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第二部 辺境伯に続く物語
第189話 王家は五人だけど、集まったのは三人
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帝国歴524年 5月5日。
帝都にて緊急の会議が開かれた。
「王国に動きあり。再びアージスでの決戦だな。王家とその軍部らで話し合いに入る。いいな」
緊張感のあるウィルベルの声に、集まった皆が素直に頷く。
「では、王国の総戦力は12万。三軍全てが4万ずつだ。左パールマン。中央ネアル。右エクリプスである。それで、どこがどこを担当するか決めていこう。やりたい場所があるか。スクナロ?」
「俺はエクリプスと再戦したい」
以前の悔しさが残るスクナロが即座に答えた。
「そうか。わかった。ダーレーは?」
「私はどちらでもよろしいです。ウィルベル兄様がお決めになられてよいです。どちらが来てもやることは変わりません。戦って、勝つだけです」
常に一定の感情のシルヴィアが淡々と答えた。
「そうか・・・わかった。ならば、ダーレーはパールマンを頼む。ドルフィンがネアルだ。たぶん軍量をドルフィンが出せるからな。タークがエクリプスでいこう。戦力を頼む。どれくらい出せるのだ。ドルフィンはフラムで6万だ」
「タークは、俺で3万が限度だ」
「ダーレーは、私が4万で出ます」
「む。皆、数が少ないか。そこが限度なのだな」
少し残念そうなウィルベルの問いに。
「俺の所はその裏に兵を置かないといけない。最終ラインの役割もある」
軍事戦略上でのスクナロの答えに続いて、さらに。
「私も同じく。ハスラに兵を置かないといけません。それに、実際ウィルベル兄様の中でも少ないのでは? もっと出せるでしょう。だから私たちと同じ理由ではないでしょうか?」
シルヴィアも答えながら質問した。
「まあ、そうだな。もしもハスラとリーガに敵が来たらと考えるとな。全軍をアージスに出すのはいかんよな」
ウィルベルも同じような答えだった。
「・・・それにしてもだ。ジークとフュン。二人はどうした。なぜいない」
「ジーク兄様はハスラで敵が出て来るのかを偵察していて、商会の仕事をしています。フュンは子守りです」
「おお。そうだったな。いや、祝いの言葉を送ってなかったな。おめでとう。シルヴィアよ」
子供の誕生を祝っていなかったとして、スクナロが拍手をして祝う。
「ありがとうございます。直接会えたのが今回しかなく。手紙だけの知らせで、申し訳ありませんでした。兄様たちには大変失礼でありました」
「いや、そんなことはない。気にするな。シルヴィア。おめでとう」
「そうだそうだ。ウィル兄上の言う通り。俺たちは気にするな。それにしても、陛下の孫なんて久しぶりであろう」
皇帝陛下の孫は。
ウィルベルの長男バルナ。
スクナロの長女リエスタの二人である。
そして、この三年の間に、フュンとシルヴィアに娘が誕生していた。
『レベッカ・ダーレー』
帝国歴522年12月10日生まれで、お父さん大好きお転婆ガールとして有名である。
性格は、父にも母にも似ておらず、ソフィアに似ているとされている。
天真爛漫、笑顔全開の物怖じしない。
とても明るい女性である。
なので、厄介な部分も持ち合わせていることは言うまでもなく知られている事である。
話は戻り、スクナロがシルヴィアに聞く。
「それで、フュンが子守りしてるのか。お前が子守りじゃなく?」
「それが、私がやりたいのですが。ここだけの恥ずかしい話。私に子守りの才能がないらしく。フュンにお任せしてます」
「なんだ。子守りの才能って? そんなのがあるのか?」
「それがですね。私が抱っこするとギャンギャン泣くのです。フュンだと笑っているのですが・・・」
「ガハハハ。たしかに。想像がつくわ」
「スクナロ兄様」
シルヴィアが鋭い眼光を向ける。
「す、すまん。別に馬鹿にしたわけじゃなくな。お前だとそうなりそうだって思ったのだ」
「スクナロ兄様!!」
さっきよりも目が鋭くなり、殺気が込められていた。
「す、すまん」
強烈に怒られてしょんぼりするスクナロだった。
「それで、フュンはどこに。サナリアか?」
ウィルベルが聞いた。
「ええ。サナリアにいます。帝都にはいません」
「そうか。わかった。それなら仕方ない。今回の戦争では彼が使えないという事か」
「そうです。ですが、今回は私が出ます。なのでダーレーでの戦力ダウンはありません」
「ついに戦姫が出るか」
「ええ。お任せを。盤上一つ。戦いきってみせましょう」
シルヴィアの発言は力強かった。
彼女の銀髪も発言と同時に輝いたように見えて、会議室を照らし始めた。
軍務の皆は、彼女の頼もしさに『お~』っと唸っていた。
「それで、いつが決戦日なのだ。兄上」
今度はスクナロが聞いた。
「・・・三週間以上後だな。進軍速度からそのくらいだろう」
「そうか。今回はだいぶ遅いな・・・珍しい」
「そうだな。前回よりも遥かに遅いな」
進軍が遅い理由。
その一つに、イーナミア王国の狙いがアージスだけに留まっているのどうかである。
それがふと三人の頭の片隅によぎったのだ。
実はハスラ、リーガも狙いの一つではないのかと、過去の戦いの流れが彼らの最終決定に蓋をしていた。
やはりそちらにも、しっかりとした兵力を残さねばならないのかと・・・。
「ウィルベル兄様は、リーガにはどの程度兵を置くつもりですか」
「ん。そうだな。6万は置こうかと思っている」
「なるほど。十分ですね。ですが6万とは、もしやククルからも兵を補充する気で?」
「ああ。そうだ。今回は帝都が攻められる心配はないだろう。だからあちらからも補充する気だ」
「そうですね。たしかに」
リーガの本来の兵力は4万である。ククルは2万5千。帝都のすぐ下の南側にある大都市がククルで、今回はサナリアの反乱もないとみて、ほぼ全軍を支援側にしたのだ。
ウィルベルにしては珍しく前線防衛に力を入れていた。
「ああ。それで、そっちこそどうだ。ハスラの方は」
「私は4万を配置する予定です」
「そうか。川からの進軍も捨てがたいからな。十分な戦力だ。ササラからもか?」
「ええ。そうですね。ササラからも少量兵を頂いています。あと、ウィルベル兄様はリーガに入るのですか?」
「ああ、そうだな。リーガの要になっておかないとな。前線に出ねば、兵に示しもつかないだろう。帝都に引っ込んでいてはな。兵の気持ちも上がらんだろう」
「そうですね。それは正しいご判断で」
「お前こそ、ハスラはどうする気だ。お前が戦場に出るのだ。一体誰が守る?」
「そこはジーク兄様がいます。入ってくれるそうです」
「そうか。珍しく戦う気なのだな。奴も」
「ええ。そうですよ。これは一大決戦ですからね」
「そうだな・・・よし、これで全力で戦うとしようか。お前たちもそれでよいか」
ウィルベルは軍部の人間たちに向かって言った。
彼らはウィルベルが言った直後から頭を下げていた。
納得。その気持ちを示していた。
「では各自、準備をしなさい。アージスだけは合わせて進軍をしよう。では解散だ」
皆が部屋を退出していく中で、スクナロだけが残り、シルヴィアの方にやってきた。
◇
「シルヴィア。旦那に感謝を伝えておいてくれ」
「え? フュンにですか? 何をです」
シルヴィアは、スクナロの感謝の内容を知らなかった。
それはスクナロとフュンの二人だけのやり取りだったからだ。
「ああ。一年前にな。少し困ったことがあってからな。あの時の義兄弟の契りを思い出してな。フュンに支援要請を送ったら、助けてくれたのだ。ああ、いつも助けられてばかりで悪いなと思ったのだがな。それで我が家は助かったのだ」
「へえ。なるほど。何が助かったのでしょう? 私、それを聞いてないですね」
「そうなのか。なら教えよう。フュンが人を派遣してくれたのだ」
「人を?」
「レイエフとナタリアと言う人間だ。彼らのおかげで、領土が上手く回るようになった。今の兵力を出すのにも役立ってもらってな」
「そうでしたか」
「ああ。そういう内政面で仕事をしていたのはヌロでな。我らだけでは中々上手く出来ない所で困っていたのだ。そこを相談したら、フュンが一番いい人材をお貸ししますよと言ってくれてな。レイエフとナタリアを借りたのだ」
これらはスクナロが悪いというよりも、ターク家に内政が上手い人材が少ないのだ。
それと、実はそれらをまとめていたのが、ヌロであった。
彼は、戦いが出来なかったが、内政だけは出来た。
人をまとめて領土運営などを穏便に調整していた実力がある。
人には隠されている才能があるのだ。
「レイエフとナタリア・・・そうですね。あの青い髪で低い声の人と、そばかすがトレードマークの女性ですね?」
「そうだ」
「ああ、あのなんだか見たことがある感じのお二人・・・」
「お。お前もそう感じたか」
「ええ。感じました」
「俺もだ。懐かしい気配だけは感じるがな。まあ、全然似てないから知らない奴なんだろうがな・・」
スクナロはレイエフとナタリアに誰かを重ね合わせていた。
「それでな。その二人がいなかったら、今の軍量も出せんかったのだ。助かった。ターク家だけが戦闘に参加できないなど恥だからな」
「そうでしたか。それならよかったです」
「ああ。だから、感謝を伝えておいてくれ。俺からもすでに礼は言っているが、お前からも伝えておいてくれ。今度こそ、俺も役に立つとな」
「ええ、いいですよ。兄様からの感謝。フュンはとても喜びますよ」
「そうか!?」
「ええ。兄様を頼りにしていますからね。フュンもです。当然私もですよ。スクナロ兄様」
「そうか、それなら嬉しいな。シルヴィア。ありがとう。話せてよかったぞ。また戦場で会おう!」
「ええ。兄様。またお会いしましょう」
シルヴィアとスクナロは互いに意見を交換してこの場を去っていった。
戦いは始まる。
大陸が動き出すきっかけとなる戦い。
第七次アージス大戦まで、残りあと僅か。
帝都にて緊急の会議が開かれた。
「王国に動きあり。再びアージスでの決戦だな。王家とその軍部らで話し合いに入る。いいな」
緊張感のあるウィルベルの声に、集まった皆が素直に頷く。
「では、王国の総戦力は12万。三軍全てが4万ずつだ。左パールマン。中央ネアル。右エクリプスである。それで、どこがどこを担当するか決めていこう。やりたい場所があるか。スクナロ?」
「俺はエクリプスと再戦したい」
以前の悔しさが残るスクナロが即座に答えた。
「そうか。わかった。ダーレーは?」
「私はどちらでもよろしいです。ウィルベル兄様がお決めになられてよいです。どちらが来てもやることは変わりません。戦って、勝つだけです」
常に一定の感情のシルヴィアが淡々と答えた。
「そうか・・・わかった。ならば、ダーレーはパールマンを頼む。ドルフィンがネアルだ。たぶん軍量をドルフィンが出せるからな。タークがエクリプスでいこう。戦力を頼む。どれくらい出せるのだ。ドルフィンはフラムで6万だ」
「タークは、俺で3万が限度だ」
「ダーレーは、私が4万で出ます」
「む。皆、数が少ないか。そこが限度なのだな」
少し残念そうなウィルベルの問いに。
「俺の所はその裏に兵を置かないといけない。最終ラインの役割もある」
軍事戦略上でのスクナロの答えに続いて、さらに。
「私も同じく。ハスラに兵を置かないといけません。それに、実際ウィルベル兄様の中でも少ないのでは? もっと出せるでしょう。だから私たちと同じ理由ではないでしょうか?」
シルヴィアも答えながら質問した。
「まあ、そうだな。もしもハスラとリーガに敵が来たらと考えるとな。全軍をアージスに出すのはいかんよな」
ウィルベルも同じような答えだった。
「・・・それにしてもだ。ジークとフュン。二人はどうした。なぜいない」
「ジーク兄様はハスラで敵が出て来るのかを偵察していて、商会の仕事をしています。フュンは子守りです」
「おお。そうだったな。いや、祝いの言葉を送ってなかったな。おめでとう。シルヴィアよ」
子供の誕生を祝っていなかったとして、スクナロが拍手をして祝う。
「ありがとうございます。直接会えたのが今回しかなく。手紙だけの知らせで、申し訳ありませんでした。兄様たちには大変失礼でありました」
「いや、そんなことはない。気にするな。シルヴィア。おめでとう」
「そうだそうだ。ウィル兄上の言う通り。俺たちは気にするな。それにしても、陛下の孫なんて久しぶりであろう」
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スクナロの長女リエスタの二人である。
そして、この三年の間に、フュンとシルヴィアに娘が誕生していた。
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とても明るい女性である。
なので、厄介な部分も持ち合わせていることは言うまでもなく知られている事である。
話は戻り、スクナロがシルヴィアに聞く。
「それで、フュンが子守りしてるのか。お前が子守りじゃなく?」
「それが、私がやりたいのですが。ここだけの恥ずかしい話。私に子守りの才能がないらしく。フュンにお任せしてます」
「なんだ。子守りの才能って? そんなのがあるのか?」
「それがですね。私が抱っこするとギャンギャン泣くのです。フュンだと笑っているのですが・・・」
「ガハハハ。たしかに。想像がつくわ」
「スクナロ兄様」
シルヴィアが鋭い眼光を向ける。
「す、すまん。別に馬鹿にしたわけじゃなくな。お前だとそうなりそうだって思ったのだ」
「スクナロ兄様!!」
さっきよりも目が鋭くなり、殺気が込められていた。
「す、すまん」
強烈に怒られてしょんぼりするスクナロだった。
「それで、フュンはどこに。サナリアか?」
ウィルベルが聞いた。
「ええ。サナリアにいます。帝都にはいません」
「そうか。わかった。それなら仕方ない。今回の戦争では彼が使えないという事か」
「そうです。ですが、今回は私が出ます。なのでダーレーでの戦力ダウンはありません」
「ついに戦姫が出るか」
「ええ。お任せを。盤上一つ。戦いきってみせましょう」
シルヴィアの発言は力強かった。
彼女の銀髪も発言と同時に輝いたように見えて、会議室を照らし始めた。
軍務の皆は、彼女の頼もしさに『お~』っと唸っていた。
「それで、いつが決戦日なのだ。兄上」
今度はスクナロが聞いた。
「・・・三週間以上後だな。進軍速度からそのくらいだろう」
「そうか。今回はだいぶ遅いな・・・珍しい」
「そうだな。前回よりも遥かに遅いな」
進軍が遅い理由。
その一つに、イーナミア王国の狙いがアージスだけに留まっているのどうかである。
それがふと三人の頭の片隅によぎったのだ。
実はハスラ、リーガも狙いの一つではないのかと、過去の戦いの流れが彼らの最終決定に蓋をしていた。
やはりそちらにも、しっかりとした兵力を残さねばならないのかと・・・。
「ウィルベル兄様は、リーガにはどの程度兵を置くつもりですか」
「ん。そうだな。6万は置こうかと思っている」
「なるほど。十分ですね。ですが6万とは、もしやククルからも兵を補充する気で?」
「ああ。そうだ。今回は帝都が攻められる心配はないだろう。だからあちらからも補充する気だ」
「そうですね。たしかに」
リーガの本来の兵力は4万である。ククルは2万5千。帝都のすぐ下の南側にある大都市がククルで、今回はサナリアの反乱もないとみて、ほぼ全軍を支援側にしたのだ。
ウィルベルにしては珍しく前線防衛に力を入れていた。
「ああ。それで、そっちこそどうだ。ハスラの方は」
「私は4万を配置する予定です」
「そうか。川からの進軍も捨てがたいからな。十分な戦力だ。ササラからもか?」
「ええ。そうですね。ササラからも少量兵を頂いています。あと、ウィルベル兄様はリーガに入るのですか?」
「ああ、そうだな。リーガの要になっておかないとな。前線に出ねば、兵に示しもつかないだろう。帝都に引っ込んでいてはな。兵の気持ちも上がらんだろう」
「そうですね。それは正しいご判断で」
「お前こそ、ハスラはどうする気だ。お前が戦場に出るのだ。一体誰が守る?」
「そこはジーク兄様がいます。入ってくれるそうです」
「そうか。珍しく戦う気なのだな。奴も」
「ええ。そうですよ。これは一大決戦ですからね」
「そうだな・・・よし、これで全力で戦うとしようか。お前たちもそれでよいか」
ウィルベルは軍部の人間たちに向かって言った。
彼らはウィルベルが言った直後から頭を下げていた。
納得。その気持ちを示していた。
「では各自、準備をしなさい。アージスだけは合わせて進軍をしよう。では解散だ」
皆が部屋を退出していく中で、スクナロだけが残り、シルヴィアの方にやってきた。
◇
「シルヴィア。旦那に感謝を伝えておいてくれ」
「え? フュンにですか? 何をです」
シルヴィアは、スクナロの感謝の内容を知らなかった。
それはスクナロとフュンの二人だけのやり取りだったからだ。
「ああ。一年前にな。少し困ったことがあってからな。あの時の義兄弟の契りを思い出してな。フュンに支援要請を送ったら、助けてくれたのだ。ああ、いつも助けられてばかりで悪いなと思ったのだがな。それで我が家は助かったのだ」
「へえ。なるほど。何が助かったのでしょう? 私、それを聞いてないですね」
「そうなのか。なら教えよう。フュンが人を派遣してくれたのだ」
「人を?」
「レイエフとナタリアと言う人間だ。彼らのおかげで、領土が上手く回るようになった。今の兵力を出すのにも役立ってもらってな」
「そうでしたか」
「ああ。そういう内政面で仕事をしていたのはヌロでな。我らだけでは中々上手く出来ない所で困っていたのだ。そこを相談したら、フュンが一番いい人材をお貸ししますよと言ってくれてな。レイエフとナタリアを借りたのだ」
これらはスクナロが悪いというよりも、ターク家に内政が上手い人材が少ないのだ。
それと、実はそれらをまとめていたのが、ヌロであった。
彼は、戦いが出来なかったが、内政だけは出来た。
人をまとめて領土運営などを穏便に調整していた実力がある。
人には隠されている才能があるのだ。
「レイエフとナタリア・・・そうですね。あの青い髪で低い声の人と、そばかすがトレードマークの女性ですね?」
「そうだ」
「ああ、あのなんだか見たことがある感じのお二人・・・」
「お。お前もそう感じたか」
「ええ。感じました」
「俺もだ。懐かしい気配だけは感じるがな。まあ、全然似てないから知らない奴なんだろうがな・・」
スクナロはレイエフとナタリアに誰かを重ね合わせていた。
「それでな。その二人がいなかったら、今の軍量も出せんかったのだ。助かった。ターク家だけが戦闘に参加できないなど恥だからな」
「そうでしたか。それならよかったです」
「ああ。だから、感謝を伝えておいてくれ。俺からもすでに礼は言っているが、お前からも伝えておいてくれ。今度こそ、俺も役に立つとな」
「ええ、いいですよ。兄様からの感謝。フュンはとても喜びますよ」
「そうか!?」
「ええ。兄様を頼りにしていますからね。フュンもです。当然私もですよ。スクナロ兄様」
「そうか、それなら嬉しいな。シルヴィア。ありがとう。話せてよかったぞ。また戦場で会おう!」
「ええ。兄様。またお会いしましょう」
シルヴィアとスクナロは互いに意見を交換してこの場を去っていった。
戦いは始まる。
大陸が動き出すきっかけとなる戦い。
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