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 園遊会は盛会だった。宝石のように繊細なお菓子が、レースクロスのかかったテーブルに所狭しとと並んでいる。上流階級の貴族たちが、あちこちで雑談している。

「ねぇ、あの令嬢はどなた?」
「わ……すごく綺麗」
「ドレスも素敵ね。どこで仕立ててきたのかぜひお聞きしたいわ」

 会場の王宮庭園に着いて早々、ルサレテは注目の的になっていた。ゲームのアイテムとして手に入れたドレスを身にまとっているため、オーラが何割も増してとりわけ華やかに見えるのだろう。

(ロアン様は……どこかしら)

 きょろきょろと辺りを見渡すの、人集りを見つけた。複数の夫人に囲まれ、もてはやされていたのは攻略対象のひとり、ロアンだった。学園で若い令嬢たちに囲まれているのはよく見ていたが、年齢層の高い女性にも同様に好かれるらしい。
 彼はルサレテの姿を見かけて目を見開いた。

「すみません。先約があるので失礼しますね。お嬢さんたち」
「まぁ、お嬢さんだなんて久しぶりに言われたわぁ」
「顔がいいだけじゃなくてお上手ねぇ」

 ロアンを取り囲んでいる夫人たちは、残念そうに彼を見送る。ロアンはまっすぐこちらに歩いてきて、ルサレテの姿をじっと見つめた。

「ごきげんよう。ロアン様は大人気ですね」
「え……あ、そんなことないよ。それより……驚いたな。今日の君、すごく綺麗だ」
「ありがとう……ございます」

 すると、彼の好感度は+10アップして、-40になった。ロアンの好みに合わせたドレスを手に入れるために多くのポイントを費やしたのだから、綺麗だと思ってくれなくては困る。
 今日のルサレテは、全身緑色に染まっている。それは、彼の瞳をイメージしたものだ。

「今日は無理を言ってすまないね。家長の代理でこの会に出なくちゃならなくて、パートナーが必要だったんだ。……一応言っておくけど、誘いやすい君を選んだだけだから、妙な誤解はしないように」
「え……ああ、はい」

 妖精が干渉して、ロアンがルサレテと園遊会に出なければならないように状況を操作したのだろう。彼に無理を言われたような記憶はなく、ロアンの記憶も一部が改変されているらしい。家長の代理という具体的な事情についてルサレテはよく知らないので、適当に相槌を打った。

 ルサレテとロアンはテーブルに着き、ステージの上を見た。王家に招かれたファンファーレ楽団や歌手、踊り子たちが次々にパフォーマンスをしていく。
 続いて登場したのは、色んな国を渡り歩いているという大道芸人で、打楽器人形を操りながら変わった音楽を奏でた。

「わ……見てください! あの猿の人形、すごく可愛いです!」
「ルサレテ、はしゃぎすぎ」

 呆れたように言う彼だが、好感度がなぜか+2上昇した。

(あら……どうして好感度が?)

 普段は落ち着いた性格のルサレテが盛り上がっている様子を見て、どこか楽しそうにロアンも笑う。ただステージを楽しんでいただけなのに、その様子を見て好感度が上がったことを不思議に思う。

 すると、ロアンがテーブルに包装された小さめの箱を置いた。これは何かと聞くと、この前の薬のお礼だと彼は答えた。

「どんなものなら喜んでもらえるか、分からなかったんだけど……」

 包みを開けてみると、その中には手のひらサイズの熊のぬいぐるみが入っていた。瞳が宝石でできていて、首にも青い宝石のネックレスを着けており、明らかに高価そうな代物だ。
 ルサレテは可愛いものが好きだ。こんな可愛らしいぬいぐるみをロアンが買っているところを想像すると、なんだか面白い。

「とても気に入りました……! 大切にしますね」

 ぬいぐるみを撫で、にっこりと笑ってお礼を伝えれば、また好感度メーターの数字が変わる。今日はやけに調子がいいみたいだ。

 するとそのとき、後ろから聞き慣れた声がした。

「お姉様がどうしてここに? それに、ロアン様まで……」

 声の主は、ペトロニラだった。

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