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 それからも、ルサレテはロアンの好感度を上げるために頑張り続けた。もちろん、余裕があるときは、他の攻略対象たちにも親切にしておく。好かれることで、得することはあっても損することはないから。生き残るためには味方を増やさなくてはならない。
 また、早朝や夕方など、学園の授業がない時間を見つけては只管散歩してポイントを貯めて、攻略のために注ぎ込んだ。

 そして。好感度-100から開始した乙女ゲームだったが、半年かかってようやく、ルイ、エリオット、サイラスの好感度は0に。ロアンの好感度は70まで上げることができた。好感度が0になって攻略対象者たちは、当初ルサレテに向けていたような悪意がなくなり、それなりに親切にしてくれる。
 そして本命のロアンとは、かなり親しい友人くらいの関係値まで持っていくことができた。

 ルサレテへの好感度が上がっていくと同時に、ペトロニラは本来のわがままな気性が露呈し、取り巻いていた攻略対象たちが距離を置くようになった。

(まぁ、当然よね。これまでずっとゲームのサポートに頼っていたのが無くなったのだから)

 もしペトロニラが、根っこから優しくて思いやりのある人だったら、プレイヤーではなくなったとしても、攻略対象たちの心が離れることはなかっただろうに。

「お願いっ! また代わりに刺繍の課題をやってほしいの……! 私には難しくて。だからまた助けて?」


 学園の宿舎に向かう途中、建物の近くでペトロニラと3人の女子生徒が話しているのを見かけた。彼女たちは、貴族ではなく平民出身の生徒たちのようだった。

「お断りします」
「ど、どうして……?」

 何やら怒った雰囲気の女子生徒たちを見て、建物の影に隠れて様子を窺うことにした。

「私たちが刺繍や課題を代わりにやって、ペトロニラ様を立てるのは、ルイ様やエリオット様、ロアン様、サイラス様に紹介してもらうという見返りのためでした」
「でも、ペトロニラ様は一向にご友人に私たちを紹介せずに利用し続けましたよね? もう絶対に手伝いませんから」
「最近はルイ様たちとも一緒にいませんよね? それって、人の手柄を自分のものにするような性格がバレて愛想尽かされたからではないんですか?」

 女子生徒たちはペトロニラの影武者として刺繍をしたり課題をしたりしていたらしい。だからペトロニラは刺繍で賞を取り、優秀な成績を修めていたのだと理解した。『完璧なヒロイン』という設定を守るために姑息な手を使っていたらしい。

「ま、待って……! なら、欲しい情報を何でも教えてあげるわ。たとえば、王太子殿下のお好きな食べ物とか……!」
「マスカットでしょう。そんなの、ファンなら誰でも知ってます。もうペトロニラ様に協力するのはこれきりということで。それでは」
「…………」

 取り残されたペトロニラは悔しそうに下唇を噛んでいた。ルサレテは全部見なかったことにして部屋に戻った。
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