160 / 740
第二部 辺境伯に続く物語
第159話 フュンの基本計画
しおりを挟む
サナリアでの演説直後から、皆の熱がサナリアの王都を包んでいく。
民たちの気持ちは、初めて一つへと向かっていた。
それはサナリア統一の時よりも、気持ちが一つになったのだ。
彼らが自宅へと帰る際。
誰も何も話さずに歩く人々の表情は、引き締まった良い顔だった。
恩も恨みも、全ての感情を乗り越えた先で、彼らが思うのは、覚悟。
それもとびきりの覚悟である。
あんな辛い思い。あんな苦しい思い。
自分たちが味わった負の思いは、絶対に次世代には残したくない。
民たちはここで戦うことを決意したのだ。
自分自身と・・・そして帝国とだ。
今まで漠然としていて、知らなかった。
帝国が本当は恐ろしい国で、王すらも簡単に殺すことが出来た宗主国であったことをだ。
だから初めて向き合えたのだ。
彼らは、フュン・メイダルフィアのおかげで、気付いたのである。
帝国との付き合い方を・・・。
◇
「殿下ぁ。何たるご立派なお姿・・・・私は感動で前が見えません」
そばにいたゼファーは誰よりも号泣していた。
フュンの演説に心を奪われたようだ。
「なぜあなたが、そんなに泣いているのです?」
「殿下。私はあなたにお仕えできて幸せであります」
「そ。そうですか!? ま、まあ、僕もあなたがそばにいて嬉しいですからね。幸せですよ。これからもよろしくお願いしますよ」
「はい・・・・お願いし・・・・ます」
泣きすぎて言葉につっかえているゼファーの全身は熱く燃え滾っている。
フュンの言葉の力により、勝手に覚醒したような状態になっていた。
それに対して、彼以外の他の家臣たちもまた体中に熱を帯びていた。
彼らはまだ静かに、力を蓄えているような状態だった。
今からのサナリアは、帝国で一番。
アーリア大陸で一番を目指す。
それを民に宣言したからには、自分たちもやりきるしかないと。
体中が炎に包まれながら、皆の心はやる気で漲っていたのだ。
◇
そこから四日後。
重要人物たちがサナリアに集結したことで、会議が開かれた。
いつもの場所でフュンが中央に座ると皆が着席する。
今回はシガーとクリスにも席に座ってもらった。
「では、皆さん。よろしくお願いします」
頭を下げると皆が一斉に下げる。
「最初に役職と自己紹介をしたいと思います。まず、僕が招聘した。アン様。サティ様。この両名がサナリアの大臣になってくれます。では、アン様から」
フュンはアンから紹介した。
年長者である彼女は元気に挨拶をする。
「は~い。ボク! アン・ビクトニー。フュン君からお願いされてさ。可愛い義弟のためだからさ。ボクはド~ンと仕事を引き受けたよ。よろしくね。みんな!」
彼女の挨拶が終わると、皆が深々と礼をした。
「次にサティ様。お願いします」
サティが優雅に立ち上がる。
「皆様。私の名前は、サティ・ブライトであります。妹の旦那様となるフュン様からのお誘いを受けて、こちらの経済関連の大臣となります。これから皆様には厳しくいくかもしれませんが、よろしくお願いしますわ」
アンとは対照的な挨拶に、皆は緊張した。
礼節があるタイプには戸惑うのがサナリアの者たちである。
元新興国家ならではと言えるだろう。
「こちらのお二人の役職は、経済大臣としてのサティ様と、技術大臣としてのアン様となってます。それで皆さんもよろしくお願いしますね。これらの関連の仕事は必ずお二人に相談してください。続いて、紹介していきます」
フュンは役職紹介をするようで、紙を読み上げた。
「まず。領主が僕です。これは当然ですよね。あははは」
フュンのわざとらしい笑顔を見て、皆は『それはそうだろう』と思う。
でもこれのおかげで、皆の緊張感が無くなった。
堅苦しい雰囲気がここで消えたのだ。
これがフュンの狙い通りの動きだった。
皆の顔色が良くなったから、フュンは続けて話し出す。
「それじゃあ、続いて。シガーが領主代理です。前と同じですね」
「はい」
「ええっと。次に。フィアーナとゼファー。二人が大将です。シガーと一緒になって戦闘関連は考えましょうね」
「了解だぜ」「承知しました」
二人が返事を返した。
「続いて。マルフェンさんが、雑務関連で総務です。全体のカバーをお願いしたい。ほとんどの内政部分をサティ様がやってくれると思いますが、その中で漏れが生じてくると思うので、そのカバーの仕事を頼みます。まあ、つまりは執事の延長線上のお仕事です」
「はい。わかりました」
マルフェンの仕事内容は執事の延長のようなものだった。
そこは配慮しているフュンである。
「続いて。ロイマン」
「はい。領主様」
「あなたは地方官です。基本は中央にいてもらいますが、あなたのフーナ村。そしてもう一つ作る予定の村の管理をお願いします。村長というよりは管理者となってもらいます」
「もうひとつ?」
「ええ。そのお話は次にやりますので、地方官。これになってもらってもいいですか?」
「はい。領主様のご命令通りに」
「ええ。お願いしますね」
ロイマンは地方官となり、中央との連携を取る役職となった。
「続いて。ミラ先生とサブロウ」
「あたしらもか」「おいらもぞ」
「ええ。僕の中ではお二人の存在を出す際には、教官で行きたいです。兵の訓練の教官がミラ先生。影の指導の教官がサブロウです。よいですね」
「おう」「いいぞ」
二人が頷き。フュンも頷く。
「それとサブロウ。例の件はどうなりました?」
「まだだぞ。あれらは修行が必要ぞ。だからまだ表には出せないぞな。でも飲み込みは良い方だから、まあそうだぞな。二か月くらいはかかるかもしれんぞ」
「そうですか・・なら、二か月後の職業斡旋の時までに、間に合わせてくれると助かります。その時にまた人事をいじります」
「了解ぞ。まかせておけぞ」
サブロウは別件の仕事があるらしい。
間に合わせなければいけない何かがあるようだ。
「それじゃあ、最後にですね。クリス」
「わ、私ですか」
「ええ。あなたは、僕の片腕になってください。あなたがこれからなる役職は宰相兼軍師です。あなたには戦争についても学んでもらいます」
「え!?」
「僕の師。ミラ先生に色々教えてもらってください。それと、あちらにいる僕の大切なお師匠様の一人。ルイス様にも指導をもらいましょう」
小さな巨人ルイスは、フュンの依頼を二つ返事もせずに了承して、ここに来ていた。
フュンのお願いしますの『お』も言わせなかったと言われている。
ここが遠く離れた地であるというのに、彼にとっては頼られたことが嬉しい出来事あったらしい。
「わ、私が!? お二方に!?」
「ええ。ルイス様には顧問という役職になってもらいましたから、皆さんを指導する立場となってもらいました。そうですよね。ルイス様」
フュンがルイスを見た。
するとルイスは嬉しそうに微笑む。
「そうですな。フュン様から直々に頼まれごとをされたとなれば、すぐにでも返事を返さねば、失礼というものですよ」
「いえいえ。ルイス様。感謝しますよ。こんな辺境の地にまで来てもらって、ご自分が暮らし慣れている場所の方がよいでしょうに。申し訳ありません」
「いいえ。あなたが暮らしていた場所に住まうのも。これまた一興ですな」
「フフフ。そう言ってもらえると嬉しいですね。助かります」
ルイスは実に楽しそうであった。
一人。ヒザルスを置いてサナリアに住む事を決意したルイスはマルフェンらのサポートを受けて生活することになっている。
「それで。どうでしょう。君が嫌ならば、僕は無理強いしません。別なお仕事を任せます。これは、大変なお仕事になると思うのですよ。だから、あなたの決意が重要になります。無理強いが出来ません。思いが無いとやっていけないと思いますからね」
「・・・や、やりましょう。やってみたいです」
「そうですか。それはよかった。では、ミラ先生。ルイス様。クリスをお願いします。彼は非常に優秀な人物なので、すぐに色々な事を吸収してくれると思います。お願いしますね」
「わかったのさ」「わかりましたフュン様」
二人が承諾した。
「でも、あたしがクソジジイと同じような立ち場かよ」
酷い物言いのミランダが、テーブルに頬杖をついて言った。
「これ、生意気娘。口の聞き方を直しなさい。元貴族だろ」
ルイスが指摘する。
「んじゃ。ルイスの爺さん。なんでまだ元気なんだ? あんた、一体いくつまで生きる気なんだよ」
ほぼ態度は変わらない。
クソジジイがルイスの爺さんに変わっただけだ。
「私はフュン様が大成なさるまでは死ねん。この世にしがみつくつもりだ」
「げっ。マジかよ。じゃあ100以上も生きる気じゃんかよ」
「はははは。それほど時間はかからんだろう。フュン様だぞ。あと数年でとんでもない事をするだろう」
「・・・だな。それはありえそうだな。爺さんの言う通りだ」
ルイスとミランダは納得した。
フュンならば何かしでかす。
今までも色々な事をしてきたのだ。
これからも何かをしないわけがない。
「なんですか。それは!! 僕がとんでもない男みたいな感じですよ」
「あ? そりゃ、お前はとんでもない男になるのさ。なんて言ったってあたしの最高の弟子だからな。単純な奴に育てた覚えはないのさ」
「・・・んんん。僕はあまり変わってませんがね」
「いんや、変わってる。あたしの考えを超える策を。今も実行しているしな」
「そうですか。あれがそうだといいですね」
雑談が一通り終わると。
フュンは、皆にこれからを提案した。
「それでは、皆さん。あと追加でこちらに数人参加する予定ですが、僕の理想のメンバーが一通り集まったので、これから何をするのかを発表します」
フュンは咳払いをしてから話を続ける。
「まず。最初の政策は、以前言った通りに賊を引き入れます。それにより、都市人口を増やします。その上で、細かい村々を吸収していきます。そこでロイマンと共に僕が連携をしていきますね。村の再編も視野に入れます。今現在、サナリアにある地方はどの程度ですか。僕のいた頃だと、10はあったと思います」
フュンの質問にシガーが答える。
「今は12です。ロイマンの村を合わせると13です」
「そうですか。それぞれの村は小規模ですよね。ロイマンの村程の規模じゃないはず」
「そうです。大小はありますが、どれをとっても、フーナ村よりは小さなものです」
「それではいけませんね。集めます。サナリアを強固にするために、この王都。そして、中央に新たに作る大都市。そして、ロイマンの村。この三点を結ぶだけではバランスが悪い。よってロイマンたちの技術を使い、ユーラル山脈にも村を作ります」
「「!?!?!?」」
皆から疑問が飛び出た。一斉に顔に出ていた。
「先刻、クリスが言ったとおりに産業を生み出すのが、今のサナリアとなっています。そこで、僕の考えを地図から言います。これを見てください」
フュンはサナリアの地図を拡大した物を壁に広げた。
皆に分かりやすいように指を指しながら説明する。
「まずは現在。サナリア平原の東にある王都。こちらを第二都市とします。ここは、戦争犯罪人とその取り巻きの監視に人を使いながら、狩人部隊の技術継承をする都市として存在することになります。そして、サナリアの中央。ここを中心として大都市を築きます。ここが中継地点ともなります」
そしてフュンは、地図を指差してブロックを言い出した。
サナリア平原に作ることになる新都市を中心にして三つに分けて、西ブロック、北東ブロック、南東ブロックとした。
「ここからですね。僕らの新都市を中心に置いて、ブロックを分けます。まず北東ブロック。ここを農業エリアにします! サナリア平原北東を大規模農業地帯にしていきます。今までの細かい村の各々で作っていた食料生産をやめて、ここで食料を大量に生産していきます。サナリアでも余るくらいに作る予定です。余ってしまえば帝都に売ればいいだけですからね。じゃんじゃん生産するのですよ」
フュンの計画は、まだある。
「次に、南東ブロックです。ここは酪農と軍施設を置きます。元々、こちらにあるズィーベが隠していた兵士訓練所を改築し、その隣に牛を飼いたいのです。そこで肥料等も作成できるようにします。牛糞からの肥料が欲しいですね。そうなると。農業の方の土壌も、これで強化が可能となり、相乗効果で良くなるはずです。それとここには厩舎も作り、馬も作っていきます」
産業と同時に戦力も鍛える。
南東の計画は二重にあった。
「そして中央に大都市。北西のサナリア山脈側にロイマンの村。南西のユーラル山脈側に新しい村を作ります。こちらの村は、猪を飼います。猪と木こりの村にしますよ。この村から、サナリアの木の管理をしましょう。何も考えずに山の木を伐採してはいけません。サナリアでは土砂崩れのような災害は滅多に置きませんがね。でも、そういう事を考えながら植林していかないといけません。なので産業は林業も視野に入れていきます! それでこちらの林業の村は募集を掛けます。一度、こちらの王都に集まってもらった人たちの中で、やっぱり山で暮らしたいんだって人が出てくるでしょう。そう言う人に暮らしてもらいましょう」
人の気持ちにも寄り添っていた政策である。
「それで、これらの中継地点としての大都市を作っていきましょうね。そこで大都市の大まかなものが出来上がれば、後は道を作ります。第二都市との道。ここの二つの村の間への道。そして帝都までの道を仕上げていきます。これらの都市を繋いで、移動時間を短くして、出来るだけ僕らは動きやすくしていきますよ。皆さん、僕らは大陸一の大都市を作るのです! それに必要なものをどんどん用意していきましょう。よいですね!」
「「「はい。領主様。そのようにします」」」
皆からいい返事をもらい、フュンは笑顔で答える。
「それでは、大変革を迎える事になるサナリアを、皆で盛り上げていきましょう!」
これからのサナリアは大きく変わる。
それはフュン・メイダルフィアを中心としてだが、彼の配下の者たちの力によっても大きく変わっていくのであった。
民たちの気持ちは、初めて一つへと向かっていた。
それはサナリア統一の時よりも、気持ちが一つになったのだ。
彼らが自宅へと帰る際。
誰も何も話さずに歩く人々の表情は、引き締まった良い顔だった。
恩も恨みも、全ての感情を乗り越えた先で、彼らが思うのは、覚悟。
それもとびきりの覚悟である。
あんな辛い思い。あんな苦しい思い。
自分たちが味わった負の思いは、絶対に次世代には残したくない。
民たちはここで戦うことを決意したのだ。
自分自身と・・・そして帝国とだ。
今まで漠然としていて、知らなかった。
帝国が本当は恐ろしい国で、王すらも簡単に殺すことが出来た宗主国であったことをだ。
だから初めて向き合えたのだ。
彼らは、フュン・メイダルフィアのおかげで、気付いたのである。
帝国との付き合い方を・・・。
◇
「殿下ぁ。何たるご立派なお姿・・・・私は感動で前が見えません」
そばにいたゼファーは誰よりも号泣していた。
フュンの演説に心を奪われたようだ。
「なぜあなたが、そんなに泣いているのです?」
「殿下。私はあなたにお仕えできて幸せであります」
「そ。そうですか!? ま、まあ、僕もあなたがそばにいて嬉しいですからね。幸せですよ。これからもよろしくお願いしますよ」
「はい・・・・お願いし・・・・ます」
泣きすぎて言葉につっかえているゼファーの全身は熱く燃え滾っている。
フュンの言葉の力により、勝手に覚醒したような状態になっていた。
それに対して、彼以外の他の家臣たちもまた体中に熱を帯びていた。
彼らはまだ静かに、力を蓄えているような状態だった。
今からのサナリアは、帝国で一番。
アーリア大陸で一番を目指す。
それを民に宣言したからには、自分たちもやりきるしかないと。
体中が炎に包まれながら、皆の心はやる気で漲っていたのだ。
◇
そこから四日後。
重要人物たちがサナリアに集結したことで、会議が開かれた。
いつもの場所でフュンが中央に座ると皆が着席する。
今回はシガーとクリスにも席に座ってもらった。
「では、皆さん。よろしくお願いします」
頭を下げると皆が一斉に下げる。
「最初に役職と自己紹介をしたいと思います。まず、僕が招聘した。アン様。サティ様。この両名がサナリアの大臣になってくれます。では、アン様から」
フュンはアンから紹介した。
年長者である彼女は元気に挨拶をする。
「は~い。ボク! アン・ビクトニー。フュン君からお願いされてさ。可愛い義弟のためだからさ。ボクはド~ンと仕事を引き受けたよ。よろしくね。みんな!」
彼女の挨拶が終わると、皆が深々と礼をした。
「次にサティ様。お願いします」
サティが優雅に立ち上がる。
「皆様。私の名前は、サティ・ブライトであります。妹の旦那様となるフュン様からのお誘いを受けて、こちらの経済関連の大臣となります。これから皆様には厳しくいくかもしれませんが、よろしくお願いしますわ」
アンとは対照的な挨拶に、皆は緊張した。
礼節があるタイプには戸惑うのがサナリアの者たちである。
元新興国家ならではと言えるだろう。
「こちらのお二人の役職は、経済大臣としてのサティ様と、技術大臣としてのアン様となってます。それで皆さんもよろしくお願いしますね。これらの関連の仕事は必ずお二人に相談してください。続いて、紹介していきます」
フュンは役職紹介をするようで、紙を読み上げた。
「まず。領主が僕です。これは当然ですよね。あははは」
フュンのわざとらしい笑顔を見て、皆は『それはそうだろう』と思う。
でもこれのおかげで、皆の緊張感が無くなった。
堅苦しい雰囲気がここで消えたのだ。
これがフュンの狙い通りの動きだった。
皆の顔色が良くなったから、フュンは続けて話し出す。
「それじゃあ、続いて。シガーが領主代理です。前と同じですね」
「はい」
「ええっと。次に。フィアーナとゼファー。二人が大将です。シガーと一緒になって戦闘関連は考えましょうね」
「了解だぜ」「承知しました」
二人が返事を返した。
「続いて。マルフェンさんが、雑務関連で総務です。全体のカバーをお願いしたい。ほとんどの内政部分をサティ様がやってくれると思いますが、その中で漏れが生じてくると思うので、そのカバーの仕事を頼みます。まあ、つまりは執事の延長線上のお仕事です」
「はい。わかりました」
マルフェンの仕事内容は執事の延長のようなものだった。
そこは配慮しているフュンである。
「続いて。ロイマン」
「はい。領主様」
「あなたは地方官です。基本は中央にいてもらいますが、あなたのフーナ村。そしてもう一つ作る予定の村の管理をお願いします。村長というよりは管理者となってもらいます」
「もうひとつ?」
「ええ。そのお話は次にやりますので、地方官。これになってもらってもいいですか?」
「はい。領主様のご命令通りに」
「ええ。お願いしますね」
ロイマンは地方官となり、中央との連携を取る役職となった。
「続いて。ミラ先生とサブロウ」
「あたしらもか」「おいらもぞ」
「ええ。僕の中ではお二人の存在を出す際には、教官で行きたいです。兵の訓練の教官がミラ先生。影の指導の教官がサブロウです。よいですね」
「おう」「いいぞ」
二人が頷き。フュンも頷く。
「それとサブロウ。例の件はどうなりました?」
「まだだぞ。あれらは修行が必要ぞ。だからまだ表には出せないぞな。でも飲み込みは良い方だから、まあそうだぞな。二か月くらいはかかるかもしれんぞ」
「そうですか・・なら、二か月後の職業斡旋の時までに、間に合わせてくれると助かります。その時にまた人事をいじります」
「了解ぞ。まかせておけぞ」
サブロウは別件の仕事があるらしい。
間に合わせなければいけない何かがあるようだ。
「それじゃあ、最後にですね。クリス」
「わ、私ですか」
「ええ。あなたは、僕の片腕になってください。あなたがこれからなる役職は宰相兼軍師です。あなたには戦争についても学んでもらいます」
「え!?」
「僕の師。ミラ先生に色々教えてもらってください。それと、あちらにいる僕の大切なお師匠様の一人。ルイス様にも指導をもらいましょう」
小さな巨人ルイスは、フュンの依頼を二つ返事もせずに了承して、ここに来ていた。
フュンのお願いしますの『お』も言わせなかったと言われている。
ここが遠く離れた地であるというのに、彼にとっては頼られたことが嬉しい出来事あったらしい。
「わ、私が!? お二方に!?」
「ええ。ルイス様には顧問という役職になってもらいましたから、皆さんを指導する立場となってもらいました。そうですよね。ルイス様」
フュンがルイスを見た。
するとルイスは嬉しそうに微笑む。
「そうですな。フュン様から直々に頼まれごとをされたとなれば、すぐにでも返事を返さねば、失礼というものですよ」
「いえいえ。ルイス様。感謝しますよ。こんな辺境の地にまで来てもらって、ご自分が暮らし慣れている場所の方がよいでしょうに。申し訳ありません」
「いいえ。あなたが暮らしていた場所に住まうのも。これまた一興ですな」
「フフフ。そう言ってもらえると嬉しいですね。助かります」
ルイスは実に楽しそうであった。
一人。ヒザルスを置いてサナリアに住む事を決意したルイスはマルフェンらのサポートを受けて生活することになっている。
「それで。どうでしょう。君が嫌ならば、僕は無理強いしません。別なお仕事を任せます。これは、大変なお仕事になると思うのですよ。だから、あなたの決意が重要になります。無理強いが出来ません。思いが無いとやっていけないと思いますからね」
「・・・や、やりましょう。やってみたいです」
「そうですか。それはよかった。では、ミラ先生。ルイス様。クリスをお願いします。彼は非常に優秀な人物なので、すぐに色々な事を吸収してくれると思います。お願いしますね」
「わかったのさ」「わかりましたフュン様」
二人が承諾した。
「でも、あたしがクソジジイと同じような立ち場かよ」
酷い物言いのミランダが、テーブルに頬杖をついて言った。
「これ、生意気娘。口の聞き方を直しなさい。元貴族だろ」
ルイスが指摘する。
「んじゃ。ルイスの爺さん。なんでまだ元気なんだ? あんた、一体いくつまで生きる気なんだよ」
ほぼ態度は変わらない。
クソジジイがルイスの爺さんに変わっただけだ。
「私はフュン様が大成なさるまでは死ねん。この世にしがみつくつもりだ」
「げっ。マジかよ。じゃあ100以上も生きる気じゃんかよ」
「はははは。それほど時間はかからんだろう。フュン様だぞ。あと数年でとんでもない事をするだろう」
「・・・だな。それはありえそうだな。爺さんの言う通りだ」
ルイスとミランダは納得した。
フュンならば何かしでかす。
今までも色々な事をしてきたのだ。
これからも何かをしないわけがない。
「なんですか。それは!! 僕がとんでもない男みたいな感じですよ」
「あ? そりゃ、お前はとんでもない男になるのさ。なんて言ったってあたしの最高の弟子だからな。単純な奴に育てた覚えはないのさ」
「・・・んんん。僕はあまり変わってませんがね」
「いんや、変わってる。あたしの考えを超える策を。今も実行しているしな」
「そうですか。あれがそうだといいですね」
雑談が一通り終わると。
フュンは、皆にこれからを提案した。
「それでは、皆さん。あと追加でこちらに数人参加する予定ですが、僕の理想のメンバーが一通り集まったので、これから何をするのかを発表します」
フュンは咳払いをしてから話を続ける。
「まず。最初の政策は、以前言った通りに賊を引き入れます。それにより、都市人口を増やします。その上で、細かい村々を吸収していきます。そこでロイマンと共に僕が連携をしていきますね。村の再編も視野に入れます。今現在、サナリアにある地方はどの程度ですか。僕のいた頃だと、10はあったと思います」
フュンの質問にシガーが答える。
「今は12です。ロイマンの村を合わせると13です」
「そうですか。それぞれの村は小規模ですよね。ロイマンの村程の規模じゃないはず」
「そうです。大小はありますが、どれをとっても、フーナ村よりは小さなものです」
「それではいけませんね。集めます。サナリアを強固にするために、この王都。そして、中央に新たに作る大都市。そして、ロイマンの村。この三点を結ぶだけではバランスが悪い。よってロイマンたちの技術を使い、ユーラル山脈にも村を作ります」
「「!?!?!?」」
皆から疑問が飛び出た。一斉に顔に出ていた。
「先刻、クリスが言ったとおりに産業を生み出すのが、今のサナリアとなっています。そこで、僕の考えを地図から言います。これを見てください」
フュンはサナリアの地図を拡大した物を壁に広げた。
皆に分かりやすいように指を指しながら説明する。
「まずは現在。サナリア平原の東にある王都。こちらを第二都市とします。ここは、戦争犯罪人とその取り巻きの監視に人を使いながら、狩人部隊の技術継承をする都市として存在することになります。そして、サナリアの中央。ここを中心として大都市を築きます。ここが中継地点ともなります」
そしてフュンは、地図を指差してブロックを言い出した。
サナリア平原に作ることになる新都市を中心にして三つに分けて、西ブロック、北東ブロック、南東ブロックとした。
「ここからですね。僕らの新都市を中心に置いて、ブロックを分けます。まず北東ブロック。ここを農業エリアにします! サナリア平原北東を大規模農業地帯にしていきます。今までの細かい村の各々で作っていた食料生産をやめて、ここで食料を大量に生産していきます。サナリアでも余るくらいに作る予定です。余ってしまえば帝都に売ればいいだけですからね。じゃんじゃん生産するのですよ」
フュンの計画は、まだある。
「次に、南東ブロックです。ここは酪農と軍施設を置きます。元々、こちらにあるズィーベが隠していた兵士訓練所を改築し、その隣に牛を飼いたいのです。そこで肥料等も作成できるようにします。牛糞からの肥料が欲しいですね。そうなると。農業の方の土壌も、これで強化が可能となり、相乗効果で良くなるはずです。それとここには厩舎も作り、馬も作っていきます」
産業と同時に戦力も鍛える。
南東の計画は二重にあった。
「そして中央に大都市。北西のサナリア山脈側にロイマンの村。南西のユーラル山脈側に新しい村を作ります。こちらの村は、猪を飼います。猪と木こりの村にしますよ。この村から、サナリアの木の管理をしましょう。何も考えずに山の木を伐採してはいけません。サナリアでは土砂崩れのような災害は滅多に置きませんがね。でも、そういう事を考えながら植林していかないといけません。なので産業は林業も視野に入れていきます! それでこちらの林業の村は募集を掛けます。一度、こちらの王都に集まってもらった人たちの中で、やっぱり山で暮らしたいんだって人が出てくるでしょう。そう言う人に暮らしてもらいましょう」
人の気持ちにも寄り添っていた政策である。
「それで、これらの中継地点としての大都市を作っていきましょうね。そこで大都市の大まかなものが出来上がれば、後は道を作ります。第二都市との道。ここの二つの村の間への道。そして帝都までの道を仕上げていきます。これらの都市を繋いで、移動時間を短くして、出来るだけ僕らは動きやすくしていきますよ。皆さん、僕らは大陸一の大都市を作るのです! それに必要なものをどんどん用意していきましょう。よいですね!」
「「「はい。領主様。そのようにします」」」
皆からいい返事をもらい、フュンは笑顔で答える。
「それでは、大変革を迎える事になるサナリアを、皆で盛り上げていきましょう!」
これからのサナリアは大きく変わる。
それはフュン・メイダルフィアを中心としてだが、彼の配下の者たちの力によっても大きく変わっていくのであった。
55
あなたにおすすめの小説
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた
黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆
毎日朝7時更新!
「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」
過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。
絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!?
伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!?
追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる