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第二部 辺境伯に続く物語
第272話 ガルナズン帝国の民よ。我らは共に生きよう!
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帝国歴526年1月1日。
帝都城のバルコニーから、音声拡張器を使用したシルヴィアが、帝都民に向けて声明を出した。
「ガルナズン帝国の民よ。今一度、私の話を聞いてほしい」
帝都の住民全てが静まり返る。
シルヴィアの声は都市の隅々にまで聞こえていた。
「今の今まで混迷の世だったガルナズン帝国。その困難な状態を、その身一つで守り続けてくれていた。第三十一代皇帝エイナルフ・ヘイロー・ヴィセニアが、昨日で退位されました。今までの陛下の苦労とこの国を守ってくださったこと・・・我が父に、深い感謝をします」
昨日、シルヴィアと同じようにエイナルフが退位を宣言。
民たちは新たな皇帝を待っていた。
「そして今日より、皇帝となるのは、この私。エイナルフ前皇帝の第五皇女シルヴィア・ダーレーであります。ガルナズン帝国の民の皆さん、よろしくお願いします」
シルヴィアがお辞儀をした後に、宣言する。
「そして、これからの私は、第三十二代皇帝シルヴィア・ヘイロー・ヴィセニアとなります。ヴィセニアを継ぐ者として、誠心誠意、命の限り、この国に尽くす所存です」
「おお」と小さな歓声が所々で鳴っていた。
皆、声を出していいタイミングなのかを窺っていた。
「ガルナズン帝国は色々なことがありました。帝国を常に邪魔し続けていた闇の組織ナボルに執着されてしまい。帝国の内乱は、昔から続いていました。懸命に立て直しを図っていた先代皇帝エイナルフがいたとしても、その闇は深く。魔の手は私たち、家族にも迫っていました。御三家にも罠が仕掛けられていたのです。だから帝国が一つになれなかったのです。それぞれの都市はバラバラで、まとまりのない国家でありました」
この一年で周知された事実を民たちは理解していた。
頷く者たちが聞き入っていた。
「しかし今からは違います。私たちは一つとなりました。ヴィセニアに全てが集約されたのです。今。我々の協力の証を見せます。これが今の帝国の力です。紹介します」
シルヴィアの声が凛々しくなる。
「内政の頂点、ドルフィン家。リナ・ドルフィン!」
後ろにいた冷静な表情の彼女が前に出る。
「武家の頂点、ターク家。スクナロ・ターク!」
意気込んだ表情の彼も一歩前に出た。
「開発と研究、ビクトニー家。アン・ビクトニー!」
元気一杯民に向かって手を振りながら彼女は前に出た。
「経済の要、ブライト家。サティ・ブライト!」
彼女はお辞儀してから前に出る。
「戦略と戦術、ダーレー家。ジークハイド・ダーレー!」
すました顔のまま彼は出てきた。
「五つの家は今! それぞれの特色を出し、ヴィセニアの元に集まってくれました。今日より、ここからは、我ら兄弟が力を合わせて、帝国を盛り立てていきます」
シルヴィアは少し間を置いて、説得するような話し方に変わる。
「しかし。これらの事は、私たちの力でなった訳ではありません。私たちは彼に導かれて一つとなれたのです。私たちを変えてくれたのは、我が夫。フュン・メイダルフィアであります」
シルヴィアは、自分の隣にフュンを呼んだ。
並んだ状態になってから再び話し出す。
「ここで、この場を夫に渡します」
音声拡張器を渡すと、フュンが話し出す。
「陛下から変わりましたフュンです……えっと、僕はですね。ああ、ここが始まりじゃない方がいいな」
いつもの軽い調子のフュンであった。
でもこれの方が帝都民にとって、慣れ親しんでいる彼である。
帝都の皆も彼の性格を理解していた。
メイフィアに出勤する時や、買い物をするときなど。
彼の普段の様子を知るからこそである。
「帝国に住まう皆さん。僕がフュン・メイダルフィアです。第三十二代皇帝シルヴィアの夫にして、この度、帝国の大元帥となりました。しかし、この役職。正直な話。僕には過分な役職でありましてね。皆さんもご存じの通りに、僕は普段。メイフィアなどでお仕事をしてますからね。皆さんにとってもそちらの方が慣れているでしょう。ですから話し方もややラフで話しています。親しみがあった方がいいですよね」
穏やかな声に、住民たちは微笑んでいた。
先程の緊迫感が消えて、全員が等しくリラックスし始めた。
「僕はですね。家族は一つの方が良いと昔から思っていたんですよ。僕の家族が一つじゃなかったので、せめて妻の家族だけでも一つになって欲しいと思って、懸命に裏で頑張っていました。そしたらなんとですね。皆さんが僕と力を合わせて帝国を強くしてくれると言ってくれたんです。嬉しかったですよ。やっぱりね。家族は協力することが一番ですからね」
フュンとは凡庸である。
出世して偉い立場になれていたとしても、その素朴な考えは捨てずに、優しさを持って、それが原動力で行動を起こす。
何も特別じゃない。
自分はただの普通の人間。
太陽の人とは言われていても、所詮、人は人である。
この心を持ったまま、出世したとしても、真っ直ぐ生きる事を自分の心と亡き母親に誓っているのだ。
「しかしですね。ここには一つ不安なことがあるのです。僕や、皇帝。その兄弟が力を合わせても、不安があるのですよ。それを皆さんはお分かりになりますか!」
順調なフュンの演説だったのに、急に質問が来たものだから、帝都民たちは、一斉に隣にいる人たちを見た。
お前は分かるか。どういう事だろう。
と皆で相談するくらいに混乱していた。
「そうでしょう。皆さん。困ったら誰かに相談するものです。隣の人を見てしまうものです。いいですか。今のその隣の人は、同じ帝都民です。帝国人であります。何々家の人間なんてものじゃありません。同じ仲間であります」
あなたたちの家は一つ。
ヴィセニアである。
優しくそう告げているのだ。
「皆さん。僕の不安な事はですね。僕ら家族と、皆さんが気持ちを一つにしてくれるどうかであります。国とは、民がいて、初めて意味があります。民がいなくては国なんてものは成り立ちません。それでふんぞり返っていれば、ただの裸の王様だ。だから、あなたたちの思いが必要。僕らと気持ちを一つにしてくれるのか。新しい体制になった国と、その皇帝。そしてその家族に対して、あなたたちも、共に進んでくれるのか。僕らは、停戦が終わった後。あの強大な王国と戦わなくてはならない。だから、あなたたちも僕らと共に一緒に強くなってくれるのか。そこが不安なのです・・・どうでしょうか皆さん! 帝国を前へと進ませるために、僕らと共にこの道を歩いてくれますか?」
フュンの言葉が民の心に入り込んだ。
皆が一斉にフュンの方を向いた。
「そうですね。皆さんも協力してくれるのですね。ええ。皆さんの顔がとても凛々しく、立派であります。ありがたい。嬉しい限りだ・・・ならばここは・・・お伝えしましょう。こちらの決意を!」
フュンは、シルヴィアと肩を寄せ合う距離にまで近づいた。
音声拡張器を二人で使用する。
「ガルナズン帝国大元帥兼大宰相である。私、フュン・メイダルフィアと!」
フュンが叫ぶと。
「ガルナズン帝国第三十二代皇帝である。私、シルヴィア・ヘイロー・ヴィセニアは」
シルヴィアが叫んだ。
そして二人は息を合わせた。
「「命が尽きるその時まで、ガルナズン帝国の為に、ガルナズン帝国の民と共に歩む続けることをここに誓う」」
もう一つ声を大きくして言い放つ。
「「そして聞いてほしいことがある。ガルナズン帝国の民たちよ。帝国が新しくなるためには、あなたたちの協力が必要不可欠だ。我ら一つとなった皇帝一家と共に前へと進んでほしい。我々は、同じ家の同じ帝国人となって、共に新たな道を歩みたいのだ。皇帝の家族は、一族だけじゃなく、我々全員が大切な家族の一員へとなりたいのである!」」」
息の合った宣言に民たちは呼吸をしていないくらいに飲み込まれていた。
いや、息をすることを忘れていたのだ。
「「だから今日、この時より。ガルナズン帝国は、隣にいる人。隣人を大切にする国となる。各都市は繋がり、各都市はそれぞれを助ける。それで各都市は大きく発展するのだ。我々は家族を守るための国になる! 我々は手を取り合って支えあって生きていくのである!!」」
国家にいる全員が家族になる。
二人の宣言は、皆で家族になろうであった。
「「ゆくぞ。ガルナズン帝国の民たちよ。この先の我々は一つの家族となり、イーナミア王国にも負けぬ強国となるのだ・・・そして!!!」
フュンとシルヴィアはここで話を切って、大きく息を吸い込んだ。
最後の一言に全ての願いを込める。
「私たちが愛する帝国人たちよ。共に・・・我らは共に・・・アーリア大陸を生き抜こうぞ」」
フュンとシルヴィアが、民に向かって手を伸ばした。
どうかこの手を握って欲しい。
その願いが込められた手である。
「・・・・・・・・・・・・・・」
突然の宣言に圧倒された民たちは、言葉を失っていた。
時が止まったかのように天を見上げる民たち。
二人が殿上人のように見えていた。
無音。
それが一体どれくらい続いたのか分からない。
だが、そこから突然。風は巻き起こる。
新たな風。
帝国を変える新風は、この帝都から吹き荒れたのだ。
宣言を聞いた帝国人たちは、フュンとシルヴィアの手を握ろうとした。
「「「「ガルナズン帝国万歳」」」」
「「「「シルヴィア皇帝陛下万歳」」」」
「「「「フュン大元帥万歳」」」」
この連続した大歓声の帝都の声は、アーリア大陸中に響いたのではないかと。
後の歴史家たちは豪語していた・・・・。
2時2分を過ぎたこの日のこの声は、青い煙と共に帝都を充満して弾けていった。
帝国は変わる。
それはシルヴィアとフュンを中心にして、先代皇帝の子らと共に。
そして帝国人たちと共に。
一致団結した結束の力を発揮することになるのだ。
こうして家族を失った男フュン・メイダルフィアは、家族を得た。
それも、妻と子供だけじゃない。
妻の兄妹を得て、故郷の仲間を得て、他国と辺境領に親友を得て、そして、アーリア大陸の半分を支配する国の民の支持を得た。
フュン・メイダルフィアは、国家をも一つにして、最高の家族を得たのだ。
ガルナズン帝国は、五百年の歴史がある国家。
そんな長い歴史を持つ帝国が、今まさに最盛期を迎えるのである。
しかし、それはイーナミア王国が生んだ英雄と戦うためには必要な事であった。
時代は、英雄と英雄が雌雄を決する時代へ進む・・・。
帝都城のバルコニーから、音声拡張器を使用したシルヴィアが、帝都民に向けて声明を出した。
「ガルナズン帝国の民よ。今一度、私の話を聞いてほしい」
帝都の住民全てが静まり返る。
シルヴィアの声は都市の隅々にまで聞こえていた。
「今の今まで混迷の世だったガルナズン帝国。その困難な状態を、その身一つで守り続けてくれていた。第三十一代皇帝エイナルフ・ヘイロー・ヴィセニアが、昨日で退位されました。今までの陛下の苦労とこの国を守ってくださったこと・・・我が父に、深い感謝をします」
昨日、シルヴィアと同じようにエイナルフが退位を宣言。
民たちは新たな皇帝を待っていた。
「そして今日より、皇帝となるのは、この私。エイナルフ前皇帝の第五皇女シルヴィア・ダーレーであります。ガルナズン帝国の民の皆さん、よろしくお願いします」
シルヴィアがお辞儀をした後に、宣言する。
「そして、これからの私は、第三十二代皇帝シルヴィア・ヘイロー・ヴィセニアとなります。ヴィセニアを継ぐ者として、誠心誠意、命の限り、この国に尽くす所存です」
「おお」と小さな歓声が所々で鳴っていた。
皆、声を出していいタイミングなのかを窺っていた。
「ガルナズン帝国は色々なことがありました。帝国を常に邪魔し続けていた闇の組織ナボルに執着されてしまい。帝国の内乱は、昔から続いていました。懸命に立て直しを図っていた先代皇帝エイナルフがいたとしても、その闇は深く。魔の手は私たち、家族にも迫っていました。御三家にも罠が仕掛けられていたのです。だから帝国が一つになれなかったのです。それぞれの都市はバラバラで、まとまりのない国家でありました」
この一年で周知された事実を民たちは理解していた。
頷く者たちが聞き入っていた。
「しかし今からは違います。私たちは一つとなりました。ヴィセニアに全てが集約されたのです。今。我々の協力の証を見せます。これが今の帝国の力です。紹介します」
シルヴィアの声が凛々しくなる。
「内政の頂点、ドルフィン家。リナ・ドルフィン!」
後ろにいた冷静な表情の彼女が前に出る。
「武家の頂点、ターク家。スクナロ・ターク!」
意気込んだ表情の彼も一歩前に出た。
「開発と研究、ビクトニー家。アン・ビクトニー!」
元気一杯民に向かって手を振りながら彼女は前に出た。
「経済の要、ブライト家。サティ・ブライト!」
彼女はお辞儀してから前に出る。
「戦略と戦術、ダーレー家。ジークハイド・ダーレー!」
すました顔のまま彼は出てきた。
「五つの家は今! それぞれの特色を出し、ヴィセニアの元に集まってくれました。今日より、ここからは、我ら兄弟が力を合わせて、帝国を盛り立てていきます」
シルヴィアは少し間を置いて、説得するような話し方に変わる。
「しかし。これらの事は、私たちの力でなった訳ではありません。私たちは彼に導かれて一つとなれたのです。私たちを変えてくれたのは、我が夫。フュン・メイダルフィアであります」
シルヴィアは、自分の隣にフュンを呼んだ。
並んだ状態になってから再び話し出す。
「ここで、この場を夫に渡します」
音声拡張器を渡すと、フュンが話し出す。
「陛下から変わりましたフュンです……えっと、僕はですね。ああ、ここが始まりじゃない方がいいな」
いつもの軽い調子のフュンであった。
でもこれの方が帝都民にとって、慣れ親しんでいる彼である。
帝都の皆も彼の性格を理解していた。
メイフィアに出勤する時や、買い物をするときなど。
彼の普段の様子を知るからこそである。
「帝国に住まう皆さん。僕がフュン・メイダルフィアです。第三十二代皇帝シルヴィアの夫にして、この度、帝国の大元帥となりました。しかし、この役職。正直な話。僕には過分な役職でありましてね。皆さんもご存じの通りに、僕は普段。メイフィアなどでお仕事をしてますからね。皆さんにとってもそちらの方が慣れているでしょう。ですから話し方もややラフで話しています。親しみがあった方がいいですよね」
穏やかな声に、住民たちは微笑んでいた。
先程の緊迫感が消えて、全員が等しくリラックスし始めた。
「僕はですね。家族は一つの方が良いと昔から思っていたんですよ。僕の家族が一つじゃなかったので、せめて妻の家族だけでも一つになって欲しいと思って、懸命に裏で頑張っていました。そしたらなんとですね。皆さんが僕と力を合わせて帝国を強くしてくれると言ってくれたんです。嬉しかったですよ。やっぱりね。家族は協力することが一番ですからね」
フュンとは凡庸である。
出世して偉い立場になれていたとしても、その素朴な考えは捨てずに、優しさを持って、それが原動力で行動を起こす。
何も特別じゃない。
自分はただの普通の人間。
太陽の人とは言われていても、所詮、人は人である。
この心を持ったまま、出世したとしても、真っ直ぐ生きる事を自分の心と亡き母親に誓っているのだ。
「しかしですね。ここには一つ不安なことがあるのです。僕や、皇帝。その兄弟が力を合わせても、不安があるのですよ。それを皆さんはお分かりになりますか!」
順調なフュンの演説だったのに、急に質問が来たものだから、帝都民たちは、一斉に隣にいる人たちを見た。
お前は分かるか。どういう事だろう。
と皆で相談するくらいに混乱していた。
「そうでしょう。皆さん。困ったら誰かに相談するものです。隣の人を見てしまうものです。いいですか。今のその隣の人は、同じ帝都民です。帝国人であります。何々家の人間なんてものじゃありません。同じ仲間であります」
あなたたちの家は一つ。
ヴィセニアである。
優しくそう告げているのだ。
「皆さん。僕の不安な事はですね。僕ら家族と、皆さんが気持ちを一つにしてくれるどうかであります。国とは、民がいて、初めて意味があります。民がいなくては国なんてものは成り立ちません。それでふんぞり返っていれば、ただの裸の王様だ。だから、あなたたちの思いが必要。僕らと気持ちを一つにしてくれるのか。新しい体制になった国と、その皇帝。そしてその家族に対して、あなたたちも、共に進んでくれるのか。僕らは、停戦が終わった後。あの強大な王国と戦わなくてはならない。だから、あなたたちも僕らと共に一緒に強くなってくれるのか。そこが不安なのです・・・どうでしょうか皆さん! 帝国を前へと進ませるために、僕らと共にこの道を歩いてくれますか?」
フュンの言葉が民の心に入り込んだ。
皆が一斉にフュンの方を向いた。
「そうですね。皆さんも協力してくれるのですね。ええ。皆さんの顔がとても凛々しく、立派であります。ありがたい。嬉しい限りだ・・・ならばここは・・・お伝えしましょう。こちらの決意を!」
フュンは、シルヴィアと肩を寄せ合う距離にまで近づいた。
音声拡張器を二人で使用する。
「ガルナズン帝国大元帥兼大宰相である。私、フュン・メイダルフィアと!」
フュンが叫ぶと。
「ガルナズン帝国第三十二代皇帝である。私、シルヴィア・ヘイロー・ヴィセニアは」
シルヴィアが叫んだ。
そして二人は息を合わせた。
「「命が尽きるその時まで、ガルナズン帝国の為に、ガルナズン帝国の民と共に歩む続けることをここに誓う」」
もう一つ声を大きくして言い放つ。
「「そして聞いてほしいことがある。ガルナズン帝国の民たちよ。帝国が新しくなるためには、あなたたちの協力が必要不可欠だ。我ら一つとなった皇帝一家と共に前へと進んでほしい。我々は、同じ家の同じ帝国人となって、共に新たな道を歩みたいのだ。皇帝の家族は、一族だけじゃなく、我々全員が大切な家族の一員へとなりたいのである!」」」
息の合った宣言に民たちは呼吸をしていないくらいに飲み込まれていた。
いや、息をすることを忘れていたのだ。
「「だから今日、この時より。ガルナズン帝国は、隣にいる人。隣人を大切にする国となる。各都市は繋がり、各都市はそれぞれを助ける。それで各都市は大きく発展するのだ。我々は家族を守るための国になる! 我々は手を取り合って支えあって生きていくのである!!」」
国家にいる全員が家族になる。
二人の宣言は、皆で家族になろうであった。
「「ゆくぞ。ガルナズン帝国の民たちよ。この先の我々は一つの家族となり、イーナミア王国にも負けぬ強国となるのだ・・・そして!!!」
フュンとシルヴィアはここで話を切って、大きく息を吸い込んだ。
最後の一言に全ての願いを込める。
「私たちが愛する帝国人たちよ。共に・・・我らは共に・・・アーリア大陸を生き抜こうぞ」」
フュンとシルヴィアが、民に向かって手を伸ばした。
どうかこの手を握って欲しい。
その願いが込められた手である。
「・・・・・・・・・・・・・・」
突然の宣言に圧倒された民たちは、言葉を失っていた。
時が止まったかのように天を見上げる民たち。
二人が殿上人のように見えていた。
無音。
それが一体どれくらい続いたのか分からない。
だが、そこから突然。風は巻き起こる。
新たな風。
帝国を変える新風は、この帝都から吹き荒れたのだ。
宣言を聞いた帝国人たちは、フュンとシルヴィアの手を握ろうとした。
「「「「ガルナズン帝国万歳」」」」
「「「「シルヴィア皇帝陛下万歳」」」」
「「「「フュン大元帥万歳」」」」
この連続した大歓声の帝都の声は、アーリア大陸中に響いたのではないかと。
後の歴史家たちは豪語していた・・・・。
2時2分を過ぎたこの日のこの声は、青い煙と共に帝都を充満して弾けていった。
帝国は変わる。
それはシルヴィアとフュンを中心にして、先代皇帝の子らと共に。
そして帝国人たちと共に。
一致団結した結束の力を発揮することになるのだ。
こうして家族を失った男フュン・メイダルフィアは、家族を得た。
それも、妻と子供だけじゃない。
妻の兄妹を得て、故郷の仲間を得て、他国と辺境領に親友を得て、そして、アーリア大陸の半分を支配する国の民の支持を得た。
フュン・メイダルフィアは、国家をも一つにして、最高の家族を得たのだ。
ガルナズン帝国は、五百年の歴史がある国家。
そんな長い歴史を持つ帝国が、今まさに最盛期を迎えるのである。
しかし、それはイーナミア王国が生んだ英雄と戦うためには必要な事であった。
時代は、英雄と英雄が雌雄を決する時代へ進む・・・。
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