【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ

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 家を追い出されて1ヶ月。攻略対象たちの好感度を上げようと頑張ってはいるが、未だに全員0を下回ったまま。
 宿舎の自室でひとり、空中ディスプレイを眺める。

(また……イベント発生)

 詳細を見ると、王家が主催の園遊会だった。攻略対象の中で好きな相手を選び、参加することができるという。

「好きな相手を選んだら、あとは妖精の力でセッティングしてくれるということなの?」
「そういうコト!」
「へぇ。すごい力なのね」

 妖精はこの世界の人たちに干渉することが可能なのだとシャロが説明した。だから、主人公がペトロニラから脇役のルサレテに代わっても、ルサレテの行動のひとつひとつを新たなオリジナルのシナリオとして組み込み、進行できるのだ。

 すると、シャロが目の前をふわふわと旋回しながら改めてこのゲームについて説明した。

「セリフも行動も基本的に自由! 要所でボクたち運営がサポートはするけど、キミはのびのびこの世界を満喫するだけでいいヨ」
「満喫って……。楽しむどころか破滅しそうな感じしかしないんだけど」
「ボク的には、好感度-100から始まるっていうのもなかなか面白いと思うけどナ!」

 くるくる目の前を回って笑う彼。シャロたち妖精族は、好奇心と探究心が旺盛な種族だ。しかし、ルサレテ的には何も面白くない。
 するとシャロは空中で腕を組み、はぁと憂鬱そうにため息を吐いた。

「ため息なんてついてどうしたの?」
「いやぁ、前の被験者は性格悪いし、乱暴でわがままでしんどかったなっテ。思い通りにならないとボクの毛を引っ張ったり、ほっぺをつねるんダ! ホント、ルサレテが引き継いでくれてよかったヨ」

 シャロは無作為に元日本人だったペトロニラを検証者に選び、乙女ゲームの世界に転生させたものの、攻略は難航していた。ペトロニラは生まれたときから被験者だったのに、未だに好感度は50前後までしか上げられなかったらしい。

「まぁ。こんなに可愛い子をつねるなんてひどいわね」

 そっと目を閉じて、シャロの柔らかな毛を撫でると、彼は気持ちよさそうに目を伏せた。

「ルサレテには感謝してるんダ。ルサレテは優しくて、ボク大好き!」
「ふ。褒めても何も出ないわよ」

 片手でシャロの毛をもてあそびながら、もう片手で画面を開く。ゲーム内にはポイント制度があり、歩いた歩数で貯まっていくことになっている。ルサレテは時間があるときに外を歩いて、ポイントを少しずつ貯めていた。

 園遊会に行く相手はもちろん、ロアンを選択した。王家主催の園遊会は定期的に行われ、国でも有名なファンファーレ楽団や、美しい踊り子を招き、腕のいいパティシエのお菓子を楽しむ。
 煌びやかな社交の場だが、上流階級の家長やその妻に子息、その年の功労者など選ばれた者しか招かれない、貴族たちの憧れの場だった。ロアンは筆頭公爵家の嫡男で、毎回そこに招待されている。

「ロアン様は……どんなドレスが好みかしら」

 アイテム欄をスクロールしながらドレスを探す。攻略対象ごとに、彼らの好みのドレスやアクセサリーが分類されている。ルサレテは、ロアン好みのドレスの中で、最もポイントが高く、魅力度が高いドレスをタップした。

「お~奮発するネ」
「ええ。少しでもいいと思ってほしくて」
「それは……ゲーム攻略のタメ? それとも本心?」

 シャロに指摘され、どきっと心臓が跳ねる。ロアンは前世でゲームをプレイしていたときの推しだった。ルサレテも病気を患っており、唯一の心の拠り所がゲームだったから。同じように病気を抱えていたロアンに、共感する部分もあり、幸せになってほしいと応援していた。
 せっかく異世界で推しに会えたものの、嫌われてしまっている。それでも、ロアンが推しであることには変わりない。

「園遊会が終わったら、また沢山歩き直さないと」

 魅力度の高いドレスを着ていけば、その分好感度メーターが上がる。マイナスからのスタートなので、少しでも数値が上がるように頑張らなくては。

 ドレスを購入し、『着替える』をタップすると、何もしていないのに一瞬で着替えが完了した。姿見の前に立って腰を揺らすと、ドレスのスカートがふわりと翻る。
 それから、ゲームの転移機能であっという間に集合場所へ移動した。
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