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二章
〈34〉類は友を呼ぶ(2)
しおりを挟むその日の放課後、ロベリアは校庭のテラスにいつものメンバーを呼び出していた。ポリーナ、タイス、シュベットにリリアナ。彼女たちはテーブルを囲いロベリアに注目している。
もちろん、召集の目的はアリーシャを手助けしてもらうため。彼女たちであれば、信用してアリーシャのことを頼める。
ロベリアは紅茶をひと口飲み、カップをテーブルに置いて告げた。
「みんなにまたお願いがあるの」
「お願い? 改まってどうなさったのよ」
タイスが問い返す。
「それがね、来週ナターシャの妹がこちらに編入してくるのよ。……少し事情が複雑な子だから、せめて学園に慣れるまで、気にかけてあげてくれないかしら」
「確か……双子なのよね?」
「そうよ。でも、ナターシャの妹としてではなく、彼女は彼女として見てあげてほしいの」
小説において、アリーシャはたった一週間学校に通っただけで挫折してしまった。それ以降は一度も学園に顔を出さず。というのも、不慣れなアリーシャを助ける存在が、一人としていなかったからだ。アリーシャは、姉のナターシャが手伝おうとするのを「余計なお世話」だと跳ね除けた。けれど自分の力では上手くいかなかったのだ。
ロベリアの頼みを、一同は快く了承した。
「私で力になれるかは分かりませんが、精一杯やってみようと思います……!」
「ありがとう、リリアナ」
「い、いえ……! ロベリア様に頼っていただけるのが、私はとっても嬉しいんですよっ!」
リリアナはくしゃっとした笑みで答えた。
「ありがたい言葉だわ。あ……そうだ、シュベット。あなたはあまりしつこく絡んでアリーシャさんを困らせては駄目よ? 暑苦しさを控えて。あの子はとっても繊細な女の子だから」
「な、なななななんでウチだけ注意されるんだよぉ! ウチだって繊細な乙女じゃないか!」
シュベットは立ち上がり、ロベリアの肩を揺さぶりながら抗議した。シュベットは明るく快活で、誰にでもきさくだ。しかし、他人との距離感があやふやなところがある。アリーシャは人並み以上に気が弱くシャイだ。たった今のように、乱暴に肩を揺すられた日にはトラウマになってしまうかもしれない。
ロベリアはいぶかしげに眉を寄せる。
「……そういうところよ」
「…………」
シュベットは、ぱっと手を離し、席に戻って不機嫌そうに口を曲げた。その後で、彼女の様子に一同は笑い合う。結局、気のいいシュベットも釣られて大口を開けて笑い出していた。
シュベットたちは皆、思いやりがあって優しい人たちだ。こんなにも信頼できる友人に恵まれたことに、ロベリアは感謝した。
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