人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚

咲良喜玖

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エピソード0 英雄の師ミランダ・ウォーカーの物語

第322話 ひとつの時代が終わり。また新たな時代が始まる。そしてまた次の時代も、いずれは・・・・

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 戦争終結後。
 数多くの戦いで、帝国に貢献したミランダの称号が確定した。
 帝都の玉座の間にて、彼女は皇帝エイナルフから称号を授かる。

 「ミランダ・ウォーカー。陛下のそばに」
 「はい」

 ミランダが、玉座の間の皇帝の席の前で跪いた。
 エイナルフが剣を彼女の肩に置いてから鞘にしまう。
 
 「内乱の時代であった帝国。その時代を終わらせるきっかけを作り、多くの戦争で帝国に貢献し続けたこと。それと王家のひとつ。ダーレーを守り続け、二人の子を守った事。これは計り知れない功績である。なので今日より、ダーレー家顧問ミランダ・ウォーカーに、帝国軍師の称号を授けるとする」

 皇帝の隣でウィルベルが堂々と皆に宣言した。
 この場にいた者たちから拍手が起きて、ミランダはその場から去っていった。
 
 こうしてミランダは、軍師の称号を得た。
 これは、名目上の軍師であり、現在のフュン・メイダルフィアが作った軍師のポジションとは全く別のものである。
 それは何故かというと、この時代がまだ御三家の時代だからだ。
 御三家がある限り、帝国は一つでない。
 命令系統が三つある時代に、軍師の称号を得たとしても、それはあくまでも帝国の軍師であって、他の二家を操れるような軍師ではないのだ。
 だから名目上で実質の軍師ではない。
 ミランダはその曖昧な立場しか得られない称号でも、彼女はダーレーの為に受け取った。
 軍師の称号は他の二家にはない。
 価値あるものだったからだ。


 この後、論功行賞が行われて、色々な褒美をそれぞれが受け取るが、ヒザルスがバルナガンへ行くことになった。
 それは、ストレイル家への監視役としての意味合いが強くあるのだが。
 ヒザルスの下に入ることになったタルスコと呼ばれる謎の爺さんが、監視をしたいとのことで、ミランダが適任者としてヒザルスを指名したことから始まった。
 タルスコという爺さんの御三家戦乱の唯一の失敗がここにあるとして、ずっとここに潜んでいたのである。
 それの割を食うのはヒザルスで、タルスコとかいう名前の執事なのに、とても気を遣っていたらしいのだ。
 偉いのはヒザルスの方なのに、ご機嫌まで伺うらしい。
 それはなぜなのだろうか。
 ミランダら、事情を知る者しか知らない事である。
 のちにジークが、ヒザルスの屋敷に通うことになるのも、タルスコという謎のお爺さんが、ここにいるからで、たまに会いに行くと、必ずタルスコという人とお茶を飲むらしい。
 ただの執事なのに、帝国の皇子とお茶会をするのだそうだ。
 なぜなのだろうか・・・。


 そして翌年。帝国歴511年。
 この年で一番の出来事は里での事。

 「おい。エリナ」
 「・・・」
 「そうか」

 ミランダはエリナの泣いて腫れた後の顔を見て、全てを察した。
 里ラメンテのサルトンの部屋に入ると、泣いているライノンとメロウもいた。
 
 「悪かった。間に合わなかった」

 ミランダは、サルトンの死に間に合わなかった。
 サルトンは前年辺りから具合が悪くなっていた。
 体調が優れない中で里の運営の方に注力してくれて、その上でライノンとメロウの二人の面倒を見ていた。
 特にライノンにとってのサルトンの存在は父と言える存在である。
 
 「そうか。サルトンさん。あたしは、あんたに会えてよかったぜ。本当は生きてる間にこっちに来たかったけどな。わりい。来れなかったわ。すまねえ」

 ミランダはサルトンの体に手を置いて謝った。
 しばらく部屋で過ごして、外に出ると、ミランダは煙草を吸うエリナと会話する。

 「あ? お前、タバコ吸ったっけ?」
 「吸わねえ・・・サルトンさんが吸ってた」
 「そうか」
 「サルトンさん。最後にあたいに任せるってよ」
 「なにを?」
 「里だって」
 「そうか」
 「・・・あたい、やるよ。ミラ。お前はそっちで頑張れ。まだダーレーは不安定だろ?」
 「そうだな。厳しいな」
 「だから里の事は気にすんな。あたいは、ここにいて、おまえらを支えるからよ。ウォーカー隊を鍛えながら、里の人たちの安全を確保するよ」
 「わかった。頼むわ」
 「ミラ、あたいにまかせとけ。サルトンさんの代わりは無理だけど、頑張るからさ」 
 「ああ。わかってる。エリナだもんな。きっと出来るさ」

 こうして、エリナが里長のような役割を担うことになった。
 ウォーカー隊の里組を率いるのがエリナとなる。



 そして翌年。
 帝国歴512年6月22日。
 突如としてハスラが慌ただしくなる。
 それは、目の前の王国軍が川を越えて、進軍を開始したからだ。
 その兵数は五千。
 少ない数ではあるが、王国軍が襲来してきた事実にハスラにいる人々は驚愕していた。
 
 その日は、シルヴィアがハスラにいた。
 ちなみにミランダは、帝都の仕事をこなしていたために、不在である。

 シルヴィアは、ハスラ西の城壁からザンカと共に敵を観察し、マールには念のため北側を偵察させた。
 この頃から、ザンカとマールはシルヴィアの為に行動を起こしている。
 里ではなくハスラを防衛するための将になっていた。
 
 敵の船団はハスラに直接来るような形ではなく、やや北側寄りで船をつけたので、狙いがそのまま帝国の北側の横断かと思ったシルヴィアは、数の違いもあるので即決でハスラからの出撃を選択した。
 敵は上陸と同時に林に潜伏。
 そのままどちらにいくか分からないようにして潜伏したために、ここで行動を起こすのは本来ならば危険なのだが、彼女らにとってここは庭のような林なので問題がなく、敵を索敵。
 五千の兵を取り逃がさないように殲滅。
 シルヴィアが主体となって戦闘した初の戦いとなった。
 これがハスラ北の戦いで、彼女一人で1勝をあげたとされる戦いだ。 
 
 戦場で美しく咲いた花。
 戦場の華。シルヴィア・ダーレー
 ここから彼女は戦姫シルヴィアとなる。

 そしてこの出来事によりミランダは決断。
 皇帝エイナルフと交渉して、ウォーカー隊を独立友軍にしてもらい、解散。
 帝国の常時いる戦力とは数えずに、傭兵集団とした。
 この判断により、ザイオンが流しの部隊になり、各地を放浪しながら傭兵をして、サブロウは本格的に工作を開始。
 シゲマサは影部隊の育成をしてカゲロイを育てる。
 マサムネは一人勝手に旅をし始めて、ザンカがハスラの隊長になり、マールも同じく。
 ウォーカー隊がバラバラとなっていった。
 でも彼らの心は繋がっていて、何かがあればすぐに集まる関係となった。
 それはシルヴィアが一人前になったことで出来る事だった。
 彼らはシルクへの恩を返したのだ。

 
 そして翌年513年。
 シルヴィアももう16歳。
 良いお年頃なので、良さそうな家柄の貴族とお見合いになるのだが。
 対面で挨拶まで出来た家もあったりしたが、それでも婚約には至らずで、他に話があった三家は、会えもせずに終えた。
 それはなぜか。
 彼女が駄目だとかではなく、ダーレー家が弱いというのも考慮されているとは思うが、それよりも彼女の輝かしい功績が自分と釣り合わないというのが主な理由であった。
 彼女の戦歴がこの時から凄まじく、16歳でも戦場経験が豊富な方で、その実績も異常。 
 ただの敵を倒すだけじゃなく、将すらも粉砕している16歳など帝国のどこを探してもいない。
 同じ年頃の貴族の男性たちは戦争経験がほぼない。
 戦争も少なくなったこの時代だから、これほどの実績を持てないのである。
 だから彼女との結婚をためらうのは当たり前であった。
 これで彼女は、自分に自信がなくなり、容姿なども綺麗だとは思わなくなってしまい。外の人間は、自分の事を気に入らないのだろうと勝手に思って、殻に閉じこもり、家族と部下たちの付き合いのみになってしまった。
 フュン・メイダルフィアと出会うまで、それが続いてしまう。

 一方ジークは、この頃から事業を拡大して、各都市にジークの商会の名が轟き。
 商売の上手さで貴族たちを手玉に取り始めて、一般人には格安で物を提供し始めた。
 この背景には、サティの力も関与しているが、ジークはそのサティに借金を返したのもこの年なので、大分お金を稼げているのである。
 ナシュアを変装させたりして、王国側に物資を売ったりなど、とにかくジークの方は順調だった。
 
 そして、この頃にサナリアが平定となり、エイナルフは使者を送っていた。
 これはお祝いの使者であるとされていて、国交を樹立しようとの動きであった。
 最初は従属させようとする意図はなかったと思われる。


 さらに翌年514年
 この年にアージス平原で王国と衝突する。
 それが二万対二万の戦いで、ターク家が主で戦うのだが、これにシルヴィアもハスラの兵を引き連れて参戦する。
 これで敵を退けるのは上手くいったが、三家が連携することがなく、戦争自体はうまくいっても、帝国自体の環境が整っていないことに、皇帝が気付く。
 なので皇帝は、ちょくちょく来るようになる王国に違和感を覚え、もしかしたら全面対決が近いのかもしれないと判断した。
 なので、二正面作戦になりたくないと思い。
 国交樹立しようと思ったサナリアに対して、属国勧告を画策する。

 
 それで翌年515年
 サナリアに対して、属国になれと脅しのような文面の書状と使者を送った。
 これに対して、サナリアはすぐに従属することを決断。
 第一王子フュン・メイダルフィアを人質として送り出すことになった。

 第一王子を送り込む意図がなんなんだろうかと思ったのは、エイナルフの方だった。
 通常であれば、タイローやヒルダのような王家に連なる者や嫡男以外を送り出すのだ。
 なのにこの国は長男を送り込んできたので、素直に驚いたというのが第一印象である。
 エイナルフの心境はこうで。
 ジークとしては、従属国を保有している家が二つ。
 それがドルフィンとタークであり、ダーレーとしては従属国との関係がなかったので、ちょっとその人物を見学して、こちらに引き入れる事は出来ないかなと軽い気持ちで関所に訪れて、二家よりも先に出会って有利になっておこうとしたのだ。

 商人という地位を上手く使って、フュンを見極めようとしていたら、馬車が泥に嵌って、上手く陸地にいかない所に、超お人好しの人とすれ違った。
 それがフュンだと知らずにだ。
 ジークは、フュンの中に大好きな母のような感覚とピカナのような感覚を得ていた。
 だから、彼の能力や出身なんてどうでもよくて、とにかく友達にでもなろうと思い、この後に近づいていくのである。
 シルヴィアは・・・これは言わずもがなである。
 ここからべた惚れであるので、恥ずかしい話ばかりが続く。
 あの冷静沈着で、表情も無である戦姫が、ポンコツ姫となって感情豊かになるのもこの頃からである。

 

 ◇

 ミランダは、ウォーカー隊を解散する頃に幹部に言っていたことがある。

 「ひとつ足んない!」
 「何言ってんだ?」

 ザイオンに聞き返される。
 
 「あたしらには、なんかひとつ足んない」
 「何がだよ」

 エリナがキレ気味だった。

 「あたしらさ。色んなタイプの人間がいるけどさ。一つ足りない。それはあたしらの世代も、若い世代も、どっちにも足りない! あのシルクさんみたいな人がいないんだ」
 「は? 何を言ってるんだ。シルク様みたいな人なんているわけないだろ」
 
 ザンカが指摘した。

 「いや。でもよ。この世の中。たぶんいるぜ」
 「どんな人なのぞ。シルク様みたいな人ってのはぞ」
 「そりゃ、シルクさんみたいな人なのさ」
 「いや・・・だからぞ・・・」

 サブロウは質問に答えてもらえなかった。

 「ミラの言いたい事はな。なんとなく分かるぞ。あれだ。人を変えそうな奴の事だろ。人生とかそういうのをさ。ガラリと変えることが出来る人・・・ってことだろ?」
 「そうそう。シゲマサはさすがだな。そうさ。あたしらを変えてくれたのは、シルクさんだろ」

 シゲマサの答えにミランダが頷く。

 「あっしらを変えてくれたのはミラですぜ」
 「いや、でもあたしは、シルクさんに助けてもらったからな。あたしがお前らを変えたというよりはさ・・・」

 ミランダは、マールの言葉には深く頷くが、自分の力で皆が変わったとは思っていない。

 「まあ、あれだろ。シルク様が起点になって、お前を作り出し、お前が俺たちを生み出した。こんな感じだ・・・たぶん・・・」

 旅帰りのマサムネが答えた。

 「そうだな。そういうことだ。誰かに、力を授ける。誰かに、思いを託せる。そんな人物が足りない。シルクさんが、優しいとかの曖昧なもんじゃない。だったらピカナがいるしな。でもあいつはそういう人物じゃない。だからよ。人を変える力を持つ人間。これが足りねえ。あたしらはその人たちに変えてもらっただけだ。ヒストリア。エステロ。ユーさん。それにシルクさん・・・みんな、人を変える人だ。でもあたしは違うし、お前らも違うよな」
 
 ウォーカー隊が頷いた。

 「だから、どこかでほしいな。新しい時代を築ける。そんな人物が欲しい。それもお嬢やジークの世代でな。そしたらあたしら、安泰だもんな。ナハハハ。後ろでゆっくり休んでもいいのさ」
 「なに? ミラは休む気なんぞ?」
 「おう。疲れたら寝る! そんな時代になれればな・・・この時代もまた・・・厳しいぜ」

 ミランダは、御三家時代もまた内乱時代と同様に激動の時代ではないかと思っていた。
 まだ優秀な方の貴族を残したと思っても、それも前と同じようになるかもしれない。
 人をより良い者へと成長を促す人物。
 それが欲しい人物。
 シルクのように人を成長させる人物をウォーカー隊は待ち望んでいた。
 
 「あたしらは、その人を探すか・・・この御三家の時代にさ」

 一時の安定だと思う御三家の時代。
 それでも、王貴戦争、御三家戦乱の時代よりかはまだマシな時代。
 皆が経験した暗黒の時代に再び戻らないように、彼らは今日も成長し、そして誰か、自分らの希望となる人を探している。
 次の時代を担う者を探しているのだ。
 自分たちが思いを託してもらえたように・・・。
 


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