【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ

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 攻略が順調に進んでいく一方で、事件が起きた。その日の夕方、突然ペトロニラがルサレテの部屋に押しかけて来た。どんっと扉を開け放たれ、ソファで刺繍をしていたルサレテはびっくりして道具を床に落とす。
 彼女が扉を開け放った瞬間、空中ディスプレイに『イベント発生』の文字が。その近くでシャロが悩ましげな顔を浮かべている。

「シャロ! シャロはどこにいるの!? 出て来なさい!」

 ペトロニラは宙を見上げて、きょろきょろとシャロの姿を探す。しかし、プレイヤーではなくなった彼女にシャロの姿は見えなかった。

「ルサレテ……。これからゲームの進行に関わる重大イベントが起こるから、気をつけテ」

 シャロはそう告げてから、ぽんっと姿を消してしまった。

(ゲームの進行に関わる重大イベント……?)

 一体今から何が起きるのだろうと小首を傾げた直後、怖い顔をしたペトロニラがルサレテの制服の襟を両手で掴み上げて怒鳴った。

「どういうつもりか説明して! お姉様、ゲームの機能を使ってロアン様たちを攻略してるんでしょ!? 私の代わりに、乙女ゲーム転生プログラムの被験者になったんじゃないの!?」
「……なんのことか、よく分からないわ」
「はっ、とぼけても無駄よ。最近やけにロアン様と仲がいいって皆噂してるんだから。私を階段から突き落としたことになって、嫌われてたはずなのにおかしいわ。こんなの、ゲームの力を使ってるとしか考えられない……! それに最近、取り巻きだった人たちが私から離れていったのもあんたのせいなんでしょ!?」

 実際は、ペトロニラの振る舞いに原因があると思うが、本人にその自覚はないようだった。自分の心に聞いてみてはどうかと舌先まで出かかった言葉を飲み込んで、冷静に言う。

「話についていけないわ。……手を離して」

 ルサレテはゲームの力に頼っているが、ペトロニラほど完全に依存している訳ではない。もしプレイヤーではなくなったとしても、彼女のようにゲームの力に異様に執着したり、取り乱すこともないだろう。
 だがどうせ、ペトロニラにはルサレテが新たなプレイヤーとして攻略していることを確かめるすべはない。だから、何も知らないとしらを切るしかなかった。

「ちょっとっ、手を、離して……。苦し……っ」

 襟を掴まれているせいで、息が苦しい。離してと何度も懇願するが、彼女は解放してくれない。
 そのまま窓際まで追い詰められて、枠に腰が乗る。階段から落とされたときに、彼女の暴力的な一面を見ているため、底知れない恐怖心が腹の底に広がる。

 彼女は不敵に口角を持ち上げて言った。

「もう一度一緒に落ちれば……またプレイヤーが変わるんじゃないかしら……?」
「正気じゃないわ! こんな高さから落ちたら……2人とも死ぬから!」

 視線を窓の下に落とせば、かなりの高さを感じて喉の奥がひゅっとなる。ペトロニラの目は血走っていて、まともな状態ではないことを悟る。

「あんたにも前世の記憶ってあったりするの? 私はね……前世で――人を殺して自分も一緒に死んだの」
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