」
「僕はもう一つ。彼はやらねばならないことがあると思うんですよね」
フュンはそう言って、ツェンを抱っこしてあやしていた。
ツェンもアインと同じく、よく笑う赤ん坊であった。
ここで、レベッカが足元に来た。
「父! ん!」
両手を広げて、抱っこしろとせがんできた。
「え? 無理ですよ。あなたもう八歳になる年ですよ。もうおっきいんですよ」
「父! ん!」
さらに手が広がった。
「はぁ。仕方ありませんね。ほら。背中に登りなさい。おんぶなら出来ますよ」
「父! 大好き」
父親大好き人間レベッカは、父の大きな背中に飛び乗った。
「大変。甘えん坊さんですね」
「いいの。父大好き」
「はいはい」
二人を同時にあやしていると、フュンのズボンの裾が引っ張られた。
「父さん。僕は?」
「アイン。あなたも? いやいや無理ですよ。僕の体に空きがありません」
「僕も・・・姉さんばかりズルい」
「そ、そうですか。じゃあ、ほら背中に来なさい。お姉さんと分け合うのですよ」
「うん」
アインが、ぺたっとフュンの背中にくっついた。
四歳になる彼の身体能力はすでにレベッカに匹敵するものだった。
アインは、礼儀正しく、人懐っこく、それでいて周りに馴染み、人を頼るのが上手い子だった。
性格が父似とされていたが、それ以上に彼は戦う才能もあり、頭もよかったので、万能型過ぎて、フュンの子供の頃とは違い。
超人認定された子供であった。
「お、重い・・・流石に三人同時は厳しいですね・・・あと少しですよ。そしたら、君たち。降りてくださいよ」
「ええ~。父。頑張れ」
「父さん。頑張れ」
「あ! ああ!!」
三人が同時に頑張れと言って来たので、父としてフュンは、力尽きるまで三人をあやしたのであった。
◇
帝国歴530年5月22日
皇帝の自室にて。
横になっているシルヴィアの隣でフュンが優しく言う。
「予定日に近づいてますね」
「ええ。そうです」
「具合悪くありませんか。お水とか持ってきますか?」
「いりません。そばにいてください」
「そうですか。いいですよ」
今日もいつもと同じ穏やかな日を過ごすところに、緊急の連絡が入る。
太陽の戦士たちがその人物を素通りさせるという事は、この部屋に来るのは幹部である。
「陛下。大元帥」
「はい。どうぞ。クリスですね」
フュンが答えるとクリスが入ってきた。
「なんですか?」
「緊急です。フュン様、王国から手紙が」
「王国から?」
「そうです。今、使者も送ってきているそうです」
「使者? 開戦ですかね。いや、変ですね。それはないはずだ。別の・・・」
フュンの予想は、別にある。
そう。それは・・・。
「違います。フュン様。ネアル王子の、王の即位式に参加しないか。という手紙でありました」
「やはり、そう来ましたね。ネアル。あなたのやるべきことは、それしかありませんよね! そうです。僕と戦うために、あなたは、王になる! そうに決まっているんだ」
フュンの考えは当たっていた。
それはネアルの『王』就任である。
イーナミアの王子から、イーナミアの王になってからが戦争の本番。
フュンは、ネアルが正式な王になってから、帝国との決戦をするのだと思っていたのだ。
イーナミア王国の王 対 ガルナズン帝国の大元帥。
この構図に持っていくために王となる。
二人の肩書きに対して邪魔する者など、このアーリア大陸にはいない。
ネアルは、フュンと共に高みに登ってから対決をしたいのだ。
誰も邪魔する者のない格式の高い戦いを望んでいる。
フュンは、彼の考えを読み切っていた。
「スクナロ」
「ん? おお、サブロウか。なんだ?」
「おうぞ。用があって来たぞ」
城壁の上にいたスクナロは、敵がいる方角の西を見ていた。
停戦が空けたはずの両国は、いつ戦争が始まってもおかしくない。
ここの所、スクナロは毎日。
敵が攻めてこないかを見回りしていたのである。
「それで、急に何のようだ。義弟からか?」
「いいや。違う。おいらは独断で王国に偵察に行って来たぞい」
「おお。そうか。サブロウ、王国はどうだった」
「それがなのぞ……あっち、強くなっているぞ」
「強くなっている?」
「何故かは知らんが、向こうにも影がいるみたいなのぞ。影の形跡があって、中に入れんぞ」
「なに!? それはホントか」
「ああ。厳しいぞな。今までのような偵察なんて出来ないぞ。都市内部は特に難しく、外側から兵の動きなどを確認しないといけないぞな。通常の索敵くらいしか出来んぞ」
「そうか。それは、例のナボルが復活したのか? そのせいか?」
「いいや、それはないぞな。ナボルのような雰囲気ではない感じぞ……おそらく誰かから影の技術を学んだみたいぞ。ナボルの影の技術より、おいらたち寄りに近いのぞ。大陸産っぽいのぞ。どういう事かぞ」
ナボルなのか。それとも自分たちと同じく、別大陸から逃げてきた者なのか。
とにかく敵も影の力を持つに至ったらしい。
これで、敵を調べ上げるにも難しくなった。
「そこは、どうだろうな。俺には分からん! たしかに、サブロウみたいに、他大陸から来た連中がいるのかもしれないよな・・・んんん。それにしてもこちらの優位な部分が消えたか」
「ああ。でも、影となれば、おいらたちだって負けんぞ。相手が来ても跳ね返す! でも、ここからの情報戦はぞ。引き分けになった感じぞな。だから、ここからは……」
「そうだな。力勝負ってわけだな」
「ああ。ガチンコ勝負ぞ! 知力と知力。力と力のぞ」
「そうだな。そうなるな」
帝国の方が勝っていた部分。
それが情報収集能力である。
今までのアージスでの戦いでも、一個上をいっていたのだが、ここに来てその優位な部分を失った。
それでも戦うことを決めている帝国は、今度は将と兵の強さで勝とうとしていた。
結束した帝国の力で、相手に勝るしかないとスクナロは考えてこの日の見回りを終えた。
そこから10日後。
前と同じように見回りをしていたスクナロのそばにサブロウが来た。
「スクナロ」
「お! 割と早いな。前回から日が経っていないな」
「おうぞ。それが……都市周辺が慌ただしいらしいぞ」
「慌ただしいだと。どこがだ」
「ルクセントだぞ。ここが動いている。中で準備が始まっているかもしれんぞ」
「わかった。俺たちの前の都市か・・・ならばここ。アージスが戦場か。俺たちは準備をしておこう。サブロウ。義弟に連絡を頼む。こちらはいつでも出撃が出来るようにしておくとな」
「了解ぞ。おいらが帰還中に戦争に入ったら伝書鳩での緊急連絡をしろぞ」
「わかってる。サブロウ頼んだ」
「おうぞ。行ってくるぞい」
サブロウは闇に消え、スクナロは正面を見据えて、先を予想した。
「いよいよかもしれない。冬の戦争か? なかなか難しい時期に仕掛けてくる気か」
それから・・・。
◇
帝国歴530年3月1日。
「来なかった・・・なぜだ・・・サブロウたちの影が中に入れ込めないからな。囮だったか」
スクナロの予想では今冬に決戦が行われると思っていた。
第八次アージス大戦の開幕だと思っていたのだ。
なのに、結果としては、何もなし。
サブロウの影部隊が中に入れ込めない現状が難しさを呼んでいるのか。
それとも囮として、ルクセントに兵を集めて、人の出入りを多くしているだけだったのかもしれない。
情報を正確に入手できないから、判断の難しさが出てきた。
自分の一存で戦争が出来る分。
スクナロは慎重に事態を見極めていた。
「まあ、浮足立ってもしょうがない。とりあえず、普段通りに訓練をしていつでも出撃できるようにしておくべきだな。ククル。シャフルと連携をしておいて、ササラに連絡を入れておこう。ピカナだな」
敵がどう動こうが、自分が担当することになる左翼。
地図で言えば南側の局面。
ここを死守するしかないと考えているスクナロであった。
◇
帝国歴530年4月6日。
ガルナズン帝国の帝都にて。
皇帝の自室。
「フュン。この子、お腹を蹴りましたよ」
「本当ですか。どれどれ。おお。蹴りましたね」
現在シルヴィアのお腹の中にいるのは、二人の第四子『フィア・ダーレー』である。
二人の最後の子で、のちにダーレーの当主となる子である。
女の子なのだが、ジークに似ていて、かなり変わった女性に成長する。
ちなみにフュンとシルヴィアの子は、それぞれ家名が違う形になる。
レベッカは、レベッカ・ダーレーで、のちに・・・・となる。
アインは、アイン・ロベルト・トゥーリーズで、のちに・・・・となる。
ツェンは、ツェン・メイダルフィアとなり。
フィアは、フィア・ダーレーとなる。
四人は仲の良い姉弟として知られていて、これもフュンの教育方針が良かったらしい。
厳しくも優しい彼の指導は、四人を真っ当な道に導くのに十分であった。
それぞれの家は、大陸を大きく繁栄させるために動いていくことになる。
「・・・って、フュン。兄様の連絡が来ていたのでしょう。なぜこんなにのんびりしているのでしょう」
「いや、僕はまだだと思うんですよ。戦うにしてもまだ時間があると思います。僕の予想だと、彼は僕を王国に呼びつけるはずです。だからスクナロ様には臨戦態勢だけ整えておいてと言っています」
「準備の話はわかっていますが・・・え? 呼びつける。あなたをですか?」
「はい。ここまで、丁寧な停戦をしておいて、ほらいくぞ。みたいな戦争を彼はしないと思います。ちゃんと宣戦布告をしてから戦争をすると思います。ネアルとはそういう男です。それにですね」
「それに?」
「僕はもう一つ。彼はやらねばならないことがあると思うんですよね」
フュンはそう言って、ツェンを抱っこしてあやしていた。
ツェンもアインと同じく、よく笑う赤ん坊であった。
ここで、レベッカが足元に来た。
「父! ん!」
両手を広げて、抱っこしろとせがんできた。
「え? 無理ですよ。あなたもう八歳になる年ですよ。もうおっきいんですよ」
「父! ん!」
さらに手が広がった。
「はぁ。仕方ありませんね。ほら。背中に登りなさい。おんぶなら出来ますよ」
「父! 大好き」
父親大好き人間レベッカは、父の大きな背中に飛び乗った。
「大変。甘えん坊さんですね」
「いいの。父大好き」
「はいはい」
二人を同時にあやしていると、フュンのズボンの裾が引っ張られた。
「父さん。僕は?」
「アイン。あなたも? いやいや無理ですよ。僕の体に空きがありません」
「僕も・・・姉さんばかりズルい」
「そ、そうですか。じゃあ、ほら背中に来なさい。お姉さんと分け合うのですよ」
「うん」
アインが、ぺたっとフュンの背中にくっついた。
四歳になる彼の身体能力はすでにレベッカに匹敵するものだった。
アインは、礼儀正しく、人懐っこく、それでいて周りに馴染み、人を頼るのが上手い子だった。
性格が父似とされていたが、それ以上に彼は戦う才能もあり、頭もよかったので、万能型過ぎて、フュンの子供の頃とは違い。
超人認定された子供であった。
「お、重い・・・流石に三人同時は厳しいですね・・・あと少しですよ。そしたら、君たち。降りてくださいよ」
「ええ~。父。頑張れ」
「父さん。頑張れ」
「あ! ああ!!」
三人が同時に頑張れと言って来たので、父としてフュンは、力尽きるまで三人をあやしたのであった。
◇
帝国歴530年5月22日
皇帝の自室にて。
横になっているシルヴィアの隣でフュンが優しく言う。
「予定日に近づいてますね」
「ええ。そうです」
「具合悪くありませんか。お水とか持ってきますか?」
「いりません。そばにいてください」
「そうですか。いいですよ」
今日もいつもと同じ穏やかな日を過ごすところに、緊急の連絡が入る。
太陽の戦士たちがその人物を素通りさせるという事は、この部屋に来るのは幹部である。
「陛下。大元帥」
「はい。どうぞ。クリスですね」
フュンが答えるとクリスが入ってきた。
「なんですか?」
「緊急です。フュン様、王国から手紙が」
「王国から?」
「そうです。今、使者も送ってきているそうです」
「使者? 開戦ですかね。いや、変ですね。それはないはずだ。別の・・・」
フュンの予想は、別にある。
そう。それは・・・。
「違います。フュン様。ネアル王子の、王の即位式に参加しないか。という手紙でありました」
「やはり、そう来ましたね。ネアル。あなたのやるべきことは、それしかありませんよね! そうです。僕と戦うために、あなたは、王になる! そうに決まっているんだ」
フュンの考えは当たっていた。
それはネアルの『王』就任である。
イーナミアの王子から、イーナミアの王になってからが戦争の本番。
フュンは、ネアルが正式な王になってから、帝国との決戦をするのだと思っていたのだ。
イーナミア王国の王 対 ガルナズン帝国の大元帥。
この構図に持っていくために王となる。
二人の肩書きに対して邪魔する者など、このアーリア大陸にはいない。
ネアルは、フュンと共に高みに登ってから対決をしたいのだ。
誰も邪魔する者のない格式の高い戦いを望んでいる。
フュンは、彼の考えを読み切っていた。
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