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第二部 辺境伯に続く物語
第229話 ナボルにとって凶悪な使者フュン
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ラーゼの城の中、フュンは重役から案内を受けていた。
「これはこれは・・・ようこそ、サナリア辺境伯殿」
「ええ。それであなたはどなたですか?」
玉座の間までの案内をする人間が話しかけてきた。
この人間。
外面は普通で、ラーゼの民風な装いをしているが、雰囲気が闇満載だった。
隠せない気配がある。
それにナボルらは、太陽の戦士たちとは違い、動きを隠すのが苦手な人間が多い。
影移動だけじゃなく、表での所作にも影の移動の癖が現れることがあるのだ。
これは普通の人間でも気づかないし、たぶんナボル同士でも気づいていないのだと思われる。
でも、フュンたち太陽の戦士たちにとっては、その動きは闇だとしてバレバレである。
靴の音がなく、太ももやふくらはぎの動きがスムーズ過ぎて、一度も当たることがない。
一般人はもっとバランスの悪い歩き方をするのだ。フラフラするわけじゃないが芯を失ったりする動きが時々起きる。
だから、逆に綺麗すぎる歩行のせいで、違和感のある移動方法となっている。
動きに無駄がないのが逆に怪しい。
それがナボルの特徴として現れる。
「私は、案内人のマールックです」
「マールックさんですね。よろしくお願いします」
「ええ。それにしても三人? 使者にしては数が少ないようですが」
「そうですね。とりあえずお知らせに来ているだけで、この後、軍の援軍が来ますよ。こちらの二人は兵というよりは、外交の人間です」
フュンが紹介した男女は、変装したレヴィとサブロウである。
別人になった二人は、顔をあまり見せないようにしていた。
なぜなら、今のフュンたちの実力では、顔を変える際に表情をつけにくく、顔が固まりやすいのである。
だから不自然に見られがちなので、凝視されないようにしないといけないのだ。
しかしだからと言って二人が不自然ということではない。
こちらのサブロウの偽装術は、逆に闇の所作を消すことが出来る。
一般人の振りをするのが上手いのだ。
「そうでしたか。では、援軍が来てくれると」
「ええ。あなた方次第ですがね」
「え?」
「ええ。あなた方次第です」
あなた方次第という言葉に驚いたマールックは、二度も同じ話をするフュンに首を傾げた。
◇
ラーゼの玉座の間。
ラーゼ国王アルゼンがすでに席に座ってフュンたちを待っていた。
「ようこそ、辺境伯殿。私がアルゼン・スカラである」
「はい。ラーゼ王。こちらはガルナズン帝国からの援軍。サナリア軍を指揮するフュンと申します。よろしくお願いします」
必要以上にへりくだらない。
こちらの方が立場が上の宗主国であるからだ。
挨拶の為に下げていた顔をフュンがあげると、相手の顔をよりもまず間取りを確認した。
部屋の隅まで、横目でチラ見していく。
神経を部屋全体に張り巡らせた。
『部屋の中30。正面外が10。脇に40。天井に10・・・これで全部ですね』
フュンは呼吸音。服の音。靴の音。
様々な音を拾って人数を数えた。
フュン流の太陽の戦士の力を発揮したのだ。
今いる敵たちは、自分を殺すために、ほぼ全員が集まったと見ていい。
だから、ここからどう出るのかなんてわかりきった事である。
あとは自分を殺すタイミングだけを窺っている。
「では、何用ですかな。使者殿」
「ええ。そうですね。ラーゼ王。なぜ、あそこの船を放置したままにして、平然としているのですか? 敵が攻めてきているのですよね」
「あれは、向こうが攻撃してこないだけです。港を開けば、こちらには害がないと言ってきたので、時間をもらっているだけです」
「・・・ほう。それはラーゼが裏切るという事ですか?」
敵の宣戦布告気味の行為に対して時間をもらう。
意味合い的にはこのように考えてもいい。
だからフュンはカマをかけた。
「え?」
「いや、いつまで経っても敵が攻撃して来ないのは、あなた方が交渉しているからですか? 害がないとの言葉の意味はそういう事でしょう。それとも無償で開ける準備をしますので、少々お待ちをですか? それもほぼ同じ意味だ。今の発言はどのような意味で言ったのでしょうか?」
自分だったら、そんな間抜けな交渉をしない。
自分ならそういう交渉の話が来たら、港を開ける振りをしておいて、こちら側から先制攻撃を仕掛ける。
これが一番考えられる手だ。
でも、ここがナボルの巣窟なので、こんな事は選択肢にも入らないだろう。
基準はラーゼを滅ぼすことが行動の原理だ。
「それは違う。あちらが攻撃をして来ないだけで・・・」
アルゼンは、明らかに動揺していた。
これは駄目な王の典型だ。
これがもし変装ではなかったとしたら、王としての器が無さすぎる。
カルゼンと比べてはいけないほどに、駄目さ加減が目に見えて分かってしまう弟だという事になる。
「そうですか。お答えなしだと・・・では、あなた方は? 全てを王にだけ任せているのですか? 誰かお答えできる人はいませんかね。大臣や兵士の皆さん」
「・・・・・」
フュンの質問が想定外なのか。
それとも、予想していたけど、緊張で話せないのか。
どちらにしてもここにいる大臣として参列している二十名と兵士らは答えなかった。
「そうですか。そうなると敵と内通していると言ってもいいのですね」
「な、内通ですと。そんな帝国を裏切るようなことはしておりませんぞ。使者殿」
「ええ。そうでしょうね」
自分の意見を自分で否定して、相手を驚かせる。
この程度の問答で動揺する敵など眼中にない。
フュンは揺さぶりをやめた。
「まあ、あなたたちがそもそも仲間なのでしょう?」
「・・なに?」
「そうですよね。どうですか。普通に考えれば簡単。あちらは勧告なしに港を攻撃すれば終わりますからね。なのに、イーナミア王国はあそこで待機して、攻撃タイミングを待っている! こちらからの連絡待ちような状態ですよね」
フュンの言葉にこの場にいるほぼ全員がピクついた。
幾人かはポカーンとした顔をしているから、全てがナボルとは限らないようだ。
「はぁ。もう大体分かっています。あなたたちは自分を隠すのが下手だ。その動きは影の動きそのもの。特にあなたもです。ラーゼ王! それで、そちらにいる方々も、もう出てきたらよいのでは」
「何を言っている。どこを指している!」
フュンが、あらゆる箇所に潜む敵に対して、指を指した。
影になり、張り付いている敵の全てを目視している。
「影ですよ。その程度の影では、僕を殺すことはできない。丸見えですよ。丸見え」
「ん? 影?」
「しらばっくれても無駄ですよ。僕は、太陽の戦士でもありますよ。偽の王よ」
「・・・貴様」
「ええ。その反応は良くない。動揺するのは良くないですよ。言葉のチョイスも間違えてます」
「・・・」
「はぁ。ではいいでしょうか。僕が、太陽の人だ。ナボルよ! 宿敵はここにいるぞ」
単純に今の一言を切り返す言葉は『何のことである』
フュンを確実に殺したいのなら、今の言葉をスルーして、知らないふりをするのが吉。
なぜなら、彼を油断させるか、ナボルではないと悩ませるのが最善手なのだが、ここのナボルらは、フュンの挑発によって影から出てきてしまった。
90名が部屋の中に入った。
壁などにも張り付き、窓も、ドアも全てに鍵を閉めて、ここでフュンを殺す動きを見せた。
「あらま、一人残らずこちらの部屋にお入りですか。まったくね。本当に会議を開いたんですか。・・・間抜けですね。あなたたち! 僕を逃がさない動きをするには、この城で僕を囲わないといけませんよ。部屋だけで囲えば、部屋から脱出出来たら、そこで終わりですよ。ナボルよ!」
フュンの挑発から、目の前の王が剣を持って突撃してきた。
「何を偉そうに講釈を。死ね!!」
ご乱心である。
と普通なら言うところだが、ここにいるのは、ほぼほぼナボルばかりなので誰も止めないのだ。
フュンは冷静に状況を把握して、冷たい目で王と呼ばれる人物の顔を見ていた。
「はぁ。短絡的だな。ここに幹部はいないのか? もし幹部だったら、あなたは間抜けすぎる。まあいい、サブロウ。いいですよ」
「おうぞ」
サブロウが全ての指に青の玉を挟んだ。
合計8個の玉をバラバラに撒く。
「ほい! ナボル。もう少し考えて行動をするとよかったぞな」
サブロウが投げた玉が空中で爆発。
白い光を出すと。
「閃光弾か。逃がすな。壁を固めろ」
敵は壁際に向かう者と、フュンを囲うために前へと出る者に別れた。
でも眩い光にしては視力が失われていないことに気付く。
ナボルらは、閃光弾じゃないことに気付いたのが遅かった。
輝いた後に、玉が煙を出していた事に気付くべきだった。
青い澄み切った色の煙を見て、ぼんやりと立ち止まった。
「なんだ。煙幕? でも、お前たちが見える。意味がない。馬鹿だ。貴様らの方が馬鹿だったらしい」
そう澄み切った色だから、フュンの姿がはっきり見えるのだ。
煙幕にしたらお粗末である。
でもフュンがそんな意味のない事はしない。
この玉の意図は・・・。
「いや、あなたたち、これの意図が分からないのは良くありませんでした。勉強が足りませんよ。ナボルは薬や毒の勉強をしていたのではないですか? これは僕の母の研究ですよ。母の事を詳しく調べるべきでしたね。これは僕の母を甘く見た貴様らの落ち度だ・・・・まあよい。苦しみなさい。これはあなたたちにとって、苦痛の煙ですよ。今までの行いを、この煙の中で後悔しなさい」
フュンがそう言った直後。
バタバタとナボルたちが倒れた。
呼吸が出来なくなり体が痺れ始めたのだ。
「がはっ。なぜだ・・・」
「ごほごほ」「く、苦しい」「し・・・死ぬ」
部屋の中にいる96名。その内の91名が悶え始めた。
喉を掻きむしりよだれをたらし始める。
フュンたちは平然と部屋の中にいるのだが、ナボルたちだけが苦しみだしたのだ。
「これはこれは・・・ようこそ、サナリア辺境伯殿」
「ええ。それであなたはどなたですか?」
玉座の間までの案内をする人間が話しかけてきた。
この人間。
外面は普通で、ラーゼの民風な装いをしているが、雰囲気が闇満載だった。
隠せない気配がある。
それにナボルらは、太陽の戦士たちとは違い、動きを隠すのが苦手な人間が多い。
影移動だけじゃなく、表での所作にも影の移動の癖が現れることがあるのだ。
これは普通の人間でも気づかないし、たぶんナボル同士でも気づいていないのだと思われる。
でも、フュンたち太陽の戦士たちにとっては、その動きは闇だとしてバレバレである。
靴の音がなく、太ももやふくらはぎの動きがスムーズ過ぎて、一度も当たることがない。
一般人はもっとバランスの悪い歩き方をするのだ。フラフラするわけじゃないが芯を失ったりする動きが時々起きる。
だから、逆に綺麗すぎる歩行のせいで、違和感のある移動方法となっている。
動きに無駄がないのが逆に怪しい。
それがナボルの特徴として現れる。
「私は、案内人のマールックです」
「マールックさんですね。よろしくお願いします」
「ええ。それにしても三人? 使者にしては数が少ないようですが」
「そうですね。とりあえずお知らせに来ているだけで、この後、軍の援軍が来ますよ。こちらの二人は兵というよりは、外交の人間です」
フュンが紹介した男女は、変装したレヴィとサブロウである。
別人になった二人は、顔をあまり見せないようにしていた。
なぜなら、今のフュンたちの実力では、顔を変える際に表情をつけにくく、顔が固まりやすいのである。
だから不自然に見られがちなので、凝視されないようにしないといけないのだ。
しかしだからと言って二人が不自然ということではない。
こちらのサブロウの偽装術は、逆に闇の所作を消すことが出来る。
一般人の振りをするのが上手いのだ。
「そうでしたか。では、援軍が来てくれると」
「ええ。あなた方次第ですがね」
「え?」
「ええ。あなた方次第です」
あなた方次第という言葉に驚いたマールックは、二度も同じ話をするフュンに首を傾げた。
◇
ラーゼの玉座の間。
ラーゼ国王アルゼンがすでに席に座ってフュンたちを待っていた。
「ようこそ、辺境伯殿。私がアルゼン・スカラである」
「はい。ラーゼ王。こちらはガルナズン帝国からの援軍。サナリア軍を指揮するフュンと申します。よろしくお願いします」
必要以上にへりくだらない。
こちらの方が立場が上の宗主国であるからだ。
挨拶の為に下げていた顔をフュンがあげると、相手の顔をよりもまず間取りを確認した。
部屋の隅まで、横目でチラ見していく。
神経を部屋全体に張り巡らせた。
『部屋の中30。正面外が10。脇に40。天井に10・・・これで全部ですね』
フュンは呼吸音。服の音。靴の音。
様々な音を拾って人数を数えた。
フュン流の太陽の戦士の力を発揮したのだ。
今いる敵たちは、自分を殺すために、ほぼ全員が集まったと見ていい。
だから、ここからどう出るのかなんてわかりきった事である。
あとは自分を殺すタイミングだけを窺っている。
「では、何用ですかな。使者殿」
「ええ。そうですね。ラーゼ王。なぜ、あそこの船を放置したままにして、平然としているのですか? 敵が攻めてきているのですよね」
「あれは、向こうが攻撃してこないだけです。港を開けば、こちらには害がないと言ってきたので、時間をもらっているだけです」
「・・・ほう。それはラーゼが裏切るという事ですか?」
敵の宣戦布告気味の行為に対して時間をもらう。
意味合い的にはこのように考えてもいい。
だからフュンはカマをかけた。
「え?」
「いや、いつまで経っても敵が攻撃して来ないのは、あなた方が交渉しているからですか? 害がないとの言葉の意味はそういう事でしょう。それとも無償で開ける準備をしますので、少々お待ちをですか? それもほぼ同じ意味だ。今の発言はどのような意味で言ったのでしょうか?」
自分だったら、そんな間抜けな交渉をしない。
自分ならそういう交渉の話が来たら、港を開ける振りをしておいて、こちら側から先制攻撃を仕掛ける。
これが一番考えられる手だ。
でも、ここがナボルの巣窟なので、こんな事は選択肢にも入らないだろう。
基準はラーゼを滅ぼすことが行動の原理だ。
「それは違う。あちらが攻撃をして来ないだけで・・・」
アルゼンは、明らかに動揺していた。
これは駄目な王の典型だ。
これがもし変装ではなかったとしたら、王としての器が無さすぎる。
カルゼンと比べてはいけないほどに、駄目さ加減が目に見えて分かってしまう弟だという事になる。
「そうですか。お答えなしだと・・・では、あなた方は? 全てを王にだけ任せているのですか? 誰かお答えできる人はいませんかね。大臣や兵士の皆さん」
「・・・・・」
フュンの質問が想定外なのか。
それとも、予想していたけど、緊張で話せないのか。
どちらにしてもここにいる大臣として参列している二十名と兵士らは答えなかった。
「そうですか。そうなると敵と内通していると言ってもいいのですね」
「な、内通ですと。そんな帝国を裏切るようなことはしておりませんぞ。使者殿」
「ええ。そうでしょうね」
自分の意見を自分で否定して、相手を驚かせる。
この程度の問答で動揺する敵など眼中にない。
フュンは揺さぶりをやめた。
「まあ、あなたたちがそもそも仲間なのでしょう?」
「・・なに?」
「そうですよね。どうですか。普通に考えれば簡単。あちらは勧告なしに港を攻撃すれば終わりますからね。なのに、イーナミア王国はあそこで待機して、攻撃タイミングを待っている! こちらからの連絡待ちような状態ですよね」
フュンの言葉にこの場にいるほぼ全員がピクついた。
幾人かはポカーンとした顔をしているから、全てがナボルとは限らないようだ。
「はぁ。もう大体分かっています。あなたたちは自分を隠すのが下手だ。その動きは影の動きそのもの。特にあなたもです。ラーゼ王! それで、そちらにいる方々も、もう出てきたらよいのでは」
「何を言っている。どこを指している!」
フュンが、あらゆる箇所に潜む敵に対して、指を指した。
影になり、張り付いている敵の全てを目視している。
「影ですよ。その程度の影では、僕を殺すことはできない。丸見えですよ。丸見え」
「ん? 影?」
「しらばっくれても無駄ですよ。僕は、太陽の戦士でもありますよ。偽の王よ」
「・・・貴様」
「ええ。その反応は良くない。動揺するのは良くないですよ。言葉のチョイスも間違えてます」
「・・・」
「はぁ。ではいいでしょうか。僕が、太陽の人だ。ナボルよ! 宿敵はここにいるぞ」
単純に今の一言を切り返す言葉は『何のことである』
フュンを確実に殺したいのなら、今の言葉をスルーして、知らないふりをするのが吉。
なぜなら、彼を油断させるか、ナボルではないと悩ませるのが最善手なのだが、ここのナボルらは、フュンの挑発によって影から出てきてしまった。
90名が部屋の中に入った。
壁などにも張り付き、窓も、ドアも全てに鍵を閉めて、ここでフュンを殺す動きを見せた。
「あらま、一人残らずこちらの部屋にお入りですか。まったくね。本当に会議を開いたんですか。・・・間抜けですね。あなたたち! 僕を逃がさない動きをするには、この城で僕を囲わないといけませんよ。部屋だけで囲えば、部屋から脱出出来たら、そこで終わりですよ。ナボルよ!」
フュンの挑発から、目の前の王が剣を持って突撃してきた。
「何を偉そうに講釈を。死ね!!」
ご乱心である。
と普通なら言うところだが、ここにいるのは、ほぼほぼナボルばかりなので誰も止めないのだ。
フュンは冷静に状況を把握して、冷たい目で王と呼ばれる人物の顔を見ていた。
「はぁ。短絡的だな。ここに幹部はいないのか? もし幹部だったら、あなたは間抜けすぎる。まあいい、サブロウ。いいですよ」
「おうぞ」
サブロウが全ての指に青の玉を挟んだ。
合計8個の玉をバラバラに撒く。
「ほい! ナボル。もう少し考えて行動をするとよかったぞな」
サブロウが投げた玉が空中で爆発。
白い光を出すと。
「閃光弾か。逃がすな。壁を固めろ」
敵は壁際に向かう者と、フュンを囲うために前へと出る者に別れた。
でも眩い光にしては視力が失われていないことに気付く。
ナボルらは、閃光弾じゃないことに気付いたのが遅かった。
輝いた後に、玉が煙を出していた事に気付くべきだった。
青い澄み切った色の煙を見て、ぼんやりと立ち止まった。
「なんだ。煙幕? でも、お前たちが見える。意味がない。馬鹿だ。貴様らの方が馬鹿だったらしい」
そう澄み切った色だから、フュンの姿がはっきり見えるのだ。
煙幕にしたらお粗末である。
でもフュンがそんな意味のない事はしない。
この玉の意図は・・・。
「いや、あなたたち、これの意図が分からないのは良くありませんでした。勉強が足りませんよ。ナボルは薬や毒の勉強をしていたのではないですか? これは僕の母の研究ですよ。母の事を詳しく調べるべきでしたね。これは僕の母を甘く見た貴様らの落ち度だ・・・・まあよい。苦しみなさい。これはあなたたちにとって、苦痛の煙ですよ。今までの行いを、この煙の中で後悔しなさい」
フュンがそう言った直後。
バタバタとナボルたちが倒れた。
呼吸が出来なくなり体が痺れ始めたのだ。
「がはっ。なぜだ・・・」
「ごほごほ」「く、苦しい」「し・・・死ぬ」
部屋の中にいる96名。その内の91名が悶え始めた。
喉を掻きむしりよだれをたらし始める。
フュンたちは平然と部屋の中にいるのだが、ナボルたちだけが苦しみだしたのだ。
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